○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
再生可能エネルギー外交と第五次エネルギー基本計画案についてお聞きいたします。
河野外務大臣の下で気候変動に関する有識者会合が設置をされまして、二月にエネルギーに関する提言、「気候変動対策で世界を先導する新しいエネルギー外交の推進を」が出されました。さらに、四月には気候変動に対する提言、「脱炭素国家・日本を目指し、気候変動対策を日本外交の主軸に」が出されました。積極的な内容を多く含んでおります。
まず、大臣がこの有識者会議を設置をして提言を求めた理由、またこの提言が今後どのように生かされていくのか、お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(河野太郎君) 外務省は、気候変動問題というのを非常に大きなこれから日本が取り組まなければならない、そういうテーマだというふうに認識をしております。そのために、世界の最新の動向、あるいは研究者やNGO、気候変動対策に積極的な企業などの声を生かした新しい政策の方向性をしっかりと打ち出していきたいというふうに考えまして、そうしたことを目的とする気候変動に関する有識者会合を設置いたしました。
有識者の皆様には、国際的な、なおかつ最新の動向を取り入れた提言を出していただきたいというお願いをいたしまして、精力的に議論を重ねていただいて、今お話ありましたように、二月にエネルギーに関する提言、四月に気候変動に対する提言を出していただきました。
この有識者の皆様から出された提言を政府内の議論に外務省としてしっかり生かしていきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 この提言を生かすために、外務省内ではどういうような体制を取られているのか。また、今年二月から在外公館に気候変動専門官というのが導入されていますけれども、その趣旨や配置の状況はどういうことになっているでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 政府として気候変動問題に積極的に取り組まなければならないというふうに考えている中で、有識者会議から提言をいただくことができましたので、この内容を外交当局の責任者としてしっかりと受け止め、気候変動外交を積極的に進めるために力を尽くしていきたいというふうに思っております。
この気候変動問題は国際社会が一致して取り組むべきグローバルな課題でございまして、外交当局として、情報収集、対外発信を強化するということは、各国との関係を強化し、我が国の国際的な立場をより確固たるものとする上でも不可欠というふうに認識をしております。
そのような考え方に基づきまして、まず在外公館におきまして、気候変動分野における我が国の取組についての対外発信を強化すると同時に、各種の情報収集に取り組む気候変動専門官を導入いたしました。現在、各地域及び日本政府代表部、五十九の在外公館におきまして約八十名の気候変動専門官を配置しているところでございます。
○井上哲士君 エネルギーに関する提言では、再生可能エネルギー外交を推進することが一番に掲げられまして、気候変動対策で世界に貢献し、日本の経済、社会の発展につなげるなどの課題が盛り込まれております。
大臣は、既に、一月十四日にUAEで開かれた国際再生エネルギー機関、IRENAでスピーチをされて、日本は新しい思考で再生可能エネルギー外交を展開し、世界の動きを正しく理解し、長期的視野に立った一貫した対応を取っていくことを宣言したいと思いますと、こう述べられました。
既に四月にはIRENAの事務局長も来日されていますし、今の気候変動専門官も導入されたわけですが、一方、今国会の外交演説では、この再生可能エネルギー外交という言葉としてはなかったわけですね。
確認いたしますが、再生可能エネルギー外交を推進をしていくということは、外務省としてこの提言と同じ方向であるということでよろしいでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) いただきました提言は、これは有識者の皆様の考え方を示していただいたものでございます。外務省といたしましては、再生可能エネルギー外交をしっかり展開していく中で、この有識者の皆様から出された提言を十分に参考にしていきたいというふうに考えているところでございます。
○井上哲士君 提言で第一に提起をされたこの再生可能エネルギー外交はしっかり推進をしていくと、こういうことでありますが。
この第一回の有識者会合の挨拶で、大臣は、これまでの日本の気候変動外交が必ずしも評価されていないことへの反省が必要だと述べられております。理想を述べたとしても実態を伴っていないということは、庭の盆栽をきれいにしていても、振り向いたら家はごみ屋敷だったという状況に等しく、そのような事態は避けなければならないとも述べられました。つまり、国内での積極的な取組なしに再生可能エネルギー外交は進まないということだと思います。
じゃ、国内の取組はどうなっているのかと。大臣は、さらにこのIRENAのスピーチで、現在、再生可能エネルギーの電源割合の世界平均は二四%であり、日本が二〇三〇年に目指す数値が今の世界平均ということは日本の外務大臣として何とも悲しく思いますと、大変率直に述べておられます。同じスピーチで、これまで日本の失敗は、世界の動きを正しく理解せず、短期的なその場しのぎの対応を続けてきた結果だとも述べられておりますが、これは具体的にどういうことなんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) かつて日本は太陽光発電あるいは太陽熱の利用といったことで世界の最先端を走っていた時期がございました。残念ながら今そういう状況にないというのは非常に残念に思うところでございまして、このIRENAの総会でもそういうことをかなり率直に申し上げさせていただきました。
○井上哲士君 まさに、こういう述べられたような様々な問題を今どう生かしていくかということは、この有識者会議の提言とも重なっていくことだと思うんですね。
一方、経産省来ていただいておりますが、五月十六日に公表された第五次エネルギーの基本計画案は、再生可能エネルギーについて、三〇年度の比率目標を二二から二四%のままで上方修正いたしませんでした。これに対して各方面から疑問や批判の声が上がっておりますし、事前のいろんな意見にもあったと思います。なぜ今回この再生可能エネルギーの比率目標を上方修正しなかったんでしょうか。
○政府参考人(保坂伸君) お答え申し上げます。
御指摘ございましたように、再生可能エネルギーにつきましては、国民負担を抑制しつつ最大限の導入を図っていくことを政府の基本方針としております。
エネルギー基本計画の検討に当たりましても、御指摘のように、五月十六日の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会におきまして、再生可能エネルギーにつきましては、二〇三〇年のエネルギーミックスの二二%―二四%を占める主力電源の数字をお示ししているところでございます。
エネルギーミックスで掲げました二〇三〇年度の再エネ比率、この二二から二四%という数字でございますけれども、国民負担を約三兆円で抑えて実現するということでございまして、欧州と比べて日本の再生可能エネルギーコストがいまだ高い中で、国民負担の抑制を図りつつ水力を除いた再エネ比率を現在の二倍にするということで、極めて野心的な水準だと考えてこの数字をお示ししたところでございます。
○井上哲士君 極めて野心的と言われましたけれども、およそそうではないというのが多くの国民の声なわけですね。
今答弁ありましたけれども、大臣がIRENAのスピーチで悲しい思いだと、こういうふうに述べられた、国際的に立ち遅れた目標がそのまま維持をされた案になっているわけですね。
エネルギー提言も、日本の再生可能エネルギー目標は市場に対しても今後も再生可能エネルギーを拡大していくというメッセージを発信できていないと、こういう指摘もされております。
この基本計画案について省庁間の折衝が行われていると承知しておりますけれども、外務省としてはどういう意見を述べられているんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 政府内の調整の詳細に関してお答えをするのは差し控えたいと思いますが、エネルギー基本計画につきましては激しい議論が行われていると理解していただいて結構でございます。
○井上哲士君 まさに日本が国際社会で役割を果たしていくという上で、国内のやっぱり目標自体がこうなっているということは、大臣が悲しい思いをされるというのも私はその点共有をするわけですね。是非、この再生可能エネルギー外交を進める上でも、更に激しいしっかりとした議論をしていただきたいと思うんです。
そこで、なぜこの再生可能エネルギーの目標が低い水準のままなのか。結局、基本計画案が原発をベースロード電源として三〇年の電源構成を二〇から二二%、これをあくまでも維持をしているということに大きな原因があると思います。この目標に対して、再稼働反対の国民世論などを考えても非現実的と、様々な声が上がっております。
これに対し、経産大臣は、世耕氏は、二十三日の衆議院の経済産業委員会で、なぜ原発の新設やリプレースなしにこの電源構成二〇から二二%達成は可能なのかということに対して、その試算のベースについて答弁をされておりますけれども、どういう試算なのかお示しいただきたいと思います。
○政府参考人(保坂伸君) お答え申し上げます。
二〇三〇年時点の原発比率は稼働率を八〇%と仮定して機械的に計算をしておりまして、二〇三〇年時点で運転開始から四十年未満の原発が全て稼働いたしますと約一七%、これに加えまして、二〇三〇年時点で運転開始から四十年以上経過している原発が全て運転延長すると約二八%になります。したがいまして、安全最優先の再稼働と一部の炉の運転期間の延長によりまして、原発比率二〇%は達成可能であると考えてお示ししているところでございます。
○井上哲士君 安全最優先の稼働と言われましたけれども、全てが稼働するということは福島第二原発も柏崎刈羽原発も再稼働するということが前提の試算になっているわけですね。
福島第二の廃炉は、県議会で自民党も含めて全会一致で決議が上がる、これ県民の総意ですよ。柏崎刈羽について言いますと、新潟県民の世論調査でも六四%が反対ですね。明らかに国民世論と反することが含んだこういう試算になっているわけです。
これ、エネルギー提言は、原発の建設費の高騰などを挙げて、電力の安定供給のためベースロード電源として原子力や石炭が必要だという考え方は既に過去のものになっているというふうに指摘をしております。このことは、安倍内閣が成長戦略の柱としてきた原発輸出が問題になっておりまして、この間、トルコを始め各国との原子力協定も進めてきました。しかし、この福島事故以来の安全対策費用の増加による建設費の高騰、脱原発の世論の中でうまくいっておりません。
トルコでのシノップ原発、これも安倍総理のトップセールスで始まってトルコ原子力協定も締結をしたわけでありますが、これ予定どおり進んでおりません。その理由は、経産省、どのように承知されているでしょうか。
○政府参考人(保坂伸君) シノップ原発プロジェクトに関しましては、現在、実現可能性調査を行っているところでございまして、三菱重工とトルコ電力公社との間でFS調査が実施されておるところでございます。
民間企業間のやり取りであるため、このFSが遅れていることについてはお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○井上哲士君 これ、幾らでも報道されているんですよ。知らないはずないんですね。
当初、原発一基五千億円と見込まれたけれども、安全規制強化によって一基一兆円強に増えたと。よって、四基で二兆円が四兆円に膨れ上がった。このシノップ原発は、参加企業が建設費を負担をして、あらかじめ決めた料金で電気を売って利益で建設費を回収すると、こういう仕組みなわけですね。ところが、建設費の高騰によって協定の附属書に盛り込まれた想定電気料金では採算が合わないということが判明して、そういうことを三菱がその実現可能性の調査で提出しようとすると、トルコ側が失望したという返事があった。その結果、三月に出そうとした調査の受取を拒否をしてこれが延期になっていると。これ、多くの新聞も報道しておりますけれども、このことは承知されていないんですか。
○政府参考人(保坂伸君) トルコのシノップ原発につきましては、先ほど申し上げましたが、現在FS調査が実施されているところでございまして、コスト等についてはまだ決まっていないというふうに承知してございます。
他方、海外の建設費につきまして、一般論として申し上げれば、原子力発電所の建設費につきましては、各国の事情や個別のプラントの特殊要因によるところが大きいと考えているところでございます。
○井上哲士君 いや、私聞いているのは、今さっき、この間報道されているような、建設費が倍になった、その結果、この電気料金では賄えぬと、当初の。そういうことが問題になっているということは当局として承知されていないんですか。
○政府参考人(保坂伸君) これはあくまで三菱重工とトルコ電力公社との間で現在実施されているところでございまして、民間企業のやり取りであるため、お答えを差し控えさせていただきたいと考えているところでございます。
○井上哲士君 あのね、反対を押し切って原子力協定も作ってですよ、そしてトップセールスでやっている話なんですよ。単に企業間の問題ではありません。
提言では、世界的には原子力は高リスクで競争力のない電源であることが明らかになっているにもかかわらず、日本では原発が他の電源より安価であるという試算がそのまま使われていると。新規の原子力発電に巨額の公的資金を必要としている海外の事例を見ても、日本での原発新増設は経済的な現実性を欠いていると述べておりますけれども、今回の新しいエネルギー計画案では従来の建設費を前提にして電源比率を維持をしておりますけれども、なぜこういう事態が起きているのに従来の建設費を前提にしているのでしょうか。
○政府参考人(保坂伸君) 海外の原発の建設費につきましては、一般論として申し上げれば、先ほど申し上げましたけれども、原子力発電所の建設費につきまして、各国の事情や個別プラントの特殊要因によるところが大きいと考えているところでございます。
その上で、欧米の個別のプラントの建設費の上振れにつきましては、OECD分析や事業者の公表情報等によりますと、建設実績の乏しい新型炉の建設炉であること、数十年間原発の新設がなかったことによって建設作業のノウハウや人材が喪失していたこと、建設期間の短縮を図るためのインセンティブが働きにくい特殊な契約形態であったことといった要因が指摘をされているところでございます。
これに対しまして日本の場合は、震災直前まで原発の建設が進んでおりまして、技術、人材も比較的維持されているなど、海外とは状況は異なるものと考えているところでございます。
○井上哲士君 日本だって、例えば津波などを防止するいろんな問題も含めて、安全対策の費用の上昇というのは確実にあるわけですよ。そして、海外の需要でいいますと、これはもう世界でも共通でありまして、日本での受注が固まっていたリトアニア、ベトナムの案件も着工のめどが立っておりません。日立製作所が進めているイギリスへの輸出もこの建設費高騰などで難航しているわけですね。
そこで外務大臣にお聞きしますけれども、有識者会議のエネルギー提言は、原発について、投資リスクが高く柔軟性に欠けるエネルギー技術への固執は、再生可能エネルギーの拡大を阻み、日本のエネルギー転換を妨げてしまうと述べております。私はこういうことに対してもう脱却をすべきだと考えておりますけれども、この指摘に対しての認識、そして、原発輸出へ固執をするということが日本の再生可能エネルギー外交とは逆行するものではないかと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 有識者会議の提言、様々な原発についても提言をいただきましたので、それを政府内での議論にしっかりと役立たせてまいりたいと思います。
原発輸出に関しましては、お答えをする立場にございません。
○井上哲士君 いや、原子力協定はこれトルコでも大議論になったんですよ。明らかに外務省が関与してやっているんじゃないですか。それはお答えする立場にあるんじゃないですか。
○国務大臣(河野太郎君) 協定についてはそのとおりでございますが、個別の輸出についてお答えをする立場にございません。
○井上哲士君 いや、個別の問題を言っているんじゃないんです。安倍政権全体として経済成長の柱の一つとして原発輸出を位置付けていると、その流れの中で本委員会でも原子力協定を結んできたわけですよ。それが、今様々こういう問題に立ち向かってあるし、一方で、再生可能エネルギー外交ということを外務省が新たに外務大臣の下で打ち上げられたということであれば、こういう経済成長の柱として原発輸出を位置付けたり進めていくという、そのこと自身がこの外交の姿勢とは相入れなくなっているのではないかと、見直すべきではないかということを申し上げております。
○国務大臣(河野太郎君) 先ほど申し上げましたように、政府内で様々な議論が行われておりますが、それは政府として方針がまとまった段階で外に向けて申し上げたいと思います。
○井上哲士君 私、最初に申し上げましたように、この二つの提言は非常に積極的な内容を含んでおります。せっかく出されたものですから、きちっとその積極的な部分を生かしていただきたいし、先日、ODAの特別委員会でも申し上げましたけれども、今、日本がODAでいろいろ支援をしている石炭火力発電、これについても様々な厳しい批判の声が上がっております。
提言はこの石炭火力輸出への公的支援も速やかな停止を目指すとしているわけでありますから、是非、再生可能エネルギー外交を掲げるならばこの停止にも踏み出すべきだということも改めて申し上げまして、時間ですので質問を終わります。