○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
南スーダンPKOについて、稲田防衛大臣にお聞きいたします。
第十一次要員が駆け付け警護などの新任務を付与されて現地に到着をいたしました。政府は、新任務付与に関する基本的考え方の中で、南スーダンPKOが参加五原則を満たしているのか、PKO法上の武力紛争が発生しているかどうかはマシャール派が武力紛争の当事者であるかどうかが判断材料だとして、同派は系統立った組織性を有しているとは言えないこと、同派により支配が確立されるに至った領域があるとは言えないこと、南スーダン政府と反政府派双方とも事案の平和的解決を求める意思を有していること、この三つを挙げました。
それに関して、手元に三枚の資料(井上質問(南スーダンPKO)16年11月22日外防委配付資料.pdf)を配付したんですが、一枚目は、今回派遣をされた第十一次要員の家族に対する説明資料のうち、南スーダン情勢を地図で示したページです。二枚目は、今年五月に派遣された第十次要員の家族説明資料の同じページ、昨日提出を受けました。そして、三枚目は、この十次要員のときの資料への情報公開請求に対して防衛省が黒塗りで出したものであります。
なぜ黒塗りを外してちゃんと提出できる資料を、情報公開請求に対しては黒塗りで出したんでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 第十次要員の家族説明会資料については、情報公開請求を受け、本年六月初旬に一部開示決定を行っております。
御指摘のページにつきましては、南スーダンに係る情報として現地の各種報道資料に基づき反政府派支配地域等と記載されていますが、当時はマシャール前第一副大統領がジュバに帰還し、国民統一暫定政府が発足したばかりであり、南スーダンに関する情報としてこのような記載内容を六月初旬の段階で公にすれば、南スーダンに不利益を与え、我が国と南スーダンとの間の信頼関係が損なわれるおそれがあったため、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第五条第三号に該当すると判断し、不開示としたところでございます。
他方、開示決定以後七月には、御承知のとおり、政府側と反主流派との間で武力衝突が発生し、我が国政府としても南スーダン情勢については可能な限り国民の皆さんに説明するべきであるとの考えの下、国連による公表情報等も参考にしつつ、北部での衝突事案の発生等の厳しい南スーダンの治安情勢等についても明らかにしていることもあり、当該ページを公表したとしても南スーダンとの間の信頼関係が損なわれるおそれがなく、開示しても支障を来さないと判断して開示をしたわけでございます。
○井上哲士君 黒塗りされていたのは地図ですが、そこにありますように各種報道資料等なんですね。何でこんなものを隠す必要があったのか、今の答弁では納得できません。
そして、この二つの資料を見比べますと大きな違いがあります。今回の十一次要員用の資料の表題は反政府派の活動が活発な地域、そして地図上でユニティー州などを赤く塗ってその地域を示しています。二〇一六年八月一日時点とされています。
一方、十次要員用の資料は政府派・反政府派の支配地域となっておって、地図上で赤く塗った地域は同じですけれども、そこは反政府派の支配地域とされております。こちらは二月一日時点とされていますが、なぜ今は反政府派が支配する地域がなくなったのか。二月から八月の間にどんな大きな情勢の変化があったというんでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 第十次要員の家族説明会資料の当該ページは、当時の反政府勢力の活動が活発な地域が自衛隊から活動するジュバとは地理的には離れているということを示すために作られたものでありましたが、現地の報道等各種情報を引用し、現地の情報が、各種報道が使っているところの支配地域との表現を用いたわけでありますが、しかしながら、南スーダン情勢に関して隊員家族の間に誤解を生じかねない不正確な記述でもありました。そのため、陸幕を通じて資料の修正を指示し、第十一次要員の家族説明会資料からは修正した資料を使用しているところでございます。
政府としては、従前から説明しているとおり、紛争当事者の要件であるところの支配が確立されるに至った領域があるか否かについては、支配地域の規模、支配期間、支配の実効性といった要素を総合的に勘案して個別具体的に判断する必要があると考えておりますが、現地に派遣されている要員からの報告や我が国大使館、国連からの情報等を総合的に勘案いたしますと、これまでにマシャール前第一副大統領派により支配が確立されるに至った領域があるというふうには認識はいたしておりません。
○井上哲士君 今説明あったように、この反政府派の支配地域があるかどうかというのは五原則が維持されているかどうかの基本的な指標だとさんざん答弁してきたんですよ。それを反政府派が支配している地域があると、こういうことを家族に堂々と説明をした、その上で十次要員を派遣をしたと。つまり、参加五原則が崩れていると認識をしながら、それを承知で派遣をしたと、こういうことになるんじゃないですか。大臣、大臣、大臣の答弁なんだから、大臣。
○国務大臣(稲田朋美君) そのような判断はいたしておりません。
先ほど申し上げましたように、紛争当事者が新たに現れる、すなわち今回南スーダンに派遣をしておりますPKOの活動は、南スーダンが二十年にわたる紛争を終えて、そして南スーダンと元々のスーダンとの間の停戦合意が成立をして、そして新たな国づくりのために派遣をしているわけであります。
PKO五原則との関係で申しますと、新たに紛争当事者が現れ出るような場合があると、そして武力紛争が発生するような場合があれば、そもそもの根底が覆されて憲法上問題がありますけれども、いまだマシャール前副大統領がそういった確立した領域を有しているかといえば、支配地域の規模、支配期間、支配の実効性とした要素を総合的に個別具体的に判断をした場合、マシャール前第一副大統領により支配が確立されるに至った領域があるとは認識をしておりません。したがいまして、第十次要員が派遣される場合においても、紛争当事者が現れ出たとは認識しておりません。
○井上哲士君 そういう認識と全く違う説明を家族にしていたということですよ。そんないいかげんな説明をして出したんですか。そのことが問われるわけですね。
そもそも、当時は一応和平合意は保たれていて、PKO派遣五原則が満たされていたかどうかは大きな世論になっていませんでした。しかし、七月にあのジュバでの衝突が起きて、事実上内戦状態にある、こういうことの中で大きな注目が集まってきた。そういう中で五原則は崩れていないと強弁をして、更に派遣をすると。そのためにはマシャール派の支配地域がないということにしなければ説明が付かない、だから言い換えた、こうやって糊塗したんじゃないですか。
○国務大臣(稲田朋美君) そういうことでは全くありません。
そして、そもそもマシャール氏は、現在、南スーダン国外に逃亡をしております。代わって、タバン・デン氏が反主流派を代表する形で、現在、第一副大統領を務めているわけでありまして、南スーダン国民統一暫定政府は維持され機能していると認識され、紛争当事者が新たに現れ出たという状況ではないというふうに認識しております。
○井上哲士君 二月よりも八月の方が更に事態は悪化しているんですよ。それを何か改善されたかのようにこの説明資料の中身を変えて家族に説明をする、本当に許せないと思うんですね。
実態は、今の、一般的に治安悪化ということではないんですね。国連事務総長の報告でも、最も顕著なのは政府軍が反政府軍のメンバーの追跡を行った中央エクアトリアだ。この反政府勢力との交戦によって多くの事案で著しい数の犠牲者が生じ、一般市民が標的にされたと。地域の司令官の間の同盟関係が変化した結果、しばしば政府軍と反政府部隊が衝突した。北部ユニティーや上ナイル及び東部ジョングレイでも不安定な状況が強まっている。つまり、反政府派と政府派の衝突がこの地域で更に広がっているんですよ。
こういう事態を覆い隠して派遣をした。私は、もう既にこの五原則は破綻をしている、崩壊をしていることは明らかだと思います。直ちに撤退を求めて、質問を終わります。
外交防衛委員会(①南スーダンPKO)
2016年11月22日(火)