○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
私からもイスラエルについて、入植地問題について、まず伺います。
イスラエルは昨年以降、入植地拡大する動きを見せております。これ、二十年以上、新規の入植地は建設されてこなかったと言われておりますが、そのイスラエルが再びこの国際法違反の入植地拡大の方向に転じたことは、国際的にも物議を醸しておりますし、強い懸念を生じております。
まず、昨年から現在までのこのイスラエルによる入植地拡大をめぐる経緯について、外務省が把握していることについてお述べいただきたいと思います。
○政府参考人(上村司君) お答え申し上げます。
イスラエルによる入植活動につきましては、特に昨年来以降、委員御指摘のとおり、増加傾向にございます。我々のつかんでいる情報では、二〇一六年十二月から本年三月にかけまして、約八千八百八十棟の住宅建設計画を承認したものと承知しております。
○井上哲士君 この中で、国連の安保理は昨年の十二月に、イスラエルによる国際法違反の入植地拡大を非難する決議二二三四号を採択をしております。この決議の内容と意義、賛否の内訳及びこの問題に対する日本の対応について説明をしていただきたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の安保理決議二三三四号ですが、イスラエルによる入植地の設置は法的な有効性がなく、国際法下の明白な違反を構成していること等を再確認するとともに、イスラエルが入植活動を即時かつ完全に停止すること、こうした要求をしている、こういった内容でございます。
中東和平問題に関する我が国の基本的な立場は、同問題の最終的な解決を予断するような一方的な変更は、いずれの当事者によるものであっても承認できず、パレスチナ占領地におけるイスラエルの入植活動は国際法違反であり、二国家解決を阻害している、こういったものであります。
そして、先ほどの決議二三三四号の採決に当たっては、我が国を含む安保理理事国十四か国が賛成をし、米国が棄権をした、こういったことでありました。
そして、我が国としては、同決議はイスラエルによる入植活動が違法であるとの国際社会の認識を示したものと評価をいたします。当事者が本決議にコミットし、中東和平のプロセスを進展させること、これは重要であると認識をいたします。
○井上哲士君 アメリカが、オバマ政権の最後でありますけれども、拒否権を行使せずにこの採択をされたわけですね。しかしながら、イスラエルはこれを受け入れておりません。抗議を行って、さらに今年一月、国連への対抗措置として拠出金の一部の凍結を発表いたしました。さらに、追加の措置として、安保理で決議に賛成した十か国の駐イスラエル大使を呼び出して抗議を行うということを表明をいたしました。
報道によりますと、一月の二十五日にイスラエルの外務省は日本の駐イスラエル大使を呼び出したとされておりますけれども、イスラエルはどんな姿勢を示したのか、日本側はそれに対してどのように対応したんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) イスラエルは決議二三三四号の採択後、これが恥辱的な反イスラエルの決議であるとして、決議に賛成した安保理理事国の駐イスラエル大使を招致し抗議を行ったと承知をしております。
その中で、我が国につきましても、イスラエル外務省より駐イスラエル大使館に対しイスラエルの立場について説明がありました。それに対して、我が方からは本件に関する日本の立場について改めて説明をした次第であります。
○井上哲士君 全く国際法違反の行為をやめる姿勢はこの安保理決議を受けてもないということなんですね。現にイスラエルは一月に二回発表を行って、ヨルダン川の西岸地区で過去最大規模と言われる、それぞれ二千五百戸と三千戸の住宅建設を承認をしていると、こういうことであります。
このように国際社会の声に背を向けて入植地の建設に固執をするこのイスラエルの姿勢をどう評価をして、これどうやってこの入植地拡大をやめさせるというふうに日本としては対応されているんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 我が国はこのイスラエルの入植活動は国際違反であると認識をしています。そして、即時かつ完全に凍結されるべきである、これは我が国の立場であります。こうした我が国の立場、これは累次、談話等において表明をしてきているわけですが、イスラエルに対しても直接、首脳レベルあるいは外相レベルを含めた様々な会談の機会を通じて直接入植活動の完全凍結、これを求めてきています。引き続き、イスラエルに対する働きかけは続けていきたい、このように考えます。
○井上哲士君 先ほど来、このイスラエルが国際法に違反して拡大してきた占領地においてのイスラエルの主権を認めないと、こういう答弁でありました。
改めて確認でありますが、この協定、互いに経済的な主権の行使の制限や具体的措置の約束を行うわけでありますけど、イスラエルの主権がどこまで及ぶのかということは大変重要な点でありまして、この国際法に反して現にイスラエルが支配をしている占領地の主権行使というのは協定上認められているのかどうか、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 我が国は、この東エルサレムを含むヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植活動、これは国際違反であり、即時かつ完全に凍結されるべきというのが我が国の立場であります。かかる我が国の立場、これは累次談話において表明するとともに、首脳レベル含め、イスラエル側に対しまして入植活動の完全凍結を求めてきているところであります。
入植地におけるこうした立場については、この協定の交渉においてもしっかり伝えております。イスラエルも我が国の立場については理解しております。
○井上哲士君 先ほど来、日本の立場は伝えたと、イスラエルも理解をしていると、こういう答弁が繰り返されているわけでありますが、しかしながら、先ほど来、イスラエルが国連安保理決議にも全く背を向けているという下で、イスラエル側は入植地も当然自国の主権を及ぼし得ると、こういう立場にあるんではないんですか。
○国務大臣(岸田文雄君) イスラエルが国際社会で独自の主張をしている、これは承知をしています。ただ、この協定の中身ということで申し上げるならば、この協定は国際法に従ってという文言、これを明記されております。国際法上認められない行為、これはこの協定の対象には入らないということ、こういったことについて我が国の立場を説明し、そしてイスラエルも理解をしていると説明をさせていただいております。
○井上哲士君 しかし、イスラエルは国際法違反だということを認めていないわけですよね。じゃ、協定とは別だというお話がさっきからあるんですが、つまり、この協定上はイスラエル側も入植地は範囲外だという日本の立場を理解して一致をしていると、こういうことでいいんですか。
○国務大臣(岸田文雄君) はい。この協定においては、我が国の立場を説明し、そしてイスラエルも理解をしている、これを確認している、こうしたことであります。
○井上哲士君 いや、私が聞いているのは、日本がそういう立場だということを理解し、確認したかもしれませんが、イスラエル側も同じ立場だということで一致をしているのかどうかということを聞いているわけです。
○委員長(宇都隆史君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(宇都隆史君) 速記を起こしてください。
○国務大臣(岸田文雄君) この協定を実施するに当たっては、日本もイスラエルも同じ立場であるということを確認しております。
○井上哲士君 実施するに当たってはってちょっと意味がよく分からないんですが、そうしますと、国際法上の入植地の問題については一致をしていないわけですよ。協定上は、実施においてはと言われましたが、じゃ、適用範囲にそごが起きた場合、これはどういうふうにするんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、基本的には、先ほど来申し上げておりますように、この協定の適用について我が国の立場を説明し、イスラエルも理解をしています。そして、それも確認をしているわけですが、それでもそごが生じた場合は、合同委員会というものが設けられ、その中で協議をしていく、こうしたことになると承知をしております。
○井上哲士君 どうも極めて曖昧なわけですね。
それで、そういう下で、こういう支配地における経済活動に日本の企業が関与していくということが起こり得るわけですね。先ほど来、リスクがあるという情報提供をするというふうに言われておりましたけど、一方、この投資協定自身はリスクを減らすために協定を結ぶと言っているわけですね。そうしますと、結果としてはやっぱり促進をすると、そういう地域における日本企業の活動などを促進するという、こういう効果をもたらすことになると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、投資協定そのものについては、法的安定性を高める、そして投資環境を安定したものにする、こういった意味があると思います。
そして、この日・イスラエル投資協定についての適用範囲については、先ほど来説明をさせていただいているとおりであります。リスクを促進させるということになるのではないかということは当たらないと認識をします。
○井上哲士君 私は、そういうことになり得ると思います。そういう、少なくともなりかねないと思うんですね。
そういういろんな現に支配している地域における第三国の企業の活動がどう評価を受けるのかという問題ですが、政府は、一三年の三月二十八日に、国後島で地熱発電所建設を行う米国系企業に対して抗議をしておりますけれども、なぜこれは抗議をしたんでしょうか。
○政府参考人(宮川学君) お答え申し上げます。
北方四島につきましては我が国固有の領土でございます。第三国の企業や国民が、あたかも北方四島に対するロシアの管轄権を前提としたかのごとき形で北方四島における経済活動に従事することは日本の立場と相入れないということで、抗議をしたわけでございます。この御指摘いただきました事案につきましても、今の考え方に基づきまして、当該の米国企業に対して政府としての懸念を伝えた経緯がございます。
○井上哲士君 つまり、一方の当事者から見れば、主権侵害ということに結び付いていくわけですね。
そうなりますと、こういう入植地における日本企業の活動が行われた場合にパレスチナ側から見れば主権侵害と、こういうふうに見られることになるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(上村司君) お答え申し上げます。
パレスチナから見てということでございますか。はい。
あくまでも、この投資協定の範囲につきましては、先ほど来大臣より御答弁申し上げているとおりであります。いわゆる西岸あるいは入植地、こういったところを対象とするものではありません。
したがいまして、パレスチナからは、この投資協定に関しまして何らかの問題提起があったということは、そういう事実はございません。
○井上哲士君 時間ですので終わりますが、経済協定を締結する場合に主権が及ぶ範囲というのは最も基礎的な要素の一つでありますが、その点に双方の立場の違いがある上に、まして現に国際法違反の入植地を拡大をしている、そのさなかにあって協定を結ぶということは入植地におけるイスラエルの主権を認めることにもつながりかねないということを申し上げまして、質問を終わります。
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○委員長(宇都隆史君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
防衛大臣、防衛省参考人は御退席いただいて結構でございます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日本・イスラエル及び日本・ケニア投資協定の承認に反対の立場から討論を行います。
二つの協定は、いずれも相手国の投資を促進するために、投資設立時又はその後の投資家の権利の保護や環境整備に関するルールを定めるものであります。
安倍政権は、いわゆるアベノミクスにおいて、大企業、多国籍企業の利益を最優先する成長戦略を掲げ、まず大企業が潤えばやがてその恩恵は広く国民に行き渡るとするアプローチを取っています。その結果、大企業は高収益を上げ、空前の内部留保の蓄積が生じていますが、その一方で、国民の所得は増えず、個人消費に力強い伸びは見られません。格差の拡大も是正されていません。
その下で、各国とのEPAも含めた投資関連協定は、日本再興戦略において、大企業の海外進出のための環境整備を図る重要な取組として位置付け、締結を加速するとしております。
日本の財界は、国内では法人減税や労働法制の改悪を、国外では日本の多国籍企業が最大の収益を上げられるような条件整備、投資協定や租税条約の締結を強く求めております。二つの協定は、まさにこの財界の要求に沿って、日本の企業が海外で最大限の収益を上げる投資促進のために締結されるものであります。
また、二つの協定にはISDS条項が含まれております。一企業が国家を訴え、国の主権を脅かすことにつながることが懸念をされます。
また、日本とイスラエルとの協定は、同国が二十数年ぶりに国際法違反の入植地の拡大に乗り出し、国連安保理が即時中止を求める非難決議が採択され、各国のイスラエルへの対応が問われる中で署名が行われました。協定中、イスラエルの主権の及ぶ範囲について両国の一致があることは確認できず、このような協定の締結は入植地におけるイスラエルの支配の追認につながりかねません。
以上を指摘し、反対討論を終わります。