○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
公職選挙法一部改正案、いわゆる地方選挙ビラ解禁法案について質問いたします。
国民が主権者として政治に参加する機会の保障は憲法に定められたものであって、選挙制度は、国政であれ地方政治であれ、日本の民主主義の土台を成すものであります。この法案で地方選挙のビラが解禁をされ、有権者が地方選挙候補者の政策を知る機会を拡充させる、これは大変重要であり、賛成であります。
そこで、まず提案者にお聞きいたしますが、今回の法案で地方選挙のビラが解禁をされることの意義をどのようにお考えでしょうか。
○衆議院議員(牧義夫君) 井上議員にお答え申し上げたいと思います。
御案内のとおり、現行では、地方議会の議員の選挙運動において、政策等の情報を提供する手段としてビラの頒布が認められておりません。首長の選挙と比較をして、手軽に有権者に政策等の情報を提供する機会が限定されているわけでございます。
昨年、衆参の倫選特においても決議が行われておりますが、そこでは、地方議会の選挙におけるビラの頒布解禁について、有権者が候補者の政策等をより知る機会があることは、選挙において有権者が適正な判断を行い、投票行動に生かすことができるなど、参政権の行使にとって重要であることから、速やかに検討を行い、必要な措置を講ずるものとされていると承知をいたしております。また、全国都道府県議会議長会及び全国市議会議長会からも、ビラの頒布解禁についての強い要望が上がっていたところであります。
このような状況を踏まえて、各会派において御議論をいただいた結果、ビラの頒布解禁について、共産党さんも含めて、全ての会派で合意に至ったものでございます。
○井上哲士君 大変大きな意義がある、とりわけ参政権の行使にとって重要だということでありますが、これは町村議会選挙においても当てはまることだと思うんですね。にもかかわらず、今回、町村議会選挙のビラの頒布解禁は見送られました。
衆議院の質疑では、条例による選挙公営とセットで行うのが適切だという答弁でありました。しかし、当初提案されていた民進党案では、全ての選挙での選挙運動用ビラが解禁になっていたけれども、その後、自公両党による修正により、条例による公費負担を盛り込んで町村議選は解禁しないことになったと、こういう経過とお聞きしております。
先ほどのこの解禁の意義を鑑みますと、公営とはセットせずに、町村議会選挙でも解禁にすべきではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
○衆議院議員(岩屋毅君) 井上議員にお答えをさせていただきます。
まず、ビラの頒布解禁と公営制度をセットで考えた理由についてでございますが、そもそも選挙公営は、資金力のある候補者が有利になることのないように候補者間の選挙運動の機会均等を図るという趣旨に基づくものでございます。そういう考え方の下で、都道府県知事と市長の選挙におけるビラ作成については条例による公営の対象となっております。また、地方議会の声を聞いてみますと、公営の対象となるならばビラの頒布を解禁することに賛成という声が多いと承知をしております。これらを踏まえまして、今回は条例による公営の対象にすることとセットでビラの頒布解禁を行おうとするものでございます。
お尋ねの町村議選におきましては、供託金が不要とされていることもありまして、現行法上、選挙運動用自動車やポスターの作成について、公営の対象とはなっておりません。そのような中でビラの作成費用について公営の対象とすることは、現行法の公営制度全体との整合性に影響があるものと考えた次第でございます。また、全国町村議会議長会からもビラの頒布の解禁については要望は上がっておりませんで、むしろ選挙運動用自動車やポスターの作成について公営の対象にしてほしいという要望が上がっているところでございます。
このため、各党とも協議の上、町村議選におきましては今回はビラ頒布の解禁の対象としないことといたしましたが、しかしながら、先生御指摘のように、町村議選におきましても候補者の政策等を有権者が知る機会を拡充することの重要性は言うまでもないことでございますので、公営制度や供託金の在り方などを他の制度との整合性も含めて、今後、町村議会の声も聞きながら、総合的な見地から検討を進めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 選挙公営制度が資金力による差が付かないようにというお話がありました。逆に言えば、選挙運動に金が掛かる、とりわけ文書図画が金が掛かりやすいということで、従来厳しい規制が掛けられてきたという経緯だと思うんですね。
一方、インターネットを利用した選挙運動が自由化されました。その結果、ネット上では選挙運動をしてどれだけの数に拡散をしても、それによって金が掛かるわけではないと。一方、スマホやタブレットの画面上で選挙の文書を示してもいいけれども、それを印刷したら、で、配布や貼り出しをしたら規制が掛かると、こういうことになっておりまして、私は、ネット解禁した下で金が掛かる選挙というのを理由に文書図画に規制を加えるのは、もはや無理があるんじゃないかなと思っております。
ネット選挙改正審議の際にも、各党の提案者ともこの問題は今後の課題とされておりましたけれども、ネット以外での文書図画も自由化を進めるべきだと考えますけれども、それぞれ提案者から御意見をお聞きしたいと思います。
○衆議院議員(牧義夫君) それでは、民進党ですけれども、先にお答えさせていただきたいと思います。
御質問の文書図画の自由化について、この文書図画というのがどの範囲を指しているのかというのはちょっと定かではございませんが、一般的には、文書図画の配布のために紙代、印刷代など費用が掛かることは申すまでもないことだと思います。その負担感の意味では、金の掛かる選挙であることは昔から変わらず、ビラの頒布には枚数制限があるものと考えております。
公選法における文書図画の頒布は、候補者等が有権者への理解と政策の浸透を図ることができる重要な情報伝達手段であり、参政権の行使の観点で正確な情報の確保が求められることは申すまでもないわけでありますけれども、一方、インターネット等によって様々な情報が多様化して流通する現状において、時代に対応した柔軟性が求められていることは理解をいたしておりますが、その在り方をどうすべきかについては今後の課題として、各方面との意見交換等を通じて、立法府として合意形成が図れるよう努めてまいりたいと思います。
○衆議院議員(岩屋毅君) 先生御指摘のように、文書図画等をもっと自由化すべきではないかという考え方は私どもも理解はいたしますが、そういう意味では今回のものは一歩前進だというふうに思っております。
その他、のぼりの問題でありますとか様々ございますが、自民党といたしましては、選挙制度調査会において党所属国会議員からの具体的な提案を募りまして、今それを取りまとめたところでございます。
選挙運動規制などの見直しは言うまでもなく各党各会派の合意の上でなされるのが望ましいと考えておりますので、これまでの自民党の中や与野党間での取組の経緯などを踏まえながら、多岐にわたる課題の中で何を優先的に取り上げていくべきかを含めて、精力的にこれからも議論を続けさせていただきたいと思っております。
○井上哲士君 今回一歩前進だと思っておりますけれども、是非、各会派にも議論を呼びかけたいと思います。
総務省にも同様のことをお聞きしたいんですが、昨年の十月に日本国民救援会の機関誌に元自治省時代の選挙部長で片木淳さんが登場されておりまして、こう言われているんですね。九九年から二年間選挙部長をしていた、当時もべからず選挙と言われるような日本の選挙運動の規制については問題意識を持っていたけれども、控えていたと。とにかく非常に複雑で、ベテランの職員、プロでも問合せに悩むような状況があると言われた上で、やはり今のこの選挙の規制というのが、表現の自由が最も重要な基本的人権であるとの考えがないような戦前のものを引き継いでいるじゃないかということで言われておりますし、先ほど申し上げたようなインターネットが解禁された下での矛盾ということも指摘をされて、より自由な選挙が必要だということを言われております。
こうした意見、何よりも有権者からもっと自由な選挙活動をという声を総務省としてはどう受け止められて、どういう課題があるというふうに承知されているでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) お答え申し上げます。
現在の選挙運動に対する規制、これにつきましては、金の掛からない選挙の実現、それから選挙の公正確保というような観点から、これまでの国会における審議あるいは各党間の議論を経まして、それぞれ現在のようなルールが設けられてきたものと承知しております。
文書図画の規制を始め、選挙運動の在り方につきましては、選挙制度の根幹に関わる、まさに選挙の戦い方ということに関わる問題でございます。これまでの改正経緯もそのように、国会あるいは各党間の協議というような改正経緯でございますので、各党各会派において御議論いただくべき事柄であると考えております。
○井上哲士君 我々選挙やる側からのいろんな意見もありますけれども、実際に実務を担当されていろんな問合せを受ける側の、やっぱり総務省ならではのいろんな課題と意見も見えてくると思うんですね。そういうものをしっかり出しながら議論を進めていくことが必要だと思います。
今、こういうまだまだ文書図画に規制がある下で非常に重要なのが、私、選挙公報だと思います。地方選挙でも各県や市町村の条例で決められるわけですが、まだ都道府県議会でも五県は制定しておりませんし、町村議会ではしていないところが五五%と非常に多くなっています。これ、是非公報自身を広げたいわけですが、同時に、この公報を選管のホームページに掲載をするということがあります。
東日本大震災のときに、非常に遠隔地に有権者が、例えば避難所におられたり、避難先でも要るということで、見られるようにということで、これ求めまして実現をしたわけでありますが、ほとんどの自治体の選管は選挙が終わると選挙公報をホームページに掲載することをやめてしまって、その確認ができないということになっております。
これについては改善する通達がその後出されていると思いますが、その内容及びその実施の実態はどうでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) お答え申し上げます。
選挙公報とは、候補者等の政見を選挙人に周知し、当該選挙公報が発行される選挙において選挙人が投票するに当たっての判断の材料を提供するために発行されているものと考えておりまして、したがいまして、選挙が終われば一義的には役割を終えることになるというのが基本だと考えております。
ただし、選挙期日後に選挙の記録としてホームページに掲載することまであえて差し控える必要はないというようなことから、平成二十七年の五月に都道府県選挙管理委員会宛てに発出した通知におきましては、特定の選挙の啓発、周知活動の一環として行うものではなく、過去の選挙に関する記録として、投票日の翌日以降、選挙公報を選挙管理委員会の記録用ホームページに掲載することについては、次回以降の選挙に係る選挙公報と混同されたり、選挙の公正を害するおそれがない形式で行われるものである限り差し支えないものと考えている旨の通知を出しまして、周知しているところでございます。
なお、御指摘がございましたので、この通知発出後の国政選挙でございました平成二十八年七月執行の参議院議員通常選挙において、都道府県の選挙管理委員会においてその選挙について確認したところ、選挙公報を選挙管理委員会の記録用のホームページに掲載している都道府県は、昨日現在で四十七都道府県中二十六都道府県ということと把握いたしております。
○井上哲士君 まだ僅かでありますし、多分地方選挙になるともっと下がると思うんですね。
私は、選挙後も公報を見られる状況にしておくことは、有権者が当選した議員がどんな公約をどう実行しているのかということを検証する資料にもなりますし、ひいては政治に対する関心を高めて投票率の向上にもつながっていくことになると思うんですね。
まだまだ少ない下で、選挙後も掲載可能だということを徹底する方策についてどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) 繰り返しになりますけれども、選挙公報が発行される選挙において選挙人が投票するに当たっての判断の材料を提供するものというふうに選挙公報は考えられるものでございます。選挙公報には落選者の政見なども載っております。それから、先生御指摘のような政策のフォローというようなことが中心の事務となりますと、選挙管理委員会の本来の事務なのかどうかというまた御議論も出てこようかと思います。
そういう意味で、先ほど御答弁申し上げましたとおり、過去の選挙に関する記録として、これは記録でございますので、投票日の翌日以降、選挙管理委員会の記録用のホームページに掲載するというような方法によってはそれは閲覧可能というふうな通知を出しているところでございます。
○井上哲士君 時間ですので、終わります。ありがとうございました。
倫理選挙特別委員会(地方選挙ビラ解禁法案)
2017年6月 9日(金)