○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
日中社会保障協定は必要な取決めであり、賛成であります。
そこで、日中関係と新しい防衛大綱に関してお聞きいたします。
まず、外務大臣にお聞きしますが、十月の安倍総理と習近平中国国家主席との首脳会談で、日中関係は正常な軌道に戻ったということを確認をいたしました。中国は、この間、尖閣諸島周辺の東シナ海や南シナ海で力による現状変更を目指す動きは重大でありますが、これを軍事対軍事の悪循環にしてはならないと思います。その点で、総理と李克強首相との会談で、日中はパートナーであり、お互いに脅威にはならないということを確認したことは重要だと思うんですね。
このお互いに脅威にはならない、脅威にならないということの意味、それを確認したことの意義について認識をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(河野太郎君) 安倍総理は、今回の訪中において習近平国家主席及び李克強総理との間で首脳会談を行って、国際スタンダードの上で、競争から協調へ、隣国同士として互いに脅威とならない、自由で公正な貿易を発展させていくとの三つの原則を確認をいたしました。このうち、御指摘の隣国同士として互いに脅威とならないという原則については、二〇〇八年の日中共同声明において確認された、お互いに協力のパートナーであり、お互いに脅威とならないということを今回改めて確認したものでございます。
御指摘をいただきました東シナ海、南シナ海ではまだ様々な動きが続いております。そうしたところにつきましては、日本として原則を譲るつもりは全くございません。
その上で、隣国同士の様々な課題はありますが、懸案を適切に処理しながら、ハイレベル往来やあらゆる分野での協力、交流を推し進め、日中関係の新しい時代を切り開いていくつもりでございます。
○井上哲士君 一方、イージス・アショアについて、当初、北朝鮮を想定した弾道ミサイルの迎撃機能に加えて、中国の巡航ミサイルを念頭に同時対処できる機能を担わせる方針でありました。そのためには多機能型対空ミサイルのSM6の搭載が必要になるわけですが、このイージス・アショア導入予算がどんどん膨れるという中で、来年度の概算要求には巡航ミサイル対応は計上されませんでした。いかにも予算縮減のようでありますが、元々、昨年十二月の弾道ミサイルの閣議決定では、弾道ミサイル防衛能力の抜本的向上のみが目的だったわけですね。一方、次期防衛大綱には、この弾道ミサイルと限定せずに、総合ミサイル防空能力の強化が求められることになっておりますが、そうしますと、これによってこのイージス・アショアに巡航ミサイル対応も追加をされると、こういうことになるんでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) まず、質問にお答えする前に、中国との関係ですが、私ども、当然のことながら、尖閣周辺の中国の動きについてはしっかりウオッチをしてまいりますが、一方で、防衛当局間の信頼醸成はしっかり図っていかなくてはいけないというふうに考えておりまして、既にワークしてる日中海空連絡メカニズムに加えて、先般シンガポールで行った日中の防衛相会談におきまして、ホットラインを開設をしていこうと、相互に訪問をしようと、そういうことも今取り決めているところでございます。
その上で、今の先生の御質問ですけれども、イージス・アショアには、御指摘のように弾道ミサイルのみならず巡航ミサイルの迎撃機能を追加することも可能でございますが、本年四月のレーダー選定においては、将来的な拡張を有することを確認するため、弾道ミサイル対処機能のみならず、巡航ミサイル等への対処機能も含めた提案を受けております。一方で、今回のイージス・アショアの導入は弾道ミサイルの防衛能力の抜本的な向上を図るために行うものでございまして、これまで、巡航ミサイルの迎撃機能の付加については決定をしておりません。したがって、三十一年度概算要求においては、巡航ミサイル対処機能の付加については予算計上をしておらないところでございます。
なお、次期大綱につきましては、現在、政府内で議論を進めているところでございますが、盛り込まれる具体的な内容について現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、自衛隊の防空、ミサイル防衛の統合の在り方については、今後とも具体的な検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
○井上哲士君 過去にも指摘しましたけれども、こうしたものが軍事対軍事の悪循環を強めるものになっていくと。同時に、米軍が北朝鮮対応などでイージス艦のBMD任務が非常に増加をしていると、これを軽減するために陸上イージスが必要だというようなことも米海軍から様々な声が出ていると、こういうことも受けたものではないかということは指摘をしていきたいと思うんですね。
さらに、大臣は、一昨日のこの委員会の答弁と記者会見で、新しい防衛大綱に関わって、F35Bの研究、そして護衛艦「いずも」の空母化にも言及をいたしました。今朝の東京新聞などは、F35B二十機導入検討と、こういう報道もされております。
ちょうど二か月前に米軍は、アメリカ海兵隊が実戦配備するF35Bが初の戦闘攻撃を実施したことを公表いたしました。アメリカ中央軍の九月二十七日付けの発表によりますと、第一三米海兵隊遠征軍のエセックス強襲即応群のF35Bが、アフガニスタンにおける自由の番人作戦の支援として、同機種としては初めてとなる戦闘攻撃を実施したと、こうしているんですね。具体的には、地上の掃討作戦を支援する空爆を実施し、地上部隊司令官の報告では、空爆は成功を収めたと考えられると、こうしております。機体の映像も公開されまして、精密誘導兵器も搭載している様子も報じられております。
この発表文の中で、中央軍の司令官はこういうふうに言ってF35Bの能力を高く評価しているんですね。F35Bは、戦域における強襲及び航空戦闘能力、作戦上の柔軟性並びに戦術上の優位性における著しい強化になる、常に安定と安全を向上させる海上優勢を可能としつつ国際水域から地上作戦を支援する、こういうふうに言っております。
そこでお聞きしますけど、一体なぜ日本が国際水域から他国の地上を空爆する、こういう強襲能力に優れた兵器について、その保有を含めて研究をする必要がどこにあるんでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) まず、「いずも」の件でございますが、私が二十七日朝の会見で申し上げましたのは、「いずも」型護衛艦というのは、三年前に就役をしたばかりでございまして、今後約四十年間ぐらいは使っていくということを前提にしている護衛艦でございますので、できるだけ多用途に使っていけることが望ましいというふうに思っておりまして、引き続き検討、研究を進めさせていただきたいということを申し上げたところでございます。
一方のF35Bという航空機は、現在我が国が導入しております35Aと同じベースの機体でございまして、短距離で離発着できるという性能を持っております。国土が狭い我が国としては、関心を持って情報収集を行い、その機能、性能について研究しているところでございますが、それ以上のことにつきましては、政府の有識者会議あるいは与党の御議論を承った上で、さらに大綱、中期防の策定に向けて検討をしてまいりたいと思っておりまして、何か具体的に決まっているということではございません。
○井上哲士君 先日の答弁でも会見でも、この「いずも」のいわゆる空母化についての否定はされませんでしたし、「いずも」にF35Bを搭載することになれば、国土の狭さというのは全く理由にならないんですね。あの狭い甲板で飛べるようになるということでありますから、やはり米軍が述べているように、国際水域から他国の地上を空爆する強襲能力に優れた兵器、これを導入するということが何よりも私は問われる、その研究自体が問われると思うんですね。しかも、これ、戦闘機の役割を一変させるものになるんじゃないか。
航空自衛隊の戦闘機は、日本の防空を任務として日常的にスクランブルに従事をさせております。航空自衛隊のホームページを見ますと、保有する戦闘機について、進入してくる敵を直接撃破する任務を担当するとして、現有する四機種を紹介をしているわけですね。ところが、戦闘機をこの「いずも」のような甲板を持つ艦艇と組み合わせて海のどこからでも作戦ができるようにすると、こうなりますと、もはや防空では説明が付かないと思うんですね。
私は、防衛省は保有する戦闘機の役割を一変させようとしているのではないかと、こう思うわけですけれども、この点どうでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) まず、今先生がおっしゃったようなことが決まっているわけではございません。「いずも」の多用途での活用、あるいは航空機体系全体を捉まえた新しい航空機の導入については今検討中でございまして、何かが決まっているというわけではございません。
いずれにいたしましても、我が国の防衛の基本的な考え方は専守防衛でございます。これが次期大綱、中期防を作っていく上においても大前提でございますので、これを前提としながら、しかし、我が国を取り巻く安全保障環境、厳しさが増してきている、軍事技術が目まぐるしく進展をしているという環境の中で国民を守るために、真に必要な防衛力の在り方についてさらに検討を加え、見定めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
○井上哲士君 決まっていないと言いながら研究は進めていると、こういうことなわけですね。
専守防衛は変わらないんだと、こういうふうに言われましたけれども、この「いずも」のようなものと戦闘機を組み合わせるということになりますと、日本の領土、領海を離れ、領空を離れて、海上のどこからでもどこへでも戦闘機の拠点を持とうとする、事実上の海上の航空基地の機能を持つものを持つということになるわけですね。これはやっぱり大きく変えることになりますね。これ、他国が脅威とみなさない保証はありません。他国がこういうのを見て、日本の装備を上回らそうと、上回ろうと、こういう悪循環につながっていくんじゃないですか。
○国務大臣(岩屋毅君) まず、どのような装備を持ち、どのような運用をしていくかということについて、現段階で何か具体的に決まっているわけではありません。その上で、どのような種類の装備を有することになろうとも、我が国が専守防衛に徹し、他国に脅威にならない、他国にとって脅威にならないという考え方は、これからも堅持をしてまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 日本の領土、領空を離れて、海上のどこへでもできるような海上の航空基地の機能を持つ、そのことが他国の脅威にならないとなぜ私言えるのか分かりません。
更に聞きますけれども、これ、「いずも」がそういった機能に改修した場合に、米軍のF35Bを離着陸させる、こういう運用も検討されるんでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 今までも、例えば日米共同訓練、米国だけではなくて他国との共同訓練におきまして、クロスデッキというふうに申しておりますが、お互いに持っている航空機をお互いの甲板の上に載せるという訓練などを行ってきておりますので、幾つかの種類の他国の航空機、米国の航空機が「いずも」型の護衛艦に離発着したことはございます。
したがって、そういうことも日米同盟の抑止力を高めていく上で必要な訓練だということで我々はやってきているわけでございまして、今後どうするかということは、先ほど申し上げたように、まだ具体的に決まっておりませんが、我が方の装備の在り方についてですね、しかし、「いずも」型の護衛艦に米国を始め他国の航空機が離発着するということは今後もあるということでございます。
○委員長(渡邉美樹君) 井上哲士君、質疑をおまとめください。
○井上哲士君 今後あると、こういうふうに言われました。
最後、まとめますけど、安保法制で安倍内閣はもう憲法解釈勝手に変えて強行したわけでありますが、米軍に対する支援も、戦闘作戦行動に発進準備中の航空機に対する給油、整備も含めてできるというふうにいたしました。まさにその下で日米一体化を推進しているわけで、これを装備面でますます強化することになると、こういうことだと思います。これは、まさに軍備拡張の競争を伴って脅威をもたらすだけだと思います。この問題は、更にこれからも質問していきたいと思います。
以上、終わります。