○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
この間、選挙権年齢が十八歳に引き下げられまして、七十年ぶりに有権者数が大きく増やすことになりました。より多くの民意を国会、議会に反映させるという点で重要な前進でありましたけれども、これを生かす上でも、投票機会の保障が不可欠であります。今年の通常国会でも投票環境の向上ということで幾つもの改正が行われて、今年の参議院選挙で施行されたものもあります。
国民が主権者として政治に参加する機会の保障は憲法に定められたものでありますし、それをこの精神にのっとって、選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明かつ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発展を期することを目的とするのが公選法でありますから、この立場から、今年の参議院選挙の投票行動も踏まえまして、本案について質問をしたいと思います。
まず、ちょっと基本的な数字についてお聞きいたしますが、今年の参議院選挙で在外選挙人名簿に登録されている人数、そして投票者数、投票率、それぞれを明らかにしていただきたいと思います。それから、この投票者数の中で、在外公館、郵便、国内の投票数と、その比率の内訳はどうなっているか。これは、まだ今回のは出ていないようなので、前回参議院選挙で結構ですのでお願いをいたします。
○政府参考人(大泉淳一君) お答えいたします。
今回の参議院選挙における在外選挙人名簿の公示日前日現在の登録者数でございますが、これは十万五千五百二十九人でございまして、選挙区での投票者数、これは二万三千三百六十一人でございます。これは、分母が当日有権者数となりますので、ちょっと先ほど申しました公示日前日の登録者数とは違うんですが、これを基に計算しますと、投票率は二二・二一%ということとなっております。
また、前回、平成二十五年参議院選挙におきます選挙区の在外投票者数二万五千四百七十一人の内訳でございます。これは、在外公館における投票が二万二千四百三十九人、約八八%、それから郵便等による投票が千二百三十三人、四・八%、日本国内における帰国投票、これが千七百九十九人で七・一%となっております。
○井上哲士君 参議院選挙ですので選挙区と比例代表があるわけでありますが、ほぼ同じ数字ということであります。
次に外務省にお聞きしますけれども、直近の海外在留邦人数、年齢別、職業別の人数、比率も併せてお願いをいたします。
○政府参考人(能化正樹君) お答え申し上げます。
外務省が作成しております海外在留邦人数調査統計によりますと、平成二十七年十月一日現在の海外在留邦人の総数、これが百三十一万七千七十八人であります。
年代別の人数及び在留邦人全体に占める比率について申し上げます。二十歳未満が二十九万七千三百二十二人、約二二・六%、二十歳代が十五万三千三百四十一人、約一一・六%、三十歳代が二十四万七千八百七十四人、約一八・八%、四十歳代が二十七万六千二百七十九人、約二一・〇%、五十歳代が十六万五千六百十七人、約一二・六%、六十歳以上が十七万六千六百四十五人、約一三・四%であります。
次に、職業別の人数及び比率でございますが、永住者についての統計を取っておりませんので、海外在留邦人のうち永住者を除く長期滞在者数について申し上げます。
総数が八十五万九千九百九十四名でありまして、職業別の人数と比率を次に申し上げます。民間企業関係者が四十六万二千四百六十二人、約五三・八%、報道関係者が三千八百四十七人、約〇・四%、自由業関係者が四万七千二百三十七人、約五・五%、留学・研究関係者が十七万八千四百四十九人、約二〇・八%、政府関係者が二万三千四百六十三人、約二・七%、その他が十四万四千五百三十六人、約一六・八%となっております。
○井上哲士君 今ありましたように、現状では在外選挙人名簿の登録者は約十万人で、登録数は一割にも満たないということになりますし、そのうち投票率は二〇%前後ということですから、対象者全体でいいますともう二%ということになってしまうわけですね。
在外選挙人名簿に登録されるには申請者が原則在外公館に出向き申請を行う必要があって、登録には三か月の居住要件があり、登録資格の確認など、実際に投票できるまでにはかなりの時間を要するということで、登録手続の利便性の向上を求める声が広がってまいりました。
本案では、この現行の登録制度に加えて新たに出国時申請の制度を設けるわけでありますが、この出国時申請の対象となるのはおおむねどのくらいの人数だと見込まれているんでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) 出国時申請の対象となる国外転出者数の見込みにつきましては、ちょっと仮定を用いて計算しなければいけないので正確に計算することは困難でございますが、在留届の提出者数に在留邦人総数に占める十八歳以上の人数の割合を乗じることによって推計いたしますと、平成二十七年度における在留届新規提出件数は十万三千二百七十四件でございます。これに、在留邦人全体約百三十二万人に占める十八歳以上の者約百五万人の割合、これは八〇%でございますが、これを乗じますと、一年間で八万人程度になるのではないかと考えられます。
ただ、この数字は、在留届が件数ごとに取っておりますので人数と一致するものではないということ、あるいは最終住所地の市町村の選挙人名簿に登録されていない場合、あるいは在留届が未提出の場合、あるいは何回も在留届を出すというように、転居しているような方もいらっしゃると思いますので、こういうことも考えますと、幅を持って捉えていただきたいという数字でございます。
○井上哲士君 ざくっとした数字ですけれども、大体八万人ぐらいという話でありました。
現在、登録者数が十万五千五百二十九人ですから、新たに対象になる八万ぐらいの人の中でかなりの割合で登録をされることになりますと、この制度を使って、画期的に改善をされる可能性もあることだろうと思いますし、是非そういうふうに運用していただきたいと思うんですが。
この出国時申請を行うことができる者は、現行でも帰国すれば国内で投票することができる者で、国内で選挙人名簿に登録されたことがある者になります。出国時申請を行わなかった者や既に国外に転出している者、また、国外で出生し、そのまま国外で生活している者は現行の登録手続となります。
本案は在外選挙人名簿への登録の利便性を向上したものですけれども、一方、先ほどの数字にもありましたように、名簿に登録しても投票に結び付いていないという現状の問題もあるわけですね。この要因をどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) 在外投票の投票率の問題でございます。
これにつきましては、やはり投票所までの距離や交通手段、あるいは郵便投票ですと郵便の状況等が国内とは異なりますので、一概にこれが原因だというコメントをすることは難しいのでございますが、平成二十五年に外務省が実施したアンケートによりますれば、在外投票者のうち約三割の人が手続が面倒であるというふうな御回答をいただいているところでございます。投票に伴う有権者の負担についての声があるということは承知しております。
以上です。
○井上哲士君 是非いろんな改善を図ってほしいわけですが、先ほどの外務省の数字で、在外選挙人名簿に登録した人の投票方法で在外公館が八八・一%と、やっぱり圧倒的に多いわけですね。在外公館の役割は大変重要だと思います。
二〇一三年に外務省が行った領事サービスの向上、改善のためのアンケートによりますと、在外投票を知ったというのは、在外公館のホームページ三三%、領事の窓口一二%、領事出張サービス四%、日系企業等への個別訪問一%と、こういうふうになっております。
在外公館において投票率の向上へどのような努力を行っているのか、特に今回、十八歳選挙権が施行された参議院選挙前には若い有権者に対してどういう対応をしてきたのか、いかがでしょうか。
○政府参考人(能化正樹君) お答え申し上げます。
在外選挙人名簿の登録申請や投票は本人の意思に基づくものでありますけれども、外務省では、在外選挙制度創設時の国会での附帯決議を踏まえまして、在外選挙人名簿への登録手続や在外投票の方法等、在外選挙制度の周知を積極的に行っております。
具体的には、窓口来訪者への呼びかけ、ホームページへの案内文の掲載、領事メールの発出のほか、遠隔地での領事出張サービスの際の案内、現地日本人会、日本商工会及び在外教育施設等を通じた広報啓発に努めております。また、選挙権年齢の満十八歳以上への引下げにつきましては、これらに加えまして、在外公館員が高等部のある在外教育施設を訪問いたしまして、選挙制度の説明や模擬投票を行うといった取組を実施しております。
この夏の第二十四回参議院通常選挙を迎えるに当たりましては、在外選挙人名簿の登録手続には約三か月を要することを踏まえまして、本年一月以降、全世界を対象とした邦字紙三紙の衛星版に在外選挙人名簿登録を呼びかける案内文を計十回掲載いたしましたほか、手続期限の目安とされる三月から四月には改めて各公館からのメールの一斉送信を行うなど、重層的な広報を行ったところであります。
○井上哲士君 様々な努力をいただいているわけでありますが、なお努力をしていただきたいと思いますし、在外公館の投票所の増加など、投票機会の保障をする方法についても今後の課題だと思うんですね。
大臣にお聞きしますけれども、先ほどの答弁でも、年齢別では二十歳未満が大きな比率を占めます。また、在留邦人全体の約六五%を占める長期滞在者に限って見ますと、答弁にありましたように、民間企業が五三・八%、それに次いで留学・研究者が二〇・八%と大きな割合を示しております。
今般の大学生の留学などを見ますと、海外の大学での単位認定制度を非常に広げておって、大学としてまとまって留学支援をするというケースが大変多いわけですね。ですから、大学が留学手続をする際にこの出国時申請をするようにフォローするであるとか留学の手引なんかにちゃんと載せてもらうとか、こういう大学に対する働きかけも大変大事だと思うんですね。こういう留学生や新有権者への周知など、在外投票の環境整備についての今後の取組について大臣から答弁いただけますでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 在外選挙制度の周知ですとか在外選挙人名簿への登録促進を図るために、これまでは、外務省と連携してホームページや広報誌などを通じて制度概要、登録申請の方法などについて国内外向けに周知啓発をしてまいりましたが、今委員がおっしゃいましたとおり、大学生でこれから留学をしようという若者にスポットを当ててしっかりと制度を知っていただくということも重要だと思います。
今後、今まで利用してきた媒体の活用も続けますけれども、選挙管理委員会や文部科学省と連携をしながら、大学において、留学を予定している学生に対してオリエンテーションなどでも周知をしていただくようお願いするという形で大学生に対する周知に努めてまいります。
○井上哲士君 是非よろしくお願いいたします。
我が党は、在外投票制度ができたときに、海外に在住する日本国民の選挙権の行使を保障することは憲法上の要請であり、海外勤務、留学など外国に長期滞在している者はもちろん、当該国で永住権を取得している者も含めて、日本国籍を有する者、日本国民に、その居住地が国内か国外か、どこの国に住んでいるか、こういうことにかかわらず、基本的に選挙権を行使する機会を保障すべきものだと主張をいたしました。今の在外投票制度というのは名簿登録した者が投票できる制度であって、投票時に国外にいたという人にはできる制度になっておりませんで、こういうことも検討課題であるということは申し上げておきたいと思います。
次に、投票所数と投票時間の繰上げについてお聞きいたします。
今年の通常国会でも質問をいたしまして、投票時間を繰り上げたり投票所数は減少しているところが増えているということを指摘をいたしました。今度の参議院選挙ではどのようになっているでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) 本年、平成二十八年の参議院議員通常選挙においては、投票所数については四万七千九百五か所ということでございました。それから、投票時刻を繰り上げた投票所数及び割合については、一万六千五百九十四か所で三四・六%となっております。
○井上哲士君 済みません、それぞれ一四年総選挙、一六年参議院選挙との比較でもう一回お願いできますか。
○政府参考人(大泉淳一君) 一四年、一三年とですか。──はい。
前回参議院選挙、平成二十五年、これの選挙での投票所数は四万八千七百七十七か所、平成二十六年衆議院議員総選挙では四万八千六百十七か所、それで、今年の参議院通常選挙では四万七千九百五か所でございます。
投票時刻を繰り上げた投票所数及び割合につきましては、平成二十五年参議院議員通常選挙では一万六千九百五十七か所で三四・八%、平成二十六年衆議院議員総選挙では一万七千百八か所で三五・二%、今年の参議院議員通常選挙では一万六千五百九十四か所で三四・六%でございます。
○井上哲士君 繰上げは若干減ったんですが、投票所の数でいいますと、前回参議院選挙から八百七十二か所減って、最高時から一割減になっているんですね。投票所が遠くなったということが投票率の低下を招いておりますし、三分の一の投票所で繰上げ閉鎖ということになっておりまして、住んでいる場所によって投票機会の保障が異なっているという事態になっております。
我が党議員、国会で何度もこの問題を取り上げてまいりましたし、私、前回の質問で指摘をした際に高市大臣は、各選管に投票機会の確保を図るという観点から投票所の増設について積極的に措置するように要請してきたという答弁でありましたけれども、実際には逆行するような事態があるわけでありますが、なぜこうなっているか、抜本的改善のために何が必要とお考えでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 投票所数につきましては、中山間地域における過疎化による選挙人数の減少ですとか市町村合併などを契機とした投票区の見直しなどによって減少してきていると承知しています。
公職選挙法上、この投票所の設置については市町村の選挙管理委員会が地域の実情などを踏まえて決定すべきものでございます。この選挙管理委員会におかれては、地域の実情を踏まえて投票所や期日前投票所を設置するほか、かつて投票所があった地域での期日前投票所の設置ですとか移動期日前投票所の取組ですとか移動困難者に対する支援など、選挙人の投票機会の確保には努めていただいていると思っております。
投票所閉鎖時刻の繰上げでございますが、これも公職選挙法において、市町村の選挙管理委員会の判断で、選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別の事情のある場合などに限り行うことができるとされています。私としましても、特別な事情がない限りは投票所の閉鎖時刻をむやみに繰り上げるということは決して好ましくないと考えています。
特別な事情について聞き取りもいたしておりますけれども、例えば、鹿児島県では夜間になるとハブが出てきて非常に危険であるといったところもございますし、群馬県の山間部になってきますと、これはもう道路条件が悪く日没も早いので、高齢化が進む選挙人の投票に対する安全確保が必要だと、まあほとんどの方が午後七時までに投票を済ませているというようなことで、議会や自治連合会からの要望によって、主に安全確保を理由に繰り上げたといったこと。また、観光産業に従事者が多いという地域は、土日も就業していらっしゃるので、どちらかといえば期日前投票の割合が高い、投票日当日に投票される方も午前中に投票を行う方が圧倒的に多いということで区長会から要望がありましたというようなことでございました。
しかし、投票所の閉鎖時刻の繰上げについては厳正に対処するように要請をしておりますし、投票所の設置につきましても積極的に措置をするように、引き続きここはしっかりと取り組んでまいります。
○委員長(有田芳生君) 時間を過ぎておりますので、おまとめください。
○井上哲士君 はい。
私、やっぱり予算の付け方や人員の配置にも大きな要因があると思うんですね。この間、選挙執行経費も随分削減をされておりまして、開票不正やミスも増加しているわけですから、その点、しっかり予算の手当てをお願いをしまして、質問を終わります。
政治倫理の確立及び選挙制度の関する特別委員会(公職選挙法等)
2016年11月25日(金)