○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
安倍政権が二〇一四年四月の一日に武器輸出三原則を撤廃をして防衛装備移転三原則を決定し、武器輸出の禁止から推進の道に踏み出して三年が経過をいたしました。
まず、防衛大臣にお聞きしますが、この新三原則を決定以降、重要案件としてNSCの決定を経て移転をされたもの、その相手国を挙げていただきたいと思います。
○国務大臣(稲田朋美君) 防衛装備移転三原則及び防衛装備移転三原則の運用指針に従い、これまで国家安全保障会議で審議した結果、海外移転を認め得る案件に該当することを確認した案件は、ペトリオットPAC2の部品、シーカージャイロの米国への移転、英国との共同研究のためのシーカーに関する技術情報の移転、豪州との潜水艦の共同開発・生産の実現可能性の調査のための技術情報の移転、イージスシステムに係るソフトウエア及び部品等の米国への移転、豪州将来潜水艦の共同開発・生産を我が国が実施することとなった場合の構成品等の豪州への移転、TC90等のフィリピンへの移転の六件でございます。
○井上哲士君 今、六件挙げられました。この武器輸出三原則の撤廃をやめよという質問をした際に、当時の小野寺防衛大臣は、委員はまるで武器というような話をされるが、海外で復興支援のために自衛隊が持っていくブルドーザー、こういうものも武器という範囲になっちゃうので、こういうことをクリアするんだと、こういうふうに答弁をされました。ブルドーザーの話だと言われましたけれども、実際には、今挙げられたように、武器そのものに関する輸出や共同開発が、共同研究が行われてきました。
更に防衛大臣にお聞きしますけれども、この武器輸出三原則撤廃の議論の際に、安倍総理は、武器輸出によって経済成長を図るということは考えていませんと本会議で答弁をされました。また、この三原則撤廃後に防衛装備庁が設置をされた際に、経団連が、安保関連法の成立で自衛隊の国際的な役割の拡大が見込まれる下、武器輸出を国家戦略として推進すべきであると提言をいたしました。これに対して総理は、積極的に武器輸出する方針に展開したというものではなく、政府としてこれまで同様、厳正かつ慎重に対処する方針に変わりはありません、武器輸出を国家戦略として推進するといったことは全く考えておりませんと、これも本会議で答弁をされましたが、この立場は現在も政府は変わりはないでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 平成二十六年に策定された防衛装備移転三原則は、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念、これまで平和国家として歩みを引き続き堅持した上で、従来の武器輸出三原則等の例外化の実例を踏まえ、これらを包括的に整理しつつ、新たな安全保障環境に適合すべく定めたものです。
防衛装備移転三原則は、防衛装備の海外移転に係る手続や歯止めを今まで以上に明確化し、透明性のあるルールを内外に示すものです。このように、積極的に武器輸出する方針に転換したり、移転を大幅に解禁したりするといったものではありません。
政府といたしましては、これまで同様、防衛装備の海外移転について厳正かつ慎重に対処する方針に変わりなく、武器輸出によって経済成長を図るといったことや、武器輸出を国家戦略として推進するといったことは考えてはいないということでございます。
○井上哲士君 変わりはないという話であります。しかし、実際には、防衛省はこの三原則の撤廃直後の二〇一四年六月に防衛生産・技術基盤戦略を策定をしました。そして、日米新ガイドラインには、日米間の防衛装備・技術協力の発展、強化が盛り込まれ、二〇一五年には防衛装備庁も設置されるなど、武器輸出の推進体制がつくられてきたわけであります。
大臣、更に聞きますけれども、お手元に国内防衛産業の最大手である三菱重工が昨年六月に防衛・宇宙ドメイン事業戦略説明会を行った、その際の資料をお配りをしております。(配付資料①(17年4月25日外防委).jpg配付資料②(17年4月25日外防委).jpg)企業の側がどう考えているのかということなんですね。
資料一枚目、下の段、十一ページと入っているところでありますが、これを見ながら聞いていただきたいんですが、この説明会では、この取締役、常務執行役員が、二〇一六年度の事業方針、戦略について説明をしております。三つの成長戦略に基づき活動を推進するとしております。資料を見ていただきますと、この三つの成長戦略の第一に掲げられているのが海外展開なわけですね。そこには、防衛装備移転三原則をてこに海外展開と述べられております。
大臣は経済成長は考えていないということでありますが、まさに新三原則による武器輸出が成長戦略そのものとして、そのてことして位置付けられているというのが実態ではないでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。
防衛省といたしましては、企業の内部におきます検討ですとか取組についてお答えする立場にはございません。政府の立場として申し上げましたのは、先ほど大臣から御答弁いたしましたとおり、経済成長を目的に武器輸出、済みません、防衛装備品の移転を推進するですとか国家戦略として位置付けるといったような考え方は持っていないところでございます。
○井上哲士君 しかし、今も言いました、先ほども述べましたように、政府自身が戦略を策定をして、装備庁もつくって業界全体を支援をしているわけですね。
さらに、企業側がどう考えているのか、資料を見ていただきたいんですが、二枚目の上の段、十二ページのところでありますが、この三つの成長戦略が示されて、その第一である海外展開について、既定路線と新規海外案件の提案活動、この二つの柱が提示をされております。この説明会で常務執行役員はこういうふうに説明しているんですね。一つは既定路線。従来の武器輸出三原則といった頃から例外として始まっていたF35のFACO、最終組立て検査の事業と日米共同のSM3、この二つはかなり具体的なフェーズに入ってきている。もう一点、新規海外案件の提案活動をどう加速するかと、こう述べております。
資料では、この新規海外案件について、装備品の共同開発等に係る政府方針、枠組みに従い、関係省庁と十分の連携の上で活動を推進していると言っておりますけれども、こういう三菱重工の新規海外案件の提案活動について、防衛省はどのように連携をしているんでしょうか。
○政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。
防衛装備の海外移転につきましては、外為法の運用基準でございます防衛装備移転三原則に従いまして、国際社会への平和と安定へのより一層積極的な貢献ですとか諸外国との安全保障協力の強化などといったことを目的として進めているところでございます。
防衛省は、このような防衛装備移転三原則の考え方を平素から企業などに御説明をするとともに、企業からの各種の御質問への対応を行うなど、防衛装備の適切な海外移転に向けて各企業と緊密な連携を行っているところでございます。
なお、個別の防衛装備を実際に海外移転するに当たりましては、防衛装備移転三原則に従って厳正かつ慎重に対処してまいることは言うまでもございません。
○井上哲士君 さらに、二枚目下側の十七ページでは、海外の新事業について、技術と経験を生かして、新たな国際共同開発事業への参画と題して、国内防衛、宇宙産業で培った先端技術の活用とともに、国際共同事業、ライセンス事業で培ったチャネルの活用というのを掲げております。
三菱重工はPAC3のライセンス生産も行っているわけでありますが、これまで同社がライセンス契約で製造してきた戦闘機及びその機数について示していただきたいと思います。
○政府参考人(田中聡君) お答え申し上げます。
これまで三菱重工業が主契約企業としてライセンス生産してきた戦闘機には、F86、F104、F4及びF15がございます。これらの戦闘機の生産機数はそれぞれ、F86は三百機、F104は二百三十機、F4は百四十機、F15は百九十九機となっております。
○井上哲士君 三菱重工は、そうしたライセンス事業で培ったチャネルの活用ということを先ほど申し上げたように掲げているわけですね。
この説明会で、この常務はさらに、アメリカの大手防衛産業、防衛企業、我々がライセンス生産をさせていただいた企業との間で何かを共用できないかという話を我々のできる範囲で進めてまいった、もちろん具体的な技術情報の交換になるわけだから、その前には貿易管理令を踏まえてEL、エクスポートライセンスの取得も必要になる、ELの取得の手前くらいまでは幾つか進んできているというふうに昨年の六月十日の時点の説明会で述べているわけであります。EL、輸出承認書の取得の手前まで進んでいる案件が複数あると明確に述べているわけですね。
先ほど、連携内容について、具体的ないろんな質問への回答とともに、個別については審査をしていくという話でありますが、省庁との具体的な連携なしにここまで踏み込んだ話は私はできないと思うんですね、取得の手前まで来ていると。具体的にはどのような装備品について、武器について、この輸出承認書の手前まで進んでいるということなんでしょうか。
○政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。
各企業におかれましてはそれぞれ関係の海外の企業との間で緊密な協力を行っているものと承知をしておりますが、防衛省といたしましては、企業の内部における検討ですとか、あるいは取引の詳細についてお答えする立場にはないと認識をしているところでございます。
○井上哲士君 個別装備品の名前はともかく、そういう輸出承認書の取得の手前くらいまで続いている案件が複数あると、このことはよろしいですか。
○政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。
繰り返しのお答えになって恐縮ではございますけれども、各企業はそれぞれ関係する外国企業を含めまして様々な意見交換なり情報交換を行っていると承知をしておりますが、防衛省としましては、企業の内部における検討、取組についてお答えすることは差し控えるべきものと考えております。
○井上哲士君 単なる意見交換ではなくて、輸出承認書の手前まで来ているということを明確に言っているので、それが複数あると。
そこで、私、去年の二月十二日に発行された名古屋の三菱重工労組名航支部のニュースを今手に持っておりますが、ここにはF15関連輸出事業検討に関わる特別暫定期間外協定締結の件というのが掲載をされております。
ここでは、まず、会社側が暫定時間外協定提案した背景としてこう述べております。今後の防衛事業は、武器輸出三原則の緩和に伴い、従来の既存事業を堅持するだけでなく、これを基盤とした国際協業、さらには拡張などへの展開を目指していると。その一環として、F15について、今年度下期よりライセンサーと協業した米軍への部品輸出検討を開始し、年度末にかけて提案活動が本格化する状況になったというものなんですね。
そして、こういう業務の遂行のために担当の航空機整備業務課のキーマンの参画が不可欠であって、従来の労使協定の制限を超える特別暫定時間外協定を締結したいと、年間の超過時間限度は六百九十時間を超え、七百八十時間とさせていただきたいと、こういう中身になっております。
ですから、労働組合との関係で既にF15という戦闘機の名前を明確に挙げて、ライセンス元企業と協業した米軍への武器輸出の提案活動が本格して超多忙になるので、時間外労働を認めると、こういう提案なわけですね。そこまで米側企業への提案が本格化しているということを示しているわけでありますが、この輸出承認書の手前まで進んでいるという幾つかのうちの一つがこのF15の米軍への部品提供、輸出ということではないんですか。
○政府参考人(中村吉利君) 度々の御答弁になって恐縮ではございますが、防衛省といたしましては、企業内部における検討、取組についてお答えする立場にはございません。
○井上哲士君 その企業内部で本当に手前まで議論が進んでいるんですね。
この労働組合のニュース見ますと、なぜそのキーマンに負荷が集中するかについて、既存国内事業で実施しているコストの積み上げプラス利益に対し、輸出相手国の契約条件や会計基準に基づいてリスク要素を加味した高い利益確保の方策を検討する必要があると、ここまで述べているわけですね。
つまり、相手側の国の状況に従って高い利益確保の方策を検討すると、ここまで具体的に踏み込んだ検討があるからこそこういう特別の時間外労働が必要だと、こういうことになっておるわけですね。まさにこのF15の部品について輸出許可の手前まで来ているからこそ、こういう具体的な検討が必要になっていると思うんです。
なかなかお答えになりませんので、じゃ、聞き方を変えますが、一般論で聞きますけど、防衛装備品の輸出について、企業が防衛省と事前相談なしに外国企業と輸出許可手前まで話を詰めると、こういうことが一般に行われているんでしょうか。
○政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、防衛関連産業との間では様々な形で意見交換、情報交換、あるいは我々として彼らの質問にお答えをするということで緊密に連携をしているところでございます。
輸出案件がどのような形で具体化していくのかというのはそれぞれのケースによりまして区々であろうと考えておりますので、一般化してお答えすることは差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、政府といたしましては、先ほど来申し上げておりますとおり、防衛装備移転三原則に基づきまして、防衛装備品の海外移転につきましては厳正に検討してまいるというところには変わりはございません。
○井上哲士君 防衛省や装備庁と事前相談もなしにいきなり、これで輸出承認証出ますかというふうなこと出てくるんですか。やはり事前に様々な質問も含めて詰めがあると思うんですけれども、そういうことは当然認められますね。
○政府参考人(中村吉利君) 先ほど申し上げましたとおり、防衛関連産業との間では様々な形で意見交換を行っております。その中で、彼らからいろいろ質問もされることもありますし、我々として防衛装備移転三原則の考え方を御教示するということもございます。
そういったこともございますので、様々な形でどういった案件が動いているのかということは事前に知り得ることは間々あり得ることだというふうに考えております。
○井上哲士君 そういうふうにやっていらっしゃるということであります。
先ほど紹介した常務の説明では、我々は防衛省さんなり経産省さんなりに御相談して次のフェーズに進んでいくことになるというふうに述べているわけで、この発言からもう十か月たっているわけであります。ですから、あの時点で承認手前のものが幾つかあるというふうに言われているわけでありますけれども、明確にこういう形で成長戦略と位置付けて各企業がやっているということなんですね。
この新三原則の下でライセンス元に部品を納入した場合に、そこから第三国に輸出することについては、日本側の事前に同意は求められるんでしょうか。
○政府参考人(中村吉利君) お答え申し上げます。
防衛装備の海外移転に当たりましては、防衛装備移転三原則及びその運用指針に基づきまして、海外移転後の適正な管理を確保するため、原則として目的外使用及び第三国移転について我が国の事前同意を相手国政府に義務付けるということとしているところでございます。
ただし、今委員御指摘の、部品などをライセンス元に納入するという場合につきましては、防衛装備移転三原則及びその運用指針、ここに書かれてございますけれども、仕向け先の管理体制の確認をもって目的外使用及び第三国移転に係る適正な管理を確保するということも可能になっているところでございます。
○井上哲士君 日本側の同意を得ることなしに第三国輸出が可能なわけですね。既にPAC2は、部品を輸出したPAC2はカタールに第三国輸出がされているわけでありますし、米軍向けのF15の製造は既に終了しておりますけれども、輸出用は製造が続けられて、サウジやカタールとの契約も行われております。
初めに言いましたように、総理自身が、そして今大臣も武器輸出によって経済成長を図ることは考えていない、積極的に武器輸出する方針に展開したことはないというふうに言われましたけれども、現実にはこういう形で各企業が様々な提案活動を行い、それを政府が支援をし、総理先頭に外国へのトップセールスも行うなど、事実上の国家戦略として進められているというのが実態だと思います。
憲法九条を持つ日本の国家戦略の基本は平和外交でありますし、紛争を助長するような武器輸出というものは全く反しておりまして、武器輸出で栄えるような国になってはならないと、武器禁止に立ち戻るべきだということを申し上げまして、質問を終わります。
外交防衛委員会(武器輸出三原則撤廃と三菱重工によるF15部品の輸出事業検討)
2017年4月25日(火)