○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
北朝鮮が、国際社会が強く自制を求めている中で弾道ミサイルを発射を強行いたしました。世界と地域の平和と安定にとって重大な脅威でありますし、累次の国連安保理決議などに違反する暴挙だと言わなければなりません。今回、通告なしに日本を越えて太平洋上に落下をさせた、この点でも極めて危険な行為であります。そして、この間、米国を含む国際社会が対話による解決を模索をしていた、それに逆行するものとしても重大であります。日本共産党は、この北朝鮮に対して厳しく糾弾し、抗議をするものであります。
その上で、まず防衛大臣にお聞きいたしますが、この間、米朝両国がお互いの真意、相手の意思を確かめるすべのないままに軍事的恫喝の応酬をエスカレートさせて、緊張が激化をするという事態となりました。これ非常に大変危険な事態でありまして、当事者たちの意図に反して偶発的な事態とか、誤算による軍事衝突につながりかねないということを私たちは強く憂慮をしてまいりました。もしそういうことになりますと、まさに今も指摘ありましたように、世界と地域の平和、安定を破壊いたしますし、韓国、そして日本においておびただしい犠牲をもたらすことになります。
まず、大臣に見解をお伺いしますが、やはり国民の命や安全を守るという点で、こういう軍事的衝突というのは絶対避けなければならないと考えますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 御指摘のとおり、特に日本は戦後一貫して平和国家として歩んできております。これからも決して変わらず、我が国に対する脅威に対しても平和的に解決するための最大限の外交努力を尽くすことが大切だと思います。
今回の北朝鮮の問題、あるいは私ども、アメリカと、北朝鮮の問題もそうでありますが、これは対話による解決が何よりだと思います。私どもが北朝鮮に求めておりますのは、拉致、核、ミサイル、この問題についてしっかりとした対応をするということだと思いますので、これからも外交努力でこれは政府全体としてやっていくことだと思いますが、私ども防衛当局は、万が一のときにこの国の生命、財産を守れるためにもしっかりとした対応をしていくということをやっていくということだと思っております。
○井上哲士君 対話による外交解決が必要なんだという答弁でありました。
国際社会が対話による解決を模索する中で、それに逆行する今回の北朝鮮の行為はそういう点でも極めて重大でありますが、やはり今、国際社会と関係国に求められるのは、経済政策を厳格、全面的に実施をすることと一体として、困難はあっても対話による解決を粘り強く追求することだと考えます。
その点からいいますと、関係国や国際社会による圧力の成否は、北朝鮮を対話の場に引き出せるのかどうか、その成否から見るべきだと思うんですが、その観点から、昨年来どのような圧力の強化があって、どのような効果を上げているのか上げていないのか、河野外務大臣、外相電話会談で退席をされておりますので、佐藤副大臣、お願いします。
○副大臣(佐藤正久君) お答えいたします。
まず、対話による解決は当然でございますが、朝鮮半島の非核化のための対話というステージに北朝鮮をやっぱり引っ張り出すためには、今、国際社会一体となって圧力を掛けるということが大事だというのは委員の御指摘のとおりだと思います。我が国は、アメリカ、韓国等の関係国と緊密に連携しながら、北朝鮮への人、物、金の流れを厳しく規制する安保理決議の実効性を確保するとともに、我が国独自の措置も着実に実施してきているところであります。
まず、人の流れにつきましては、関連安保理決議に基づきまして、制裁対象者の入国、領域通過や安保理の決定等に基づき制裁措置の対象とされた船舶の入港を禁止しております。また、我が国独自の措置としまして、北朝鮮籍者の入国の原則禁止や日本人に対する北朝鮮への渡航自粛要請、北朝鮮に寄港した全ての船舶の入港禁止等を実施しております。
次に、物の流れにつきましては、我が国独自の制裁措置としまして、平成十八年に北朝鮮からの輸入を、平成二十一年に北朝鮮への輸出をそれぞれ全面的に禁止しており、北朝鮮からの石炭の輸入禁止を含みます関連安保理決議における輸入禁止措置も担保しているところであります。
次に、金の流れにつきましては、関連安保理決議により指定された団体、個人に対する資産凍結措置等を実施しております。また、我が国独自の措置として、北朝鮮向けの支払の原則禁止等の措置も講じております。これらの措置は、北朝鮮の厳しい経済状況と併せて考えた場合、一定の効果を及ぼしてきたと考えております。また、本年八月五日に採択されました安保理決議二三七一号が厳格かつ全面的に履行されれば、北朝鮮の外貨収入の約三分の一程度の年間総額十億米ドル以上を減らすことができると見込まれております。関係国と連携しながら、この安保理決議二三七一、これの実効性を担保をしていくというふうに努力していきたいと思います。また、独自の措置としまして北朝鮮との間の輸出入を禁止ということから、輸入につきましては平成十九年以降、輸出につきましては二十二年以降ゼロとなっております。
今後ともしっかり対応してまいります。
○井上哲士君 様々な措置がされてきましたけれども、一方でやはり今回の事態になっているわけでありまして、本当にこれを実効性を上げる上で抜け道を許さずに国際社会が一致結束していくということが大事だと思うんですね。それを通じ、その圧力と一体で対話の道を模索をしていく。
その点でいいますと、この間、アメリカの国防長官、国務長官がウォール・ストリート・ジャーナルへの共同寄稿で、北朝鮮がこれ以上の核実験やミサイル発射などの挑発行為を停止することを条件に交渉する意思があると強調したことは大変重要だと思います。これまでは北朝鮮が非核化に向けた真剣な意思あるいは具体的な行動というのを条件にしていたことを考えますと明らかにハードルを下げた発言だと思いますし、韓国の文在寅大統領も同様の発言をされております。一方、河野外務大臣は、非核化の意思と行動を出すまでは圧力のときということで従来のハードルの立場を繰り返しておりますけれども、私は、その上でも専ら圧力だけを強調するというのは、国際的な今の流れからいいましても、いささか特異だと思うんですね。
こうした様々な発言にも注目をして、やはり経済政策の厳格、全面的な実施による圧力強化と、それと一体で対話の道を模索をするということが必要かと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
○副大臣(佐藤正久君) 御指摘の米国防長官、国務長官の共同寄稿というのは、米国の北朝鮮政策、これを改めて説明したものと承知しております。
これまで、日米間で北朝鮮政策、いろんなレベルですり合わせをしており、緊密な連携を確認してきているというふうに思っております。そういう意味の中で、御指摘のように対話というものを目標としながらも、その至る過程で様々な圧力というものを掛けていると。この対話と圧力とを連携しながらやっていくということは大事でございますが、実際に七月に二度ICBM級の弾道ミサイルを発射し、八月二十九日には我が国の上空を弾道ミサイルが通過するという状況がありました。そういう状況を考えますと、対話の対話ではやっぱり意味がなく、現時点としては圧力を強化をして北朝鮮が非核化のための話合いに応ずるという環境をつくることが大事だと思っております。
今後とも、そういうラインの中で日米連携をしながら対応をしてまいりたいというふうに思います。
○井上哲士君 非核化のための具体的な意思と行動ということで、この共同寄稿で言っている、これ以上の核実験やミサイル発射などの挑発行為等を停止するということは、私は明らかに違うと思うんですね。もちろん、こういうこの対話の模索に対して逆行する北朝鮮の今回の行為は厳しく批判されるものでありますけれども、だからといって、圧力のみを強調してこの対話を後景に追いやるということで言えば、平和的、外交的解決に背くと思いますし、相手の意思を確認しないまま軍事的恫喝をエスカレートするということは極めて危険でありまして、そういう緊張緩和をするための対話ということもあるでありましょうし、対話のための対話は意味がないと言いますが、意味がある対話を引き出すための対話ということも私はあると思うんですね。
国連の五月の全会一致の安保理の決議でも、「対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にするための理事国及びその他の国による努力を歓迎する」、こういうふうに強調しているわけで、日本がこの決議のこの部分も含めた全面的な履行をすることによってこそ私は国際的にも一致結束した、厳格、全面的な経済政策の効果も期待できると思います。そういう立場に確固として立つということを強く求めまして、質問を終わります。
外交防衛委員会閉会中審査(北朝鮮による弾道ミサイル発射)
2017年8月30日(水)