国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2015年・189通常国会 の中の 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会

我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 在日米軍基地の重大事故が相次いでおります。昨日は相模原市の米軍補給基地での爆発事故、そして、十二日には沖縄本島東側の海上にヘリが墜落をするという事故が起きました。そして、いずれも日米地位協定の下でまともに事実が明らかにされないと、こういう事態になっております。
 今日は、法案との関係で沖縄のヘリ墜落事故に関してお聞きいたします。
 沖縄県議会は、抗議決議と意見書を全会一致で可決いたしました。一歩間違えれば人命、財産に関わる重大な事故につながりかねず、日常的に米軍基地と隣り合わせの生活を余儀なくされている県民に大きな不安を与えるものであり、極めて遺憾であるとしております。
 まず、大臣、この事故の概要について明らかにしてください。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) お尋ねの事案は、八月の十二日、米陸軍特殊部隊が特殊作戦能力を自衛隊に実演をしていた際に、米陸軍所属のMH60ヘリが沖縄県うるま市の浮原島東約八マイル付近の海上で米海軍艦船への着陸に失敗をしたものでございます。また、ヘリに搭乗していた、負傷しましたが、陸上自衛隊特殊作戦群所属の自衛官二名につきましては、一名が骨折、もう一人が擦過傷で診断をされまして、自衛隊の中央病院において療養中でございます。
 防衛省としましては、米側に対して航空機の運用に際しまして安全管理の徹底を引き続き求めるとともに、私も沖縄に訪問した際にウィスラー四軍司令官、またアメリカの国防省の次官にも直接米側から原因究明を詳しく説明を求め、今後の安全対策を要望したわけでございます。

○井上哲士君 地元紙はこれを大きく報道しております。(資料提示)知事は耐えられないと、こういう言葉さえ言われているわけですね。
 これ、事故機は米軍の特殊作戦部隊仕様のMH60ブラックホークでありますが、当初、米軍は一般仕様のH60という発表をしておりまして、日本政府もそれと同じ発表しかしていなかったということであります。この同型のヘリは沖縄本島を頻繁に飛行しておりまして、もし市街地に落ちたらどんなことになったのか、惨事になるところだったと厳しい怒りの声が上がっておりますし、一方で、海上に墜落をしたわけでありますが、漁業関係者からは大きな不安と怒りの声が広がっております。
 日米安保条約の第六条に基づいて、米軍は、日本が提供する施設・区域において訓練ができると、こうされております。沖縄周辺には二十九の訓練水域があるわけでありますが、これはごく本島の周りだけ図にしてまいりました。このブルーのところが訓練水域なわけですね。
 米軍が使用する場合には、危険ですから事前に予告があります。そして、使用期間中は漁業や立入りが制限をされるわけですね。
 そのため、日本政府として漁業補償をしておりますけれども、沖縄県の場合はどれだけになっているでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 沖縄周辺の漁業制限水域に係る昨年度の補償金額といたしましては、約七億四千二百万円を支払った実績がございます。

○井上哲士君 ですから、訓練水域を使う米軍が負担するのではなくて、水域を提供している日本政府が負担をしてアメリカに提供していると、こういうことになっているわけですね。
 今回の訓練は、右側のこの丸い地域ですね。非常に良好な漁場であるホワイト・ビーチ地区での訓練水域で行われたとされておりますけれども、実際に墜落が起きた現場はこの水域の外だったということで漁業者から怒りの声が上がっておりますが、防衛省としてはこの墜落場所を把握をされておるんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 今月十二日に米陸軍ヘリによる着艦失敗事案が発生した水域が含まれるホワイト・ビーチ水域に係る分をお示しすることは困難でございますが、このホワイト・ビーチ地区、水域において、この事案が発生した第四区域におきましては、昨年度は漁船の操業制限は行われていなかったということでございます。

○井上哲士君 いや、全然、ちゃんと答えてくださいよ。落ちた場所がどこだったのか、正確な場所を把握しているんですかということを聞いているんです。通告してあります。

○国務大臣(中谷元君) ホワイト・ビーチ水域内でございます。

○井上哲士君 現地の漁民の皆さんは域外で起きたと怒りの声を上げているんですね。昨日聞いたら、アメリカに照会中だと言っていましたよ。把握していないんですよ、まだ。ですから、事故から二週間たって、域外で落ちたと、これだけ怒りの声が上がっているのに、事故現場の正確な位置も把握をしていないというのが今の実態なんですね。
 県の漁協の組合長会は、十八日の通常総会で、事故の再発防止などを求める抗議決議を全会一致で採択をいたしました。これは、県内全域の三十六の漁協が加盟をしている組合長会が米軍機の事故で抗議を決議するのは初めてのことなんですね。それだけ重大なことであります。そして、この県漁協組合長会の古波蔵会長は、辺野古漁協の会長でもあるわけですね。絶対にあってはならない事故と、危機感を表明をされております。
 この決議では、米軍ヘリが訓練区域外で墜落したことについて、県下漁民を代表する水産団体として激しい怒りを持って抗議するとして、墜落現場付近はパヤオ漁とかイカ釣り漁、モズク養殖などが行われている好漁場で、一歩間違えれば操業中の漁業者を直撃する大惨事につながりかねないものとして漁業者に大きな不安と恐怖を与えていると、こう述べております。そして、度重なる墜落や部品落下に、米軍が危機管理を軽視していることの表れであり、憤りを禁じ得ないと、厳しく批判をしております。
 官房長官、来ていただきました。この事故は、ちょうど翁長沖縄県知事との辺野古新基地問題での集中協議のために沖縄入りされていたときに起きました。沖縄の置かれている現状を目の当たりにされたと思いますが、官房長官、どう受け止めて、どう対応をされたのでしょうか。

○国務大臣(内閣官房長官 菅義偉君) 当日、私自身、普天間飛行場の危険除去と辺野古移設に関する政府の考え方、そして米軍基地負担軽減、これについて翁長知事と会談をするために沖縄に出向いておりました。その際事故が発生をし、その報告を受けてまず私自身が感じたことは、沖縄県民の方々に多大な不安を与えるものであって、また、あってはならないことであるということであります。
 そこで、私から、その報告を受けまして、秘書官にしっかりと関係省庁に対して対応するように指示をしました。そして、政府としては、米側に対して遺憾の意を表明をするとともに、迅速に情報共有と原因究明、そして再発防止、ここを強く申入れを行いました。
 さらに、その後行われた翁長知事との会談の際、私が知事に対して、このような事故はあってはならないことであり、陳謝申し上げるとともに、米側に強く申し入れたと、そのような説明をさせていただきました。

○井上哲士君 今官房長官は、あってはならないことだと、こう感じたとおっしゃいました。じゃ、米側はどう感じているのかと。アメリカ陸軍のトップのオディエルノ参謀総長が十二日に記者会見しております。この事故についてどう言ったか。一件の出来事に過剰に反応するつもりはない、残念だが事故は時々起きると。官房長官はあってはならないことと言いましたけれども、米陸軍トップは時々起きる、こううそぶいたんですよ。
 私は、県民の怒りと不安を歯牙にも掛けないような発言、許すことができませんし、これに県民の怒りの声が広がっております。県議会の決議に加えて、現地のうるま市を始め沖縄市、宜野湾市、北谷町、嘉手納町、西原町、読谷村、北中城村、中城村など関係自治体の要請も、事故原因の究明と再発防止策のないままでの飛行停止を求めております。
 ところが、十八日には事故機と同じ型のヘリ二機が嘉手納空港を離着するのが確認をされているわけですね。何の反省もないですよ。県民の声にも、そして、官房長官はあってはならないと感じた事故を時々起こるとうそぶいて、そしてこういう再飛行もする。こういう発言、対応、官房長官、どう受け止めていらっしゃいますか。抗議するべきじゃないですか。

○国務大臣(菅義偉君) いずれにしろ、政府としては、あってはならないことであるということは当然のことだというふうに考えています。さらに、米側に対し、引き続き情報を提供するとともに、地元住民の不安を解消し、理解をし、我が国における米軍機の安全な運用を確保する、そのためにあらゆる努力を払うように政府側から強く求めているところであります。

○井上哲士君 抗議すらしていないということですよ。およそ沖縄県民の不安と怒りを理解をしているとは思えません。
 それだけではないんですね。米空軍の嘉手納基地の第三五三特殊作戦群が二十日に、このホワイト・ビーチ地区のすぐ下にありますこの津堅島の訓練場、ここでパラシュートの降下訓練を行いました。定期便や漁船が航行する海域に、突然米兵とそして物資がパラシュートで降りてきたわけですね。大変な事態ですよ。
 米軍がこの水域を利用する場合には、漁民の安全の確保等のために七日前までに通告をする必要が、通報することが必要ですが、これ事前の通報はあったんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) お尋ねの津堅島の訓練場水域におきましては、今月二十日、米軍がパラシュート降下訓練を実施したと承知しております。
 沖縄県に所在する米軍の施設・区域の提供に係る昭和四十七年の日米合同委員会合意、いわゆる一五メモにおきまして、当該訓練場水域においては、七日前までに現地米軍から沖縄防衛局に通告をするとされておりますが、今月二十日の訓練につきましては当該の通告がございませんでした。このため、沖縄防衛局から現地米軍に確認をいたしましたら、米側からは、内部の事務的な不備により通告がなされないまま訓練が行われたものでありまして、今回の件は遺憾であるとともに、再発防止のための是正措置をとると回答がございました。
 米側からの回答を受けまして、沖縄防衛局は、第十一管区海上保安本部、地元自治体、漁業関係者へ情報提供をするとともに、米側に対して今後同様のことがないように強く申入れをしたところでございます。

○井上哲士君 ひどい話ですよ、これは。九六年のSACO合意で、米軍は、パラシュート降下訓練が伊江島の補助飛行場に集約をして以来、県などはこの津堅島ではパラシュート訓練を行わないように求めてきたわけですね。ですから、この六年間、津堅島訓練所でのパラシュート訓練は行われていなかったんです。六年ぶりに行われた。それを、この間、大事故が起きたホワイト・ビーチ地区のすぐ近くのこの水域で、県が行わないように求めてきた訓練を六年ぶりに行って、しかも通報すらしなかったと。遺憾の意なんというものじゃないですよ。厳しく抗議すべきじゃないですか。なぜ抗議しないんですか。

○国務大臣(中谷元君) これは、SACOの最終報告によって、パラシュート降下訓練の移転につきましては、主に読谷補助飛行場で行われた陸上部分における訓練を伊江島に移転することとしてきたところでございますが、先ほど五・一五メモによりまして、この海域におきまして使用主目的が訓練場とされておりまして、この使用条件の中にはパラシュート降下訓練は禁止をされていないということで実施をしたことでございます。
 したがいまして、SACOの合意に違反をしているというような御指摘は当たらないわけでございますが、今回の訓練につきましては米側の内部の事務的な不備により日本側に対する通告が行われないまま実施されたものでありまして、米国に対して遺憾の意を表するとともに再発防止を申し入れたところでございます。

○井上哲士君 県が伊江島以外ではやるなと言っているのに、問題ないなんという、そういう防衛省の態度だからこういうことが起きるんですよ。そして、大事故が起きても、事故は時々起きる、通告をしなくても事務的なミスだったと。ひどい話ですよ。
 総理、総理は再三、辺野古新基地の問題で沖縄県民の理解を得られるように努力すると、沖縄県民の苦しみを理解するように、こう言ってきました。しかし、こんなような事故が起きても、アメリカの発表を待つだけでまともな情報が出てきません。そして、沖縄の県民の不安と怒りを無視して、事故は時々起きるとか事務的なミスだったとか、こううそぶいて飛行を再開し、ルールを破ってパラシュート訓練を実施する。こういう米側の対応に遺憾は言いますけれども抗議すらしないと。これで総理、沖縄県民の理解が得られるとお思いなんでしょうか。沖縄県民から見れば、政府は結局県民の側ではなくてアメリカの側に立っていると、こうしか見えないんじゃないんですか。いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今回の事故の発生は地元の方々に多大な不安を与える極めて遺憾なものであり、政府としては、米側に対し遺憾の意を表明するとともに、原因究明、再発防止等を申し入れたところであります。これに対し米側からは、地元住民の不安を理解し、我が国における米軍機の安全な運用を確保するため、あらゆる努力を払うとの反応があったところであります。
 その一環として、事故を起こしたヘリの同型機について全機安全点検を行うとともに、隊員に対する教育といった安全対策を徹底したものと承知をしています。
 いずれにせよ、政府としては、地元の方々の懸念を十分に踏まえ、米側に対し航空機の運用に際しての安全管理の徹底を引き続き強く求めていきたいと思います。

○井上哲士君 何があらゆる努力ですか。再発防止策もないままに飛行を再開をして、そしてルール破りのパラシュート訓練もやっているんです。
 総理は、集団的自衛権の行使など、アメリカの要請があっても日本が主体的に判断をすると繰り返しこの法案の審議で言ってこられました。しかし、領海内での事故なのにアメリカ側の発表待ちで、県民の声を無視するこういう暴言、暴挙、何の抗議もできなくてアメリカに物を言えない態度じゃないですか。なぜこれで、様々なアメリカの要請があったときに日本が主体的に判断すると言われて、誰が信じれるかという問題ですよ。
 そして、今回訓練に参加していたアメリカの部隊では、アメリカのケンタッキー州のフォートキャンベルの陸軍第一六〇特殊作戦航空連隊、これ、通称ナイトストーカーズと呼ばれております。闇夜に忍び寄る者というものでありますが、グレナダの侵攻や湾岸戦争、アフガン戦争、そしてイラク戦争などで特殊作戦に従事をしてきました。
 落ちた事故機の写真を見ますと、側面に六十三とナンバーが記されておりますが、これ、七月の下旬に厚木基地に飛来をして、東富士演習場で離着陸や空挺訓練を実施した三機のヘリがありますけれども、それも同じ番号がありました。これ、同一のヘリなんではないですか。

○国務大臣(中谷元君) 本件のヘリにつきましては、私も、沖縄の四軍調整官、またドーラン在日米軍司令官、陸軍司令官、そしてアメリカの国防省の次官には、本件に対して遺憾を表明をし、原因の究明また安全対策を求めたところでございます。
 お尋ねのヘリにつきまして、静岡県の小山町において先月二十一日に空包三発が発見をされた事案と、沖縄県のうるま市の浮原島の東約八マイル付近の海上で今月十二日に着艦に失敗した事案については、いずれも米陸軍のヘリでございます。このうち、沖縄で着艦に失敗した米陸軍のヘリの機種についてはMH60ヘリとの回答がありましたが、小山町で空包三発が発見された事案に係る米陸軍のヘリの機種につきましては米側から情報が得られておりません。
 このため、改めてお尋ねの二つの事案に係る米陸軍のヘリが同一なものかにつきまして米側に照会を行っているところでございまして、防衛省といたしましては引き続き米側に対して確認を求めるとともに、米側から回答が得られた場合には、関係自治体に対して適切に情報提供を行ってまいりたいと思っております。

○井上哲士君 これは静岡の事故は一か月前ですよ。およそ事態を解明する気がないということですね。
 これがナイトストーカーズのフェイスブックにある隊員募集用の写真なんです。右上のヘリコプターの写真に注目いただきたいんですが、武装した兵士が機体側面のドアを全部開けて足を出して、投げ出した状態で飛行をする、非常に危険なことであります。同じ訓練が実は東富士でも目撃をされているわけですね。そして、今もありましたように、中学校に空包を落下したという事故も起こしておりまして、関係自治体が原因究明と再発防止を米側に求めるように求めております。
 ですから、本土でもこういう危険な訓練をやった上で沖縄に行って事故を起こしたというのが今回の事態なんですね。重大なのは、この事故で七人のけが人の中に自衛隊員二人が含まれていたと。日米の特殊部隊の共同訓練の実態が明るみに出たわけでありますが、この特殊作戦群はいつ発足し、具体的にはどういう任務を持った部隊なんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 陸上自衛隊の特殊作戦群は、ゲリラまた特殊部隊による攻撃に対処するために、平成十五年末に習志野駐屯地に新編をされた、高い機動力また高度な近接戦闘能力、これを有する専門部隊でありまして、各部隊から選抜された約三百名の精鋭な隊員から構成をされております。

○井上哲士君 特殊部隊同士の訓練だったわけでありますね。自衛隊は、これ研修として参加をしていたと言いますが、ヘリにまで乗り込んでいるわけでありますから、訓練参加にほかならないわけです。
 事故のあった訓練には、これ、いつから参加して、何が目的でどういう訓練をしていたんですか。

○国務大臣(中谷元君) 私も三十年前に、現役の自衛官のときにレンジャーの訓練で沖縄に参りまして米軍と訓練研修をしたことがございますが、この特殊作戦群所属の陸上自衛官は、今後の教育訓練の資とするために米陸軍特殊部隊の訓練を研修をいたしておりました。
 事故当時は、海上演習が米陸軍により実施をされておりまして、この際、ヘリ部隊との情報の共有、また連携要領、そしてヘリから艦艇への移乗要領の確認のため、特殊作戦群隊員二名がヘリの機内におきまして、その他八名が艦上において訓練を研修をしておりました。
 なお、研修に参加した隊員は武器を保持せず、また、訓練を行っている米陸軍特殊部隊の隊員と共同した行動は行っておらず、あくまで研修を行っていたということでございます。このような研修は、平成二十一年度より例年実施をいたしております。

○井上哲士君 オディエルノ、先ほどの米陸軍参謀総長の会見でも、幾つかの国との特殊作戦部隊の訓練中だったと明確に述べているんですよ。研修だとか見学という言い逃れは私はできないと思います。
 そもそも九七年の前のガイドラインには、特殊作戦という言葉は出てこないんですね。今回の新ガイドラインでは日米同盟のグローバルな性格が強調されて、初めて「自衛隊及び米軍の特殊作戦部隊は、作戦実施中、適切に協力する。」という言葉が盛り込まれました。そして、この新ガイドラインが発表された直後に、横田基地に、アメリカ空軍の特殊作戦コマンド部隊、CV22のオスプレイの配備が発表されたわけですね。
 これ、この場でも議論になりました。防衛大臣は、この配備によって、米軍と自衛隊の特殊部隊の間でCV22を利用した共同訓練が可能となるなど、日米の相互運用性の向上にも寄与すると強調されました。なぜ新ガイドラインにこの特殊作戦部隊の協力が盛り込まれて、なぜ特殊作戦部隊の共同訓練が強化されるんですか。

○国務大臣(中谷元君) 九七年の旧ガイドラインの策定時におきましては、自衛隊は、特殊部隊、これを保有をいたしておりませんでした。その後、平成十五年度に主としてゲリラ、特殊部隊による攻撃に対処するための専門部隊である陸上自衛隊特殊作戦群を新編をいたしました。この特殊作戦を有効に実施をし得るような能力も整備をしてきたところでございまして、このような日本側の能力整備を踏まえつつ、今般のガイドラインの見直しの議論の際に、我が国に対する武力攻撃への対処におきまして特殊作戦部隊間の協力も必要な協力の一つであるという認識で日米が一致をいたしたために、今般の新ガイドラインに盛り込むことといたしたものでございます。

○井上哲士君 つまり、自衛隊は、今回のガイドラインを待たずして、まさに海外派兵型のいろんな装備を進めてまいりました。その私は一つだと思うんですね。
 共同の様々な協力が必要だと言いますが、今回事故を起こしたこの部隊は、グレナダ侵攻や湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争などで特殊作戦に従事してきました。そして、横田に配備されるCV22オスプレイの特殊部隊は、イラク戦争のときにはイラクに潜入して、フセイン政権の要人の身柄の拘束、油田の制圧、確保などの作戦を展開しました。二〇一一年のウサマ・ビンラディン容疑者の殺害作戦にも参加をしておりますが、この作戦は、身柄拘束ではなくて、最初から殺害を目的とし、潜伏先だったパキスタン政府に通告せずに決行いたしました。ですから、パキスタンの政府は、国際法と国家の尊厳が侵害されたと強く抗議する事態となったわけですね。
 こういう行動を繰り返しているアメリカの特殊部隊となぜ共同訓練、共同作戦が必要なんですか。

○国務大臣(中谷元君) 近年の国際情勢や我が国に発生するような事案等を鑑みまして、不審船の武装解除、またゲリラや特殊部隊による攻撃に対処するためには、高い能力、これを有する専門部隊を整備する必要がございます。
 防衛省・自衛隊は、平成十二年度末に海上自衛隊に特殊警備隊を、また平成十五年末に陸上自衛隊に特殊作戦群をそれぞれ創設をいたしております。
 米軍の特殊部隊につきましては、通常部隊ではアクセスが困難な地域に迅速に、また隠密裏に侵出をし、戦略上、戦術上の重要な情報を収集をし、確認するほか、テロの脅威への対処、人質の救出などを行うなど、極めて高い能力を有しております。このため、特殊作戦群所属の陸上自衛官は、平成二十一年度より米陸軍特殊部隊の訓練を研修をしているということでございまして、これは、我が国を取り巻く安全保障環境、これ一層厳しさを増していることから、日米の特殊作戦部隊間での協力を強化をしていくということで、重要な課題であると考えております。
 また、新ガイドラインにつきましても、自衛隊及び米軍の特殊部隊は作戦実施中に適切に協力する旨を盛り込んでおりまして、日米同盟の抑止力を維持向上させるために、安全に十分に配慮しつつ、日米の特殊作戦部隊間の協力を強化をしていく考えでございます。

○井上哲士君 通常、アクセス困難な地域に隠密裏に侵出して作戦するんだと、それがやってきたのが、先ほど私が挙げたそういう行動なんですね。そういうところと、なぜ日本を守ると言いながら共同作戦が必要なのか。
 総理、お聞きいたしますけれども、今回の事故を起こした訓練は、武装勢力などに占拠された船を奪還するための低空飛行訓練であったと言われておりますが、新ガイドラインには、自衛隊と米軍が国際的な活動で実行可能な限り最大限協力すると、こう書いておりますし、新ガイドラインには、さらに海洋安全保障のための協力なども盛り込まれているわけですね。
 結局、今回のこの特殊作戦同士の訓練というのは、日米の軍事一体化を進めるこのガイドラインを具体化をし、そして自衛隊の海外の活動を大幅に拡充する、今回の法改正を先取りをした、そういうものなんじゃないんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど中谷大臣から答弁をいたしましたように、平成二十一年度より米陸軍特殊部隊の訓練を研修をしている、特殊作戦群は研修をしているわけでございますから、この法案とは関わりがないということは申し上げておきたいと思いますが、いずれにせよ、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることから、日米の特殊部隊、特殊作戦部隊の間での協力を強化していくことは重要な課題と考えているわけでございまして、このため、新ガイドラインにおいても、自衛隊及び米軍の特殊部隊は、作戦実施中、適切に協力する旨を盛り込んでいるわけでございます。
 日米同盟の抑止力を維持向上させるために、安全に十分に配慮をしつつ、日米の特殊作戦部隊間の協力を強化していく考えでございます。

○井上哲士君 日米間の軍事一体化が先行し、それをガイドラインで更に固定化し、そしてそれを今回の法案で更に法律化する、こういう流れの中で起きているわけですね。
 この特殊作戦部隊の秘密主義と違法性というのは、アメリカでも大きな問題になっています。
 六月六日付けのニューヨークタイムズ電子版、海軍の特殊作戦部隊について非常に詳細なレポートを掲載しておりますが、元隊員や司令官への取材に基づいて、行き過ぎた殺害や巻き添えになる民間人の犠牲について懸念を広げている、地球規模でテロ容疑者を追跡し、殺害、拉致する戦闘、戦争マシンになっていると、こう結論付けております。そして、NATO軍の元最高軍司令官が登場して、特殊部隊に時々の国際法のルールを曲げることをさせようと望むなら、確かにそのことを公にしようとは思わないと述べた上で、海軍の特殊作戦部隊は隠密の作戦を継続すべきだと、こう発言しているわけですね。
 ですから、もう国際法を、ルールを無視をした隠密作戦をする部隊と、これが、アメリカの中でもNATO軍の司令官も言っているようなこういうところの共同作戦をする。私は、今回の戦争法案がこういう米軍との軍事一体化を進める新ガイドラインの実行のための法案であること、統幕文書でも明らかになりましたけれども、そのことが一層この特殊部隊の訓練で明らかになったと思います。
 こういう訓練は直ちに中止するとともに、法案は廃案にするべきだと申し上げまして、質問を終わります。

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