国会質問議事録

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外交防衛委員会(G7広島宣言と核廃絶)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 議題となっていますフィリピンとの社会保障協定の締結は賛成であります。
 その上で、広島市で今月十日から十一日に開かれたG7外相会談についてお聞きいたします。
 会合は、被爆地広島で開かれたことから、核兵器の廃絶に向けて、唯一の戦争被爆国である議長国の日本政府がどのような取組を行って、どのような成果を上げるか、内外から注目をされました。
 まず、この核兵器廃絶に関して、会合に臨んだ日本政府の取組及びその成果について外務大臣から伺いたいと思います。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 今回のG7外相会合ですが、まず、G7の外相会合ですから、今現在の国際社会の喫緊の課題についてしっかり議論を行った、これは当然のことであります。そして、八年ぶりにアジアで開催されるG7外相会談ですので、アジアの問題にも議論が多くの時間を割かれました。
 そして、あわせて、御指摘のように初めて被爆地広島で開催されるG7外相会談ですので、核軍縮・不拡散、この部分につきましても突っ込んだ意見交換が行われた次第であります。
 そして、この議論は、昨年来核兵器のない世界に向けての国際的な機運がしぼんでいると指摘をされています。NPT運用検討会議においても、五年ぶりに開催されるこの会議においても、核兵器国と非核兵器国が鋭く対立することによって成果文書を採択することができなかった。さらには、今年に入ってからも北朝鮮の核実験が行われるなど国際的な不拡散体制に対する挑戦と言えるような動きもある。こういった中で行われたG7外相会談ですので、まずは核軍縮・不拡散について突っ込んだ議論が行われたわけですが、その成果を独立の文書として広島宣言という形で発出することができた。そして、この宣言は、今鋭く対立している核兵器国と非核兵器国、それぞれの主要国が含まれるG7の枠組みの中で採択をし、発出することができた、ここに意味があったと思います。
 今回、初めて核保有国の外相を含めて、G7の外相、そろって平和公園を訪問し、資料館を訪問し、そして原爆ドームも訪問したわけですが、こうした訪問と平和宣言とが相まって、是非、今、国際的に核兵器のない世界に対する機運がしぼんでいると言われている中でありますので、再びこうした機運を盛り上げる、再稼働させる転機にしたいと考えております。

○井上哲士君 核兵器国も含むG7の外相が広島で会議を持ち、そして私も子供のときから何度も行きましたが、この原爆資料館を訪問をして、原爆の惨禍をその目で見られたということは大変私は重要なことだと思っております。
 核兵器のない世界への国際社会の前進ということは被爆者の願いであり、それを訴えてこられました。その皆さんがどう見ていらっしゃるのかということは大変大事だと思うんですね。
 広島宣言について広島県被団協の佐久間邦彦理事長は、核兵器廃絶ということが明確にうたわれていない、広島及び長崎の人々の心からの強い願いを共にしているとはとても言えないというコメントを出されました。それから、やはり県被団協の坪井直理事長は、広島で開催されたにもかかわらず各国外相が被爆者の直接声を聞く機会がなかった、これについて聞いてほしいという思いがあって残念だったと、こういうことも言われております。
 こうした被爆者団体の意見について、見解はいかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 今回の広島宣言ですが、核軍縮・不拡散の取組において是非簡潔かつ明確で力強いメッセージを出すべきであるということで各国と調整を続けてきました。
 内容について御指摘がありましたが、その中には、核兵器のない世界に向けた更なる進展のため、全ての国に努力を要請するということ、また、核兵器は二度と使用されてはならないという広島及び長崎の人々の心からの強い願いを共にしている、こうした内容をG7各国そろって一致し、この広島宣言の中に盛り込むことができた次第です。内容においても、今申し上げましたような内容が盛り込まれたことは大変重要だと思っています。
 そして、あわせて、被爆地における様々な関連行事のありようについて御指摘がありました。関連行事につきましても、各国と調整を続けてきました。
 まずは、被爆地で外相会談を行うわけですから、被爆の実相に触れてもらう、そういったことにおいて意義ある関連行事、そして日程を組まなければならないということで、ぎりぎりの調整をしてまいりました。過密な日程の中で調整をしたわけでありますが、その調整の結果が御案内のような平和資料館訪問あるいは原爆死没者慰霊碑への献花、こういったことになったと考えております。

○井上哲士君 是非被爆者の声を直接聞いていただきたかったと私も思うんですが、さらに、この宣言について被爆者から出されている声は、核兵器の非人道性ということが盛り込まれなかったということであります。
 私、三月十日、この委員会での質問で、昨年の国連総会での日本提出の決議案が、人道的結果への深い配慮は核兵器のない世界を目指す全ての国の努力の基礎というふうに述べたことが理由になって米英仏など核兵器国が賛成から棄権に転じたという問題を取り上げました。その際、今後、これを受けて、日本としてはこういう同様の文言を盛り込んだ決議を提案するのかどうかと、こういうことをお聞きしますと、大臣からは明確な答弁はなくて、今後、核兵器国と非核兵器国の協力を得て、具体的な結果につながる道筋をつくるにはどうしたらいいかを考えていくと、こういう答弁でありました。
 その中での今回の宣言なわけですが、せっかく核兵器の非人道性を最もアピールできる機会を得ながら、その非人道性が盛り込まれなかったと。そうしますと、今後、核兵器国に配慮して、唯一の戦争被爆国としての原点とも言えるこういう文言を今後は使わないと、こういうことなんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 被爆の実相を伝える言葉についてですが、これは、今後とも、文脈あるいは機会に応じて最も適切な言葉が何なのか、こういった観点から判断していくべきものであると考えます。
   〔委員長退席、理事塚田一郎君着席〕
 今回の広島宣言におきましては、被爆の実相について具体的に記すべきであるという判断の下、極めて甚大な破壊、そして非人間的な苦難、こうした表現を用いた次第であります。言葉として、極めて甚大な破壊と非人間的な苦難と、非人間性と、どちらが適切なのか、あるいは強いのか、こういったことなのかと思いますが、こうした極めて甚大な破壊と非人間的な苦難という言葉において、より強い表現になったと受け止めております。是非こうした言葉遣いにつきましても、引き続きしっかりと検討し、適切な言葉を使っていきたいと思います。
 ちなみに、昨年のリューベックG7外相会談におきましては、壊滅的な結末、こういった言葉だけでありました。それが、極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難、こういった言葉に今年は変わったということも指摘しておきたいと考えます。

○井上哲士君 訳語についてはいろんな議論もあったわけでありますけれども、それだけじゃなくて、今回の広島宣言では、核兵器のない世界が漸進的なアプローチを取ることのみにより達成できるというふうに強調しております。
 今、国際社会では核兵器の法的禁止を目指す流れが大きく広がっておりまして、国連総会でも多くの支持を得ておるわけですが、これまでは、こういう動きには全く触れずに、漸進的アプローチのみだと、こういう強調をしたわけですね。そうしますと、結局、この宣言の立場は、核兵器国にこれまで以上に配慮をして、核兵器の法的禁止を目指す国際世論の多数派とむしろ溝を広げることではないかと、こういう指摘もありますが、いかがでしょうか。
   〔理事塚田一郎君退席、委員長着席〕

○国務大臣(岸田文雄君) 核兵器のない世界を実現するためには、核兵器国と非核兵器国が協力をすること、これは不可欠であると考えます。この協力なくして具体的な結果にはつながっていかないと考えております。そういった考え方に基づいて現実的かつ実践的な取組を着実に積み重ねていくことこそ、一見遠回りのようで、実は核兵器のない世界に向けた最短の道であると考えて、我が国としましても取組を行ってきました。
 広島宣言には、まず、こうした我が国の従来からの立場をしっかり反映したわけでありますが、あわせて、この広島宣言においては核兵器国と非核兵器国との間の対話促進を求める文言があり、その直後には、NPT第六条に従い、我々は、今後も世界規模での継続的な核兵器の削減に関する永続的かつ積極的な支持者である、こうした文言を盛り込むことでも一致をしました。
 このNPT第六条、御案内のとおり、これ核兵器国の削減努力、これを明記した条文であります。これについても、核兵器国と非核兵器国が共に一致をして文言の中に盛り込むことができた、こういった点においては意義があったと思います。
 いずれにしましても、こうした広島宣言、大きな意味がある、それ自体、意味があるとは思いますが、今後の具体的な結果につなげていくことが何よりも重要です。こうした宣言をしっかり活用しながら、国際社会において引き続き具体的な結果を出すために日本政府としましても議論をリードしていきたいと考えます。

○井上哲士君 二月二十六日に、オープンエンド作業部会に関する記者会見の際に、岸田大臣は、核兵器禁止条約の交渉開始については、現時点ではまだ協力関係が整っていないと、こういう言い方をされたんですね。今回はそうでなくて、漸進的アプローチのみだと、明らかに私は踏み込んでいると思うんですね。
 日本が唯一のやっぱり戦争被爆国として核兵器廃絶、役割を果たすというならば、やっぱりこの最大の核兵器国であるアメリカの今の核戦略についてきちっと物を言うことが必要だと思うんですが、アメリカは、あのオバマ大統領のプラハ演説での世界からの注目にもかかわらず、現実に今、核兵器近代化計画を進めておりまして、今後三十年間に核兵器に掛ける費用は一兆ドルにもなろうとしておりまして、トマホークミサイルの後継に当たる長距離スタンドオフミサイルなどなど進めております。
 二〇一七会計年度予算案では、大規模な核配備プログラムの新たな資金は十億ドル以上を追加をするということになっておりまして、アメリカはやはり廃絶ではなくて核兵器堅持、こういう方向に向かっていると考えますが、これにしっかり物を言う必要があるんじゃないでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 米国のオバマ大統領は二〇〇九年のプラハ演説におきまして、核兵器のない世界を目指すとしつつ、米国は核兵器が存在する限り安全で防護された効果的な核兵器を維持していく、このようにも述べております。
 米国のいわゆる核兵器の近代化ですが、近代化というのは、今、オバマ大統領のこの演説の中にも触れていた政策に基づいて、今後老朽化が見込まれる核兵器の信頼性を維持するために行っているものであると承知をしております。
 いずれにしましても、大きな、核兵器のない世界を目指すという目標に向けて、現実的なそして漸進的なアプローチが求められていると我々は認識をしています。

○井上哲士君 今後三十年間で一兆ドルの費用を掛けて核兵器の近代化や堅持を目指す保有国の立場に配慮をしていては、私は核兵器廃絶を前に進めることはできないと思います。
 大きな転換が必要だということを改めて強調いたしまして、質問を終わります。

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