国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2017年・193通常国会 の中の 本会議(日米、日英、日豪物品役務相互提供協定(ACSA)の承認案に対する反対討論)

本会議(日米、日英、日豪物品役務相互提供協定(ACSA)の承認案に対する反対討論)


○議長(伊達忠一君) 井上哲士君。
   〔井上哲士君登壇、拍手〕
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私は、会派を代表して、日米、日豪、日英三つの物品役務相互提供協定に反対の立場から討論を行います。
 まず、米国トランプ政権が行ったシリアへの空爆についてです。
 化学兵器の使用は、誰によるものであれ、人道と国際法に反する重大で許されない残虐行為であります。だからこそ、真相解明を行い、使用した者に厳しい対処を行い、二度と使われないようにするため国際社会が国連を中心に一致協力することが必要です。
 化学兵器禁止機関、OPCWは、六日、調査に着手したと発表し、国際的な真相究明の努力が始まったところでした。にもかかわらず、米国が、アサド政権が使用したと断定した上、安保理決議もないままに空爆を行ったことは国連憲章と国際法に違反するものであり、真相解明とシリアの内戦問題の解決に逆行するものであります。
 この空爆について、安倍総理が、米国の決意を日本政府は支持すると表明し、理解するとしたことは重大です。昨日の外交防衛委員会で、シリア政府が化学兵器を使用したのかについて、外務大臣は、国際機関が調査中と答えました。米国の空爆の国際法上の根拠について、総理は、米国の考えを聴取していると答弁しました。何も根拠がないまま支持を表明したことになるではありませんか。
 トランプ大統領の六日夜の声明では、化学兵器の使用と拡散を防ぐことは米国の安全保障上の重要な利益だと今回の攻撃を合理化しました。米国の利益のために必要だとアメリカが判断すれば、国連憲章や国際法を無視しても許されるというものであり、日本政府の支持表明はこうした立場に追随するものと言わなければなりません。
 これに関わり、トランプ政権が北朝鮮に対する軍事力行使につながりかねない極めて危険な動きを強め、安倍政権がこうした動きを手放しで歓迎する姿勢を取っていることは重大であり、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とした日本国憲法に照らして許されません。
 米軍がシリアで行ったような先制的軍事行動を行えば、韓国、日本を巻き込んだ深刻な武力紛争に発展し、おびただしい犠牲が出ることは避けられません。米国は、国際社会と協調して経済制裁の厳格な実施、強化を行いながら、北朝鮮との外交交渉に踏み切り、その中で北朝鮮の核・ミサイル開発の手を縛り、それを放棄させるという選択肢こそ取るべきであります。
 安倍政権は、軍事力行使を選択肢とすることを歓迎する姿勢を改め、米国に対し、軍事的選択肢を取るなときっぱり求め、外交的解決の立場に立つよう強く働きかけるべきであります。
 三つの協定は、世界規模で展開する米国の軍事作戦の遂行に不可欠な物資や役務を、米軍が必要とするとき、いつでも調達できる集団的軍事支援網を構築するためのものであります。さらに、多国間の軍事協力の推進強化を明記した日米新ガイドラインの下、米軍を頂点とする日米豪英四か国の軍事体制を強めるものであります。
 この間、アメリカの起こしたアフガニスタン報復戦争やイラク戦争は、多くの市民の命を奪うとともにテロの温床を広げる結果となりました。こうしたアメリカの無法な戦争に世界的規模で兵たん支援を行うなど断じて許されません。
 総理は、本会議で、国際法上違法な武力行使を行う国に対して、ACSAの下での物品、役務の提供を含め、協力を行うことはあり得ないと答弁しました。しかし、安保理決議もないまま、米軍のシリア攻撃を国際法上の根拠も確かめずに支持を表明した対米追随の姿を見れば、米国の違法な武力行使への協力は、あり得ないどころか、ますますその可能性が高まったと言わざるを得ません。
 さらに、本三協定は、安倍内閣が憲法も国民の声もじゅうりんして強行した安保法制、戦争法により、日本が提供する物品、役務の内容が拡大されたことを反映させたものであります。
 日米間では、従来は武力攻撃事態等における活動のみに可能とされていた弾薬の提供が全ての事態で可能となります。さらに、協定の適用対象は、多数国間訓練、国際連携平和安全活動、存立危機事態、重要影響事態、国際平和共同対処事態などに大きく広がります。憲法違反の安保法制と一体のものであり、到底容認できません。
 憲法九条は、自衛隊が海外で軍事活動を行うことは想定していません。ところが、政府は、これまで、武力行使と一体にならなければ活動が可能とし、兵たん支援も可能としてきました。さらに、安保法制では、現に戦闘行為が行われている現場以外なら、それまで戦闘地域とされた地域でも米軍への兵たん活動を可能にしました。その際、政府は、現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる地域を実施区域に指定するので、武力行使と一体化は生じないとしました。
 しかし、PKOで自衛隊の部隊を派遣した南スーダンの首都ジュバでは、昨年七月に政府軍と反政府勢力による大規模な戦闘が起き、自衛隊の宿営地にも銃弾が着弾しました。政府の説明どおりなら、停戦合意が機能し戦闘などないはずの場所であるにもかかわらず、実際には戦闘が起きていた事実は重大であり、武力行使との一体化は生じないとする政府の説明の論拠は崩れていると言わなければなりません。
 ましてや、日々情勢が大きく変わる戦闘現場に近い、いわゆる従来の戦闘地域でも兵たん活動を可能にすることは、まさに戦闘に巻き込まれる危険性を高めるものであります。
 戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油も、周辺事態法では憲法上慎重な検討を要する問題だとして除外されたにもかかわらず、安保法制で可能にされました。大森元内閣法制局長官は、安保法制の際の参考人質疑で、一体化の典型的な事例だから憲法上認められないよということで議論が打ち切られたと当時の政府の検討過程について証言しました。極めて重要です。
 ところが、安倍政権は、当時と同じ要素を挙げて慎重に検討したなどとしながら、憲法上できないとしていたことをできると結論だけ変えたのです。驚くべきことです。
 憲法は全く変わっていません。それにもかかわらず、百八十度異なる結論を出したことは全く説明が付きません。従来は、憲法上できないと説明してきた集団的自衛権の行使を、憲法解釈の変更によってできるとした問題と同様、安倍政権に憲法を尊重する意思がみじんもないことをあらわにするものと断ぜざるを得ません。
 以上、協定の承認に断固反対する意見を述べるとともに、憲法違反の安保法制と閣議決定の廃止を求めて、一層市民と野党の共闘を広げることを強調して、討論を終わります。(拍手)

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