国会質問議事録

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本会議(共謀罪法案の委員会審議打ち切り・中間報告を求める動議に対する反対討論)


○議長(伊達忠一君) 井上哲士君。
   〔井上哲士君登壇、拍手〕
○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、中間報告を直ちに審議することの動議に対し、断固反対の討論を行います。
 参議院での共謀罪法案の審議はまだ十八時間足らずです。にもかかわらず、衆議院の審議時間の三十時間に対し三分の二程度になったからとして、委員会の審議権を奪い、ただいま中間報告を行った上に、この本会議での採決を行うために本動議が提出をされております。
 冗談じゃありません。衆議院では、議論するほど疑問が広がっているにもかかわらず、与党が乱暴に審議を打ち切って採決を強行しました。そんな衆議院の審議時間がおよそ基準になるはずがありません。
 実際、衆議院での強行直後の五月二十五日付けの朝日の世論調査では、この法案の衆議院での審議は十分だったは一六%、十分ではなかったは六〇%であります。さらに、法案についての国民の理解は深まっていないは七三%です。そればかりか、三月の調査から賛成は減り、反対は増えて、反対が賛成を上回りました。審議すればするほど疑問が生まれ、反対が多数になっているではありませんか。
 参議院は、衆議院の追認機関ではありません。ましてや、官邸の下請でもありません。再考の府、再び考える府であります。その参議院がやるべきことは、全く不十分なまま乱暴に打ち切られた衆議院の審議時間にかかわらず、国民が理解できる徹底した議論を行うことであります。にもかかわらず、審議を打ち切り採決を強行しようという本動議は、参議院の存在意義を自ら否定し、衆議院の追認機関、官邸の下請にしてしまうものにほかなりません。恥を知れと言いたい。
 中間報告は、国会法第五十六条の三により、特に必要があるときに限り求めることができるものです。さらに、国会法は、特に緊急を要すると認めるときに限り報告を本会議で審議できるとしています。本動議は、これに基づき、直ちに討論、採決を行おうとするものであります。
 しかし、そもそも動議提出の理由の説明もなく、賛成討論もありません。何が特に必要があるときなのか、何ら合理的説明ができないということではありませんか。ただただ質疑を打ち切り、強行した上で会期延長なしに閉じて、加計学園問題での追及から逃れたい。国民無視、党利党略以外の何物でもありません。
 実際、今、法務委員長が行った中間報告に、本会議に報告することが特に必要があるような内容が果たしてあったでしょうか。ましてや、特に緊急を要すると認めるような内容は何一つありません。報告で述べられたことは、法案の趣旨説明の繰り返しと審議の経過の事務的報告だけ、審議の中身はさっぱり分かりません。参考人の質疑は、貴重な意見の一言でありました。子供の絵日記でももう少しましです。こんな無内容な報告を聞くために、こんな夜中まで何をやらせているんですか。
 法務委員会での質疑はまだ緒に就いたばかりであり、短い質疑時間であるにもかかわらず、様々な新たな疑問点、論点が浮き彫りになっています。法務委員会で徹底審議するべき内容は山ほどあるんです。
 昨日来の討論の中でも、共謀罪法案が何をしたら罪に問われるかという犯罪の構成要件が余りにも曖昧で不明確で、捜査機関の一存で幾らでも広げることができること、一般人が捜査の対象になり得ること、民主主義の根幹に重大な萎縮をもたらす監視社会になることなど、無内容な中間報告とは違い、質疑での具体的なやり取りや参考人質疑での専門家の発言を紹介しながら明らかにされました。与党の皆さん、ちゃんと聞いていましたか。
 政府が出した法案だからと、その説明を丸のみにし、中身もよく理解しないままに賛成してきた皆さん、いかに問題が多いのかよく分かったんじゃないですか。だったら、このまま採決するのではなくて、改めて法務委員会で審議を深めようじゃありませんか。それこそが国権の最高機関に身を置く者の責任ではありませんか。
 大体、法務委員会では、昨日の理事会でも、委員長も与野党の理事も更に質疑が必要だという点で一致をしており、法務大臣問責決議案の処理が終われば、今後の審議について協議することを確認していました。にもかかわらず、与党の方針が変わったとして、法務委員会での理事会協議も行わない下で、委員会の審議権、採決権を奪い取るという暴挙が行われようとしています。
 法務委員長や与党の理事もそれでいいんですか。議会人としての誇りはないのですか。今からでも遅くありません。再度言いたい。採決することはやめ、法務委員会で徹底審議しようではありませんか。
 今、特に緊急を要することは共謀罪法案の強行ではありません。政権の進退に関わる加計学園問題、行政の私物化とも言える問題の徹底究明こそ緊急を要することであります。国民はそれを強く求めています。
 総理の腹心の友が理事長を務める加計学園だけに獣医学部の新設を認めるために、公正公平であるべき行政が加計ありきでねじ曲げられていたのではないか。岩盤規制に穴を開けると称して、加計学園に合わせて穴が開けられたのではないか。それが総理の御意向として求められたことを前川前文科事務次官が明らかにし、その後、それを示す文書が文科省の職員の中で共有されていたことも明らかになりました。
 怪文書だ、確認できなかったという政府の説明に国民は全く納得せず、ついに文科大臣は再調査を表明せざるを得なくなりました。ところが、先週金曜日の表明以降、いまだに調査結果の報告はなされておりません。よもや国会を閉じてからおざなりの報告を行って逃げようとしているのではありませんか。そんなことをすれば、国民から厳しい審判を受けることになるでしょう。
 さらに、今治市への情報開示請求によって、七千八百ページもの新たな資料が明らかになりました。その中には、今治市と内閣府との協議が十回を超え、平成三十年四月開学というスケジュールも内閣府に示していたこと、国家戦略特区諮問会議で配付する資料を事前に今治市に渡していたことなどが明らかにされています。こうした資料に基づく内閣委員会での追及に、山本担当大臣は、答弁不能どころか答弁崩壊ともいうべき状態になっています。
 文科省の再調査資料の即時報告、疑惑の本丸である内閣府や首相官邸についての調査、前川前文科事務次官を始めとした関係者の証人喚問は不可欠です。にもかかわらず、加計問題での追及から逃れるために、国会を早く閉じてしまいたい。そのために何が何でも共謀罪法案を会期中に強行したい。行政をゆがめた上、その追及から逃れるために国会審議すらゆがめる。国家の私物化極まれりではありませんか。
 こんなことを許す言語道断の本動議には断固反対であることを申し上げ、討論を終わります。(拍手)

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