○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
水銀条約の国内法制について質問をいたします。
まず、経産省にお聞きいたしますが、輸出規制について、アマゾン川の流域などで水銀を使った人力小規模金採掘、ASGMによる水銀中毒が大変な問題になってきました。日本から輸出された水銀がこのような目的に使われないように、条約を受けた国内法制ではどのような規制がされているのか、まず確認をしたいと思います。
○政府参考人(経済産業省貿易経済協力局貿易管理部 部長 坂口利彦君) お答え申し上げます。
水銀に関する水俣条約に基づく水銀の輸出規制につきましては、外国為替及び外国貿易法におきまして、水銀の輸出が条約上許可される用途で使用されることなどが確認できる例外的な場合に限りまして輸出を承認することを予定をしております。また、条約で定められている水銀の輸出規制に加えまして、我が国独自の措置といたしまして、塩化第一水銀等六種の水銀化合物の輸出につきましても、原則禁止をすることといたしております。
加えまして、先生御指摘のように、周辺環境の汚染や健康被害のおそれのある零細及び小規模の金の採掘を用途といたします水銀及び水銀化合物の輸出を禁止するとともに、暫定的保管のみを目的とする水銀及び水銀化合物の輸出を禁止することとしております。
○井上哲士君 国内的な措置なわけでありますけれども、外国でそれが転売をされた場合にどういう実効性があるのかが問われると思うんですね。
我が国は、シンガポール及び香港に全輸出量の三八%程度の水銀を輸出をしております。両国において大半は再輸出をされておりますが、その輸出先の主要国には、この水銀を使用した金採掘を行うブラジル、インドネシア、インド、ウズベキスタン、ガイアナ、マレーシア、南アフリカなど多くの国が含まれております。ですから、日本が輸出をした水銀が転売をされてASGMに使われてしまうんではないかという懸念があるわけですね。
実際、国連工業開発機関のレポートによりますと、二〇〇五年に日本からケニアに輸出された水銀がASGM使用国である周辺国に再輸出をされて、ASGMに使用された可能性があると、こういうふうにレポートされているわけで、こういうものもさせないような実効性ある規制になっているんでしょうか。
○政府参考人(坂口利彦君) お答え申し上げます。
我が国から輸出される水銀が輸出先国において不適切に使用されることがないように、輸出規制を着実に実施する必要がございます。このため、外為法に基づき行います事前の輸出審査におきましては、輸出先国での水銀の最終用途及び最終需要者などにつきまして厳格に確認をすることを予定しております。加えまして、事後的にも適宜輸出者に対して報告を求めることによりまして、最終用途及び最終需要者などにつきまして、輸出承認時の内容とそごがないということを確認することを予定しております。
以上申し上げましたように、事後報告の確認を通じまして、安全保障分野の輸出管理と同様に本分野の輸出管理の実効性をしっかりと確保してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 安全保障分野並みの規制にするんだというお話でありました。
そういう規制の下で、過去、そういう安全保障分野のものについては、今言ったようなこの第三国への再輸出で不正な使用がされたりした例は防いできたと、こういうことなんでしょうか。
○政府参考人(坂口利彦君) 私どもとして、輸出管理、しっかり対応してきておりまして、第三国への不正な輸出はないように確保してきてまいっております。
○井上哲士君 今後、運用をしっかりフォローをして、必要な場合は一層の規制をするということも含めて求めておきたいと思います。
次に、水銀の回収、最終処分について環境省にお聞きします。
これまでは、水銀の回収業者は、回収した水銀を輸出することで回収コストを捻出をしておりました。今後、この条約の発効によって輸出が規制されますと、環境保全上の懸念があります。一つは、これまで輸出をされていた金属水銀が廃棄物として扱われるという可能性、これはどのような対策が取られているのか。
それから、併せて聞きます。
また、水銀回収のインセンティブが減って、水銀の溶出量が判定基準を超えるような汚泥、ばいじん等の水銀汚染物が埋立処分をされたり、それから蛍光灯などの水銀添加廃製品の埋立処分が増えていくという可能性があると思いますが、こういった場合の環境保全上の対策はどのように考えられているのか、併せてお聞きします。
○政府参考人(環境省廃棄物・リサイクル対策部 部長 鎌形浩史君) 水銀を含む廃棄物についてのお尋ねでございます。
まず、金属水銀でございます。
現在の我が国では、水銀を含む廃棄物から年間約五十トンの金属水銀が回収、再生されておりますが、御指摘のとおり、そのほとんどが有価物として再生利用されております。ただ、水俣条約を受けまして今後水銀需要の減少が見込まれるという中で、これまで有価物として取り扱われてきた金属水銀につきましても、中長期的には廃棄物として処理される場合が想定される、御指摘のとおりでございます。
このため、これまで廃棄物処理法では規制対象として想定してこなかった廃金属水銀につきまして、新たに特別管理廃棄物として規制対象に追加するということとしてございます。
また、環境上より適正な管理を図っていくために、硫化、固形化、硫化水銀というのは水銀が天然に存在する状態で安定した状態のものでございますが、そういったことにより安定的なものにして処分する、そういった基準を設けることとしてございます。
それから、水銀汚染物あるいは水銀添加製品につきまして、これは現在、廃棄物処理法に基づきまして基準に基づく適正な処理が求められているというところでございます。ただ、環境上より適正な管理を確保するための措置を今般定めていきたいと考えてございます。具体的には、高濃度に水銀を含む水銀汚染物については、埋立処分に当たって水銀を回収するということを義務付けようということでございます。また、水銀添加製品につきましては、市町村による分別回収を後押しして水銀回収をより一層推進していくということや、あるいは収集運搬時や処分・再生時に水銀が飛散しないような基準を設けて適切な処理がなされるように対応をしてまいりたいと、こういうふうに考えてございます。
○井上哲士君 この点もしっかりフォローもし、また関係業者とか地方自治体からもしっかり要望、意見も聞きながら一層の対応を求めたいと思います。
最後に、外務大臣にお聞きしますが、この水銀水俣条約の実効性を担保するために我が国として今後三年間で総額二十億ドルのODAとか人材育成事業の新設などの支援策が実施をされることになっておりますが、今後、締約国会議でこの条約の実施について再検討や評価が行われるということになります。ですから、それに基づいて、今回出されている支援策にとどまらず、一層の必要な支援も進めることが必要になってくるかと思いますが、それも含めた決意を最後にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) まず、御指摘のように、本条約の採択会議におきまして、平成二十六年一月から三年間での総額二十億ドルの支援表明を行いました。また、この同会議におきまして私の方から、この水銀汚染分野に特化した支援として人材育成支援、こうした支援も行うことを発表いたしました。これに加えて、これまでも水銀による環境汚染対策あるいは健康被害対策、代替技術の開発など、途上国における水銀対策のための調査、技術移転等に協力をしているわけですが、こうした途上国の取組を後押しすること、これは人間の安全保障の実現の観点からも重要だと思っています。是非、今後ともこうした取組は続けなければならないと考えています。環境技術を生かしつつ、途上国の水銀被害軽減等を支援していく、また途上国による条約の実施、これもしっかり支援していきたいと考えております。
○井上哲士君 終わります。