国会質問議事録

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外交防衛委員会(稲田防衛相の教育勅語称賛、南スーダンPKO「日報」問題)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 本法案は、駐留米軍再編特措法の期間を十年間延長して、沖縄の辺野古の新基地を始め、民意を無視して基地強化を押し付けるものであります。この間の日報隠蔽問題など、稲田大臣にこういう法案を提案する資格があるのか、またその答弁が信頼できるのか、そういう下できちんとした法案審議ができるのか、そのこと自体が私は問われていると思います。
 そこで、まず南スーダンのPKOの問題についてお聞きいたします。
 私は、九日の当委員会で、南スーダンが民族浄化のリスクもある、内戦状態であり、PKO参加五原則は崩壊している、そして撤退を求めました。政府は、その日の夕方のNSCで南スーダンからの撤収を確認をして、翌日のNSCで正式に決め、発表をいたしました。ただ、あくまで区切りが付いたということで、治安悪化を原因と認めておりません。
 ところが、十八日、自衛隊のPKO隊員が首都ジュバで調達業務中に南スーダン政府軍に一時拘束されるという事態が起きました。その後、解放され、宿営地に戻り、けがはなかったということでありますが、重大な事態だと思います。
 この間、政府軍による国連施設への襲撃やPKOに対する妨害などの国連報告を示して、南スーダン政府によるこの安定的な受入れ同意は崩れていると指摘をしてきましたけれども、まさにそのとおりの事態になったのではないでしょうか、いかがでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 今、三月十八日の事案について御指摘がございました。
 三月十八日、現地時間十時頃、日本時間十六時頃、派遣施設隊の隊員五名がジュバ市内の商店で物資を購入中に南スーダン政府軍の兵士から武器取締りに関する尋問を受け、誤って連行されるという事案が発生をいたしました。隊員五名は、その後、SPLA兵士により別の場所へ連行されましたが、現地日本大使館が政府軍と協議をした結果、十一時頃に帰隊を許され、異状なく日本隊宿営地に帰隊をいたしました。なお、隊員にけがはありません。
 本件につき、現地日本大使館から南スーダン政府に抗議をしたところ、先方からは、政府軍による武器取締り中に一部兵士の誤解により発生したことであると謝罪をし、再発防止を図りたい旨の発言がありました。日本隊は国連PKOの要員として身分を保障されており、このような事案が再発することのないよう国連側と連携してまいります。
 なお、そして、部隊が撤収するまでの間、隊員の安全確保については引き続き細心の注意を払ってまいります。そのことと、先ほど委員が御指摘になりましたところの南スーダンPKO五原則が維持され、そして要員が自らの安全を確保しつつ有意義な活動ができている状況には変わりがない、もちろん、南スーダン、治安は大変厳しい状況にございますけれども、北や南で武力衝突が様々発生をしたりというような事案もございますが、ジュバ及びジュバの近郊が比較的安定していることも事実でございます。
 いずれにいたしましても、今回のこの五年という節目を迎え、派遣施設隊の派遣としては過去最長となることから、南スーダンの国づくり、プロセス、新たな段階に入りつつあることから、今回その活動終了を決めたところでございます。
○井上哲士君 そういう答弁を繰り返しながら、今回の事態が起きたわけですね。これ、一部の兵士の誤解という問題ではないと思うんです。
 昨年七月のジュバでの戦闘で、NGOが宿泊しているホテルを政府軍が襲撃し、殺害やレイプを行った。昨年十一月の国連事務総長の報告でも、任務遂行中のUNMISSに対する移動妨害、UNMISSの要員に対する逮捕、拘束、迫害、襲撃、脅迫などが行われたと述べております。
 さらに、十二月の十四日には国連人権理事会が決議を上げております。恣意的な逮捕及び拘束、指摘される拷問、人道的アクセスの恣意的な拒否、学校、礼拝所、病院、そして国連及び関連するPKO要員に対する攻撃に関わる事柄を含め、南スーダンにおける全てのものによる進行中の人権侵害及び国際人道法違反を非難しているんですね、国連人権理事会が。
 一部の問題ではなくて、表向きは同意をしているけれども、実際は国連の部隊は反政府軍の味方をしていると、こういうことで様々な妨害が行われてきたと、この事実を今正面から認めるべきじゃないでしょうか。
○政府参考人(辰己昌良君) 先ほど大臣からも答弁いたしましたが、今回の事案というのはもう南スーダン政府の方が説明をしておりまして、ジュバ市内で政府軍が実施中の武器の取締りに関し国連要員等は対象外であることを現場の兵士が理解していなかったと、こういうことでございまして、誤解に基づくものとして大臣が、向こうの外務・国際協力大臣が謝罪をしていると、再発防止を図りたいということを言っておりますので、御指摘のようなことはないと考えております。
○井上哲士君 五年前から行っていてですよ、今になってそういうことは分かりませんでしたというようなことがあるのかということなんですね。
 撤収を決めたけれども五月末までは続けるというと、その間、駆け付け警護の任務に当たることになるわけで、仮にその任務が行われたら、銃を撃つ相手が政府軍になるんじゃないか、このことの私は現実の危惧が浮き彫りになったと思うわけで、そうなればまさに憲法違反の戦闘行為になるわけで、区切りが付いたなどとごまかさずに、治安悪化を認めて直ちに撤収させるべきだと申し上げておきたいと思います。
 その上で、先日の予算委員会での稲田防衛大臣の教育勅語の発言についてお聞きいたします。
 大臣は教育勅語についての見解を問われて、教育勅語の精神は今も目指すべきだと思っている、教育勅語自体が全く誤っているというのは私は違うと思いますと答弁をされました。教育勅語には親孝行とか兄弟仲よくするなど、自然に見えることも徳目として並べておりますけれども、それらを全て天皇への命懸けの忠義に結び付けたのが特徴でありまして、その結論は、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」と。つまり、重大事態があれば天皇のために命を投げ出せと、こういうことを子供たちに徹底して教え込むものでありました。
 大臣は、教育勅語自体が全く誤っているというのは違うと言うわけですが、そうであれば、この「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」云々、この部分はいい徳目なのか、それとも誤っている徳目なのか、どちらでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 私は、教育勅語に関してお答えする所管ではないので、差し控えたいと思いますけれども、私が予算委員会で申し上げましたのは、教育勅語の中に、今、親孝行とか兄弟仲よく、夫婦仲よく、友達を信じて、そして世界から尊敬される国を目指そうという、今にも生きているそういう価値があると、そういう意味において全てが間違っているわけではないということを申し上げた次第でございます。
 いずれにせよ、教育勅語を戦前のように教育の唯一の根本理念として復活させるべきとは全く考えておりません。
○井上哲士君 というか、全てが間違っているわけではないと、そう言った上で、親孝行や友達を大切にするのが大切と述べられているんです。
 ですから、この「一旦緩急アレハ」という部分については間違っていると思っていらっしゃるのか、そうでないと思っていらっしゃるのか、大臣の予算委員会の答弁について聞いているんですから、お答えください。
○国務大臣(稲田朋美君) 私は、その教育勅語の中の不易と流行という意味において、今に通用する普遍的な価値というものが存在するということを述べたということでございます。
○井上哲士君 「ウイル」という雑誌の二〇〇六年十月号の討論会で、大臣は、最後の一行も含めて教育勅語の精神を取り戻すべきと述べられているわけですね。ということは、この「一旦緩急アレハ」云々というところも取り戻すべき中身だということでよろしいですか。
○国務大臣(稲田朋美君) もちろん、その当該対談が掲載されたのは二〇〇六年十月、私がまさしく政治家として、一年議員として、しかも同僚の議員と対談をした長い対談の文脈の中でそのような一節があったということでございますが、もうそれから既に十年以上が経過しており、その間、様々な方々の御意見も聞き、自分なりに勉強もして、必ずしも当時と同じ考えをしているわけではありません。私は、今、教育勅語の中で、今も普遍的な価値として、夫婦仲よくとか兄弟仲よく、そして友達を大切にする、信義を重んじる、そして何よりも世界から尊敬される国を目指そうというところはしっかりと残っているということを申し上げたということでございます。
○井上哲士君 ですから、この「一旦緩急アレハ」というところはどうなんですかということを聞いているわけですが、まともなお答えがありません。
 では、この教育勅語と大臣の行動に関してお聞きするんですけど、教育勅語で重大な事態があれば天皇のために命投げ出せと教え込まれた子供たちが、靖国で会おうといって戦争にかき立てられました。大臣は、昨年末、総理とともに真珠湾を訪問されました。総理はそのときに、戦後、不戦の誓いを堅持してきたと、こういう演説を真珠湾で行われたわけですね。ところが、稲田大臣はその直後に靖国神社を参拝をされました。総理の演説である不戦の誓いにこれ反するんじゃないでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 私は、靖国を参拝した後に申し上げましたように、いかなる歴史観に立とうとも、自分の国を守るために出撃した方々に対して感謝と敬意とそして追悼の誠を表するという一国民としての心の問題として参拝をしたということでございます。
○井上哲士君 防衛大臣として記帳されているんですね。
 そして、大臣は、やはり「ウイル」という雑誌の二〇〇六年九月号でこう言われています。靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、祖国に何かあれば後に続きますと誓うところでないといけないんですと、こうはっきりと述べられているんですよ。不戦の誓いという総理の演説とも、不戦を誓った憲法とも、これは相入れないんじゃないですか。
○国務大臣(稲田朋美君) 何度も申し上げておりますように、その対談をしてから十年以上たっております。全く同じ考えをしているわけではありません。また、私は、国益のために命懸けで職務に当たるということ、そして一般的な意味において自分の国を命懸けで守っていくということ、そういった気概を持つということの大切さということは今も維持をしております。
 その上で、靖国参拝につきましては、先ほど申し上げましたように、いかなる歴史観に立とうとも、自分の国のために命をささげた方々に感謝と敬意と追悼の誠をささげるということでございます。
○井上哲士君 では、この雑誌で述べた靖国神社というのは不戦の誓いをするところではないんだと、この発言はもう取り消されるということでよろしいですか。
○国務大臣(稲田朋美君) 今私は、防衛大臣としてこの場で答弁をいたしております。十年以上前の一政治家としての発言、しかもその中の一行ですね、いろんな文脈の中で、また長い対談の中で申し上げたことを取り消すとか取り消せないとかという問題ではないというふうに思っております。
○井上哲士君 あなたが靖国神社に防衛大臣として参拝をしているから私は聞いているんですよ。そんな昔の話じゃないんです。今現在問われている問題なんですね。
 教育勅語が憲法と相入れないということはもう国会では決着済みであります。一九四八年六月二十日に衆議院の本会議で教育勅語等排除に関する決議、参議院本会議では教育勅語等の失効確認に関する決議がそれぞれ採決をされております。
 衆議院の決議では、教育勅語などの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基づいている事実は、明らかに基本的人権を損ない、かつ国際信義に対して疑点を残すものとなる、よって憲法九十八条の本旨に従い、衆議院は院議をもってこれらの詔勅を排除すると、こうしているんですね。
 憲法九十八条、もう当然御存じのとおり、この憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為全部又は一部はその効力を有しない。つまり、憲法九十八条の本旨に従って廃止をしたというのは、この教育勅語は憲法に反するというのが衆議院の決議なんです。この衆議院の決議、大臣はお認めになりますか。
○国務大臣(稲田朋美君) 教育勅語についての解釈は防衛大臣の所管ではなく、その憲法上の解釈についてお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、教育勅語は、戦後の諸改革の中で、これを教育の唯一の根本として神格化して取り扱うことなどが禁止をされて、そして憲法や教育基本法の制定等によりその法制上の効力を失効したものであるというふうに承知をいたしております。
 その上で申し上げれば、私はあくまでも、教育勅語の中にある親孝行とか、兄弟仲よく、友達に対して信義を持って接する、そして世界から尊敬される国を目指すといった点は今も普遍的な価値として生きているということでございます。教育勅語を戦前のように教育の唯一の根本理念として復活させるべきということを考えているわけではございません。
○井上哲士君 このときの結語は、教育勅語の中にはいいこともあるというのを間違いだということでちゃんと報告がされているんです。なぜ教育勅語が憲法に反していることを認めないのか。そこには大臣の驚くべき憲法観があります。
 大臣は二〇一二年の四月三十日に、靖国神社で開催された谷口雅春先生を学ぶ会の講演、行事で講演をして、こう述べております。ユーチューブでも今も見れます。憲法をなめるように勉強している牛乳瓶の底の眼鏡みたいなのを掛けた裁判官がいっぱいいるんですよ。視野狭窄になってしまって、憲法は正しいと信じている。大体弁護士とか検察官とか、特に弁護士会ってとても左翼的な集団なんですね。なぜかというと、今の憲法が正しいと信じている憲法教という新興宗教がはびこっているんですねと、驚くべき発言をされております。
 裁判官や検察官が憲法に基づいて職務を行うことをやゆをする。憲法が正しいと信じて司法の職務に当たる者が視野狭窄なんですか、新興宗教なんですか。そんなことを言ったらもう司法は成り立たないですよ。この発言されたことを認めますね。
○国務大臣(稲田朋美君) それは、今、二〇一二年ですか、野党時代の一議員の講演の一節を取られているんだと思います。
 私は今、閣僚として憲法を尊重し、擁護することは憲法上の義務であり、当然であるという立場に立って職務に邁進しているところでございます。
○井上哲士君 ですから、今おっしゃいました、憲法尊重擁護義務を持つ大臣だと。そういう大臣が、憲法を正しいと信じることは視野狭窄で新興宗教だと。そんな裁判官や弁護士や検察官がいっぱいいると。こんな発言をしている人自身が大臣になる資格がそもそもないんですよ。これを撤回、まずしていただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(稲田朋美君) 私は何度も言っておりますように、日本は法治国家です。そして、憲法遵守義務がございます。そして、私はその講演の中で、今ユーチューブで見られるとおっしゃっておられますので、その中の一行、一行というか、そういうことを申し上げたんでしょうけれども、その一政治家としての発言を取り消す、取り消さないということではなくて、私は法律家でもありますし、憲法遵守義務があること、そして日本が法治国家で現行憲法を基本に全て戦後の行政も行われていること、それはしっかりと認めております。
 したがいまして、閣僚が憲法を尊重し擁護することは憲法上の義務であり、当然であるというふうに考えております。
○委員長(宇都隆史君) 時間を過ぎておりますので、おまとめください。
○井上哲士君 時間ですので終わりますが、そういうことと反することをあなたは発言をされてきたんです。そもそも大臣になる資格がなかったと、私は辞任すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

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