○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は在外公館に関する法案の審議でありますが、在外公館の重要な役割は邦人の安全確保であります。シリアで昨年から行方不明となっているジャーナリストの安田純平さんと見られる男性の映像が十七日の早朝にネット上に公開をされました。このことについてお聞きいたします。
この映像について、官房長官は十七日の記者会見で、安田さん本人と思われると発言をされました。一方、当日、外務大臣はこの委員会での答弁で、映像を分析し情報収集するという旨の答弁でありました。分析はどこまで進んでいるのか、そして、外務大臣も安田さん本人の映像と、こういう認識でよろしいでしょうか。
○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) まず、私自身も映像の人物、これは安田氏本人であると思われると考えております。
ただ、前回もお答えさせていただきましたように、映像の分析、まだ引き続き行っております。しっかりと分析し、確認した上で、政府としての判断をしなければならないと考えます。
○井上哲士君 人命第一の対応が求められるわけでありますが、官房長官の会見では、これまで行方不明の情報を得た時点で総理から指示を受けてきたと、そして内閣危機管理監の下で対策を取ってきたと、そしてこの映像で、改めて指示を受けて官邸対策室を設けているというような趣旨のことが言われております。
これはこういう経過でよろしいかということと、それから、政府としての基本的な姿勢、どうあるのか、それから、これ在外公館を含めた対策が必要と考えますが、シリアは今閉鎖をされているという下で現地での在外公館を含む対策としてはどう取られているのか、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 今日までの経緯、そして対応につきましては、今委員から御紹介がありました官房長官の発言のとおりであると認識をしております。
改めて総理から今回二つの指示が出ております。政府一丸となって情報の収集、事実関係の確認に全力を尽くすこと、引き続き関係各国とも緊密に協力し、邦人の安全確保を最優先に対応すること、こうした指示を受けておりますので、是非引き続き関係国等とも緊密に連携しながら、様々な情報網を駆使して全力で取り組んでいかなければならないと思っています。
そして、その際に在外公館もしっかりと責任を果たしていかなければならないわけでありますが、具体的にどの在外公館、あるいは具体的にどういった体制ということを申し上げますと今後の対応にも支障を及ぼすことがありますので、在外公館も含めて政府一体となって取り組んでいるという答弁にとどめさせていただきたいと存じます。
○井上哲士君 人命第一で引き続き取組を求めたいと思います。
次に、安倍総理の改憲発言をめぐってお聞きいたします。
昨年強行された安保法制、戦争法について、政府は、日本人の命と平和を守るため、国の存立を全うするための切れ目のない法整備を行ったとしてきました。一方、総理はこの間の国会答弁で、憲法九条二項を改定して国防軍を書き込むという自民党の改憲草案の実現に意欲を示して、国民の命を守り抜いていくために必要な国際法上持っている権利を行使できるとの考え方の下に自民党案を示していると、こう述べております。
この二つの発言から考えますと、まだ切れ目があると、こういう政府の認識なのか。何をやるためにこの九条改憲が必要だということなんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、平和安全法制につきましては、国民の命や暮らしを守っていくのは政治にとって最も重要な責務であり、そのために、あらゆる事態に対応できる切れ目のない対応を考えていかなければならないということで議論を重ね、そして、一方で、我が国は平和憲法があります。平和憲法との関係でどこまでが対応可能なのか、こうした議論を行い、この二つの大きな議論をしっかり調整した上で法案を作成し、国会に審議をお願いし、御承認をいただいた、こうしたことであると認識をしております。
そして、自民党の憲法改正草案との関係について御指摘がありました。
この憲法草案との関係につきましては、将来のあるべき憲法の姿を自民党として示したものだと承知をしておりますが、この草案につきまして、政府の立場として、外務大臣として何か申し上げるということは、これは控えなければならないと考えます。
いずれにしましても、平和安全法制につきましては、引き続き国民の皆様にしっかりとした御理解をいただくべく、説明努力は続けていかなければならないと考えています。
○井上哲士君 切れ目のない法整備といって作ったはずの法律に切れ目があるのかということをお聞きしたんですが、明確な回答はありませんでした。
公明党の山口代表も二月二十五日の毎日新聞のインタビューで、自分で作った法を自己否定するような九条二項を改定したら、屋上屋を架すようなもの、一体何のために安保法制を作ったのでしょうかと述べられております。このことを指摘しておきたいと思います。
衆議院の予算委員会での質疑で、この九条改憲によってフルスペックの集団的自衛権行使が可能になるという旨の答弁がありました。一方、これまで政府は、自衛隊は軍隊でなく自衛のための必要最小限の実力組織だと、よって海外での武力行使は禁じられている、他国の武力行使と一体化するようなことも憲法上許されないとしてきたわけですね。これがどうなるかという問題であります。
まずお聞きしますけれども、二〇〇四年に外務省内に設置された安全保障法制研究会、この議事録が昨年情報公開請求で明らかになりました。この会議の性格と内容はどういうものでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の外務省安全保障研究会ですが、平成十六年二月から十一月にかけて八回にわたって開催されました外務省が委託契約した有識者による研究会であると承知をしております。
○井上哲士君 この研究会の第二回の会合が二〇〇四年三月に開かれて、武力行使との一体化論がテーマとなっております。この会合の議事録を見ますと、集団的自衛権で整理できれば一体化論をめぐる議論は必要ないが、小泉政権ですら集団的自衛権に否定的な立場と、こう分析をしております。その上で、今後、後方支援の一般法を策定する場合に、国際法の観点から武力行使との一体化論をできるだけなきものにしていけるような検討を進めていく必要があると。なきものというのは死んだものという意味ですね、極論すれば、米国が侵略行為をしない限り日本は一体化の議論をしなくてもよいというところまで結論を持っていけばよいのではないかと、こうしておりますが、以来、外務省としてこの報告書の立場で政府内の検討に臨み、各方面に働きかけたと、こういうことでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、先ほども申しましたように、外務省安全法制研究会、これは十年以上前に行われた有識者による意見交換の場であります。よって、当時そこで示された見解は政府の考え方とは一切関係がございません。
そして、武力行使との一体化の考え方については、二〇一四年七月、閣議決定において政府として考え方を整理いたしました。そしてこれを国会において政府から説明させていただいているということでございます。
○井上哲士君 安保法制の参考人質疑のときに、大森元内閣法制局長官が、周辺事態法制定の際に、発進準備中の他国の戦闘機に対する給油について、法制局は典型的な武力行使との一体事例だとしたのに対して、外務省が強く抵抗したと、その結果、ニーズがないということで収めたという経過をリアルに述べられました。私は、外務省の基本的立場というのは、この報告書の議事録の中身と符合するというふうに思うんですね。
今回の安保法制の一つに、この研究会で議論されたような後方支援の一般法として、国際平和協力支援法案が制定をされました。一方、この法律では、戦闘現場以外は軍事支援は可能だとして大幅に拡充をしつつ、いわゆる一体化論としては維持をするということになりました。
そうしますと、外務省は、この議事録でいったような武力行使一体化論をなきものにするという目標は達成できたと考えていらっしゃるのか、それともまだ未達成とお考えなんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、外務省のこの安全保障研究会、これは先ほども申し上げましたが、有識者による意見交換の場であります。政府の考え方とは一切関係ないと考えております。
そして、武力行使との一体化論における考え方の整理、二〇一四年七月の閣議決定において整理した中身でありますが、武力行使との一体化論、それ自体は引き続き前提としております。その上で、現に戦闘行為を行っている現場ではない場所で実施する補給、輸送などの支援活動については他国の武力行使と一体化するものではない、このように説明をしているところであります。
いずれにしましても、この外務省安全保障法制研究会の議論とは関係がないものであると考えます。
○井上哲士君 西日本新聞がこの問題で報道していますけど、これ何も有識者だけじゃないんですね、外務省幹部も参加しているんです。そして、今後、国際平和協力の在り方について、政府内で検討を進めるために検証し、論点整理したと、こう言っているわけでありまして、今のような御答弁は私は違うのではないかと思いますが。
これに関連して、防衛大臣にお聞きしますが、この武力行使との一体化問題は、軍事情報の提供にも関わってきます。今年度予算で海上自衛隊に共同交戦能力、CECと呼ばれる先端システムが搭載されました。これはどういう能力でしょうか。
○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) CECとは、コオペレーティブ・エンゲージメント・キャパビリティーと申しますが、これはイージスシステム搭載護衛艦に搭載することとしている情報共有システムでありまして、CECというのは、これまでリンク11またリンク16と比べて共有するデータの更新頻度が高くなり、より精度の高い探知・追尾情報をリアルタイムで情報共有することによりまして、航空機、ミサイルといった経空脅威に対して部隊間で共同対処するためのシステムでありまして、個々の装備品の性能を向上させなくても実質的な能力を増大させるということが可能になるものでございます。
○井上哲士君 昨年の安保特別委員会、衆議院で、今、精度が高いと一般的に言われましたが、大臣はこう答弁されておりまして、射撃指揮に使用可能な精度の高い探知・追尾情報をリアルタイムで共有することができると。これ、間違いないですね。
○国務大臣(中谷元君) そのとおりでございます。
○井上哲士君 そうしますと、射撃指揮に使用可能な精度の高い情報、つまり攻撃に利用できるほど精度の高い情報ということになりますと、これを用いた自衛隊による武器使用の問題だけではなくて、自衛隊からアメリカ側に伝達された情報によってアメリカ側が攻撃をすると、こういうことも出てくるわけですね。
これは、この間、政府歴代答弁がありますが、例えば野呂田防衛庁長官の答弁によりますと、アメリカ軍へのこうした情報の提供について、憲法上武力の行使と一体化するものとして問題があり得ると、こういう答弁がされてきました。
このCECによる米軍への情報伝達は、まさに武力行使の一体化という問題が出てくるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(中谷元君) 情報共有に関する憲法の整理でございますが、野呂田元防衛庁長官は、ある方向に南緯何度何分、角度何度で撃てというような行為、これは憲法上問題が生ずる可能性があると答弁されておりますけれども、CECというのはあくまでも探知・追尾情報を共有するシステムでありまして、CECを介する米軍への情報提供は南緯何度何分、角度何度で撃てというような行為とは全く異なるものでございます。つまり、CECというのは、射撃指揮に使用可能な精度の高い探知、情報、追尾情報をリアルタイムで共有するシステムということで、CECに基づいて自動的に攻撃が行われるということではなくて、CECの情報に基づいて攻撃方法の決定、攻撃実施の対応、これは米国独自に行うことになります。
したがいまして、自衛隊がその所掌事務を遂行するために主体的に収集した情報を米軍に対して提供したといっても、それが一般的な情報交換の一環としての情報提供である限り、米軍による武力行使との関係で問題を生じるおそれはなく、憲法上の問題は生じないものであると考えております。
○井上哲士君 これは、実は過去にも問題になっているんですね。
二〇〇二年のこれはこちらの外交防衛委員会ですね。公明党議員の質問でありますが、イージス艦の派遣に関わって、ほかの艦船とのリアルタイムな戦略、戦術情報の共有能力を保持している護衛艦が、同様な能力を備えた米軍艦船が展開している海域に送られますと、理論的には日本の個別的自衛権の枠外での共同軍事行動に組み込まれるんではないか、こういう議論があるがどうかと、こういう質問をしております。
当時、石破防衛庁長官でありますけれども、CECというのはまだ確立をしていないということを答弁した上で、リンク11やリンク16とは、情報の精度に質的な差がもたらされる、CECになりますとそこに質的な差という概念が生ずるだろうと思いますと、こういうことを言っているわけですね。
つまり、攻撃に使えるほどの精度の高いCECによる情報の交換というのは、これまでのリンク11とか16とは違う質的な差が生じて、今一般的な情報交換の一環と言われましたけれども、その範囲を超えると、これがこれまでの防衛省が行ってきた議論ではないですか。
○国務大臣(中谷元君) CECといいますと、射撃指揮に使用可能な精度の高い探知・追尾情報をリアルタイムで共有をするシステムでありまして、このCECに基づいて自動的に攻撃が行われるというわけではなくて、このCECの情報に基づいて攻撃方法の決定、攻撃実施の対応、これを決定をするということでございます。
一般的な情報交換の一環として行われる情報提供である限り、米軍による武力行使との関係で問題を生じるところではないと考えております。
○井上哲士君 先ほども申し上げましたけど、リンク11とか16とは全く精度が違うと。射撃の指揮に使えるというものを、幾ら一般的なということで提供しても、実際にそれが使われるということが分かっているような事態、そういう局面も含めて提供が可能なわけですね。これはやはり一体化という問題が出てくる。これが私は、野呂田長官も始めとしたこの間の政府の答弁だと思いますよ。違いますか。
○国務大臣(中谷元君) これまでもリンク11、リンク16によって米軍との一般的な情報の共有というものはなされておりました。基本的には同じ原理でございまして、これはCECというのは情報をリアルタイムで共有するシステムでございまして、それで独自にその情報に基づいて方法の決定とか射撃実施を行うということで、これまでと同様に一般的な情報交換の一環として行われる情報提供であると認識しております。
○井上哲士君 これまでと質的な違いが生じるということを当時、石破大臣も言っているわけでありますから、結局、やはり一体化論そのものをなきものにすると、こういう、制約なく海外で武力行使ができるような、こういうことが今の自民党改憲草案に示された狙いがあると、そのことを指摘をいたしまして、時間ですので質問を終わります。