○予算委員長(岸宏一君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。
平成二十八年度総予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人の方々から御意見を伺います。
この際、公述人の方々に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
本日は、平成二十八年度総予算三案につきましてお二人から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますから、どうぞよろしくお願いをいたします。
次に、会議の進め方について申し上げます。
まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構です。
それでは、社会保障・国民生活について、公述人水戸市長高橋靖君及び日本労働組合総連合会事務局長逢見直人君から順次御意見を伺います。
まず、高橋公述人にお願いいたします。高橋公述人。
○公述人(水戸市長 高橋靖君) 座ったままで失礼させていただきます。
御紹介いただきました水戸市長の高橋でございます。本日三月十日、水戸の日にこのように地方の状況をお聞きいただく、そういうチャンスを与えていただきましたこと、心から御礼と感謝を申し上げたいと思います。
早速でありますが、社会保障・国民生活ということで、子ども・子育て支援、介護あるいは医療について、時間の許す限りお話をさせていただきたいと思います。
水戸市の人口は約二十七万一千人でありまして、今、合計特殊出生率が、平成二十六年において一・五一となっております。ゼロ歳から五歳までの就学前児童は約一万四千人となっています。現在、第六次総合計画の中で、未来への投資プロジェクトと題しまして、子育て支援、教育といったところに重点化しようというところで、今施策を展開しているところであります。
本市の子育てにつきましては、国のまちづくり交付金等を活用させていただきながら、町中やあるいは商店街に多世代交流・子育て支援センターを二か所ほどつくらさせていただいて、そこで、相談業務であるとか、あるいは一時預かりであるとか、さらにはお子さんあるいは保護者の居場所づくり等に努めているところでもあります。そういった中で、一方、今話題となっております待機児童の数がやっぱり慢性的に多くなっている状況でもございます。
平成二十一年度から国のいわゆる子育て支援対策臨時特例交付金、いわゆる安心こども基金を活用させていただいて、さらには平成二十五年度からは待機児童解消加速化プランを積極的に活用させていただきながら、待機児童解消に向けた民間保育所の整備を行ってまいりました。平成二十一年からこの間、現在開所できたものが十二か所あります、認可保育所でありますけれども。定員利用を千人増加をさせていただいた結果、直近の十月一日における待機児童は、前年度と比較して百二十一名少ない百七十五名となっております。このままのペースで行けば、何とか平成二十九年度には待機児童が解消できるかなという計画を立てているところでもあります。引き続き、国の保育所等整備交付金を活用させていただきながら、需要を見て、保育所の整備に努めていきたいと考えております。
ただ、一方で、この内容を見てみますと、どこの市町村もそうだと思うんですけれども、その待機児童の中のいわゆる三歳未満児が水戸市も約八七%を占めている状況であります。やはりこういったことで、ゼロ、一、二というこの三歳未満児に対してしっかり光を当てていかなければならないということで、平成二十一年度からは家庭的保育事業も県内で初めて始めたところなんですけれども、引き続き二十八年度から子ども・子育て支援新制度における小規模保育事業、今回の予算にも入っているみたいでありますが、その小規模保育事業を安心こども基金を活用させていただいて積極的に整備、展開をしていきたいというふうに考えております。さらには、今後、事業所内保育施設等にも着手をしていければなと考えているところでもあります。
やはりそういった多様な市民の保育ニーズに対して、多様化した形で保育サービスを提供していかなければなりません。ただ一方で、小規模保育施設については、三歳以上になるとどこか転園をしなければならないということがありますから、連携施設をしっかり造っていかなければならないというふうに思っています。その選択の一つが認定こども園になってくるのかなというふうにも思っております。
水戸市においては、私立幼稚園十六園のうち十二園が幼稚園型又は幼保連携型認定こども園に移行が進んでいるところであります。しかしながら、どうしても保護者が保育園に選択肢を一本に絞ってしまうものですから、なかなかそこの周知が至らなくて、認定こども園の利用がなされていない状況にあります。やはり連携施設として特に認定こども園の利活用を促進するため、PRであるとか、あるいはその機能をしっかり説明する責任を地方としても果たしていきたいと考えておりますので、また国においても全国的に周知をしていただければ有り難いというふうに思っております。
さらに、全国的な問題となっております保育士不足でありますが、県庁所在地であります本市であっても、保育士数の確保ができず、勤務体制等に支障が生じて認可定員まで受入れが困難な保育所も存在している状況にあります。保育士の人材不足は深刻でありまして、保育士確保のための人材派遣会社などを利用して運営をしている保育施設もございます。
水戸市では、ハローワーク水戸とタイアップしまして、職場体験の受入れであるとか、あるいは就労応援フェアへの参加で潜在的な保育士の確保を試みているところであります。さらに、保育士の確保とその処遇改善として、平成二十七年度におきましては、保育所の運営費として支払われる公定価格に処遇改善部分が反映されているということでございますが、今後とも保育士が働き続けられるよう、一層の処遇改善と保育士加配に関する環境整備について国にお願いをしたいというふうに考えております。
また、保護者の負担なんですが、新制度に移行いたしまして、特に幼稚園の保育料が統一されたこと、あるいは階層区分を決定するための基準となる対象税目の変更によりまして利用者負担が増になった方も中にはいらっしゃいます。そういった中で、少子化対策として今国会で審議されている多子世帯の軽減制度が成立されることは大変意義がありまして、未来への有効な投資になるというふうに私は思っております。しかしながら、現段階における多子世帯の軽減策が制限年収三百六十万円となる予定であると伺っているんですけれども、本市においては、そうなりますと約三割の方しか該当しないということでありまして、その辺の枠の拡大を検討していただければ有り難いというふうに思っております。
さらに、子育て支援の一環として子供の医療費助成についてなんですけれども、本市におきましても、県制度に準じた一定の所得制限を設けて、中学校三年生までを対象に約二万六千人に現物支給によって、この給付方法で実施をいたしております。一方、国においては、地方が行う現物給付による医療費助成の取組に対し国民健康保険国庫負担金等の軽減調整措置を講じております。水戸市においては全体で八千万円になるんですけれども、そのうち約一千万円が子供の医療費助成によるものでございます。
非常にこの国の減額調整措置というのが地方の少子化対策を推進する上での足かせになっているところでもございます。こういった中で、国において子どもの医療費制度の在り方等に関する検討会を立ち上げて、今秋をめどに報告書がまとめられるべく検討がなされるということを伺っております。非常に歓迎するものでありまして、是非より良い方向をお示しいただければ有り難いというふうに思っております。
是非この軽減調整措置を撤廃するようにお願いを申し上げたいのと同時に、マル福利用者への適正受診、あるいはジェネリック医薬品の利用促進、そういったことも併せて地方と国とで知恵を出し合っていくべきではないかなというふうに思っております。
次に、介護について述べさせていただきます。
介護保険制度、法施行から十五年がたちますが、急激に高齢化が進んでおりまして、本市においては、要介護認定者が平成十二年のときには三千五百人でありましたが、現在は一万二千三百人に増加しております。それに伴って、保険給付額も、平成十二年、約六十億円だったものが、現在は二百億円を超える規模となりました。
国において、介護保険制度を持続可能な制度とするために、介護予防や地域包括ケアセンターなど新たな施策を打ち出しております。本市においても、お手元のパンフレットのように、高齢者支援センターを八か所整備をさせていただいて、中学校区ごとに割り振りをさせていただきました。しかしながら、やはり地域資源であるとか人材の確保、ネットワークの構築など新たな課題も見えてきたところでございます。この地域包括ケアシステムの中で、いわゆる介護の担い手をどうすべきか、地域のNPOやボランティアをどのように育てていくか、そういった課題が生まれてきております。
そういった中、やはり在宅での介護ということは、共稼ぎ世帯も多くなっているし、認知症も多くなっていることから、やはり限界がございます。
そういった中で、やはり安価に入所することができる特別養護老人ホームの整備が非常に重要となって、ニーズも高まっているところであります。介護を機に仕事を辞める介護離職のストップと入所待機者の解消を目標に、水戸市は毎年一つずつ整備をさせていただきました。この第六期の事業計画においても二百五十床の整備を見込んでいるところであります。入所対象者の要介護度が引き上げられたこともあって、待機者は四百名程度で、少しは減少しております。
これからも、国、県の補助を利用をしながら、引き続き整備をしていきたいというふうに考えておりますが、ただ、平成二十六年頃から、施設開設時における介護職員の確保に苦労しているという話を聞くようになりました。また、せっかく介護の仕事に就いても長続きせず、職を離れていくという職員もあると耳にしております。その影響もありまして、開設後満床になるまでの期間が長期化しているという現象が現れています。ちなみに、本年一月三十一日の調査では、水戸市の場合、定員千三百四十一床に対して入所は千二百五十九床となっておりまして、四百人の待機者がいながら、八十二、約六%が空きベッドになっているということで、職員の手配が必要であるというふうに思っております。
介護の現場は誇りとやりがいのある職場であると思いますが、高い資質と経験を積んだ介護職員を確保して介護職員の離職ゼロを実現するために、介護従事者の処遇改善が必要であるというふうに思っております 是非、職務に邁進できる体制を構築するための更なる財政支援をお願いをしたいというふうに思います。
また、一方、施設の整備が進むと、サービスは良くなるんですけれども、介護保険料も上昇します。水戸市でいえば、特別養護老人ホームを一つ整備をすると、大体八十円から百円上がります。これまでも、前期に比べて施設整備に伴う増だけでも二百五十円ありました。その結果、第六期の基準月額五千九百円となりまして、前期と比べて一九・七%、茨城県内においては二番目の高い保険料となってしまいました。
平成二十七年四月から、消費税を財源とする公費負担の投入により、低所得者の保険料の軽減に取り組んでおりますが、今後、更に保険料が上昇していくことが見込まれます。このような保険料の上昇は特に低所得者を中心に生活を圧迫して、保険料負担の限界が近づいているというふうに認識をしております。介護保険制度の存続性の確保が困難になりつつある状況があるというふうに思っております。
今、折半ルールになっております。公費の負担が五〇%、そして国民負担が五〇%ということになっております。そういった公費負担の割合というものを見直すなど、特に、国、県、市の負担割合というものもやはりみんなで、地方と国が協力し合って知恵を出していくべきではないかというふうに思っております。
時間がないんですが、次に、医師確保策、医療についてのお願いでございます。お話でございます。
茨城県においては人口十万人当たりの医師数が全国四十七都道府県中四十六位ということでありまして、特に診療科別で見ますと、小児科医が全国最下位、産婦人科医が四十一位、外科医も四十四位ということで低い数字になっているところでもございます。非常に、本県においては医師の絶対数の不足に加えて、地域偏在、特に南北格差があります。それから、診療科目の偏在、つまり小児科であるとか産婦人科が厳しいという状況であります。特に、救急医療において地方の医師不足地域の拠点病院では完全な休日を取ることもままならないという状況にありまして、医師が奮闘しているという現状があります。
厳しい勤務環境の中で、修学金の義務年限を終えた医師が、医師が集中して待遇の良い大都市に職場を移行しているという現状もございます。また、地方の拠点病院では指導的立場の常勤医師が不足をしております。更なる若手の常勤医師の確保を困難にし、負のスパイラルに陥っている現状があります。
そういった中で、国の方で公的病院に対する特別交付金を出していただいて、今、公的病院、周産期であるとかあるいは救急医療のための助成をさせていただいております。是非この特交について引き続き維持をしていただきたいというのと同時に、地域医療介護総合確保基金、これも茨城県の方で設置して、水戸市の医師会の新しい看護学校の施設整備なんかにも使っておりますので、是非この基金についても引き続き財源の確保をしていただきたいというふうに思っております。
特に小児科、産婦人科が厳しくて、小児科が水戸市で平均年齢六十一・三歳です。そういった状況も鑑みて、医師の地方への特段の御配慮をいただけますようによろしくお願いを申し上げます。
早口で申し訳ございませんでした。
○委員長(岸宏一君) ありがとうございました。
次に、逢見公述人にお願いいたします。逢見公述人。
○公述人(日本労働組合総連合会事務局長 逢見直人君) ただいま御指名をいただきました連合の逢見でございます。
本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝申し上げます。
私からは、働く者の立場から見た我が国の経済社会における課題を踏まえ、とりわけ社会保障並びに教育分野において取るべき政策について申し述べます。
お手元に資料がございますので、参照願いたいと思います。
まず、働く者を取り巻く環境と経済の好循環に向けた課題でございます。働く者を取り巻く状況を見ますと、円安が継続し原油価格が低位に安定していることなどから大手製造業を中心に企業業績は好調さを堅持していますが、ほとんどの国民は景気が良くなったという実感がありません。現在の日本は企業規模や雇用形態あるいは男女間など国民の間に様々な格差が存在しており、加えて、貧困に苦しむ国民も増え続けています。近年では主に家計を支える非正規労働者が増えており、その多くは年収二百万円にも満たないワーキングプアです。さらに、生活保護受給者は約二百十七万人にも達し、極めて深刻な状況だと言えます。
連合は、希望する誰もが学ぶことや、公正で公平な労働条件の下で働くことができ、人として当たり前の暮らしを営むことができる国にしなければならないと考えています。そのためにも、社会的、経済的に弱い立場に置かれた人たちに光を当てた政治や政策が必要です。
お手元の一枚目のスライドを御覧ください。
私たち労働者の賃金は、一九九七年をピークに低下の一途をたどっており、厚生労働省の国民生活基礎調査でも、生活が苦しいと感じる人の割合が全ての所得層で高まっています。企業の保有する現金預金の残高が過去最高を更新する一方、労働者の実質賃金は二〇一三年以降の三年間でもマイナス傾向にあり、こうした分配のゆがみがGDPの六割を占める個人消費を冷え込ませる要因となっています。
これらを踏まえると、政策面においては、非正規労働者の正規労働者への転換はもとより、正規労働者との均等待遇の実現を図ることが重要です。そのための第一歩として、最低賃金の引上げ、社会保険の適用拡大は欠かせません。
さらに、スライドの二枚目にあるように、世界的に見て低水準である税や社会保障による所得再分配機能の強化が必要です。所得税における累進性の強化や、人的控除の社会保障給付への振替、給付付き税額控除制度の導入などによって所得格差を是正し、暮らしの底上げで消費の拡大につなげていくことが経済の好循環の実現に欠かせない課題だと考えます。
その一方で、今国会で審議中の軽減税率は、高所得者ほど受ける恩恵が大きいことや、対象品目の合理的な選定が難しいこと、約一兆円の税収減を賄う財源の確保が先送りされていることなど、多くの問題を抱えています。この制度は、将来にわたって我が国の経済社会に大きなゆがみをもたらす懸念があることを改めて強調しておきたいと思います。
次に、社会保障の基盤整備と人材の確保に向けてであります。
一点目は、財源の問題です。
二〇一二年の子ども・子育て関連三法案の国会審議において、質と量の充実を図るために一兆円超程度の財源確保に最大限努力するという附帯決議が行われています。しかし、二〇一六年度予算案では約〇・六兆円にとどまり、約束はいまだ果たされていません。また、低年金者のための年金生活者支援給付金制度の実施は消費税一〇%への引上げと一緒に先送りされており、低所得者対策として講じる予定であった総合合算制度も軽減税率の導入によって先送りされようとしています。
全ての国民が安心して暮らし続けられるようにするためには、社会保障の充実と機能強化に向けて恒久的な財源を確保し、一体改革を着実に実行すべきであります。
二点目は、社会保障の担い手の確保の問題です。
一億総活躍社会を実現するための柱である介護と保育現場においては、高齢者の尊厳の確保と自立の支援、子供の健やかな成長を支えるという仕事に見合った労働条件が確保されていないという問題があります。
介護サービスでは、求人に対する応募が少なく、入所定員を減らさざるを得ない事態が起きています。また、厚生労働省は、二〇二五年には介護労働者が現在の一・四倍必要となる上、一億総活躍緊急対策として介護施設を前倒しし上乗せ整備するために、二〇二〇年初頭には更に五万人が必要になると言われています。
三枚目のスライドのとおり、福祉施設介護員、いわゆる介護施設職員やホームヘルパーの年収は三百十万円前後で、全産業平均四百八十九万円に比べて百八十万円程度低くなっており、勤続年数を考慮する必要はありますが、このことが介護労働者の離職率が高い一つの要因であると考えます。
一方、保育所待機児童は減少傾向にありましたが、昨年度に再び増加に転じ、いまだ二万三千人余りの子供が認可保育所に入れずにいます。保育職場は都市部を中心に慢性的な人材不足であり、保育士の有効求人倍率は昨年一月には二・一八倍に達しています。
四枚目のスライドの下にあるように、保育士の約半数が五年未満で保育の職場を辞めていますが、保育士としての就業を希望しない理由を聞いた調査では、賃金が希望に合わないが最多に挙げられています。
二〇一七年度末までに五十万人の保育の受皿を確保するためには約九万人の保育士が必要になると試算されており、保育現場の処遇改善は喫緊の課題です。しかし、政府の緊急対策は、復職支援と新たな資格取得を目指す人への支援が中心で、現在働いている人への対策は不十分と言わざるを得ません。ましてや、外国人労働者の活用で人手不足を補うという考え方には賛成できません。施設の拡充を含めた介護や保育サービス充実のためにも、人材の処遇改善が最優先であることを改めて強調しておきたいと思います。
三点目は、介護離職ゼロに関してです。
私たち連合は、さきに述べた介護従事者と同様に、家庭で家族を介護しているようなケアラーについても介護離職のない社会を目指すべきと考えます。家族を介護している人の離職を防ぐためには、男女が協力して家事、育児、介護へ参画することや、余暇を享受できる労働環境を実現しなければなりません。そのためには、男性の長時間労働の是正や介護休業日数の延長、柔軟な働き方に関わる制度の拡充、介護休業給付の引上げなど、全ての労働者に対して仕事と介護の両立支援を充実させるべきです。加えて、家族を介護している人を支援する体制が必要であり、これらを実現するための法整備や企業の取組を促進する政策が求められます。
次に、子供の貧困解消と教育機会の格差の是正に向けてであります。
五枚目のスライドにあるように、我が国は六人に一人の子供が貧困の状況にあります。最近の研究では、都道府県別のデータが示され、沖縄県で三人に一人以上、大阪府や鹿児島県などでは五人に一人以上が貧困の状況にあるとされています。実際に、学校では、体操着や上履きを買い換えることができず、小さくなって擦り切れたままのものを使い続ける子供や、給食のない夏休みの間に痩せ細ってしまう子供が散見され、これがGDP世界第三位の経済大国で起こっている現実かと疑うばかりです。
加えて、親の経済的背景が子供の初等教育における学力と正の相関があることや、最終学歴と生涯年収にも正の相関があることなど、多くの先行研究で教育の差が将来の子供の所得差をもたらすことを示唆しています。これは、親の所得による教育格差が貧困の連鎖を生むことを示していることにほかなりません。
最後のスライドには、昨年実施した連合の調査結果を記載しています。
世帯年収が二百万円から四百万円の大学生、大学院生のうち六割以上が奨学金を利用しており、卒業後の平均返済額は三百万円を超えることも明らかになっています。こうした状況が、結婚や子供を産み育てることを希望する若者の足かせとなり、希望出生率一・八を目指すとする政府方針と逆行する結果をもたらすことは言うまでもありません。
政府は、先延ばししている就学前教育の無償化を一刻も早く実現するとともに、高額化する大学授業料の是正や、高等教育における給付型奨学金の導入を今すぐ決断すべきです。貧困の連鎖をなくし、国民全体の格差是正、底上げ、底支えを図るためにも、同じスライドにもあるように、先進国でも極めて低い水準と言われる公的教育支出を拡大し、それらの政策を実行に移していくことを切に訴えます。
最後に、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人の課題についても一言触れたいと思います。
年金積立金は、労使が拠出した保険料を原資とするものであり、保険料拠出者の意見が確実に反映されるガバナンス体制を構築する必要があります。それにもかかわらず、労使や国民に十分な説明を欠いたまま、二〇一四年十月にリスク運用の拡大に大きくかじが切られるとともに、政府による民間企業支配につながる株式のインハウス運用の解禁までもが議論されたことは極めて問題であると考えています。
今日本は本格的な人口減少社会を迎え、本日申し上げた格差や貧困、分配の在り方など、経済社会のあらゆる側面での構造的な課題に直面しています。私ども連合としても、こうした課題を一歩ずつ克服していくため、二〇一六春季生活闘争において、全ての働く者の底上げ、底支え、格差是正を目指し、定期昇給相当分を含め四%程度の賃上げを目標に掲げながら、サプライチェーン全体で生み出した付加価値を適正に分配する公正取引の実現に向けて取組を進めていく所存です。
そのことを最後に申し上げ、私からの意見陳述とさせていただきます。
どうもありがとうございました。
○委員長(岸宏一君) ありがとうございました。
以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。
それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は、二人の公述人、ありがとうございます。
まずは逢見公述人にお聞きいたします。
先ほど、与党の方の質疑の中でも、内部留保が拡大をしながら賃金に回っていないということは政府も与党も問題と考えていると、こういう御発言がありました。
この改善のためには、職場における運動や交渉ということと同時に、やはり政治の問題があると思うんですね。やはり先ほどありましたように、非正規の拡大であるとかということも、これが全体を下げていく大きな問題になっていると思うんですが、こういう賃上げの必要性を政府が言いながら、一方で、むしろこういう非正規の拡大であるとかリストラの促進になるようなこともかなり見受けられると思うんですが、今の政府がやっている様々なそういう労働政策の問題でこの賃金の確保に逆行していると思われる点はどこにあるのか、それをどう改善すべきかという、この点をまずお願いしたいと思います。
○公述人(逢見直人君) お答えいたします。
二十年にわたってデフレ経済が続いてきた中で、労使ともその中でどのようにして生き残っていくべきかという懸命な努力をしてきたわけです。
ある時期は雇用を優先するということで、ある程度雇用のためには賃金も諦めざるを得ないというところもありました。また、リストラに対しても、それを失業という形で外に出すのではなくて、できるだけ抱えていくことによってその不安をなくすという対応がありました。
しかし、それが長く続いたことによって経済そのものが萎縮してしまっているというのがあって、企業の内部留保も高まっている中でデフレ脱却に向けて賃金を引き上げていく必要がある、我々もこのように考えておりまして、今連合としてもベアを含む賃上げの要求を掲げております。
しかし、一方で、それが貯蓄に回ってしまうと意味がないわけで、消費の拡大につながっていかなきゃいけない。しかし、その消費の拡大につながるためには先行きに対する安心感というか、そういうものがないといけないんですが、なかなかそれが払拭できないでいる。それはやっぱり政府の経済政策の中にまだ将来に対する安心が展望できないというところがあるんだというふうに思います。そういうところを改善してく必要があると思います。
○井上哲士君 労働法制でいろんな、この間、政府の法律提案もあるわけですが、その点で、言わば全体の底上げに逆行していると思われる点はどういう点でしょうか。
○公述人(逢見直人君) 労働政策については、規制改革という中で、特に政府が岩盤規制というものの中に労働も位置付けて、この岩盤に穴を空けなきゃいけないんだということだったわけですが、しかし、この雇用というのは、安心して働ける環境をつくることがやはり働く人たちにとって重要なことであって、その岩盤を壊すということが働く人たちにとって不安を増幅させることになれば全く逆行する政策になるわけです。
そういった意味で、規制緩和を主張するが余り、雇用の安定あるいは安心して働ける環境というものを壊すようなことになってしまってはいけない。そういう意味で、昨年、労働者派遣法の改正審議が行われ、それは成立しました。今、なお、労働基準法改正案が今国会に継続審議として残っております。これについても、長時間労働を助長しかねない内容のものというふうに考えております。
○井上哲士君 先ほど最低賃金の引上げのことに触れられました。大変重要だと思うんですけれども、政府は、年成長三%、それに合わせて全国平均一千円を目指すと、こういうふうに言われているわけですが、むしろその最賃を引き上げることによって成長をつくっていくという考え、私は大事だと思っているんですが、そういう点でどうかということと、今の政府の目標というのは、政労使の目標よりも遅い時期になってしまうと思うんですけれども、今の取組についてどのようにお考えでしょうか。
○公述人(逢見直人君) お答えいたします。
最低賃金の引上げが必要だと、そして千円という目標に向かっていくという政府の姿勢は、我々自身がかねてから主張してきたことなんですが、ただ、政府の方針というのは、GDP六百兆円の達成に向けて賃金を引き上げていく、そのために最低賃金の引上げが必要だという、目標がそのGDP六百兆達成というところにあるようでありまして、我々は底上げということが必要だという考え方でやっております。その引上げのプロセスもまだ十分に明らかにされておりませんし、そういった意味で、どのような形でいかにして実行していくかという、そういうこともしっかり示す必要があるというふうに思っております。
○井上哲士君 ありがとうございます。
次に、高橋参考人にお聞きいたします。
様々な努力を重ねていらっしゃることをお聞きいたしました。介護についてお聞きするんですけど、この間、要支援につきましては地方自治体の施策というふうに転換をしていく、それから今政府内では要介護一、二の部分についても、この介護保険の中でいうと、かなり削減をしていくという、給付、動きが起きております。
このことは、かえって言わば要介護を悪化をさせてしまって、結果としては保険財政にいずれはいろんな問題が起きてくるのではないかと、こう思っているんですけど、現場でやっていらっしゃる感覚として、こういう軽度の方を下げていくということのやり方についてはどうお考えでしょうか。
○公述人(高橋靖君) 特に現場から際立ったそういった低下したという評価を、報告を受けているわけではないんですけれども、ただ、やはりこれから市町村がやる事業に移行するということについて、ちょっとやはり格差が生まれてくるのではないかという懸念はあります。
先ほど言った地域包括をつくるにしても、もう市町村のところが、地域地域によってそれぞれ人材がいたりいなかったり、あるいは施設等の資源があったりなかったりということでありますから、この地域包括ケアの仕組みを市町村でやるということに対して、ある程度福祉の部分については平準化が図れるような応援をいただければ有り難いというふうに思っております。
○井上哲士君 以上です。ありがとうございました。