国会質問議事録

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外交防衛委員会(日・インド原子力協定に関する参考人質疑)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、四人の参考人の方、本当に貴重な御意見いただきまして、ありがとうございます。
 まず、川崎参考人にお聞きいたします。
 核兵器禁止条約の制定でNGOとして国際的に奮闘をされてこられたお話がありました。今度の草案にヒバクシャと書き込まれたということは、被爆者や日本の世論や運動の果たしている役割の大きさ、期待の大きさを示したと思うんですが、一方で、日本政府がこの条約交渉をボイコットし、さらにこのインドとの原子力協定を結ぶということになります。
 そうしますと、この協定の締結によって被爆国日本がインドの核保有を事実上容認をし、インドの核保有国としての地位を高めることになると、こういう声があります。私は、これこそ核軍縮、核兵器廃絶の流れに逆行するんではないかと。そういう声も被爆者から上がっておりますが、NGOの活動の中で、こういう日本の対応について、いろんな国際NGOや各国の政府からの具体的な意見などについてお聞きでしたら御紹介いただきたいと思います。
○参考人(川崎哲君) ありがとうございます。
 様々な国際的な核軍縮の会議等にNGOの立場で参加をしてまいりまして、専門家の方々、各国の政府の代表団の方々と話をしながら、この日本の核廃絶政策ということに対する国際的な評価を肌でいろいろと感じることがあります。
 二つの点をちょっと御紹介したいんですが、一つは、やはり日本は、当然アメリカとの関係で、日米安保条約の下でアメリカの核の傘に頼るという姿勢を取っておりますので、その意味で他の多くの例えばヨーロッパのNATO諸国と同じような立場にあるんですけれども、それでも日本は被爆国であるので特別であると、こういう評価は得てきたわけです。
 例えば、この核の非人道性という議論が高まったときに、核保有国や同盟国はほとんどそこに参加しないと。ところが、二〇一三年に岸田外務大臣はこれに参加をするということを表明されて、そのときにやはり、その発表の会議場に私おりましたけれども、あっ、やはり日本はそこは違うんだねと、一歩先に進んだねということを声を掛けられましたし、よくそれは頑張ったんだねと、それは日本国内でそういった世論があることをよく皆さん御存じなんですね。
 ですので、そういう、ちょっと日本は違うんだというそこの評価を得た一方で、今回、禁止条約の問題に関して言いますと、昨年の秋の国連総会で日本が反対投票に転じたときに、言葉はちょっと正確に思い出せませんけれども、お疲れさんというか、お慰めの言葉を多くの政府の方々やNGO関係者に国連会議場の傍聴席で受けたのを覚えております。つまり、やはり被爆国として少し違う姿勢を見せたいという世論があるのはみんな分かっているよ、なのになかなかそれが政策に実現できないのはどうしてかねと、こういう声であります。
 もう一つだけ御紹介したいのは、どうもこの日本の核廃絶の声というのが、諸外国の方々から指摘されることの中で、平和利用の核物質と言われるものに対する認識がちょっと甘いんじゃないかと、こういう声ですね。それは日本自身のことについてもあるんです。日本だってこれまた大変な量のプルトニウムを保有している国でありますけれども、そういったことが大変危険視して議論をされる。例えば、日本が使用済燃料の再処理を六ケ所の工場でやるといったようなことが、核軍縮の会議でどうなっているんだということで専門家から詰め寄られるというようなことが多々あるわけですね。
 ですから、この問題はこのインドの問題にもつながっていると思いまして、いや、インドの核物質、これ平和目的で担保されるから大丈夫でしょうというふうに割と日本国内ではすんなりいってしまうことと、世界的な認識の間に大きなギャップがあると、こういうことを感じます。
○井上哲士君 核兵器禁止条約についてもう一点聞くんですけど、日本政府は、核兵器国が賛成をしないものであれば、もう亀裂を一層深めて核兵器のない世界の実現はかえって遠ざかる結果になると、こういうことで交渉にも参加をしていないわけでありますけれども、こういう今の日本政府の主張、立場についてどうお考えでしょうか。
○参考人(川崎哲君) ありがとうございます。
 これまで多くの兵器が国際条約あるいは国際人道法の下で禁止されてきました。対人地雷、クラスター爆弾、また遡れば化学兵器、生物兵器といった大量破壊兵器ですね。これらの過程を見ていましても、実は、条約が作られて禁止されていき、主要な保有国が参加するのはその後の段階で入ってくるというのはよくあることなんです。
 例えば、対人地雷禁止条約一つ取りましても、アメリカ始め主要保有国はいまだ実は参加しておりません、条約ができてから二十年たちますけれども。それでも、条約ができて規範ができることによって、例えば経済、産業の世界で、あっ、地雷というものはもう悪い兵器なんだと、こういうことが決まったならばもうそういったものの製造はやめようとか、あるいはそういうことを製造している企業にお金を融資するのはやめようと、こういう動きが民間レベルでも出てきて、現実問題としてもちろん地雷の被害はまだ続いておりますけれども、地雷の製造や貿易というのは極端に減ったと、こういうデータが出ておりますので、核兵器禁止条約についても、できたらすぐ核が廃絶されるわけではありませんが、そのような政治、社会、経済的な圧力が核保有国に掛かって、もって核軍縮が促進されるのだというふうに思っております。
○井上哲士君 ありがとうございました。
 戸崎参考人にお聞きしますけど、被爆国日本の役割についてですけど、二〇〇七年の六月の原子力委員会の国際問題懇談会に出席をされてお話をされていると思うんですね。当時の議事録見ますと、被爆国日本がインドと協定を結ぶことはほかの国と大きな違いがある、インドの核兵器はある意味良い核兵器だと位置付けを行っていくことになりかねないという指摘をされて、それでも日米関係などでどうしても結ぶ場合には、CTBTの署名と兵器用核分裂物質生産モラトリアム、この二つが必要だということを強調されていますけれども、こういう御主張と照らして、今回の協定について改めて評価をお願いしたいと思います。
○参考人(戸崎洋史君) ありがとうございます。
 二〇〇七年六月の段階で、私はそのCTBTの署名、それからインドによる核分裂性物質の生産モラトリアム、こちらの二つというものは非常に大事だろうというふうに思っておりました。
 他方、この交渉の過程の中で、インドの核実験に対する考え方というもの、それから核物質の生産の問題、軍民分離の問題、それから濃縮、再処理の問題も含めましてですけれども、そうしたインドの姿勢というものを考えた場合に、なかなかそこまで行くというのは難しいという現実があると。であれば、そこに近づけるための措置というところに持っていくと。それが公文の中で書かれた核実験のモラトリアムだったわけですし、将来的にCTBTを求める、それからFMCTの中で兵器用核分裂性物質の生産モラトリアム、生産禁止というものを求めていくというところはあるわけですけれども、なかなかそこに行きづらいという状況の中で、一歩手前ではあるけれども、その次に向けたステップとして日印協定あるいはインドとの原子力協定というものがあるというふうに考えたというところでございます。
○井上哲士君 そうしますと、ある意味、良い核兵器だという位置付けを行っていくことになりかねないという懸念についてはどうお考えでしょうか。
○参考人(戸崎洋史君) 良い核兵器、悪い核兵器の話というのは、また少し違った文脈になろうかと思いますけれども、少なくともこのインドとの協定を結んだ後も、インドを例えばNPT上の核兵器国と同等であるということを日本は認めているわけではありませんし、インドに対して引き続き非核兵器国として核兵器を放棄してNPTに入るということを求め続けているというわけでございますから、そこまでの、過渡期といいますかステップとしてこの位置付けというものを行ってきているというふうに考えております。
○井上哲士君 ありがとうございます。
 最後に、鈴木参考人、短くて申し訳ないんですけど、やはり福島事故の教訓を生かすという点で、逆に今政府は、だからこそ原発を安全にして輸出するんだという態度、これ被災地からも非常に批判がありますが、本来日本がこの教訓を生かすという点で何を今なすべきかと、いかがお考えでしょうか。
○参考人(鈴木達治郎君) ありがとうございます。
 福島の教訓を踏まえるということで原子力協力を進めるという意味は、安全分野での協力というのはIAEAとかほかの多国間枠組みでもできるわけですね。何も輸出しなくても私はできると思います。
 さらに、先ほど川崎参考人からありましたけれども、まだ国内の福島の教訓を踏まえた最終的な結論も出ていないという状況で原子力輸出をすることが福島の教訓を踏まえての行動だというのは、私はちょっと無理があると思います。
○井上哲士君 ありがとうございました。

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