○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
まず、北朝鮮問題についてお聞きいたします。
北朝鮮の核・ミサイル開発は、安保理決議、日朝平壌宣言などに違反するものであり、許されるものではありません。国際社会が一致した圧力と対話でこそ、政治的、平和的な解決を図ることが必要であります。
一方、アメリカは、この間、あらゆる選択肢を強調して、先制攻撃も辞さないという姿勢を示しております。しかしながら、この先制攻撃は韓国や日本も巻き込んで重大な事態を起こします。
四月の二十六日にアメリカの下院軍事委員会の公聴会でハリス太平洋軍の司令官が証言をしておりますが、議員から北朝鮮に対してどんな種類の先制攻撃オプションを持っているのかと聞かれて、先制攻撃が行われれば韓国において多くの韓国人、米国人が死亡することになりかねない、この評価に同意するかと、こういう質問に対してハリス司令官は、一方において、北朝鮮が核武装の目的や金正恩がやると言ったことを達成すれば、より大勢の韓国人、日本人、米国人が死にかけるということだと、こういう答弁をしております。それに対して議員が、そのシナリオでは韓国において大勢の韓国人や米国人が窮地に立たされるだろうと、こう質問しますと、ハリス司令官はもちろんだと、こういうふうに答弁をするわけですね。これは、つまり核の使用をされれば、核攻撃になればより多くの被害が出るんだから多少は仕方がないと言っているようにも聞こえるような、大変私は重大な発言だと思います。
それに対して、日本はこうした軍事的選択肢を評価をして、先日の予算委員会の衆議院での総理の答弁は、こういう先制攻撃についてアメリカにやめろとは言えないと、こういう答弁でありました。しかし、今、アメリカの公聴会でも示されたようなこういう軍事的な衝突になった場合、先制攻撃を行った場合に、日本や韓国に大きな被害が及ぶということに対してのまず大臣の認識をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) 北東アジア地域において軍事衝突が起こった場合、これは我が国や韓国の国民生活に重大な影響を及ぼすことになる、これは言うまでもないと思います。よって、平和的、外交的に問題を解決することが重要であると認識をしています。
そして、その上で、米国との関係で申し上げるならば、日米間においては累次の首脳電話会談、そして、最近では四月二十八日に日米韓外相会合も開きました。そうした様々な機会を通じて緊密な連携を行っているわけですが、政策のすり合わせというものが極めて重要であると認識をしています。
引き続き、米国とも連携しながら、北朝鮮に対して更なる挑発行動の自制、そして累次の安保理決議等の遵守、これをしっかりと働きかけていかなければならない、このように考えます。
○井上哲士君 政策のすり合わせが重要だと言われましたけれども、見ている限りはアメリカのこういう先制攻撃も辞さないという選択肢について日本が一方的に評価をしていると、こういうふうにしか我々には見えないわけですね。
国連でもこういう流れには懸念の声が上がっております。大臣も出席された四月二十八日の安保理の閣僚級会合でグテレス事務総長が、国際社会は緊張関係を管理し、緩和する取組を強めなければならないと、北朝鮮による安定を損なう活動を相殺しようとして軍備競争と緊張の激化をもたらしかねないことをとりわけ懸念していると、こういうふうに述べて、双方の判断のミスや誤解によるものも含めて、軍事行動が拡大する事態は避けるべきだということを強調しておりますけれども、大臣もこの会合には参加をされていると思いますが、どういうふうに受け止められたでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 北朝鮮は昨年来、二回の核実験、そして三十発以上の弾道ミサイルを発射しています。さらに、国際社会の警告にもかかわらず、四月二十八日の御指摘のこの安保理閣僚会合の直後にも弾道ミサイルを発射する、こうした挑発行動を強行しています。こうした行動、これは我が国を含む地域及び国際社会に対する重大な脅威であり、断じて容認することはできません。
そして、御指摘のグテレス国連事務総長のこの発言ですが、まずは北朝鮮が安保理決議等を無視し核兵器、弾道ミサイルの開発を継続してきたことを最も強い表現で批難をしている、この批難がまず基本であります。その上でこの発言を続けているわけでありますが、その中にあって、我が国としては、この新たな段階の脅威となっている北朝鮮の脅威に対し、日米韓の安全保障協力を進めていくこと、これはもう不可欠であると考えており、この日米韓三か国、これは日米同盟あるいは米韓同盟、こうした抑止力、対応力を強化しているというのが我が国のこの対応のありようであります。
引き続き、更なる挑発行動を自制し、そして累次の安保理決議等を遵守するよう求めていかなければならないと考えます。今のこの基本的な方針に基づいてこの連携を深めていきたい、このように考えています。
○井上哲士君 もちろんグテレス氏が言っているように、このような挑発行動は厳しく批判をされなくてはなりません。しかし同時に、それへの対応が軍備の競争と緊張の激化をもたらしかねないと、双方の判断ミスや誤解によるものも含めて、軍事行動を拡大をすることに対して懸念を表明している、このことを私はしっかり受け止めるべきだと思うんですね。
その中で、今六か国協議に参加をする各国でも新たな動きがあることが注目をされます。今日も様々な朝から議論がありますけれども、米国は、あらゆる選択肢を言いつつ、一方で、四月二十六日にはティラーソン、マティス、コーツによる対北朝鮮共同声明を発表をいたしました。大統領のアプローチは、経済制裁を強化し、我々の同盟国、地域パートナー国と共同した外交的措置を追求することで北朝鮮に圧力を掛け、核・弾道ミサイル、拡散計画を撤退させることだとして、我々は北朝鮮に緊張を緩和し、対話の道に復帰するよう説得するというふうにしております。私どもはこの共同声明には注目をしておりますし、さらに、これも午前中もありました、五月の九日に日経新聞も報道しておりますが、アメリカが中国に説明をしたとされる北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄した場合の四つのノーというものですね。北朝鮮の体制転換は求めない、金正恩政権の崩壊は目指さない、朝鮮半島を南北に分けている北緯三十八度線を越えて侵攻することはない、朝鮮半島の再統一を急がないと、この四つが示されたと言われております。
これも私は非常に重要なことだと思うんですが、こうした北朝鮮に対話の道復帰を求めるという、こういう一連の米国の発言についてはどういう認識を持っていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 先ほども申し上げたように、日米間においては緊密に政策のすり合わせを行ってきています。そして、北朝鮮との意味ある対話をするためには、北朝鮮が非核化に向けた真剣な意思、あるいは具体的な行動を示すことが重要だと考えます。そのためにもまずは圧力を掛けていくことが必要であると考えます。そして、この点については我が国と米国政府の立場、これは完全に一致していると考えます。
そして、御指摘のティラソン国務長官、マティス国防長官、コーツ国家情報長官による共同声明ですが、この中で、米国政府として外交的、経済的手段を通じて北朝鮮に対する圧力を強化する方針、これを示しています。また、ティラソン国務長官による国務省職員に向けたスピーチにおいては、ティラソン国務長官、正しい条件の下で北朝鮮と対話する用意があるが、交渉のテーブルに着くための交渉を北朝鮮と行うつもりはない、こうした発言もされておられます。
こうした姿勢、これは我が国の立場と軌を一にするものであると認識をしています。引き続き、米国を始め関係国と緊密に連携しながら、北朝鮮に対して自制を促していきたいと考えます。
○井上哲士君 これも朝からの議論の中で、改めての確認でありますが、この四つのノーの中で、体制転換を求めない、政権崩壊を目指さないというものがあるわけでありますが、この点も日本政府として同じ立場だということでよろしいんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 四つのノーの中の、北朝鮮の体制転換を求めない、そして政権の崩壊を目指さない、この二点について我が国と考えは一緒かという質問ですが、この二点については我が国の考え方と同じであると思っています。我が国として目指しているのは、朝鮮半島の非核化であります。この二点につきまして、我が国として意見の食い違いはないと考えています。
○井上哲士君 中国もこの共同声明については、対話と協議を通じた朝鮮半島問題の解決が唯一で正確な道だと強調しておりますし、そして、ロシアのプーチン大統領も六か国協議の必要性について日ロ首脳会談のときの会見で表明するなど、様々新しい動きがあるわけですが、その中でも、これも今日、朝から議論になっておりますけれども、韓国で新しく文在寅氏が大統領に当選をしたということであります。
就任の演説では、北朝鮮問題の解決のために、必要があればワシントンに飛んでいく、北京と東京にも行く、条件が整えば平壌にも行くと、こういうふうに述べました。総理はこれを受けて、新大統領の当選を受けて、北朝鮮問題で連携して対処すると昨日述べられておりますが、この文政権の誕生というものが今後この北朝鮮問題の解決についてどういうような影響があると考えているのか、そして具体的にどういうふうに連携を進めていくのか、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) おっしゃるように、文在寅新大統領、米国、中国、そして我が国を訪問する用意があると述べた上で、環境が整えば平壌にも行く、こうした発言をされました。
新政権の具体的な政策の中身が明らかになるまでは、これから首相や閣僚の人事などが進む、進んだ先にある話ですので、これは一定の時間が掛かると思いますので、どのような影響が出てくるか今の段階で申し上げるのは難しいとは思いますが、大切なことは、この文新大統領の下、韓国の新政権との間で緊密な連携を図ることであると認識をしております。御紹介ありました総理の発言のとおりであります。この連携を図ることの重要性をしっかり念頭に、この北朝鮮問題に対処していかなければならないと思います。
引き続き、日韓、さらには日米韓、こうした連携の枠組み、しっかりと強化していきたい、このように考えます。
○井上哲士君 北朝鮮の隣国である韓国、海を隔てた日本でありますから、私はやはり共通の認識が要るんだと思うんですね。
最もやはり軍事的脅威に直面しているのは隣の国の韓国であるわけですが、この文大統領だけではなくて、大統領選挙中には四候補とも先制攻撃というのは反対だということを議論で表明をされておりました。
軍事圧力ではなく対話を通じた解決を、その中でも強く掲げた文氏が非常に大きな支持を集めて大統領になったと、このことの理由についてはどうお考えでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 韓国の国内の選挙における様々な動き、さらにはその結果の意味について私の立場から何か申し上げることは控えなければならないと思いますが、ただ、北朝鮮問題に対処するに当たって、我が国としては、米国があらゆる選択肢がテーブルの上にあるということを言葉や行動によって示しているということ、これ抑止力の観点から評価をしています。
一方で、外交的に問題を平和的に解決すること、この重要性については言うまでもありません。是非、米国、韓国との連携をこれからもしっかりと重視をし、北朝鮮問題についても対応していきたいと考えます。
○井上哲士君 韓国は一九九四年のときの危機のこともありました。当時も先制攻撃がアメリカから示唆をされるということでしたけれども、当時の試算でも死者は百万人以上に上って、うち米国人も八万から十万人が死亡するだろうと、こういうことが出される中で、金泳三大統領が強烈に反対をして、これをやめ、カーター訪朝によって攻撃は実行されなかったと、こういう経過があるわけですが、そのとき以上の被害になるんではないかというような指摘もあるわけですね。こういうことはあってはならないという、そういうやはり認識が私は大きいんだと思うんですね。やっぱりそれは、私は日本も共有すべきことだろうと思います。
このように、六か国協議参加の国々で、国際的な圧力の中で対話のテーブルに着かせるという立場の様々な新しい動きが今起きる中で、日本がどういう対応を強めていくのかと私問われると思うんですが。
この間、対話のための対話は駄目だとか、意味ある対話がなければ駄目だということがありますが、私は、意味ある対話をつくり出すための対話ということも含めてあると思うんですね。日本が今、こういう局面の中でアメリカの軍事的選択肢を支持するばかりではなくて、本当にやっぱり対話の道を切り開いていくという上で、更にしっかり独自の立場を持ってやる必要があると思いますけれども、その点いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 対話のための対話では駄目だ、意味のある対話でなければ駄目だということを申し上げていますが、そのためにも、少なくとも非核化に向けた北朝鮮の真剣な意思や具体的な行動が必要であるということを申し上げています。そのために、まずは今、国際社会と連携しながら圧力を掛けることが重要だということを申し上げているわけであります。
是非、こうした考え方に基づいて、対話と圧力、そして行動対行動のこの方針の下で、何が最も効果的なのか、こういった観点から関係国とも連携を深めながら、様々な具体的な対応を検討し続けていかなければならないと考えます。
○井上哲士君 アメリカは八日から非公式接触をしたという報道もありますし、先ほど来述べているような様々な各国の動きがある中で、やはり日本がアメリカの軍事的選択肢を支持するという発言ばかりが目立って、私はやっぱり独自の、日本が果たすべき役割を果たしていないんではないかと強く思います。
その一方で、こういう軍事的対応の強化の流れの中で、安保法制による初めての米艦防護が行われました。先ほど共同訓練については答弁がありましたけど、そこのみ政府は公表して、米艦防護については公表をしないという立場を取っておりますが、もう既に多くが報道されているわけですね。なぜこれは公表しないんでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 海上自衛隊の護衛艦「いずも」と「さざなみ」は、五月一日から三日まで関東南方沖から南西諸島東方沖に至る海域において、米海軍の補給艦とともに海上自衛隊の戦術技量の向上及び米海軍との連携強化を目的として、各種戦術訓練を実施しました。
共同訓練の公表については、個々の訓練ごとに相手方との関係を始めとする様々な要素を総合的に考慮し、公表の有無、時期を判断しており、今般の共同訓練については、米側との調整の結果、事後に海上自衛隊のホームページ等に訓練の概要を掲載することといたしました。
他方、米軍等の警護の公表については、米軍等の能力を明らかにし、その活動に影響を及ぼすおそれがあること、また相手方との関係もあることから、その実施の逐一について公にすることは控えているところでございます。
○井上哲士君 これは実際には全部報道されているんですよね。
安保法制の審議の際に当時の中谷防衛大臣は、こうした共同訓練や警戒監視等においてのこういう警護について、公表を全てするということではないと、こういうふうに言われました。全てするということではないということは公表もあるということだと思うんですけれども、そういうこともあり得るということでよろしいんでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 米軍等の警護に関する情報については、今委員が御指摘になったように、国民の皆様に適切に情報提供して説明責任を果たすという観点から、活動の安全を損なうおそれのあるもの、すなわち、情報公開法第五条三号に規定する、公にすることにより国の安全が害されるおそれ、他国や国際機関との信頼関係が損なわれるおそれがある不開示情報等に該当するものを除き、可能な限り情報を公開をするということでございます。
○井上哲士君 じゃ、なぜ今回の、これだけ実際にはリークをして報道されながら公開をしていないんでしょうか。結局、国民に明らかにすべき情報は秘密にしながら、都合のいいことだけリークをしているというやり方じゃありませんか。
○国務大臣(稲田朋美君) 今御答弁したところを具体的に申し上げますと、米軍等を警護している際に自衛隊又は米軍等に対し何らかの侵害行為が発生した場合など特異な事象が発生した場合には、事実関係を速やかに公表いたします。また、重要影響事態において警護の実施が必要と認められる場合には、あらかじめ警護を実施する旨を公表いたします。また、防衛大臣は毎年米軍等の警護の実施結果についてNSCへの報告を義務付けられており、その内容についても適切に情報公開を行う考えであります。
他方、米軍等の警護を行うのは、米軍等が自らを守る能力が不十分な状況であり、脆弱な状況に置かれている場合です。このため、米軍等の能力を明らかにし、その活動に影響を及ぼすおそれがあること、また、相手方との関係もあることから、その実施の逐一について公にすることは差し控えていただいているところでございます。
○井上哲士君 特異な事象が発生した場合のみ公開するという話でありますが、それは場合によっては戦闘に巻き込まれていくということも起こり得るわけですよ。その時点では、そして、しかも実際には、こういう判断は米側の情報に基づいて現場の自衛官がやっていくということになっていく、私はこれでは国会にも国民にもまともな検証ができないと思うんですね。元々国会のあの議論の答弁のときに、総理自身も国民にできる限りの情報を開示をすると言ってきたわけです。これとも私は反すると思うんですね。
結局......
○委員長(宇都隆史君) 時間ですので、おまとめください。
○井上哲士君 安保法制の実施の実績をつくるというだけのために行われたような、そして、それは結局、軍事的な悪循環を巻き起こすことになるということを指摘をいたしまして、質問を終わります。
外交防衛委員会(北朝鮮情勢、米艦防護の実施)
2017年5月11日(木)