国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2015年・189通常国会 の中の 外交防衛委員会

外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、法案に入る前に、安保関連法案と憲法の問題について大臣にお聞きいたします。
 午前中も議論ありましたように、衆議院の憲法審査会で、参考人である三人の憲法学者が全て、政府が提出した安保関連法案は違憲という意見を述べたことは極めて重いことだと思います。
 そして、この三人だけではありません。六月の三日に発表された、安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明、この賛同者は増え続けておりまして、昨夜の段階で二百人ということになっております。
 日弁連も、この法案には反対を表明をしております。
 それから、世論調査を見ますと、三月以降毎月、今国会で成立は反対だという声が増え続けております。昨日の読売でいいますと、今国会での成立反対は先月の四八%から五九%へと、この憲法審査会の発言も受けて急増をする。賛成が三〇%でありますから、反対が倍になるという事態になっております。
 専門家の圧倒的多数からは違憲と批判をされて、政府が説明をすればするほどむしろ国民の中からは不安と反対が拡大をしていると。
 私は、やっぱりこの法案が違憲であり、道理がないものを表していると思いますけれども、大臣、ここはもう撤回をされた方がよろしいんじゃないでしょうか。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) この法案は、我が国の国民の命、そして平和な暮らしを守るために必要な法案でございまして、我が国を取り巻く安全保障環境が変化をしてきたというようなことで、まず政府で安全保障法制で有識者に検討をいただき、その報告書の提出を受け、その後、与党協議会で綿密な協議を踏まえて行ったものでございます。
 これの閣議決定を示された憲法解釈というものにつきまして、従来の憲法解釈との論理的整合性と法的安定性に十分留意をした上で、憲法九条の解釈の基本的な論理の枠内で、こういった国民の命と平和な暮らしを守るための合理的な当てはめの帰結を導いたものでございまして、こういった昨年の閣議決定によりまして法案が検討をしてきたということでございまして、行政府による憲法の解釈としての裁量の範囲内のものと考えております。

○井上哲士君 そういう説明、答弁をずっと繰り返してこられましたけど、聞けば聞くほど国民の中からは反対の声が広がって、そしてどの世論調査を見ても、八〇%が説明不十分だと答えているわけですね。ですから、同じ答弁を繰り返されますけど、それに全く国民は納得しないどころか、不安と反対を拡大しているということを改めて申し上げておきたいと思います。
 その上で、法案に関連してお聞きしますが、二〇一三年の十二月に閣議決定をされた新防衛大綱に、大学や研究機関との連携の充実により、防衛にも応用可能な民生技術の積極的な活用に努めると書かれました。
 新しく設置しようとしている防衛装備庁はこれを推進する役割をも担うことになるわけですが、こういう動きについて、世界的な科学誌であるネイチャーはこう書きました。タカ派的な安倍内閣によって、日本の学術と軍事の関係が変化していると。重大なことだと思います。
 そこで、まずお聞きいたしますが、防衛省の技術研究本部は、二〇〇二年以降、二十を超える大学や研究機関との間で国内技術交流の協定を結んでおります。その中には、東京工業大学、千葉大学、九州大学、横浜国立大学などの大学も含まれて、その内容として、ロボット技術分野、爆薬検知技術、無人小型移動体の制御アルゴリズム構築などなど行われておりますが、この国内技術交流の協定を結ぶ目的、そしてその内容はどういうものでしょうか。

○政府参考人(防衛省 大臣官房技術監 外園博一君) お答え申し上げます。
 近年、科学技術の著しい発展を背景に、防衛技術の民生技術からの発展や、防衛技術と民生技術のボーダーレス化が進展している状況において、防衛にも応用可能な先進的な民生技術、いわゆるデュアルユース技術を積極的に活用し、効果的、効率的な防衛装備品の研究開発を行うことが重要であると考えております。
 このため、防衛用途にも応用可能な技術分野を対象として、防衛省技術研究本部は、現在、七つの大学と七つの国立研究開発法人などの研究機関との間で研究協力協定を締結しております。
 この研究協力協定は、研究協力を円滑に実施するため、防衛省と協定相手方研究機関との間で連絡会議を設置すること、必要に応じて双方の研究施設、機器等を共同で利用することができること、研究協力による成果は、事前に相手方の承諾を得れば外部に発表しても差し支えないことといった事項を両者が合意した上で締結しております。

○井上哲士君 いただいた資料を見ますと、協定の数は、二〇〇二年から二〇一二年の十一年間では計十五件でありますが、約一年間で一件余りの平均ですが、二〇一三年は五件、二〇一四年は九件と急増しておりますけれども、この理由はどういうことなんでしょうか。

○政府参考人(外園博一君) お答え申し上げます。
 本年三月の内閣府による自衛隊・防衛問題に関する世論調査によれば、自衛隊に対する印象について、良い印象を持っているとの回答が九二・二%に及んだと承知しておりますが、防衛省・自衛隊に対する理解と信頼感が社会的に醸成されていることを背景として、国内の研究機関において、大規模災害等の各種事態に関し、防衛省との研究協力により国の安全、国民の安心に寄与することができるのではないかとの機運が生じているのではないかと考えております。
 また、近年、防衛省が行っている研究の方向と昨今の民生における最先端技術の方向が一致することが多くあります。
 このような背景の下、これまで防衛省と国内の研究機関との研究協力の可能性等に関する意見交換を行ってきたところ、平成二十五年度、御指摘の二〇一三年度以降、その成果が表れてきたものと考えております。
 いずれにせよ、防衛省としては、防衛装備品の研究開発において優れた先進技術を取り込み効率的に研究を行うことが重要であると考えており、引き続き、国内研究機関との研究協力について積極的に推進してまいりたいと考えております。

○井上哲士君 二〇一二年の末に第二次安倍政権が発足をして、新防衛大綱が検討される中で出された二〇一三年七月の中間報告にも大学等の基礎研究との連携強化が盛り込まれておりまして、まさに防衛大綱を先取りする形でこういう増加が増えているのではないかと私は思います。
 さらに、昨年、最先端科学技術の速やかな軍事技術への転用を推進してきたアメリカの国防省の高等研究計画局、いわゆるDARPAですね、これを参考にして、内閣府に革新的研究開発推進プログラム、ImPACTが設立をされました。それに先立って、二〇一三年十一月に、技術研究本部が防衛技術シンポジウムを開いております。自衛隊の準機関紙の朝雲が大きく報道しておりますが、軍民共用の技術の推進に技本がその中核を担うことが期待されていると大きく報道したわけであります。
 こういうことに加えて、防衛省は、今年度予算で、競争的資金制度である安全保障技術研究推進制度を開始をいたしました。この制度の概要とその目的はどういうものでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 防衛省では、今年度より、大学、独立行政法人の研究機関、また企業等における独創的な研究を発掘し、将来有望である芽出し研究を育成することを目的とする安全保障技術研究推進制度、これを創設をすることとしまして、この制度に必要な経費として総額約三億円を平成二十七年度予算に計上いたしております。
 この安全保障技術研究推進制度は、防衛省が研究機関等に対して広く研究課題の提案を募り、提案された研究課題の中から、防衛省が採択した課題を実施する研究機関等に対して研究を委託をし、また研究資金を配分するものでございます。
 防衛省といたしましては、この制度を通じて大学、独立行政法人の研究機関や企業等が有する優れた先進技術を効果的、効率的に取り込んで、将来装備品の研究開発に活用したいと考えております。
 これがこの制度の概要と目的でございます。

○井上哲士君 今年度予算三億円と言われましたけれども、概算要求は二十億円でありました。なぜ三億になったのか、そして防衛省としては今後どういう目標を持っていらっしゃるのでしょうか。

○政府参考人(外園博一君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、平成二十七年度概算要求においては約二十億円を計上しておりましたが、厳しい財政状況を踏まえつつ、今年度が本制度の初年度であることに鑑み、本制度を円滑に着実に行うための必要最低限の金額として約三億円を平成二十七年度予算に計上させていただいたところでございます。
 また、今後の予算規模につきましては、本年度の本制度の応募状況などを踏まえ検討してまいりたいと考えております。

○井上哲士君 採択審査はどのように行われるのでしょうか。その際、装備品への適用可能性などはどういうふうに評価をされることになるのでしょうか。

○政府参考人(外園博一君) お答え申し上げます。
 防衛省が実施する安全保障技術研究推進制度は、他府省が実施する競争的資金制度に基づいております。一般に競争的資金制度においては、資金配分主体が広く研究課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による科学的、技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択することとされております。
 防衛省が行う安全保障技術研究推進制度においても、このような競争的資金制度の趣旨に基づき、外部の専門家を交え、公平公正な評価によって採択する研究課題を審査する予定です。
 また、装備品等への適用可能性に関する評価については、まず、防衛省が公募において提示する研究テーマは、装備品等にも応用可能な革新的、先進的な民生技術を活用することにより防衛省における研究開発の効果的、効率的な実施を図るという趣旨に基づいて設定されていることから、応募された研究課題が研究テーマの趣旨と整合しているかどうかという観点から科学技術的に評価されることによって、装備品等への適用可能性についても評価されるものと考えております。

○井上哲士君 防衛省の装備政策課長さんが東洋経済に出て、将来、防衛省が採用しそうな技術に対して後押しをしていくと、こういうふうに述べられている、そういうことだと思います。そして、当初の三億円から更に拡充を目指していると、こういうことなわけですね。
 内閣府のホームページを見ますと、このような競争的資金制度を持っている省庁は、防衛省以外の八府省で約四千二百億円ということになっております。その中に新たに三億円のこの基金をつくるわけですが、先ほど述べましたように、防衛省の技術研究本部と国内の大学研究施設との技術交流も増やしてきた、そしてImPACTもできたという中で、なぜ更に防衛省が独自の競争的資金制度を持つことが一体必要なんでしょうか、いかがでしょうか。

○政府参考人(外園博一君) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたとおり、近年の科学技術の著しい発展を背景に、民生技術からの優れた技術を防衛技術に取り込むことが効果的、効率的な防衛装備品の研究開発に極めて重要であると認識しております。
 現在の技術研究本部と各研究機関、大学等との研究につきましては研究協力協定を結んでおりますが、これは技術情報の交換を主としておりまして、資金等の移転を伴わない、それぞれの資金で実施している形態を取ってございます。
 他方、ImPACT等につきましては、デュアルユースも念頭に置くということではございますが、やはり防衛省としての行政目的に合致をした形のテーマをつくることがより一層民生技術を取り込むために、またそこに資金を提供することが必要であるというふうに考えたため、この資金制度を発足させていただいたわけでございます。

○井上哲士君 一般的協力ではなくて防衛省の目的に沿った技術支援をしていく、そういう資金をもってやることが必要だと、こういう答弁だったと思うんですね。
 今年の三月二十六日付けのウォール・ストリート・ジャーナルの日本語版は、「日本の防衛省が長く閉ざされてきた大学研究室のドアをこじ開けようとしている。」と、こういう記事を書きました。どういうことかと。
 憲法九条の精神というのは戦後の学問研究の分野にも発揮されてきました。一九四九年に創設された日本学術会議は第一回の総会で、軍事研究に積極的に協力してきた、そして国民のための学問ではなかったことへの反省を込めた決議を上げて出発をいたしました。一九五〇年の第六回総会、そして六七年の第四十九回総会でも、戦争目的のための科学研究を行わない声明というのを上げております。
 このことは、昨年五月に次期輸送機C2の不具合の原因究明のために防衛省が東大に協力を要請した際に、東大が軍事協力を禁止した評議会決定に反するとして教授の派遣を拒否したということで改めて注目をされました。その後、十二月に東大のある研究室が科学研究ガイドラインを改訂したことを受けて、今年一月に産経新聞が「東大、軍事研究を解禁」と報道をし、東大総長が、学術における軍事研究の禁止は東京大学の研究教育の最も重要な基本原則の一つであると、その方針は変わらないという声明を出したということでも注目を受けたわけであります。そういう中で、今回のこの資金なわけですね。
 今、国立大学では一般運営費交付金が削減されているため、経常研究費がほとんどなくなって、とりわけ基礎研究の分野ではそうなっております。教員は、競争的資金を稼がなければ研究が続けられませんが、基礎研究はなかなかそれも困難と。そういう中で、新たにつくられたのがこの安全保障技術研究推進制度ですから、防衛省の資金であってももう背に腹は代えられないと応募をしてくれば、それを突破口に徐々に軍事研究に大学を取り込んでいく、予算規模も増やしていくと、そのために独自の資金が必要だったと、こういうことなんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(外園博一君) お答え申し上げます。
 この安全保障技術研究推進制度は、あくまでも防衛装備品の研究開発を効率的に行うために日本の大学等にございます革新的、先進的な技術を活用させていただくという趣旨でございまして、また、制度の趣旨に照らしまして、国内大学の自発的な御判断によって御参加いただくということでございますので、この研究制度を積極的に活用して防衛装備品の研究開発を効率的に実施していきたいというふうに考えております。

○井上哲士君 先ほど紹介したウォール・ストリート・ジャーナルは、東大が拒否をした件を書いた上で、元自衛官の自民党の国会議員が軍事研究への抵抗をやめるよう大学を説得させるため文科省に働きかけていると話したと、こういうふうに書いております。
 そして一方、先ほど紹介した防衛省の今年三月の防衛省のシンポジウムで、大臣はこのファンディング制度について、これまで安全保障分野でつながりの薄かった大学や企業が参入になる端緒となるのではないかと期待をしていると、こういうふうに述べられているわけですね。
 ですから、片やずっと、先ほど紹介しましたように、軍事研究はやらないということを保ってきた日本の大学に対して、片や文科省を通じて働きかけると、片やこの研究費不足をついて基礎研究分野の資金を用意すると、そういうことでまさにこじ開けようとしていると。大臣、こういうことじゃないんでしょうか。大臣の発言ですから、大臣、御答弁いただきたいと思います。

○国務大臣(中谷元君) 我が国を取り巻く安全保障環境は極めて変化をいたしておりまして、非常にいろんな、ミサイルとか生物化学兵器とか、また宇宙、海洋、非常に幅広くなってきております。
 政府といたしましては、やはり国民の命、そして平和な暮らしをいかに守っていくかということで、こういった安全保障に関する技術、能力を絶えず研究をし、そしてしっかりと我が国を守っていく、そういう分野におきまして対応する必要があるわけでございまして、特にこういった技術面におきましては、民間で活動が行われておりますような民生品、こういうデュアルユースなどを活用して行いたいということでございます。
 先ほど説明をいたしましたように、各民間に対しまして幅広く呼びかけをする制度等もつくりますが、情報公開などを通じて本来の目的が達成するようにこれから推進を努めてまいる所存でございます。

○井上哲士君 先ほど申し上げましたように、軍事研究を、戦争目的のための科学研究を行わないというのが、日本の学者の国会と思われてきた日本学術会議の一貫した取組であったわけでありますが、そこに、今、資金不足をついて資金を用意するという形で、まさに憲法九条の精神が生かされてきた学問研究の分野にも入っていこうとする、私は、今、憲法九条を覆すような戦争法案の質疑とまさに一体のものだと、こう思います。こういうやり方はやめるべきだということを最後申し上げまして、質問を終わります。

反対討論

○井上哲士君 私は、会派を代表して、防衛省設置法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。
 以下、反対する理由を具体的に述べます。
 第一に、本法案は、防衛省・自衛隊の装備取得関連部門を集約、統合し、防衛省の外局として防衛装備庁を設置するものです。
 安倍政権は、武器の輸出を推進する道に公然と踏み出しました。歴代の内閣が維持するとしてきた武器輸出三原則等を撤廃し、武器輸出を原則禁止から推進へと百八十度転換する防衛装備移転三原則を決定し、その上で、防衛省は軍需産業の育成強化を図る防衛生産・技術基盤戦略を策定しました。
 本法案による防衛装備庁の新設は、軍需産業の要求に応えて、官民がまさに一体となって武器の輸出、国際共同開発への参画、軍事利用を念頭に置いた大学、独立行政法人の研究へのファンディングを始めとする武器開発の強化のための新たな施策を積極的に推進していく体制をつくろうとするものであります。
 第二に、官房長、局長と幕僚長との関係規定の見直しは、防衛省内で文官を自衛官よりも上位に置いてきたいわゆる文官統制を廃止し、両者を同等に位置付けることにより、自衛官による大臣補佐をより迅速に行うことを可能とするものです。
 政府は、一九九〇年代以降、自衛隊を海外に派遣し、米軍に対する兵たん支援活動を積み重ねてきました。本法案の自衛官による補佐の迅速化は、自衛隊の運用の統幕への一元化と相まって、米軍との共同軍事作戦を直接担う自衛隊の意向をより迅速かつ直接的に反映させる仕組みをつくることで、アメリカの戦争に直ちに協力できる構図をつくるものであります。
 世界のどこでもいつでもアメリカが起こす戦争に自衛隊が支援、参加するための日米新ガイドライン、安保法制と一体の体制づくりであり、断じて容認できません。
 そもそも、防衛省の組織改編は二〇一三年の防衛省改革の方向性に基づくとされるものであり、その前提には、二〇〇八年の防衛省改革会議報告書にもあったように、防衛調達をめぐる事務次官の供応、収賄など数々の不祥事が発生し、国民の厳しい批判の中でその再発防止が課題とされてきたことがありました。
 その後も、空自による官製談合事件、軍需企業による水増し請求事件、陸自多用途ヘリ開発の企業選定に係る事件が続発したことを踏まえれば、防衛省・自衛隊と軍需産業の天下りを通じた癒着構造にメスを入れることこそが防衛調達の問題の本質であることは明らかであります。
 ところが、防衛省は、調達をめぐる抜本的改革については別検討などと除外して本法案を提出いたしました。本来なすべきことを骨抜きにした上で、ひたすら憲法九条の平和主義を踏みにじる施策のための組織改編を進めることは、国民を欺くものであり、到底認められるものではありません。
 本法案は断固廃案にすることを主張して、反対討論を終わります。

ページ最上部へ戻る