国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、本日の議題である条約承認案件のうち、ASEANプラス3マクロ経済調査事務局設立協定、国際コーヒー協定は、いずれも必要な措置と認められますから、条約承認に賛成であります。
 WTOの協定改正議定書については、そもそもWTO協定そのものが自由貿易の名の下に途上国を含む世界各国に主権の制限を押し付けるものであることから、承認には反対の立場であります。
 その上で、今日はもう一件のモンゴルとの経済連携協定について質問いたします。
 外務省の説明資料では、本協定の意義として、特にエネルギー・鉱物資源分野ではモンゴルの投資環境が格段に改善され、同分野の日・モンゴル間の関係強化に著しく資することが挙げられております。
 モンゴルからの輸入に占めるエネルギー、鉱物資源の現状を見ますと、石炭が五三%と大きな割合を占めておりますが、同国の鉱物資源で注目されているものにウランがあります。経済産業省に来ていただいておりますが、このモンゴルのウランの推定資源量はどれほどか、またこの推定資源量は世界で何番目と言われているでしょうか。

○政府参考人(資源エネルギー庁電気ガス事業部 部長 多田明弘君) お答え申し上げます。
 国際機関IAEAの方で発行しておりますウラニウム二〇一四、こちらの資料によりますと、二〇一三年一月一日時点でのモンゴルにおけます採掘可能なウラン資源埋蔵量、これは約十四万トンと推定されておりまして、世界十三位に当たります。

○井上哲士君 いわゆる推定埋蔵資源量はどうなっていますか。

○政府参考人(多田明弘君) お答え申し上げます。
 今申し上げました採掘可能な資源埋蔵量、これが推定埋蔵量でございます。

○井上哲士君 日本の原子力産業協会の国際部が二〇一三年六月にまとめたモンゴルの原子力発電導入準備とウラン鉱業と題するレポートがありますが、ここでは、経済協力機構の原子力機関の発表に基づいて、モンゴルのウラン鉱石の推定埋蔵資源は百四十七万トンで世界一位の可能性が強いと、こういう発表がされております。きちっとそれを答えていただきたいんですが。このレポートでは、よって、このモンゴルのウランの探査、採鉱は、今日ではロシア、カナダ、フランス、カザフスタン、ドイツ、日本、インド、中国、韓国が協力を競い合っていると、こういうふうに書いております。
 このように、日本はモンゴルのこのウラン資源に着目をしてその獲得を目指してきたということだと思いますが、これまでそのためにどのような取組を行ってきたのか、経緯を含めて具体的に説明してください。

○政府参考人(多田明弘君) お答え申し上げます。
 二〇〇八年十月に遡りますけれども、当時の私ども経済産業省の経済産業審議官、モンゴルに訪問いたしまして、それに際しまして、日本とモンゴル両国間でウラン資源開発の協力を拡大することで一致をいたしました。二〇〇九年七月には、モンゴルの首相が来日するのに際しまして、原子力の分野につきまして、人材育成それから投資環境整備等に並びまして、ウラン資源開発に係る協力を内容といたします文書、MOUという形で署名をさせていただいております。なお、この文書の協力の期間は三年間となっておりまして、現在はこの文書に基づく協力は終了しているところでございます。

○井上哲士君 二〇〇九年に協力覚書を両国で締結をしているわけですね。これ、是非全文を公表してほしいと思っているんですが、されないわけですね。概要ペーパーをいただきますと、その協力内容として、ウラン資源開発に係るモンゴル国内投資環境の改善ということが掲げられております。
 外務大臣にお聞きしますけれども、このモンゴル政府との間での協力覚書の概要に記載されているウラン資源開発に係るモンゴル国内投資環境の改善について、この協定の締結によってどのように改善がされるんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) まず、お尋ねの協力覚書ですが、二〇〇九年に日本の資源エネルギー庁とモンゴルの原子力エネルギー庁の間で署名されたものですが、協力期間は三年間とされており、現在はこの協力覚書による協力は終了していると承知をしています。
 そして、今回の日・モンゴルEPAですが、こうした当局間の覚書とは異なって、これは日本とモンゴルの間において締結された国際法によって規律される国際的な合意であります。そして、その中で、投資省において、エネルギー・鉱物資源分野を含む全ての分野において、民間企業には、投資許可段階における内国民待遇、最恵国待遇が付与されるとともに、投資財産に対する公正衡平待遇の付与、あるいは投資家、政府間の契約の遵守義務、そして投資家と国家間の紛争解決、ISD条項等が規定されている内容になっております。
 これら投資省のこの規定によりまして、我が国からモンゴルに対する投資の保護を強化するとともに、より自由な投資の枠組みの整備に資することが期待されております。

○井上哲士君 やはり、当時の覚書で言われたこの国内投資環境の改善ということがこの中で入っているということだと思うんですね。
 こうした日本政府の取組と一体に、モンゴルでのウラン権益の確保に向けた日本企業の開発の動きが進んでまいりましたが、この日本企業のモンゴルにおけるウラン開発に関わる進出状況というのはどうなっているでしょうか。

○政府参考人(多田明弘君) 私ども経済産業省といたしまして海外ウラン探鉱支援事業補助金という制度を持っておりますが、これを交付しております対象案件といたしまして、二〇〇九年より三菱商事株式会社が、モンゴル南東部、サインシャンド、ダリガンガ、両地区でございますが、こちらに権益を持ちますフランスのアレバ社のウラン探査プロジェクトに参入していると、このように認識をいたしております。

○井上哲士君 今ありました補助金についてお手元に資料(2015年5月14日 外交防衛委員会 日本共産党 井上哲士 提出資料.pdf)を配っておりますが、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、いわゆるJOGMECがそういう補助金を出しております。海外ウラン探鉱支援事業補助金という形でエネルギー特別会計の予算で支援を行っておりまして、いわゆる投資環境の整備にとどまらないこうした支援を行ってきたわけですね。
 この制度の目的、補助実績、それから本制度の成果目標としてウランの自主開発比率ということが掲げられておりますが、これはどういうものか説明してください。

○政府参考人(多田明弘君) お答え申し上げます。
 海外ウラン探鉱支援事業補助金でございます。今後、世界各国におきまして原子力発電が拡大することが見込まれます。そうした中でウラン需給の逼迫、こうした可能性が高まると、このように認識をいたしておりまして、私どもウランの全量を海外から輸入している我が国にとりましては、ウランの調達の確保といったものが重要な課題であると認識をいたしております。こうした認識に基づきまして、この海外ウラン探鉱支援事業でございますが、二〇〇七年度から開始をいたしております。
 御紹介ございましたように、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、いわゆるJOGMECが、リスクの高い海外ウラン探鉱事業に自ら参加すること、あるいは民間事業者が参画する海外ウラン探鉱事業に対しまして、JOGMECの方からリスクマネーを供給する、こういったことによりまして我が国にとりましてのウラン資源の安定確保、これを図ることを目的といたしております。
 補助実績でございますが、直近の三年間、申し上げますと、二〇一二年度、約四億六千万円。十三年度が七億五千万円、十四年度が九億三千万円、このような実績となっております。
 それから、最後にお尋ねのありました自主開発比率の目標でございますけれども、この自主開発比率、我が国の総調達量を分母といたしまして自主開発鉱山からの調達量、これを分子に置いた数字でございますが、これを三三%から五〇%、いわゆる三分の一から二分の一と、こういうふうな目標とさせていただいております。

○井上哲士君 この補助金で、先ほどありました三菱商事が、二〇一〇年度以降、約五億円の補助金を受けております。
 それで、二〇〇五年に原子力政策大綱が作られておりますが、この中では原発を基幹電源と位置付けて着実に推進していくべきと、こうしました。そして、ウラン資源の確保の重要性ということがこの大綱に盛り込まれました。この海外でのウランの探鉱開発の推進はこの一環ということになるわけですね。その後、〇九年の総合資源エネルギー調査会の国際戦略検討小委員会の報告というのを見ますと、ウラン資源の確保の目的について、原子力関連産業が将来を担うリーディング産業として日本経済の発展に貢献するとして、日本の電力事業者の安定調達のためのみならず、将来的な海外向けの供給を視野に入れたものと、こういうふうにしております。
 要するに、海外の原発ビジネスのためにあるということでありますが、こうした自主開発権益の拡大ということもまさにこの一環ということではありませんか。

○政府参考人(多田明弘君) 先ほど御説明させていただきましたとおり、今回の対象となっておりますウランの探鉱支援補助事業でございますが、こちらの自主開発比率を向上させるという目標は、あくまで国内のエネルギー需給の観点から安定的な資源確保を行うための政策の中で設定をさせていただいておりまして、この点は、いわゆるレビューシートの中でも明らかにさせていただいていることかと思います。
 この意味におきまして、今委員からお尋ねの海外に対する原発輸出というものとの関係というものは直接は存在しないと考えております。

○井上哲士君 確かに二〇〇七年に作られた制度でありますが、その後の議論の中で、今紹介しましたし、さらに、この報告に向けた小委員会の議論を見ますと、〇九年二月の会議では、エネ庁の原子力政策課長がこの自主開発比率の引上げについて、電力事業者の安定調達のみならず、プラントメーカーのサプライチェーン構築、国際競争力の観点からも課題だということを言って、まさにこの政策支援ツールの充実強化ということを報告をしているわけですね。
 ですから、私は、政府は福島第一原発の事故の後、世論の批判を受けまして、この原子力政策大綱の改定作業を断念しました。そして、今原子力に特化した網羅的な大綱は持たずにエネルギー基本計画のみ策定することになっていたわけですね。ところが、かつての大綱の下でのこの補助金はずっと今も継続をされているわけで、国民からは見えにくくなっただけで原発推進、海外での原発ビジネス支援の施策が福島原発事故以前と同じように進められていると。私は、これは大幅に見直すべきだと思います。
 今も自主開発比率を高める方針は変わらないのか、原発を基幹電源とした大綱がもうない下で、これは、この目標をなぜ堅持する必要があるのか、大幅に見直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(多田明弘君) お尋ねのウラン資源の自主開発比率、この目標を高めるという目標、今後も変わらないのかと、こういう御指摘かと思いますが、私ども、先ほども申し上げましたけれども、世界各国におきまして、これは日本の周辺のアジア諸国を始めといたしまして、原子力発電の拡大は見込まれるわけでございます。そうした中でウラン需給の逼迫の可能性もこれは高まっていくと見込まれるわけでございますので、全量を海外から輸入しております我が国にとりまして、ウラン調達確保というものが重要な課題であるという点は引き続き変わらないと、こういうふうに考えてございます。
 昨年四月に閣議決定をいたしましたエネルギー基本計画におきましても、資源外交の積極的な展開でございますとか、それから、これはウランにとどまらない話でございますけれども、JOGMECによるリスクマネー供給機能の強化、こうしたものによりまして官民が協力をいたしまして自主開発比率を引き上げていくための取組を進めていくと、このように記載をされているわけでございます。
 同じくエネルギー基本計画の中では、原子力の位置付けというものを改めて政府として方針を固めているわけでございまして、その一環といたしまして、世界の平和的な利用あるいは原子力安全への貢献といったものについては、福島の事故の教訓を経て我が国としてしっかりと積極的に貢献していくと、こういった方針も併せてあるところかと認識をいたしております。
 いずれにいたしましても、JOGMECのこの事業によりまして自主開発比率を高めていくと、こういった政策目標については現時点で見直しをする必要はないと考えております。

○井上哲士君 今、福島第一原発事故の教訓という言葉がありましたけれども、それを踏まえるならば、日本は原発ゼロを決断をして再生可能エネルギーへの抜本的転換を図るべきだと思うんですね。
 今、福島事故がなかったかのように原発推進への動きが強まっておりますけれども、一たび事故を起こせば取り返しの付かない被害を起こすような海外への原発展開ビジネスの支援もやるべきではないと思いますし、こういうビジネスの拡大につながるような本協定については反対であるということを述べまして、質問を終わります。

・日・モンゴル経済連携協定及びWTO協定改正議定書承認に対する反対討論

○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、本日議題の承認案件四件のうち、日・モンゴル経済連携協定及びWTO協定改正議定書の承認に反対の立場から討論を行います。
 モンゴルとの経済連携協定は、日本企業によるモンゴルへの経済進出を促進するためのものです。政府は、その意義について、特にエネルギー、鉱物資源分野ではモンゴルの投資環境が格段に改善されると説明しますが、モンゴルでの開発投資のための環境整備は、現在、我が国の輸出の主力である石炭にとどまらず、ウラン資源開発を後押しするものであり、安倍政権が成長戦略の柱に位置付けて推進する、海外での原子力ビジネスの拡大につながるものであることから、容認できません。
 あわせて、政府がウラン資源の自主開発比率の向上のためにモンゴルを始めとする海外での日本企業のウラン開発を促進する海外ウラン探鉱支援事業補助金などの事業を今も継続していることは、原発を推進し、原子力ビジネスを支援する政策であり、福島第一原発事故の教訓を顧みず、原発再稼働反対を求める多数の国民の願いに反するものであり、容認できません。事業の廃止を求めるものであります。
 WTO協定改正議定書による貿易手続の透明化の向上、迅速化、税関当局の協力を内容とする貿易円滑化の措置は日本においては既に整備済みのものですが、本議定書は、これらの措置をWTO全体に広げるものであります。そもそもWTO協定は、貿易自由化の名の下に主権制限を無差別に全ての国に押し付け、多国籍企業、大企業の利益を図る一方で、発展途上国をいつまでも不利益な状況に置き続けるものです。今回の改定はその本質を変えるものでないことから、承認には反対であります。
 以上で討論を終わります。

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