○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
私は、会派を代表して、山崎正昭議長不信任決議案に賛成の討論を行います。
まず、昨日、与党によって行われた強行採決に対し、満身の怒りを込めて糾弾をするものであります。
この採決なるものに正当性があるでしょうか。あの委員会室においても、何が採決されたのかも、誰が賛成し、反対したのかも不明であります。直後に野党六党会派の国会対策委員長で議長に面会し、議事録に基づいて議院運営委員会で精査すべきこと、採決の事実が確認をされなければ本会議を開くべきではないと申入れをいたしました。
では、議事録に何と書いてあるのか。委員長着席、発言する者多く、議場騒然、聴取不能、委員長退席、これだけであります。委員長の発言の一言も残っておりません。与党は五回の採決を行ったと言いますけれども、どこにそんなものが存在するんですか。この採決なるものに一かけらの正当性もありません。にもかかわらず、議院運営委員長が、採決のためとして職権で本会議をセットしました。議長がその職責を果たすためには、このような本会議を開かずに委員会に差し戻すべきであります。ところが、与党の乱暴極まる強行採決を追認し、開会した責任は極めて重大と言わざるを得ません。
昨日の強行採決は、民主主義のルールと国民の声を踏みにじる点で極めて悪質でありました。元々、一昨日、横浜で地方公聴会を開いた後に夜六時から委員会を開催し、二時間の締めくくり総括質疑で終結するという日程自体が、公聴会を単なるセレモニーにおとしめるものでありました。
本来、中央、地方の公聴会は、広く国民の意見を聞き、その内容をその後の審議に反映をさせるために行うものであります。とりわけ、今回の公聴会はこれまでにも増して重い意味を持っていました。それは、この戦争法案が、憲法の大原則、国の在り方の根本に関わる法案だからであります。
国会周辺には連日多くの市民が国民の声を聞けと駆け付け、全国で草の根の運動が大きく広がっています。今もこの国会は、暴挙を許さないという、駆け付けた市民の声で包囲をされております。そのような大きな関心のある法案だからこそ、この十年間では最高の九十五人もの公募がありました。
野党は、公募した皆さんから、SEALDsの奥田愛基さんを中央公聴会で、前日本学術会議会長の広渡さんと弁護士の水上さんを地方公聴会で公述人として推薦をして、この国民の声を国会に生かす努力をしました。与党はどうでしょうか。推薦しようにも、賛成の公募人がただの一人もいなかったのであります。
地方公聴会で、水上公述人は、公聴会が採決のための単なるセレモニーにすぎないならば私はあえて申し上げる意見を持ち合わせていないと述べ、公聴会を開いたかいがあったというだけの十分かつ慎重な審議をお願いしたいと述べられました。公述人の意見を受け、しっかりした審議をその後も行うことは、与野党を問わず、我々国会議員の責務であります。だからこそ、野党理事は理事会において、地方公聴会直後の締めくくり総括質疑ではなくて、更に十分な質疑が必要だと繰り返し求めました。
それに対して、公述人の意見については締めくくり総括で質問したらいいじゃないか、こう言ったのが自民党や公明党の理事でありました。ところが、どうでしょうか。昨日、自ら提案した質疑を全く行わずに打ち切って、我々の質問の権利を奪ったのが与党ではありませんか。その結果、中央、地方公聴会を行った後に一切の国会質疑は行われませんでした。公述人の皆さんの意見陳述は何ら法案審議に生かされることはありませんでした。与党はこの責任を一体どう取るというんでしょうか。
それだけではありません。地方公聴会の派遣報告を自民党の理事が質疑の冒頭で読み上げるとして、その案文も理事会に提示されていました。ところが、強行採決のために、この派遣報告は読み上げられませんでした。皆さん、地方公聴会をやりながら派遣報告を委員会で行わなかった例は過去にただの一度もないのであります。
二度の公聴会を受けた質疑も派遣報告も行わなかった。参議院の長い歴史の中で、これほどまでに公聴会をないがしろにした例はありません。これほどまでに公述人を愚弄した例はありません。これほどまでに国民の声を無視した例はありません。参議院の歴史にこのような汚点を残す暴挙を行った与党の議員には、今後、国民の声を聞くなどという言葉を使う資格はありません。
中央、地方公聴会には、山崎議長は重大な責任を負っております。公聴会は、議院運営委員会で議決され、公述人には山崎議長の名による出席依頼の文書が届けられております。参議院議長の名で出席を依頼された公述人の皆さんは、まさか自分たちがこのようなひどい扱いがされるなどと思いも寄らなかったでしょう。
今回の暴挙は、参議院議長と参議院そのものへの国民の信頼を著しく傷つけました。公聴会と国民の声をないがしろにして強行採決された法案について委員会に差し戻すのが、自らの名で公述人に対する出席依頼を出した議長がやるべきことであります。にもかかわらず、与党の横暴を追認して本会議を開いた山崎議長の責任は重大であります。
戦争法案は、憲法を真っ向から否定する違憲立法そのものです。そのことは、ほとんどの憲法学者、弁護士会、歴代内閣法制局長官も明言をされています。政府は、憲法の番人は最高裁だとしてこれらの声に背を向けてきました。しかし、ついに元最高裁長官の山口氏、元最高裁判事の濱田、那須両氏らが憲法違反と表明をされ、濱田氏は中央公聴会の公述人として出席をされて改めてそのことを述べられました。
今月十五日、守屋克彦、鈴木経夫、北澤貞男氏ほか七十人の裁判官経験者が山崎議長宛てに意見書を出されました。その中で、人類がいまだ戦争という流血の惨事を乗り越えられないこの時代にあって、日本国憲法が示した戦争放棄の理想は世界を導く灯台の光にも例えられるものであり、これを我が国に定着させることが国民的な願いでありました、私たちも、裁判官として憲法九十九条に課せられた憲法を尊重し擁護する義務を自覚し、憲法が予定している司法の使命を果たすべく、その職権の行使に務めてきましたと述べられています。
そして、元最高裁長官や判事の皆さんの安保法案は憲法違反だとの発言について、司法界からこのような発言は、これまでこの国の歴史に希有のことであります、しかし、法律をつかさどる職に至った私たちとしては、これらの人々の意見が単なる個人的なものではなく、法律をつかさどってきた者として、自ら遵守し、かつ人にも示そうとしてきた立憲主義、法の支配の価値に忠実であろうとするために、やむにやまれぬ行動であり、発言であったと支持し、共感するものですとされています。
その上で、議長に、この法案の強行採決を避け、慎重な上にも慎重な審議を要望するためにこの意見書を作成する次第ですと結んでおられます。皆さん、三権の一つである政府が与党と一体となって憲法違反の法律を強行しようとしているときに、三権の一つである司法界からの理性の声であります。
山崎議長は、一体この意見書をどう読まれたのでしょうか。山崎議長には、三権の長として、そして憲法尊重擁護義務を持つ国会議員に選ばれた議長として、これほどまでに専門家からも司法分野からも国民からも憲法違反という多数の声が上がる立法の政府・与党による強行を許さないために、それにふさわしいリーダーシップを果たすことこそが求められているのであります。
にもかかわらず、政府・与党の数を頼んだ暴挙を追認した山崎議長の責任は極めて重大であります。不信任に当たるものであります。このことを強調し、私の賛成討論とします。(拍手)
本会議
2015年9月18日(金)