国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2015年・189通常国会 の中の 外交防衛委員会

外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 ISILによる人質事件への政府の対応について我が党の小池晃議員が、二月三日の予算委員会で、人命第一の立場で冷静に検証しようと質問をいたしました。総理のエジプトでの演説で非軍事の人道支援と説明していなかったことを指摘して、二人の日本人が前の年から拘束されていることを政府が知りながら、演説で危機が及ぶ認識がなかったのかと首相をただした。そうしますと、総理は、そういう質問をすること自体についてテロに屈することになると、こういう旨の答弁がありまして、当時大きな問題になったわけですね。
 その後、検証委員会がつくられまして、この総理のスピーチの表現が適当であったかどうかも検証の対象になって報告書が出されました。政府として冷静な検証が必要だと、こういう認識に立ったということでよろしいわけですね。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 大庭誠司君) テロ対策につきましては不断の見直しが必要と認識しておりまして、今回の事件に対する対応につきましても検証を行ったものでありまして、その旨は総理も国会で答弁されているところであります。

○井上哲士君 しかしながら、二月三日の時点で先ほどのような総理の答弁があって、これは当時マスコミでも随分大きな問題になったんですね。
 外務大臣、お聞きしますけれども、こういう検証をやるに至ったということは、総理のあの答弁は適切でなかったと、こういう認識でよろしいですか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 今、検証を行うことの意味につきましては、ただいま答弁があったとおりであります。我が国としましては、邦人の安全のために最大限努力をし続けなければなりません。こうしたテロ事案につきましても、しっかりと検証をし、不断の見直しを行っていく、こういった姿勢は大事である、そういった観点からこの検証が行われたものだと認識をしております。

○井上哲士君 いや、当時、それとは違うような答弁を総理が行われていたことについてどうお考えかとお聞きしているんです。

○国務大臣(岸田文雄君) それと違うというのは、今回の検証報告の中の内容と違う発言を総理がしていた、そういった御指摘でしょうか。

○井上哲士君 要するに、検証する立場で国会で質問をすると、そういう質問をすること自体に対して、それはテロに屈することになると、こういう答弁があったわけですよ。このことについてお聞きしているんです。

○政府参考人(大庭誠司君) 御指摘の総理の御答弁は、先ほどお話ありました二月三日の参議院予算委員会の小池議員に対する答弁かと思いますけれども、総理によるそのスピーチに関する議論の中で、ISILに対する批判をしてはならないといった印象を与えるような指摘はテロリストに屈することになるのではないかというような認識を示されたものであると考えております。

○井上哲士君 だから、言っているんですよ。ISILに対する批判をした上で質問をしたのに、それを批判をしてはならないようだと勝手に言って、そういうもの自身がテロに屈することになるという答弁を総理がしたから私は申し上げているので、外務大臣、もう一回お願いします。

○国務大臣(岸田文雄君) 総理の発言、ちょっと私も今、いま一度確認してみなければならないかもしれませんが、要は、趣旨、はテロに屈するような印象を与えてはならないというところが趣旨であったと受け止めています。そういった趣旨での発言であると認識をいたします。

○井上哲士君 政府に対して冷静な検証を求めようと思えば、特にテロに屈することになるということで封じ込めようとするような総理の姿勢、ほかでも様々見れるわけでありますが、そのことを改めて厳しく指摘をしておきたいと思うんですね。
 その上で検証委員会がつくられましたけれども、先ほど来ありましたように、事件対応を主導した政府の当事者ばかりで、途中から有識者との合同会議も行われましたけれども、身内の検証というべきものになっております。
 なぜ第三者的な検証委員会を立ち上げなかったのかということ、先ほど外務大臣からるる答弁がありました。決して納得のいけるものではありませんが、一方で、有識者からは様々な指摘があったことが別枠にしてこの報告書には盛り込まれております。先ほどの総理のスピーチについても、日本側の意図とは異なるが、ISILにより脅迫の口実にされたという指摘とか、今後、人質を救出できる可能性があるような場合には、このように注目を集める対外的発信には十分に注意する必要があると、こういう指摘が報告書にも載っております。
 ところが、私驚いたのは、先ほどの外務大臣の冒頭の報告でこういう指摘については全く触れもしていないんですね。そんなことで、こういう指摘を受け止める気があるんですか。いかがですか。

○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の報告書の部分につきましても、その冒頭に、今回は必ずしも当てはまらないとしても、こういった記述もあります。検証報告書としては、対外発信に十分に注意する必要がある、こうした一般論を指摘されたものであると思っております。
 いずれにしましても、総理のスピーチを始めとする関係省庁及び官邸が協力して作ったこのスピーチの原案につきましては、様々な観点を総合的に踏まえてしっかりと発信をしていくべきものであると考えます。

○井上哲士君 ISILにより脅迫の口実とされたとの指摘がきちっとされているわけであります。その上で、先ほど大臣が言われたようなことも書かれているわけですね。果たして本当にきちっと受け止められているのかと思います。
 テロは、いかなる理由であれ、許されません。同時に、差別や貧困、戦争における殺りくなどが怒りと絶望を生んでテロの温床になって、テロ組織に若者が参加をしていく、こういうことが繰り返されてきました。
 これに対して、この間のアメリカの対テロ戦争中心の対応がどのような結果をもたらしたのかと。私は、この人質事件の対応にとどまらず、広く検証をする必要があると思います。
 日本政府はイラク戦争を支持したわけでありますが、この戦争が逆にテロを広げたと広く指摘をされておりますが、この点は政府としては現状をどう認識をされているでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) イラク戦争について御指摘をいただきました。
 フセイン政権下のイラクは、十二年間にわたり、累次の安保理決議を違反し続け、そして国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力に応えようとしませんでした。イラクに対する武力行使は、国際平和と安全を回復するという目的のために、累次の関連する安保理決議に従って行われたものであると認識をしています。
 そして、テロとの関係で申し上げるならば、現在ISILとして活動をしている過激派組織、これ、二〇〇四年頃からアルカイーダ系組織としてイラクでのテロ活動を開始し、駐留米軍あるいはイラク政府及び治安部隊を標的とするテロ活動を行ってまいりました。ISILが影響力を強めた背景には、イラクの旧サダム・フセイン政権関係者を含むスンニ派の社会的不満、あるいはシリアでの政治的混乱、こうした様々な複合的な要因があると認識をしているところであります。

○井上哲士君 今様々な複合的な要因とされたことが、結局、アメリカのイラク戦争によって起きたわけですね。
 それに加えて、アメリカのブラウン大の研究者グループによりますと、イラク戦争での民間人の犠牲者は十三万四千人と推計をされておりますし、これに兵士やジャーナリスト、人道支援活動家を加えれば、十七万六千人から十八万九千人になると言われております。
 新しい貧困と憎しみをつくり出して、そしてイラクでの混乱や宗派対立、さらにアメリカの占領当局が旧フセイン体制時代の軍を解体したことについて不満を持つ旧軍の関係者がイスラム国に協力したことも勢力拡大の要因となっていると指摘をされておりまして、私は、戦争ではテロはなくせないということをまさにイラクの事態は示していると思います。
 日本は、歴史的な経緯、そしてキリスト教圏でもないということから中東地域において大変信頼が高いと。私も、参議院の派遣で二〇〇二年に参りまして、そのことを本当に実感をいたしました。欧米諸国にない独自の役割が本来果たせるわけでありますが、日本がこの間、アフガン戦争やイラク戦争を支持をしてきた、これが一体何をもたらしたのかと。
 二〇〇四年にイラクで武装勢力に拘束された高遠菜穂子さん、イラクに関わり始めた当初はアジアの友と見られて大歓迎を受けた、戦争をしない国、軍隊を持たない国と思われていたことが大きかったと、それが〇三年のイラク派兵で大きく日本のイメージが変わったと述べておられます。その中で拘束をされたわけでありますが、それでも、高遠さんが拘束されたときの犯行グループの解放時の声明は、日本政府に対して、日本国民の意思を代表しておらず、ブッシュとブレアという二人の犯罪者の代理人になっているのが真実だと言った上で、我々が信頼し、勇気ある英雄的なイスラム聖教職者団体が今日の夕方、日本人人質の釈放を求めた、我々は独自の情報源から、三人が占領軍には協力しておらず、イラク市民を助けていることを確認したと、そして家族の苦しみに配慮し、日本人の姿勢についても尊重することにしたと、こう言って解放をいたしました。
 ところが、今回のISの声明は、日本は進んで十字軍に参加したと述べた上で、殺害後の声明では、おまえの国民を場所を問わずに殺りくすると、こういうことまで書きました。
 もちろん、このISがこれまでの武装勢力と比べても極めて残虐でありますし、様々なこうかつな広報を行っていることは見なくちゃいけません。しかし、同時に、一定の人々が今なおこの武装集団に参加することが続いていることを見ますと、やはり背景にある中東におけるこの日本に対する人々の見方がこの間のアメリカに付き従ったことに対して変わっているということを私は見る必要があると思いますが、この点の認識はどうでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、テロの背景には、格差、貧困など様々な要素が存在いたします。そして、このISILが影響力を強めた背景にも、先ほど申し上げましたスンニ派の社会的不満、あるいはシリアでの政治的混乱といった複合的な要因があると認識をいたします。御指摘のこのイラクに対する武力の行使がこのような要因を直接つくり出したとは言えないと認識をしています。
 そして、我が国の中東各国との関係でありますが、御指摘のように、歴史的に友好関係を築いてきました。これまでも、人材開発支援、技術協力等を通じた若者の失業対策、格差是正に向けた取組、難民、避難民に対する人道支援など、活力に満ち、安定した中東を取り戻すための非軍事分野において貢献をしてきました。そしてこのことが高く評価されているわけですが、この取組は一貫しており、そして今後も変わることはないと考えております。
 そして、ISILから日本の対応が誤解を招いたのではないかということでありますが、カイロで総理が行ったスピーチに関しましても、ISILが一月二十日に公開した動画で、我が国の支援を非軍事的支援であると表示をしております。スピーチの表現が誤解を招いたということはないと考えております。この点は、今回の検証報告書の中においても、有識者にも御指摘をいただいていると受け止めております。

○井上哲士君 私はスピーチのことを言っているんじゃないんです。中東の皆さんの国民的な日本に対する思いが変わってきているんじゃないかと、この間の日本の行動によってということを言っているわけですね。
 それで、私は、やっぱりイラクや世界で活動しているNGOの皆さんから、この間の日本のこうしたイラク、アフガン戦争支持、支援が先ほど述べられたような様々な人道的な活動にどういうイメージの変化をもたらしているかということを聞く必要があると思うんですね。
 防衛大臣にお聞きしますが、その中で現在、安保関連法案が提出をされております。自衛隊が海外での活動を大幅に広げることになる。これに対して様々な国際NGOから声が上がっております。朝日の五月十六日付け、AARJapan難民を助ける会の長有紀枝理事長のコメントでありますが、中立な存在と認識されていた自衛隊が米国や同盟国を後方支援すれば紛争当事者と同一視されると、私たちは距離を置いて活動せざるを得ず、紛争地域での支援が難しくなると。
 様々な同様の声がNGOから出されておりますが、政府のこういう法制が海外のNGOの活動を困難にして危険を増すことになるという、この現場からの声をどう受け止めていらっしゃるでしょうか。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) 私もよくNGO団体の方々と話す機会がありますが、御指摘のような声があるということは承知をしております。
 しかし、一方で、各国は軍とNGOが協力しながら、安全確保しながらやってきているところもあると。そして、国連ともよく協議をして実施をしていますし、また、いざというときに近くに自国の軍、組織がいてくれれば安全だと言われる方もございます。それぞれのNGO等の考え方、活動の特性がございますので、そういったところに配慮しながら必要な連携を図ってまいりたいと思っております。
 今回の法案の目的というのは、国際社会の平和と安全のために実施する他国軍隊への後方支援、また国際的な平和協力活動の充実についても、もはや一国のみでは自国の平和を守ることはできないという現実を踏まえて、我が国としても世界の平和と安全に積極的な役割を果たしていく必要との判断から法整備を行うものでございまして、この法制における自衛隊の活動も、それぞれが厳格な要件の下で行われ、国際的な正当性の確保にも十分配慮をしながら、また我が国が主体的判断を行った上で参画するものでございますので、他国の戦争に巻き込まれることもございません。
 今後、法の整備によりまして、世界の平和と安全に我が国がより積極的に貢献できるように、安心して活動できるように取り組んでまいりたいと思います。

○井上哲士君 聞いていないことまで答えてほしくないんですが。
 各国の例出されましたけど、日本の自衛隊は厳格に区別をする、そもそも海外でのそういう自衛隊の活動ができないという、一緒にできないということの中で、だからこそ信頼を得てきたということをたくさんのNGOが言われているわけです。
 この間の衆議院の特別委員会の答弁では、自衛隊がいることによって危険が増すというケースもありますと明確に中谷大臣、認められました。ところが、危険が増すケースがあるというようなことは、これまでどこでも語られてこなかったんですね。閣議決定後の会見でも、自衛隊の海外活動の拡大、駆け付け警護などでNGOを助けに行けるということなどを安倍さんは強調しました。しかし、その一方で危険が増すケースがある、一体どこで説明したんですか。この間、はっきり大臣は答弁をされました。これ、国民に対して虚偽、今まで説明してきたんじゃないんですか。いかがですか。

○国務大臣(中谷元君) NGOの皆様方の御意見、そういう御意見でございますので、確かにNGOから見てそういう点はあろうかと思います。
 しかしながら、私たちにおきましては、何のために活動しているかというと、その地域の平和と安定のために目指しているわけでありますし、実際、派遣する隊員等につきましてはリスクや危険を極力避けて運用しながら活動するわけでございます。
 お話をいたしましたように、近くにNGOの方が活動されている際には、よく調整をしながら、そういった活動に御迷惑掛けることがないように調整、配慮をしながらやっていくというのは当然のことだと思います。

○井上哲士君 明確に危険が増すケースがあると、NGOがそう言っているんじゃなくて、ケースがあるという答弁を大臣はされたわけであります。
 現場からは様々な声が上がっております。国際ボランティアセンターのスーダン地域代表の今井さん、毎日でこう言われておりまして、日本は平和国家として蓄積された信用がある、それが海外でのNGOの活動の支えだと、自衛隊がいずれかの勢力に加担をすると、現地の人々の反感や敵意を生んで、それが危険につながるおそれがある、そして、外交で紛争を仲介し、教育や医療などの支援を地道に続けることが海外の日本人を守る最も効果的な手段だと、こういうふうに強調をされております。
 私は、これに反するような法整備はやめるべきであると、最後そのことを強調しまして、質問を終わります。

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