国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2018年・196通常国会 の中の 外交防衛委員会(NATO日本政府代表部を設置する在外公館法一部改正)

外交防衛委員会(NATO日本政府代表部を設置する在外公館法一部改正)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 この在外公館の法案には、今も議論ありましたけれども、NATOに代表部を置くことが盛り込まれております。NATO自身の政策の変化やNATO間との協議もあったかと思いますが、この代表部を置く提案に至った経過について、まず御説明いただきたいと思います。


○政府参考人(相木俊宏君) お答えを申し上げます。
 NATOは、二〇一一年四月にベルリンで開催されました外相会合におきまして、新パートナーシップ政策というものを策定をしてございます。その中で、我が国も含みます全てのパートナー国に対しまして代表部の設置を呼びかけることを決定をいたし、その呼びかけを行っているというふうに承知をしております。
 我が国は、法の支配などの基本的価値を共有するNATOとの間で、危機管理、国際協力分野における実務的な協力を行っているところでございます。今般、こうした協力を一層円滑に行うため、新たにNATO代表部の開設に向けて準備を進めてきたという次第でございます。


○井上哲士君 NATOは、条約の第五条で締約国に対する武力攻撃は全締約国への攻撃とみなすと規定をして、集団的自衛権を行使することを明記した軍事同盟であります。
 二〇〇〇年の四月に採択をした新戦略概念において、地域の危機だと判断すれば他国への軍事行動を行う方針も宣言をして、コソボ紛争などでは実際にNATOの加盟国軍による域外の武力行使も行われました。そして、アフガン戦争では初めて集団的自衛権も行使をして、誤爆等によっておびただしい民間人の犠牲者も生みました。日本がこうした軍事同盟に代表部を置いている例があるのかというのが一点。
 それから、先ほど来、法の支配などの共通の理念の下に日米欧の協力が必要だなどなどの答弁がありましたが、しかし、加盟各国には大使館もありますし、EU本部にも代表部も置いております。北朝鮮問題で経済制裁必要だといいますが、これは本来外交であるわけで、なぜあえて軍事同盟であるNATOに代表部を置く必要があるのか、大臣、いかがでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) まず、NATOのような地域の安全保障機構に代表部を置くのは初めてでございます。NATOに新たに代表部を設置して日本とNATOの関係を一層緊密にすることで、国際社会全体の平和と安定確保に尽力をしてまいりたいと思っております。
 EUについて御指摘をいただきましたが、EUは、欧州連合条約に基づいて、経済、通貨の統合、共通外交・安全保障政策、警察・刑事司法協力など、幅広い分野で協力を進める政治、経済の統合体というふうに認識をしております。
 NATOは御指摘いただきました北大西洋条約に基づいて設置された役割あるいは加盟国もEUと異なる別個の国際機関でありまして、テロ、サイバーその他、国際社会の平和と安定確保に資する活動を行ってきている。こことも日本は緊密な連携をつくってまいりたいというふうに思っております。


○井上哲士君 EUだけ言われましたけど、各国にも大使館あるわけですね。様々な協力の強化ということはその外交関係においてやられるべき問題でありまして、こういう軍事同盟に代表部を置くということが憲法の平和原則に果たして相入れるのかということであります。
 先ほど答弁ありました、この新パートナー政策、二〇一一年四月策定でありますが、三つの項目が挙げられております。
 その三つ目がNATO主導の作戦に係る決定及び戦略形成に作戦上のパートナーが関与できる枠組みを構築とされております。そして、作戦上のパートナーについては、意思決定前に全ての問題に関し意見提出ができ、作戦コンセプト、作戦計画、交戦規定等の文書の議論に関与可能というふうにされておりますが、こうしたことも可能になっていくということでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) 新パートナーシップ政策というのは、パートナー国に対してNATOが行う様々な活動への参加を開放するものであります。この政策の下でパートナー国がNATOのオペレーションに参加することを求めるものではありません。
 日本はNATOのオペレーションにこれまで参加した実績はなく、現時点においてNATO主導のオペレーションに参加することは検討しておりません。


○井上哲士君 現時点においてと、こういうお話であります。
 衆議院の答弁では、国別のパートナーシップ協力計画があると、いずれにしても憲法の枠内で協力する分野があるんだということが何度も答弁されておられました。しかし、憲法の枠内で協力と言いますけど、この憲法の解釈を勝手に変えて、その枠を拡大してきたのが安倍政権なわけですね。
 この二〇一四年の日本、NATOの国別パートナーシップ協力計画というのは、これ安保法制強行前に作られたものでありますが、安保法制によって自衛隊の海外の武力行使は大幅に広げられました。昨年十月にNATOの事務総長が訪日されて総理と会見をした際に、この協力計画の見直しを盛り込んだ共同プレス声明を発表しておりますけれども、安保法制の内容というのはこの協力計画の見直しにどのように反映をされるのでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) 昨年の十月三十一日、ストルテンベルク北大西洋条約機構事務総長が安倍総理大臣を表敬訪問されたときに御指摘いただきました日本、NATOの国別パートナーシップ協力計画、IPCPの改訂に向けた議論を開始し、日本、NATOの関係の更なる進化を図ることで一致いたしました。
 現在NATO側と改訂について調整をしているところでございますが、政治対話、防衛交流の促進、サイバー防衛や海洋安全保障など、これまでIPCPを基礎に行われてきた平素からの実務的な協力を更に促進する内容にしてまいりたいと思っております。


○井上哲士君 二〇一四年の九月の四日にNATOの首脳会談の分科会で、坂場三男駐ベルギー大使が出席をして発言をしておりますけれども、七月に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をしたということを説明をして、この閣議決定でNATOとの連携強化も後押しすることになるというふうに言われているんですね。
 この安保法制の閣議決定に基づいて、法案は強行されたわけでありますが、この法制の成立がどのようなNATOとの連携強化の後押しになるのか、それがやはり反映するんじゃないんですか。


○国務大臣(河野太郎君) 平和安全法制により国民の命と平和な暮らしを守るため、グレーゾーンから集団的自衛権に関するものまであらゆる事態に対して切れ目のない対処が可能になりました。実際に発生した事態が存立危機事態、重要影響事態、国際平和共同対処事態に該当するかどうかについては、個別具体的な状況に即して政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することになります。
 共に米国との同盟を有する日本、ヨーロッパの間の安全保障面における協力を強化し、日本及び国際社会の平和と安定や国際秩序の維持のため、NATOとの協力を深めていく考えでございます。


○井上哲士君 今ありましたように、安保法制に定められた、例えば重要影響事態安全確保法に基づく後方支援活動であるとか、国際平和支援法に基づく協力支援活動、NATOを母体とする活動も排除されないわけですね。
 これ、あの安保法制の議論のときにも随分ありましたが、例えばPKO法改定をいたしまして、国連が統括しない活動も参加が可能になりました。先ほどのアフガンではISAFがNATOを中心に組織をされまして、これは実際にはもう、治安維持活動と言いましたけれども、戦闘と一体になって隊員三千五百名以上が戦死をするという、こういうことになりました。これも当時安倍総理に質問いたしますと、もうISAFは活動終了しているので再評価は困難だと、参加できるのかどうかについても答弁がなかった、否定しなかったわけですね。
 ですから、やはりこの安保法制というものができたという下でのNATOとのこの協力強化というのは、そういう新しい可能性、問題を含むということになるんじゃないですか。それがこの坂場ベルギー大使がNATOとの連携強化の後押しになると、こういうことになるんじゃないですか。


○国務大臣(河野太郎君) いかなる事態が存立危機事態、重要影響事態、国際平和共同対処事態に該当するかについては、その時々の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断する必要があるというふうに思います。ですから、今の時点で一概にどうこうとお答えをするのは困難でございます。


○井上哲士君 そういう安保法制ができた下でNATOとの協力を強めるということは、こうした軍事協力の面での強化ということにつながるんじゃないですかと聞いているわけですけれども、いかがでしょうか。


○国務大臣(河野太郎君) NATOの新パートナーシップ政策というのは、パートナー国に対してNATOが行う様々な活動への参加を開放するものであって、この政策の下でパートナー国がNATOのオペレーションに参加することを求めるものではありませんし、日本は現時点においてNATO主導の作戦に参加するということは検討しておりません。


○井上哲士君 現時点においてと強調されますけれども、そういうことが可能になっていくような法制を作っているわけですね。
 アメリカ海軍の制服組のトップのグリナート作戦部長が二〇一四年に日本で講演して、この安保法制整備の先ほどの閣議決定を機に、将来的にはNATO軍と同様の共同作戦を展開すべきだと、こういうふうに日本で講演をされました。私は、九条を持つ日本が軍事同盟であるNATOとの協力を強めるということは問題だと思いますが、さらに、安保法制が強行された下で一層危険だということを強く指摘をしておきたいと思います。
 その上で、防衛大臣に来ていただきました。この日本、NATOの個別パートナーシップ協力計画では、海賊対策等の海上安全保障を挙げておりますし、一六年六月に河野統幕議長は、NATO軍事委員長の公式を受けて、その会談で、会合で、アデン湾における海賊対処活動部隊によるNATO派遣部隊との共同訓練を挙げて、引き続き防衛協力・交流を一層推進させていくと述べております。
 これ、唯一挙げた具体的なこの海賊対処活動の共同訓練でありますが、その年の十二月に、NATOは、このアデン湾における海賊対処活動、オーシャンシールド作戦を終了しております。なぜNATO軍はこの活動を終了したんでしょうか。


○政府参考人(鈴木敦夫君) お答え申し上げます。
 NATOにつきましては、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処のため、二〇〇九年八月から御指摘のございましたオーシャンシールド作戦を実施してきましたが、二〇一六年十二月にその活動を終了し、その際、オーシャンシールド作戦が当該地域における海賊を著しく減少させることに貢献し、その目的を達成することができたと発表したものと承知しております。
 ただ、他方、現在もCTF151ですとかEUの活動が継続しておりまして、このNATOの加盟国でありましたドイツ、スペイン、オランダ、イタリアなど、こうした国々はEU海上部隊として活動することなどによりまして、この地域で十隻程度の艦艇が海賊対処に当たっているという状況でございます。


○井上哲士君 今ありましたように、NATOは、ソマリア沖における海賊を掃討するという目的を達成したということで、この年の十二月にこの作戦を終了をしております。
 このアデン湾での海賊事案は、二〇一一年が最高だったと思いますけれども、それ以降どういうふうに件数は推移をしているでしょうか。


○政府参考人(市川恵一君) お答え申し上げます。
 国際商業会議所国際海事局の年次報告によりますと、二〇一一年に二百三十七件を記録したソマリア沖・アデン湾における海賊事案の発生件数は、近年、近い水準で推移しておりまして、二〇一六年が二件、二〇一七年が九件となっております。


○井上哲士君 激減をしているわけですね。
 NATO軍が撤退をしたように、日本が派遣をしたときとは情勢は激変をしたわけですけれども、日本は引き続き派遣をしております。
 海上交通の安全確保と自衛隊の活動というのはずっと国会でも議論がありました。一九八〇年代の初めには、いわゆる海域軍隊を自衛隊がするというのは一切考えていないと、こういう答弁もあったわけですね。アデン湾に出すときも、当初はあくまでエスコート方式で日本船の、日本の船舶を守るんだと言われておりましたけれども、途中からゾーンディフェンスになって、今海域が割当てをされております。
 航空による監視もされておりますけれども、防衛白書におきますと、アデン湾における各国の警戒監視活動の約七から八割を航空隊が担っていると、こういうふうに言われているわけですね。事実上、あの地域の言わば治安を日本の自衛隊が相当部分を監視を担うという、事実上面でやるということになっています。随分私は当初の話と変わっていると思うんですね。
 今これだけ激減をし、そしてNATO軍も作戦を終了しているという下で、日本もこれを続けるというのは見直すべきじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。


○政府参考人(鈴木敦夫君) 今御指摘ございましたが、防衛省といたしましては、海賊を生み出す根本的な原因とされておりますソマリア国内の貧困がいまだ解決されておりません。また、ソマリアにおきます海賊の取締り能力、これがまだいまだ十分とは言えないということなどを踏まえますと、海賊事案の発生件数の減少、これだけを理由に、我が国を始めといたしまして国際社会がこの海賊問題への取組、これをやめることになりますれば、再び状況が悪化するというおそれがあるというふうに考えております。
 現実に、例えば二〇一七年四月にはアデン湾を航行するツバル船籍の海賊船が、貨物船でございます、ツバル船籍の貨物船が海賊の襲撃を受けたとの連絡を受けまして自衛隊の哨戒機が対応したなど、この地域における海賊問題は依然として油断できない情勢が続いております。こうしたことから、防衛省といたしましては、今後も引き続き国際社会と緊密に連携しながら、この地域における海賊対処の取組を継続して、海上交通の安全確保に万全を期していくという考えでございます。


○井上哲士君 原因である貧困が解決されていないとか、ソマリアの海賊取締り能力も不十分だと言われました。ですから、我々当初から、そういう貧困の解決とか、そして海賊対処能力強化のための協力したらいいじゃないかと、なぜ自衛隊が行くんだということを申し上げていたわけですね。今こそその方向に私は転換をするべきだと思いますが。
 その一方で、この海賊対処のためとしてジブチに基地を設置しながら、南スーダンのPKOの輸送などにも活用されておりました。これ、南スーダンからも撤退をしたわけでありますが、一方、ジブチについては増強計画があります。二〇一五年度の予算でこのジブチの活用方策について委託調査研究を行っておりますけれども、その報告はどういうものなのか。それを受けてどういう施策を検討、実施をしているのか。大臣、いかがでしょうか。


○国務大臣(小野寺五典君) 防衛省では、海賊対処行動を効果的に実施するため、平成二十三年六月からジブチにおける活動拠点を運用しており、平成二十五年十二月に策定されました防衛大綱においては、国際平和協力活動等を効果的に実施するという観点から、海賊対処のために自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討するということになっております。
 御指摘の委託調査は、防衛大綱で示された方針を踏まえて、中東アフリカ地域における米国、英国、フランス、ドイツ軍などの各国軍の海外拠点の概要、海賊対策や人道支援作戦などの活動状況等についての調査を外部に委託したものであります。
 お尋ねのジブチの拠点の活用については、現時点で具体的な方策が定まっているわけではありませんが、防衛省としては、このような委託研究の結果やこれまでの活動実績等を踏まえつつ、遠く離れた地域での自衛隊の活動を効果的に実施していくとの観点から、引き続きジブチに有する拠点の活用のための方策を検討してまいりたいと思っております。


○井上哲士君 私は、二〇一五年に大臣に、これ事実上の海外基地なのに何で活動拠点と呼ぶんだというふうに質問しましたら、大臣は、あくまでも現状の派遣海賊対処行動航空隊の活動のための拠点という考え方で置いておりますので活動拠点と呼ばせていただいておりますと、こういう答弁だったんですね。それから更に時間がたっておりますし、今言われたように、さらに、いわゆるこの海賊対処活動の拠点というのにとどまらない任務を与えて更にこれを拡張していこうという、これは私は、海賊対処の必要性が大きく変わっている下で海外基地として更に増強を図るというのは、これは本当にごまかしだと思います、国民を欺くものだと思います。
 こういう方向はやめるべきだということを最後に強調して、質問を終わります。

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○委員長(三宅伸吾君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。


○井上哲士君 日本共産党を代表して、在外公館法の一部改正案に反対の立場から討論を行います。
 本法案の内容には、外務公務員の在勤基本手当の基準額の改定、子女教育手当の支給額の改定及び在ダバオ総領事館の新設が含まれ、これらはいずれも必要な措置と認められるものですが、同時に、NATO日本政府代表部の新設が含まれます。
 NATOは、集団的自衛権による相互防衛義務を定める軍事同盟機構です。元々は侵略に対する共同防衛を行うとされていましたが、それにとどまりません。
 二〇〇〇年四月に採択したNATOの新戦略概念において、地域の危機だと判断すれば他国への干渉、介入の軍事行動を行う方針を宣言し、コソボ紛争やアフガン戦争では、実際にNATO加盟国軍による域外での武力行使が行われました。このような外国の紛れもない軍事同盟機構に日本政府の代表部を置いて協力の強化を図ろうとすることは、憲法の平和主義と相入れないものであり、認められません。
 同時に、安倍政権の下で行われるNATOとの協力の強化は、非軍事に限るとしてきた従来の協力の在り方を大きく一変させることにもつながりかねない現実の危険があることを指摘しなければなりません。
 安倍政権が二〇一五年、憲法を踏みにじって、国民多数の声も無視して安保法制を強行しました。これにより、自衛隊が米軍にとどまらず、その他の外国軍隊に対しても兵たん活動や支援活動を行うことが可能となり、まさに世界中で米軍やその同盟国の軍と一体となって軍事行動を行う道が開かれました。
 既に法制上はNATO諸国の軍隊も協力の対象となり得ます。軍事協力の拡大につながる措置はとるべきでないということを強調して、反対討論といたします。

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