○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
最初に大問題になっている森友関係の公文書の改ざんについて両大臣から認識をお聞きしたいと通告をしておりましたが、午前中の衆議院の安保委員会でも、先ほどの議論でも、同じ答弁が行われました。もう時間もありませんのであえて質問いたしませんが、私は、これはもう行政府が国政調査権を持つ立法府を欺いたという民主主義の根幹に関わる問題だという認識がどうも弱いのではないかと、内閣総辞職に値するものだと、こういう認識に立つべきだということを強く指摘しておきたいと思います。
その上で、北朝鮮の核・ミサイル問題について、国際社会は、一致して圧力を掛けながら対話による解決を求めてまいりました。一方、日本政府は、対話のときではないと対話を否定をして、圧力一辺倒の立場でありました。この間、南北そして米朝の首脳会談の開催が表明をされて、対話による解決への大きな流れができていると。私は、日本もこの間の対話否定の立場を改めて、こうした対話による解決の促進の立場に立つべきだと。その際、核兵器は人類と共存できない兵器なんだと、こういう確固とした姿勢が必要であります。
日本政府は、核兵器禁止条約に反対する一方で、核兵器のない世界の実現に向けて国際社会の取組を主導していく、NPTの議論をリードしていくと繰り返し答弁をされてこられました。ところが、アメリカ・トランプ政権が二月に発表した核態勢の見直し、NPRを高く評価するとして歓迎をいたしました。これ、果たして被爆国日本が評価できるようなものなのか。
お手元に資料をお配りしておりますけれども(※井上質問18年3月20日外防委配付資料.pdf)、これには、オバマ政権時代のNPRにないものが盛り込まれております。通常兵器による攻撃に対しても核兵器の使用の検討を明記をする、低威力のSLBMの配備を進め核弾頭搭載のSLCMを求める、そして、核・非核両用航空機、DCAを強化しF35戦闘機にその任務を付与するなどが盛り込まれております。
河野大臣は、CTBTの批准を求めないことについては残念だとのみ述べられました。それでいいのかと思いますが、それ以外には触れずに評価をすると言われました。
こういう使いやすい小型核兵器の開発、配備を進めるという内容も評価をされているということなんでしょうか。これ、私は、NPTの六条にも、そしてこの間の再検討会議の最終文書、核兵器の完全な廃絶を達成するという核兵器国の明確な約束、これにも反していると考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 北朝鮮は、広島に投下された原爆の十倍以上の威力を持つ核兵器の実験を強行し、さらに日本列島を核爆弾で海の中に沈めるといった極めて挑発的な声明を出していることは井上委員もよく御存じだと思います。北朝鮮の核あるいは弾道ミサイル計画の進展は、日本の平和と安定に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威と考えてもよろしいかと思います。
政府には、まず何よりも自国の国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任がございます。そのためには、日本は非核三原則を堅持しておりますから、日米同盟の下で核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠でございます。
日本は、繰り返しておりますが、専守防衛を旨とし、非核三原則を堅持とする方針の下、北朝鮮の核に対して自ら核の抑止力を用いることはできません。北朝鮮の核の脅威から日本の国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、アメリカの核の抑止力に頼らざるを得ないのが現実でございます。こういう状況の中で今回米国が発表した核態勢の見直しは、米国のみならず、同盟国の安全を確保するという核による拡大抑止に明確にコミットをしております。我が国としてこれを高く評価いたします。
同時に、アメリカは核兵器の究極的廃絶に向けた自らの取組に引き続きコミットする、あるいはNPT体制の評価、核兵器の更なる削減を可能とする安全保障環境の追求にも言及しているところでございます。日本としては、現実の安全保障上の脅威に的確に対処しながら、唯一の戦争被爆国としてアメリカを含む核兵器国と非核兵器国の双方に働きかけ、双方の橋渡し役を務めることにより現実的な観点から核兵器のない世界を実現するための努力を積み重ねていく、この方針に何ら変わりはございません。
○井上哲士君 使いやすい小型核兵器の開発を評価しているのかどうかということは御答弁がありませんでした。
盛んに現実、現実と言われるんですけどね、だから抑止力が必要だと言われます。しかしですね、現実と言うならば、広島や長崎で起こったあの非人道的な惨禍こそ我々が直面した現実なんですよ。これを直視をして、万一抑止力が失敗したらどんなことが起きるのか、これを現実的に検討すべきだと思います。
今回のNPRには、抑止が失敗した場合、これも明記されているんですね。オーストリアの代表は、昨年の国連の総会の第一委員会で、核兵器による破局的な人道上の帰結が意味するのは、核抑止力のいかなる失敗も必ず壊滅的な結果になるということだと、こういうふうに述べられました。大臣、これ、どう受け止めますか。
○国務大臣(河野太郎君) 唯一の戦争被爆国である我々は、核兵器が実際に使われたらどういうことになるかというのをよく理解をしているわけであります。だからこそ、この北朝鮮の核及びミサイルを開発するという暴走を止めなければいけないということで、国際社会の一致した圧力を掛けるということを、日米韓三か国、そして中国、ロシアの協力を得て行ってまいりました。
アメリカの小型核兵器の開発というのは、米国がこのNPRの中で述べているとおり、現状で、相手国が戦術核を使ったときに、アメリカは大きな戦略核で報復をするか報復を全くしないかの選択肢しかないという誤った認識を相手国が持つことにより核の使用の敷居が下がることを防ぐ、そのエスカレーションラダーの中に空いている穴を埋めるためということですから、一概に核兵器の使用の敷居を下げるものではないわけでございます。そうしたことをこのNPRでうたっているということなんだろうと思います。
○井上哲士君 オバマ前政権の核政策担当の特別補佐官だったジョン・ウォルフスタールは、新しいNPRは核兵器使用のハードルを下げて、誤解や偶発的な使用のリスク、敵対国との衝突の可能性を高めるものだと、こういうふうに指摘しているんですよ。
私は、今の河野大臣の答弁は、核兵器増やせば増やすほどむしろ安全になると、こんな理論だと思いますよ。私は、全くこれは間違いでありますし、NPTの議論をリードすると言いながらNPTに逆行する、こういうものを評価をする、とんでもないことでありますし、この間、むしろNPTの到達を掘り崩すような決議を国連に出してきたことも先日指摘をいたしました。
それだけではありませんで、核軍縮の妨害者の役割も日本は果たしてきたわけでありますが、先ほど議論になりましたオバマ政権のNPRの策定に向けて、アメリカの議会に、諮問機関、アメリカの戦略態勢に関する議会委員会が設置をされました。この委員会が二〇〇九年五月に発表した報告書には、委員会が協議した外交政府関係者二十六人のリストがあって、そのトップに当時の秋葉公使、現在の事務次官ら在米日本大使館の四人の氏名が載っております。午前中の安保委員会で、衆議院の、正式の議事録は作られていないといって答弁されておりませんでしたけれども、この報告書が出されていること、四人の名前が出ていることは、九年前のこの委員会で、当時の北米局長が「承知をしております。」と答弁をされております。「日本側の考え方を外交ルートを通じて適宜委員会に御説明をした」というふうに答弁をしておるわけですね。
こういう委員会に出席をして議論をしてきたと、こういうことで間違いないですね。
○国務大臣(河野太郎君) 日米両国間では、日頃から日米安保防衛協力に関連する様々な事項について緊密かつ幅広く意見交換を行っております。
こうした日常的な接触の一つとして、当時、米側からの要望に応じて日本側の考え方を外交ルートを通じて戦略態勢委員会に対して説明をしております。
○井上哲士君 これは、この問題が報道された二〇〇九年、私も質問したんですけど、当時、民主党政権になっておりました。当時の岡田外務大臣は、この協議自身は前の政権のことだったと言って、踏み込んだ答弁はされなかったんですね。
このほど、この当時の日本が行った文書発言、そして同委員会のスタッフが作成した意見聴取の概要メモをしんぶん赤旗が入手をいたしました。驚くべき内容であります。当時の報道を裏付けるものでありますが、日本側は、アメリカに求める核抑止能力として、柔軟性、信頼性、ステルス性など六点を列挙し、退役が検討されていたトマホークについて、退役を決定した場合に能力の喪失の相殺について協議したいとして、代替兵器の配備を要求をしておりますし、老朽化が指摘されていた核弾頭の最新鋭化も促しております。
アメリカ側のメモには、日本側は、低爆発力の地中貫通型兵器が拡大抑止に特に有効だと述べたとされて、委員の一人が、我々が今聞いたことはびっくりさせるものだと、ここまで記されているんですね。アメリカがびっくりされるような提案を日本がしたと。さらに、日本側は、核兵器の搭載可能な戦略ミサイル原子力潜水艦の運用やB2、B52のグアム配備に言及して、その上で、潜在的な敵が核能力の拡大、近代化を思いとどまるための十分な質量の核戦力を要求をしたと、こうメモがされております。戦略核弾頭の大幅削減については、事前に日本との緊密な協議が不可欠だとも求めたと。
米国のオバマ政権の核削減の計画に対して、質量共に核戦力の維持、増強を求めて核弾頭の最新鋭化、小型核兵器まで促しておりますが、こういう発言が行われたことを大臣、否定できますか。
○国務大臣(河野太郎君) この委員会でのやり取りの詳細についてお答えは差し控えたいと思いますが、我が国の基本的な考え方として以下のような点を説明してきております。
我が国は、日米安全保障条約を堅持し、それがもたらす核抑止を含む抑止力を重要な柱として自国の安全を確保する。これとともに、核兵器を含む軍備削減等の努力を重ね、核兵器を必要としない平和な国際社会をつくっていくことが重要。日本としては、米国が保有する核戦力と通常戦力の総和としての軍事力によって提供される抑止力について、その信頼性が維持されることを重視しているというようなことを述べております。
○井上哲士君 信頼性とはどういうことなんですかね。
お手元に、ジョン・フォスター諮問委員会委員の議会証言をお配りをしておりますが、彼は、このときの議論について、特に日本の代表は、アメリカの核の傘としてどんな能力を保有すべきと彼らが考えているかについてある程度まで詳細に説明したと、その能力とは、ステルス性があり、透明性があり、迅速であること、そして最小限の副次的被害で堅固な標的に浸透できる能力や小型核爆弾などを望んだと、こういう発言があったということを議会で証言しているんですよ。
ですから、国民に全く見えないところで、被爆者も国民多数もオバマ政権の核兵器削減を歓迎したときに、全く違う意見を述べていた、妨害していたと。私、重大だと思います。しかも、この先ほどの諮問委員会のアメリカのメモによれば、NATOの核計画グループのようなハイレベル協議を望むかと聞いたことに対して、秋葉公使、今の事務次官は、憲法や国内の反対世論が困難にするかもしれないが、自分は賛成だと表明したと。この協議の翌年から外務、防衛両省の審議官、局次長級が出席をした日米拡大抑止協議が始まって、十回ほど行われていると承知しています。
このNATOの核管理にはニュークリアシェアリング、核兵器の共有というものがありますが、NATOの幾つかの国が核兵器を借り受ける形で自国内に戦術核を配備しておって、平時にはアメリカに管理を預けているけれども、非常事態には迅速に迎撃態勢が取れるようになると、こういうものでありますが。
河野大臣は二〇一〇年の一月十三日のブログで、共同通信主催の日米関係のシンポジウムでパネリストを務めたということに関連してこう述べられております。北朝鮮の核を抑止するための日本としての戦略の議論を始めなければならないと、その際に、最初から非核三原則ありきではなく、アメリカの核を持ち込むニュークリアシェアリングも検討すべきだと訴えたと自らの発言について述べられておりますが、非核三原則ありきではなくということは、これニュークリアシェアリングは三原則とは相入れないということでよろしいでしょうか。そして、それでも今も検討すべきだというお考えでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) NATOにおけるニュークリアシェアリングは、NATO加盟の非核保有国が核に関する情報共有、協議、計画参加、実施協力を通じ、米国の核抑止を共有しているものだと承知しております。
日本政府は、政策上の方針として非核三原則を堅持いたします。我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、政府として我が国の平和と安全の確保、国民の安全、安心の確保に万全を期すべく、引き続き米国と緊密に連携し、日米同盟の抑止力、対処力をしっかりと維持してまいりたいと思います。
○井上哲士君 正面からお答えがありませんでした。非核三原則は単なる政策じゃないんです。衆参の本会議の決議にも国是として書かれているんですよ。それを一政策なんて言うのは全く間違いであります。
更に言いますと、お手元の資料三枚目を見ていただきますと、アメリカの団体、憂慮する科学者同盟の二〇一三年十一月のレポートには、この日米拡大抑止会議に北米局長、北米局の審議官としても参加した秋葉氏の発言が紹介をされております。同氏の考えでは、日本にとって唯一の効果的な核抑止のオプションは、米国が冷戦期間中に独自の核兵器を持たない幾つかのNATO同盟国に対して提供したニュークリアシェアリングの取決めと同様の取決めだ。同氏の言葉で言えば、中国及び北朝鮮は、使用を決定するのはアメリカの役目でなく、日本の役目になることを知る必要があるというもの。国是であるこの非核三原則に全く反することを外交官がしゃべっているわけですね。
日米拡大抑止協議はずっと行われて、トランプ政権後は昨年六月十四日にも行われております。この協議の中で、こうしたニュークリアシェアリングや今回のNPRのこと協議されているんじゃないですか。この秋葉氏の発言、どうお考えですか。
○国務大臣(河野太郎君) 秋葉次官本人に確認をしたところ、ここであるような憂慮する科学者同盟関係者と会って話をした記憶はないということでございました。
○井上哲士君 今日の、先ほどの沖縄の核の問題も秋葉氏が発言をしていると、こういうことでありますが、是非、間接じゃなくてちゃんとこの場に来て、違うのなら違うとしっかり言っていただきたいと思うんですね。そしてこれは、国是であることと全く違うことを外交官が他国に対して協議の中でもしゃべっている可能性があるわけですね。
繰り返し聞きますけれども、この間のこの拡大抑止協議の中で、こうしたニュークリアシェアリングとか今回のトランプ政権のNPRのことについて協議が行われたんじゃないですか。それを明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(河野太郎君) 日米拡大抑止協議は、日米安保・防衛協力の一つとして、日米同盟の抑止力を強化する方策について率直な意見交換を行うものとして実施をしております。この協議は、米国から抑止力の提供を受けている日本が米国の抑止政策及び複雑化する安全保障環境の中での政策調整の在り方について理解を深める場として機能しております。
これ以上の詳細については、事柄の性質及び米側との関係に鑑み、お答えすることは差し控えたいと思いますが、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展など、我が国をめぐる安全保障環境が厳しさを増す中、極めて有意義な協議であると考えております。
○井上哲士君 二〇〇九年の諮問委員会でも、正式の議事録はないと言いながら、実際にはその場で国民の願いとも日本の非核三原則とも全く反することが述べられていたと。それがアメリカ側の議会証言にも出ているわけですよ。だから、今回もそうじゃないかと。だって、アメリカのNPR、あんな核軍拡の政策を日本が支持しているんですよ。だからこそ、そういう協議が行われているんじゃないかと。
アメリカの諮問委員会の議長を務めたペリー元国防長官は、最近私ども赤旗の取材に答えて、今回のSLCMの再配備の検討など、日本政府がそれを望んでいるんではないかと想像していると、こういうふうに言われております。
このような国民の声と反する協議が行われたんじゃないか、国民の前にしっかり明らかにして、そして核兵器禁止条約にも参加をして、核兵器廃絶の先頭にこそ日本が立つように変わるべきだと、そのことを強く申し上げまして、質問を終わります。