国会質問議事録

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外交防衛委員会


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約は、登録の出願人の負担軽減を図り、官庁の手続についての救済措置を義務付けております。中小企業の中には知的財産に関する専任担当者を置くことが困難な企業も多く、本条約に準拠した措置は中小企業の知的財産活動の活性化に資すると考えられるものでありまして、賛成であります。
 その上で、日米ガイドラインと安保法制に関してお聞きいたします。
 新しいガイドラインは、その目的として、「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう、」と述べて、地域を限定しない様々な軍事協力を盛り込みました。一方、日米安保条約の第六条は、日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するための米軍に基地を提供する義務を負わせておりますが、日米による共同対処は第五条で、日本国の施政の下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃に限定をしております。ですから、この新ガイドラインは安保条約の目的の枠を超えているんではないか。
 昨日、衆議院の特別委員会で我が党議員が同様の質問をいたしました。その際に外務大臣は、従来のガイドラインにおいても、安保条約とその関連取決めに直接根拠を置くもの以外にグローバルな協力を定めており、新ガイドラインも構造は同じだと述べて、正面からは答えられませんでした。
 七八年のガイドラインは日本有事と極東における事態での日米協力を定めたのみでありますが、九七年のガイドラインには、より安定した国際的な安全保障環境の構築のための日米協力が盛り込まれまして、その下でまさに安保の枠を超えた日米協力が進められてきたわけであります。
 そして、今回の新しいガイドラインには、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域での軍事協力や、日米同盟のグローバル性、これが初めて盛り込まれました。
 ですから、前回ガイドラインと同じ構造だというのは、前回で安保の枠を超えて、今回更に大きく踏み出したと、こういうことではないんですか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) まず、御指摘のように、この新ガイドラインですが、我が国に対する武力攻撃が発生した場合の協力のように、日米安保条約及びその関連取決めの具体的規定に直接根拠を置くもののほか、グローバルな平和と安全のための協力のように、それらの規定に直接の根拠を置かない協力も含んでおります。この点は、一九九七年のガイドラインも全く同じであります。
 こうした構造、同じ構造だからこそ、旧ガイドラインの下においても、グローバルな協力の例として、日米両国は、二〇一〇年のハイチ地震ですとかソマリア沖・アデン湾での海賊対策における協力、こうした実績を積み重ねてきたわけです。こうした構造は新ガイドラインにおいても全く変わっておりませんし、ガイドラインの中に、日米安保条約及びその関連取決めに基づく権利義務関係は変更されない、明記をされているところであります。
 そして、更に申し上げるとするならば、このグローバルな協力は我が国の平和及び安全の前提となる安定した国際安全保障環境の構築にも寄与することになります。この意味からすれば、かかるグローバルな協力を含め、新ガイドラインは我が国の平和及び安全の維持を目的とする日米安全保障条約と整合的なものということが言えますし、この整合性についても一九九七年のガイドラインと全く変わっていないと認識をしております。

○井上哲士君 ですから、九七年のガイドラインのときに初めて国際的な安全保障環境の構築ということが盛り込まれて、日本有事また極東の平和と関係ないことにも踏み込んだと。そのときから安保の枠を外れて、今回更に大きく踏み込んだのではないかということをお聞きしているわけですが、もう一度いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 構造については一九九七年のガイドラインから変わっていないということを申し上げたわけですが、安全保障条約との関係において大きく踏み出したのではないか、こういった御指摘につきましては、グローバルな協力の意味合いについても、日米安全保障条約と整合的なものであるという認識に立っております。
 いずれにしましても、一九九七年のガイドラインとの比較において、新ガイドラインは基本的な構造も変わっておりませんし、基本的な考え方も同じであると認識をしております。

○井上哲士君 じゃ、具体的に聞きますが、重要影響事態法についてお聞きします。
 周辺事態法が成立する際に、この法案が安保条約の目的の枠内のものであるということを明確にするためにとして、第一条の目的規定に、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び日米安保、保障条約の効果的な運用に寄与しを、これは修正で追加をいたしました。
 今回、この法律を改正するこの重要影響事態法では、我が国周辺の地域におけるという言葉がなくなった。同時に、日米安保条約の効果的運用に寄与することを中核とする、こういう文言となりました。周辺の言葉がなくなった、そして、日米安保の効果的運用に寄与するが、寄与することを中核とするに変わったわけですね。
 中核ということはその外側があるわけでありますから、この重要影響事態法は安保条約の目的を超えたと、こういう認識でよろしいですか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、現行の周辺事態法につきましては、周辺事態は地理的概念ではありませんが、その制定時においては、中東、インド洋において生起することは現実の問題として想起されない、このようにしてまいりました。また、周辺事態法では、この支援の対象は日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行う米軍に限られておりました。
 一方、この重要影響事態については、地理的概念ではないことは周辺事態と同様ではありますが、安全保障環境が大きく変化した現在において、重要影響事態が生起する地域からあらかじめ特定の地域を排除することは困難である、このように考えております。そして、この重要影響事態における後方支援活動の実施に当たっては、あくまで日米安全保障条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍への支援が中核でありますが、これに限られるものではないとしております。国際の平和と安全の確保という国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行うその他の外国軍隊等との連携を強化することが我が国の平和及び安全を確保するために不可欠である、このようにしているところであります。
 こういった点もありますので、御指摘のようにこの中核という言葉を使って説明をしている次第であります。

○井上哲士君 衆議院の答弁では、安保条約の目的達成に寄与する活動をする米軍への支援に限られるものではないと、こういうお話でありました。今も同様の答弁ですが、そうしますと、具体的に、この安保条約の目的達成のために活動している米軍以外にどういう外国軍への支援が可能になるんでしょうか。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) 安全保障環境の変化によりまして、もはやどの国も一国のみで平和を守るということはできません。このような状況におきまして、我が国としても、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対処する活動を行う外国軍等に対して必要な支援を行うことは不可欠でございます。
 また、国際社会におきましては、対テロ活動、そして湾岸戦争などの例にも見られるように、事態の拡大を抑制をし、又はその収拾を図るといった取組が広く多国間の枠組みによって行われてきておりまして、重要影響事態に際しても、米国だけに限らず、多国間の枠組みにより対処することが現実に想定をされるわけでございます。
 そのため、重要影響事態に際しまして、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍以外であっても、国連憲章の目的の達成に寄与し、かつ当該事態の拡大を抑制し、又はその収拾を図るために行われると認められる活動を行う外国軍隊等に対しては、我が国として必要な後方支援活動を行うことができるようにしているわけでございます。

○井上哲士君 その外国軍の中には、安保の目的達成に寄与していないアメリカ軍も含まれるということでよろしいですか。

○国務大臣(岸田文雄君) そのとおりでございます。

○井上哲士君 その安保の目的達成に寄与しているのではない米軍というのは、具体的にどういう米軍なんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、ある事態が重要影響事態に該当するか否かにつきましては、この当該事態の規模とか態様、推移、これらを総合的に勘案して個別具体的に判断するわけですが、その上であえて申し上げれば、一つの例として申し上げるならば、仮に、中東、インド洋等の地域で深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生した場合であって、当該地域周辺の海域において我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な被害が及ぶ可能性があり、かつ米軍等がこうした事態に対応するために活動している状況、こういった状況が生じた場合には、その他の状況も勘案した上で、この当該事態が重要影響事態に該当することはあり得ると考えられます。
 このような状況においては、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍に限らず、その他の国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行う米軍も支援の対象から排除はされないと考えております。

○井上哲士君 そうしますと、国連憲章の目的の達成に寄与する外国軍、すなわち日米安保とは直接の関係のない外国軍、それと安保の目的達成に寄与していないアメリカ軍と、これらへの軍隊の支援を、安保条約第六条の極東をはるかに越えた、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域で行うと。
 こういうことになりますと、日米安保条約の効果的な運用に寄与することを中核とすると、そういうことすら言えないような私は範囲の拡大だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 我が国が後方支援活動を実施するに際しまして、対象となる外国軍隊等の活動、これが国連憲章の目的、すなわち国連憲章第一条に定めます国際の平和及び安全の維持といった目的の達成に寄与するという、国際法上、適法な活動を行っており、かつ我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態の拡大を抑制し、又はその収拾を図るために行われると認められる活動を行っているということが必要でございます。
 また、我が国として、ある国の軍隊に対して後方支援を行う場合には、現場において行う部隊間の調整や、防衛当局間、外交ルートを含むあらゆる手段を通じて種々の情報を確認することによりまして、当該外国軍隊の実際の活動の目的、そして態様等が重要影響事態法に規定をする要件を満たすか否かにつきまして客観的かつ合理的に判断することになります。
 さらに、現実に支援を行うためには、法律の要件を満たすのみならず、現実に発生した事態において、お互いのニーズ、これが一致することが必要となるわけでございまして、支援対象が我が国の平和と安全に無関係に際限なく広がるということはないものと考えております。

○井上哲士君 結局、今のは、どういう軍隊が該当するのかということに対する答弁だろうと思うんですが、結局、時の政府の恣意的な判断になっていくわけであります。
 そして、先ほど申し上げましたように、安保とは関係のない外国軍、目的達成に寄与していない米軍も含めて支援をするということは、まさに安保条約の枠を超えて際限ない拡大になっているわけでありますし、そして支援の中身も、これまでできないとされていた弾薬の補給や戦闘準備中の戦闘機への給油もできるということでありますから、まさに際限のない軍事協力の拡大になると、そういうことを指摘をいたしまして、時間ですので質問を終わります。

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