○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
パリ協定には賛成でありますけれども、政府が批准を後回しにしてきたことで第一回の締約国会議に締約国として参加できない事態になったことは問題だということを改めて指摘をしたいと思います。
日本が国際的に積極的な役割を果たすためには、不十分な二〇三〇年の削減目標を引き上げること、原発と石炭火力発電所に大きく依存するエネルギー基本計画を見直すこと、そして脱炭素化に逆行する石炭火力発電の新増設は中止すること、このことを強く求めておきたいと思います。
その上で、私からも、現在、国連総会第一委員会で議題になっております、明日にも採択されるとも言われております核兵器禁止条約の制定交渉開始を定める決議案についてお聞きしたいと思います。
この核兵器禁止条約は、核兵器の非人道性に対する国際的な世論の広がりの中で合意が広がりました。日本の被爆者が命ある間に核兵器のない世界を見たいと、こういう高齢と病身を押しての被爆の実相に対する訴えが世界の世論を大きく動かしました。今朝、NHKニュースもやっていましたけど、国連を訪問している被爆者の方が、スタートラインにようやく着こうとしている、広島、長崎の被爆者は七十一年間これを待っていたと、こう言っておりました。
ところが、一昨日の当委員会での質疑があった後に、様々な報道がありましたけれども、日本はこの決議案に対して不賛同の方向性を決めたと報道されております。そして、アメリカが欧州やアジアでの抑止力に影響が及ぶと強い懸念を示して、採決で反対投票と、つまり棄権ではなくて反対をすること、交渉不参加を強く求める書簡をNATO諸国に配付をしたということが明らかになり、その映像も出されておりました。そして、日本にも同様の圧力が掛かっているとしており、それを踏まえて日本は賛同しないという方針を決めたとも報道されております。
そこでお聞きしますけれども、日本には米国からどういうような要請、圧力があるのか、そして日本としてはいかなる態度で臨もうとされているのか、お願いします。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、我が国と米国は、核兵器のない世界を目指すという、この大きな目標を共有しています。そういった観点から、この核軍縮・不拡散の分野におきましても緊密な意思疎通を図っているわけですが、具体的なやり取りについては、当然のことながら控えなければなりません。
そしてその上で、我が国としましては、今、国連総会第一委員会に提出された各国の決議をめぐりましてぎりぎりの今やり取りと検討を行っています。少なくとも、御指摘のこの決議、オーストリア等が提出を予定しているこの決議に我が国が不賛同を決めたというような事実はまだありません。何も我が国の方針は決まっていない、引き続きぎりぎりの検討を、調整を行っています。
これ、いつもこうした決議のやり取りの常でありますが、各国とも最後の一瞬まで一国でも多くの共同提案国、一国でも多くの賛同国を得るために文言自体もぎりぎりの調整を続けていく、これが実態であります。
最後まで、まずは我が国の決議、この我が国の決議でさえ昨年一国の核兵器国も賛成しなかったというこの厳しい現実の中で、我が国の決議採択に向けて全力を尽くし、その上で他国の決議についてもしっかり判断をしていきたいと考えます。
○井上哲士君 大臣の地元である広島の地元紙に被爆者の声がこの不賛同報道を見て書いてありました。核兵器廃絶を強く求めている被爆国市民の思いと懸け離れている、ふんまんやる方ないと、こういう声でもありました。
決議案は過半数の賛同で可決される見込みでありますが、そうなれば、いずれにしても日本は参加するかどうかということが問われるわけですね。各国に不参加を求めているアメリカに付き従うようなことがあれば、被爆国としての日本の果たしてきた役割を大きく損なうことになるわけです。
昨年の作業部会の設置の決議の際にも日本は賛成しませんでしたけれども、一転、部会には参加をいたしました。核兵器国と非核兵器国の橋渡しとなるとしたわけですけれども、その中身は、専ら私は核兵器国の代弁者として禁止条約交渉開始の合意の足を引っ張る役割を果たしたと思うんですね。
二度とそういうことはあってはならないと思いますが、橋渡しと言うのであれば、この交渉、議論に参加をして核兵器国をそこに引き寄せると、そういう役割を果たすことこそが唯一の被爆国としての日本の役割だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の作業部会における我が国の対応につきましても、我が国は核兵器国と非核兵器国の橋渡し役としてどうあるべきなのか、ぎりぎりの判断の下に態度を決定したと考えています。是非、引き続きこうした我が国の立場、我が国の役割、しっかり大事にしていかなければならないと考えます。
そして、まずは、現地時間の二十七日から十一月の三日にかけて各国の決議が採択されます。その採択において、今申し上げたこの橋渡し役、すなわち核兵器の非人道性に対する正確な認識と、そして厳しい安全保障に関する冷静な認識に基づいて、核兵器国と非核兵器国の協力を得ながら現実的、実践的な取組を行っていく、こうした我が国の基本的な立場に基づいてどうあるべきなのか、決議、そしてその後の対応についてもしっかりと判断をしていきたいと考えます。
○井上哲士君 先ほどの答弁で、世界の世論を前進させるための役割を果たしたいという旨の答弁がありました。そうであるならば、これは賛成をして、交渉にも参加をして核兵器国の参加を促すと、こういう役割を果たすべきだと思います。
様々な答弁がありましたけど、国連の会議では、アイルランドの代表は、核兵器使用による破滅的な人道的結果を考えると核兵器で安全になる安全保障など想像できないと強調しました。オーストリアの代表は、核兵器が安全保障に不可欠だという理論を振りかざすならば全ての国が核保有を目指すだろうと......
○委員長(宇都隆史君) 時間を過ぎておりますので、質疑をおまとめください。
○井上哲士君 こういう演説をいたしました。北朝鮮の核問題だって、核兵器を廃絶という国際的な立場を明確にしてこそ私は北朝鮮にも強く迫ることができると思います。
あの非人道的な兵器は禁止せよという被爆者の当たり前の願い、国際的な大きな世論に応えて決議案に賛成し、交渉にも参加をすると、改めて強く求めまして、質問を終わります。
外交防衛委員会(国連総会での核兵器禁止条約交渉開始決議に対する政府の対応)
2016年10月27日(木)