○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
米朝首脳会談について質問いたします。
非核化と安全の保障を米朝が相互に約束し、朝鮮半島に永続的で安定的な平和体制を構築することを宣言をした歴史的な会談となりました。他方、具体性に乏しいとか、過去の合意も覆されてきたなどの声も出されております。これは、これまでの大使や次官級ではなくて、初めて首脳が合意をしたことの歴史的な意義を私は見誤った議論だと思うんですね。
今回、過去の合意とは違って首脳同士が合意し署名をした、このことの意義について、まず外務大臣に見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(河野太郎君) おっしゃるように、九四年の枠組み合意や二〇〇五年の六者会合共同声明については、これは北朝鮮の首脳の署名がございませんでした。そのこともありまして、総理からトランプ大統領に四月のマーラ・ラゴの首脳会談の中で合意文書を言わば署名する形にしたらどうだということを提起をしまして、今回の米朝首脳共同声明は、首脳間の合意を署名文書の形で確認をするということになりました。金正恩国務委員長が完全な非核化を文書で署名をし約束をした、この意義は極めて大きいのではないかというふうに思っております。
○井上哲士君 であれば、首脳同士の後戻りができない合意だと思うんですね。
一方、共同宣言に完全な非核化と明記されたけどもCVIDの言葉がない、このことの問題も指摘をされております。今日も様々議論になっております。先ほども、ポンペイオ国務長官の六月十三日のソウルでの会見のことが議論になっておりました。いただいた資料を正確に読みますと、共同声明における完全な非核化は、全ての関係者の頭の中では検証可能であることも合意していることを保証したい、確認、証明、どんな言葉でもいいが、これらなしに誰も完全に非核化することはできない、完全な非核化は、検証可能であること、不可逆的であることも含意している、つまり含んでいると述べたというのがポンペイオ氏の会見でありますけれども、先ほど直接確認したのかという議論はありましたが、少なくとも政府としては、この会見のとおり、完全な非核化という言葉には、検証可能であること、不可逆的であることも含んでいると、こういう認識にあるということでよろしいでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) これまで非核化という言葉があったときに、この非核化と言うときには、全ての大量破壊兵器、つまり、核だけでなく生物あるいは化学兵器を含む、そして場合によってはミサイルを含む、それのCVIDのことを言わば非核化と言っているんだというようなアメリカの話もございました。
今回、非核化ということが書かれているわけでございますが、日米韓の外相会談の中で、少なくとも全ての大量破壊兵器と全ての射程の弾道ミサイルのCVIDがない限り、経済制裁は解除しないということを確認をしておりますし、これは国連の場その他でもそういう議論に今なっているところでございますので、そういうふうに我々も認識しておりますし、国際社会もそのように認識をしている、そう考えていただいてよろしいと思います。
○井上哲士君 今後の非核化と平和体制構築のプロセスを開始をする大きな意義があったと思うんですね。同時に、今現在の北東アジアの安全保障環境にとっても重要な合意だったと思います。
韓国の文在寅大統領は十四日、このポンペイオ氏との会談で、成果に関して様々な評価があるが、米国や日本、韓国を含め全世界の人々が戦争や核、長距離ミサイルの脅威から脱することができた、それだけでも大きな価値があるというふうに発言をされております。
菅官房長官も十三日の記者会見で、この首脳会談について、我が国として極めて厳しい安全保障状況がかつてより緩和された、日本にいつミサイルが向かってくるか分からない状況は明らかになくなったと述べられました。
これ、防衛大臣、外務大臣、それぞれお聞きしますけれども、両大臣もこの官房長官の会見と同じ認識だと、よろしいでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 御指摘の菅官房長官の発言は、北朝鮮はICBMの試験発射及び核実験を実施しない旨を表明していること、今般の米朝首脳会談において朝鮮半島の完全な非核化を金正恩委員長が約束したこと等を踏まえ、今は昨年のミサイル発射が頻発したような時期とは異なり、今すぐミサイルが飛んでくるといった状況ではない旨を述べたものと承知をしております。
他方、北朝鮮の核・ミサイル問題については、今般の米朝首脳会談の結果も踏まえ、引き続き国際社会が一致団結して、北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での廃棄に向け努力していくことが重要であり、我が国として今後の北朝鮮による具体的な行動をしっかりと見極めていくということであります。
○国務大臣(河野太郎君) 官房長官と同様の認識でございます。
○井上哲士君 防衛大臣、いろいろ言われて明確に御答弁なかったんですが、昨日、総理も決算委員会で、政府として同じ認識だと、こういう答弁がありました。今後のこともいろいろ言われましたけれども、少なくとも現状認識としては官房長官と防衛大臣も同じだということを確認してよろしいでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 基本的には官房長官との認識は同じではありますが、その上で、北朝鮮は、我が国を射程に収める数百発の弾道ミサイルを実戦配備しており、また発射台付車両や潜水艦を用いて我が国を奇襲的に弾道ミサイル攻撃できる能力を向上させ、引き続きその能力を保持をしております。こうした点を踏まえれば、北朝鮮の核、ミサイルの脅威についての政府の基本的な認識の変化はないということ、そして、官房長官の発言についても、こうした政府の基本的な認識が変化したことを述べたということではありません。
常識的に言って、今交渉が行われている最中でありますので、この期間において北朝鮮がミサイル実験などをするということは常識的にはないだろうということの意味で官房長官が発言されたものと承知をしております。
○井上哲士君 まあ対話が行われている間は核・ミサイル実験を行わないことはもう今年の初めから北朝鮮が言っていた問題でありますが、昨年の総選挙の際に安倍総理は、この北朝鮮問題を国難だというふうに呼ばれました。先ほどの菅官房長官の発言からいうならば、現状も国難という認識ではないんだろうと思うんですが、その点、河野外務大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 最も緊張している状況からは緩んできたと言ってもいいのかもしれませんが、依然として、北朝鮮が核、ミサイル、あるいは生物兵器、化学兵器を保有しているという状況に変わりはございません。我々としては、全ての大量兵器並びにあらゆる射程のミサイルがCVIDされるかどうか、それをきちんと見極めなければならないというふうに考えております。
○井上哲士君 最も厳しい状況という、今お言葉ありました。昨年来、米朝間で激しい応酬がエスカレートをして、いつ軍事衝突があるかという現実的な危機がありました。私たちはそれを避けるために、戦争を絶対してはならないということで、無条件の米朝間の対話が必要だと強調して、六か国協議参加国にも申し入れましたし、政府に求めてきました。
政府は、今は対話のときじゃないという対応をされましたけれども、韓国文在寅大統領の尽力などもある中で、今回の首脳会談でこの現実的な衝突の危機というものが回避をされるような状況の変化が起きた、大きく緩和されたということの意味は大きいと思うんですね。
一方、これまで七十年間敵対してきたわけですから、それが一回の会談で一気に解決するということ自体が私は無理があると思います。外務大臣もいろんなところで大きな第一歩だという表現もされております。今回の合意で始まったプロセスを非核化と平和体制構築の実現まで進めることが必要だと思います。そのために何が大事かと。
私たちはこれまで、お互いに不信感があると、そのことを踏まえることが必要だと強調してきました。いかなる理由であっても、北朝鮮が核、ミサイルの開発をすることは許されませんけれども、一方、北朝鮮側には、核兵器がなくて体制は保証されるのかと、こういう不信や不安がある。これを見据えて、対話を通じて一歩一歩行動対行動による解決が必要だということも申し上げてまいりました。
この点で、この米朝の共同声明に相互の信頼醸成が朝鮮半島の非核化を促進し得るということが盛り込まれたことは、私、大変重要だと考えますが、この相互の信頼醸成、この必要性、重要性について、外務大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(河野太郎君) 相互の信頼関係の醸成というのは、非常にこの問題の解決に向けて大事な一歩なんだろうというふうに思います。
ただ、行動対行動というのは、これは北朝鮮が段階的な経済制裁の緩和その他を求めて言っていることであって、行動対行動というのはこれは北朝鮮の主張でございます。経済制裁に関して申し上げれば、あらゆる大量破壊兵器、全ての射程のミサイルのCVIDが行われて初めて経済制裁が行われるということを国際社会は確認をしているところでございます。
その中にあって、トランプ大統領が米韓の共同軍事演習を善意ある交渉に北朝鮮が着いている間は一時的に停止をするというようなジェスチャーをされておりますが、そうした信頼醸成のための様々な行動というのはあるのかもしれませんが、それは別に北朝鮮が主張している行動対行動をやっているわけではないということは申し上げておく必要があると思います。
○井上哲士君 行動対行動というのは六か国協議の声明で確認されていることでありまして、北朝鮮が言っているだけの話ではないんですね。重要なのは、私は、行動対行動というのが事実上もう進んでいるということだと思います。
今朝のこの八月の米韓合同軍事演習の中止が発表されたことも、首脳会談で北朝鮮側が主要なミサイルエンジンの試験施設を既に破壊しているということを表明しました。北朝鮮の発表では、金委員長はこの会談で、相手側を刺激し、敵視する軍事行動を中止する勇断をまず下すべきだと、こういうふうに述べたとされております。一方、トランプ氏は会見で、将来の交渉が進むべき態様で進まなくならない限り軍事演習は停止すると表明をし、その具体化という形で今朝中止が表明をされたと。
その首脳会談の前の段階でも、北朝鮮側がこの対話の間は核、ミサイルの実験を行わないと表明をしました。その後、米韓合同軍事演習は縮小をされたわけで、まさに私は行動対行動ということに現実なっていると思うんですね。
今もちょっと大臣からありましたけれども、今回のこの軍事演習の中止について、北朝鮮側、おとついのNHKで発言をされておりますが、北朝鮮側が善意ある交渉に応じている限り善意で報いるということだと、善意に対して善意だと、そしてアメリカ側からの信頼醸成措置の一つだと、こういうふうに述べられました。
確かに、経済制裁というのはこれは安保理決議でやっていることでありますけど、軍事演習というのは別に安保理決議とは関係ないわけですね。こういう部分で、善意に対して善意、行動対行動という形での信頼醸成措置が行われていると、これは私、大変大事だと思うんですけれども、こういうことにつながっているということではいかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) なぜ井上議員が北朝鮮の主張する行動対行動にこだわっておられるのかよく分かりませんが、国際社会は、あらゆる大量破壊兵器並びに全ての射程のミサイルのCVIDがない限り経済制裁を解除しないということを確認をしております。
アメリカが、この米朝の首脳会談の後、信頼醸成措置として何らかの措置をとるということはあるかもしれませんが、それは決して北朝鮮の主張している、段階的あるいは行動対行動といったものではございません。
○井上哲士君 繰り返し言いますけれども、行動対行動は六か国協議で確認をされていることなんです。
そして、今言いましたように、いわゆる経済制裁ではなくて、国連安保理決議とは別に行われてきた、こういう軍事演習の縮小とか中止ということはやはり信頼関係を醸成するという上での一つの上の非常に大きなものになっていると、そういうことでアメリカ側もやっているし、大臣自身も善意に対して善意で応じているんじゃないかと言われている、こういうことが大事ではないかということを私は言っております。以下、もう一回、お願いします。
○国務大臣(河野太郎君) 今回の北朝鮮の行動対行動というのは、別に六か国協議のことを言っているわけではありません。何かやったら経済制裁を解除してほしいということで、盛んに段階的ということを言っているわけであって、我々も行動対行動ではないと言っているときに、六か国会合で言っている行動対行動のことを言っているわけではなくて、最近の北朝鮮の主張のことを申し上げているわけでございまして、私には、井上議員がなぜそこまで北朝鮮の主張の行動対行動を繰り返されるのか、理解できません。
○井上哲士君 なぜそうやってあなたが私の質問をねじ曲げるのか、それも私、本当理解できないんですよ。何遍も言っているじゃないですか。私は、北朝鮮の主張を言っているんじゃありません。六か国協議で確認をされている行動対行動という原則について聞いているんですよ。
そして、この間の質問でも申し上げましたけれども、例えばアメリカのペリー元国防長官も、過去の米朝協議の教訓として、なぜ北朝鮮が核開発をするのか理解することだと、我々が抑止力と呼ぶように、向こうも安全保障を得ようとしている。しかし、お互いに不信感があると。その不信感の中で前に進めようと思ったら、一つ一つそれを、不信感を解消していくという点で、行動対行動が重要なのではないかと。そして、北朝鮮が言っている経済援助の問題ではなくて、安保理決議とは違うところで行われているこういう様々な軍事行動について、善意に対して善意で応えるということは、これは信頼醸成にとって重要ではないかということを言っているんですよ。
よく理解していただけたでしょうか。もう一回答弁お願いします。
○国務大臣(河野太郎君) 信頼醸成が大事だというのはまさにそのとおりだと思いますが、我々が言っている行動対行動というのは、別に六か国協議の行動対行動のことを言っているわけではございません。そういう意味でございます。
○井上哲士君 ですから、私は六か国協議のことについて質問しているんです。ちゃんと質問に的確に答えていただきたいと思うんですね。
先ほど、小野寺防衛大臣は、この米韓合同軍事演習の中止について、外交努力の下支えという表現をされました。米朝が外交努力で解決しようとしていることに対しての防衛サイドからの下支えということだと思いますけれども、だとすれば、今後のこの米朝間の対話、そして非核化、平和のプロセスに進む上で、日本の防衛省としてはどういう下支えをできるとお考えでしょうか。
○国務大臣(小野寺五典君) 今回の北朝鮮が一定の平和に向けた行動を取り始めたというのは、これは経済制裁もありますし、あるいは、それぞれ防衛当局、日米、日米韓の連携の強さ、これが一定のメッセージになったのではないかと私ども思っております。
現在、私ども平和裏にこの問題を解決することが重要だと思っておりますが、少なくてもまだ北朝鮮はかなりの数の弾道ミサイルも保有しておりますし、核弾頭も保有していることをこれは否定できない状況であります。そういった中で、防衛当局としては、しっかりこの交渉について見守ると同時に、監視は必要な監視をしっかりしていくということなんだと思っております。
○井上哲士君 昨日の決算委員会でも、総理は、拉致問題の解決も含めて、日朝の首脳会談についても意欲を示されました。先ほど来、この間の行動対行動ということを申し上げましたけれども、米朝の首脳会談に至る前もそういう様々な行動がありました。そして、事前に国防、国務長官も含めた訪朝などの様々なことがあったわけですね。私は、現実にこういう一つ一つのことを通じて日米間の信頼醸成、総理自身も相互のそれが必要だということを言っておられました。
そういう点で、本腰の入れた対話による解決ということに更に進めていくべきだと思っております。
○委員長(三宅伸吾君) 井上君、時間となりましたので、おまとめください。
○井上哲士君 なし崩しではなくて、明確に対話によって非核化と平和体制構築のプロセス前に進めると、こういう方向に転換するべきだと改めて申し上げまして、質問を終わります。