○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
パリ協定承認案の国会提出、大幅に遅れまして、COP22で開かれるパリ協定第一回締約国会議に締約国としての参加はできなくなっております。
今、プレCOPのお話もありましたけれども、協定ではこの第一回の締約国会議で採択することになっている規定というのはどういうふうに定められているのか、具体的に示していただきたいと思います。
○政府参考人(相星孝一君) お答えいたします。
パリ協定におきましては、パリ協定の第一回締約国会合にて採択されることが規定されている実施方針を条文上定めております。具体的に申し上げます。
第四条の十、各国の温室効果ガス削減目標等の共通の期間の設定、第六条の七、市場メカニズムに係る規則、方法、手続、第七条の三、各国の適応の努力の確認方法、第十一条の五、能力開発のための制度的な措置、第十三条の十三、各国の削減行動等の報告、レビューの共通の方法、手続、指針、第十五条の三、実施及び遵守を促進する制度に係る方法、手続といったようなものがございます。
○井上哲士君 ですから、非常に協定上非常に重要なのがこの第一回会合なわけですね。日本はこれにオブザーバー参加はできるけれども議決権はないと。先ほどプレCOPの話もあって、何か、一方で早くやって説得力を持って国際社会に貢献しなくちゃいけないと言いながら、何か余り重要でないかのような言い方もされると、私はそういう姿勢が日本の今の遅れにも表れていると思うんですね。果たしてこれで国際的に積極的に役割を果たすことができるのかが問われていると思います。
本会議で、TPP優先でパリ協定は後回しだったのじゃないかと、こういう質問に対して外務大臣は、当初の見通しよりも早期の発効に至ったと、見通しの誤りを認められました。一方で、本年中の発効の目標を掲げたG7の首脳共同宣言を取りまとめて、可能な限り迅速に締結に向けた作業、調整をしてきたと、こういうことも言われたわけでありますが、そうであるならば、なぜ安倍総理の所信表明演説でパリ協定には一言も触れなかったのか。外務大臣として、盛り込むようにという、こういう意見は言われたんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の総理の所信表明演説ですが、総理も、これ地球温暖化問題についてはしっかりと取り上げて、直面している困難な課題の一つとして日本としてしっかり取り組んでいく、そして世界に貢献していく、こういった決意はしっかり述べられていると認識をしています。
この認識の下に、この具体的な取組としてパリ協定にも取り組んでいる、これが政府の対応のありようであります。
○井上哲士君 今言われたように、確かに所信表明演説では、地域紛争、大量の難民、相次ぐテロ、地球温暖化、世界は多くの困難に直面していますとこう述べられております。しかし、その後、総理は積極的平和主義の話をするだけで、地球温暖化が困難の一つと挙げながら、パリ協定一言も言わなかったんですよ、そのことが問われているんですね。一方で、TPPの早期発効にも言及をされたわけで、結局TPP優先でパリ協定を軽視したというのが今の答弁からも私は明らかだと思うんですね。
見通しの誤りを本会議でも認められたわけでありますが、そもそも、他国の対応がどうなるのかと、そういう見通しを持つという名の下に事実上様子見になっていたということが私は大きな問題だと思うんですね。繰り返し挙げられるG7の首脳宣言、パリ協定の二〇一六年中の発効という目標に向けて取り組みつつ、同協定の可能な限りの早期の批准、受諾又は承認を得るよう必要な措置をとることにコミットするとともに、全ての締約国に対し、同様の対応を求めると。全ての締約国に日本が議長国としてこの宣言をまとめたわけですよ。そうやって世界に宣言をしている以上、むしろ日本は各国の対応を様子見するのではなくて、率先して早期に批准をしてリードをすると、こういう姿勢こそ求められたんじゃないですか、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 日本は、おっしゃるように、こうしたパリ協定をめぐる議論、率先してリードをすべき立場にあると認識をしています。決して他国の様子を様子見していたということではないと認識をしています。
リードしなければならないからこそ、伊勢志摩サミットにおいても共同声明、御指摘のような内容をしっかり取りまとめたわけでありますし、本年中に早期発効、そして我が国の締結を目指すという方針の下に努力を続けてきたわけであります。
是非引き続き、我が国としまして、こうした気候変動問題、COP22をめぐる議論をしっかりとリードしていかなければならないと思います。そのために、最善の努力を政府としても続けていきたいと考えます。
○井上哲士君 そう言いながら、結局国会提出は遅れたと。言っていることとやっていることが違うわけですね。やはり私は様子見だったと思うんですよ。
去年パリ協定が締結された翌日に、日本経団連の榊原定征会長がコメントを発表しております。こう述べています。今後、米国や中国を始めとした主要排出国が確実に批准するとともに、公平性、実効性を高めていく観点から、各国の約束についての進捗状況を国際的にレビューしていく体制を整備することが求められると。世界をよく見なさいと言っているわけですが、経団連の地球温暖化ワーキンググループの村上仁一座長はインタビューでもっと率直に言っておりまして、京都議定書の教訓を踏まえますと、パリ協定の実効性を担保する上で、米中を始めとする主要排出国がパリ協定に確実に批准することが不可欠になろうかと思います、日本としても、各国の動きを十分に見極めた上で国内における批准の手続を進めるべきであり、京都議定書の二の舞にならないようにすることを強く願っておりますと、こう言っているんですね。
それから、京都議定書の際にはアメリカは合意しましたけれども批准しなかった、不公平だったと、日本は損をしたと、今回はそうならないようにと、こういう財界の意向を踏まえて、日本が国際社会の中で積極的役割を果たすんではなくて、他国の対応の様子見ということにとどまった。これが一番の問題じゃありませんか。
○国務大臣(岸田文雄君) 先ほど申し上げたように、我が国としましては、本年中のパリ協定早期発効、そして我が国の締結を目指して努力を続けてきました。そして、その中で、国際社会の様々な動き、これをしっかりと把握し、我が国の対応についても検討を続けてきたところです。そして、今の状況を見る中で、我が国としましても、一日も早く締結を実現しなければならないということで努力を続けています。そして、何よりも大切なのは、今後の議論において実質的に我が国の意向が反映されない、そういったことがあってはならないということであると認識をしております。
COP22におきましても、実施指針の議論、気候変動条約の全締約国でこの議論をするという議論が今年の五月から行われているわけですが、先週のプレCOPにおきましても、こうした枠組みで議論を続けていくことが確認をされています。是非こういったこともしっかりと確認しながら、我が国として実質的に後れを取らないことをしっかりと確保する努力をしていかなければならない、このように考えております。
そして、何よりも早く締結国として説得力のある議論が行えるようになりたいと考えておりますし、国会での御承認を一日も早くお願いしなければならないと考えます。最大限努力をいたします。
○井上哲士君 担当者に説明聞きますと、国会の会館回っても、京都議定書の二の舞になるなと随分言われているんだと、こういうことを言われていましたよ。
ですから、政府とともに与党が結局こういう財界の立場をおもんばかって、TPP優先、パリ協定後回しになったと、これが今回の一番の問題でありまして、この消極的な姿勢が低過ぎる二〇三〇年度の温室効果ガスの削減目標にも示されているわけでありまして、私は、こういう目標の見直しを含めて抜本的な転換が必要だと、そのことを求めまして、質問を終わります。
外交防衛委員会(パリ協定に対する政府の対応について)
2016年10月25日(火)