○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
自衛隊の饗庭野演習場での迫撃砲弾による実弾場外被害について私からもお聞きいたします。
人的被害がなかったのは奇跡のような事態でありました。十七日の地元の説明会でも、一五年の民家への実弾被害に続く重大事態であって、当時の覚書を守られていないという厳しい批判の声が上がりました。
〔委員長退席、理事宇都隆史君着席〕
陸上幕僚長が十五日の会見で人的ミスが有力な要因だとしました。何か個人的ミスかのようにも聞こえるわけでありますが、果たしてそうなのか。これは第三十七普通科連隊の訓練中の事件でありますが、会見では射撃係、安全管理者、観測者などが挙げられておりますが、今回の事態について、直接どういう任務の隊員がそれぞれ何人関わっていたのか、明らかにしていただきたい。
○国務大臣(岩屋毅君) 八十一ミリ迫撃砲による射撃訓練におきましては、通常、迫撃砲一門につき砲手や弾薬手などから成る四人一組により射撃を実施するとともに、安全を管理する隊員、射場内への立入りを警戒する隊員、射撃を観測する隊員等を置くこととされております。
今般もそういう体制で行われたものと思いますが、詳細は、先ほど申し上げた中部方面総監部で立ち上げた調査委員会が今調査中でございます。
○井上哲士君 つまり、かなりの数が関わっているわけですね。
会見によりますと、諸元が間違っていて発射の向きが二十二・五度もずれていた。それから、その最初の二発の着弾を確認できないので三発目を撃ったと。その時点で砲の向きが誤っていることに気付いたのに、三発の着弾を確認せずに四発目以降を撃ったと。警察から連絡があるまで気が付かずに、訓練中止は通報を受けて二十七分後になったと。あってはならないことが幾重にも重なっているんですね。これは何か人的ミスではなくて、私は組織的な問題があると、こう思います。
なぜこういうことになったのか、原因究明と再発防止策を徹底する。そして、当然、高島市が認めないうちに実弾演習を再開しないことは当然でありますが、地元の住民の方からは、もうこの演習場は狭過ぎると、そもそもこの実弾演習などは無理だと、今後やめるべきだという声も出ておりますけれども、こういう声にも応えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 今般、この事案を受けまして、市長さんの申入れを受ける形で演習場での実弾射撃を当面中止をすることとさせていただきました。
〔理事宇都隆史君退席、委員長着席〕
しっかりと調査結果を御報告をし、また被害者の方にしっかりと事後の対応を行って信頼を回復し、饗庭野演習場は防衛省・自衛隊にとっても極めて重要な演習場でございますので、御理解をいただいた上でまた演習場として使用させていただきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 地元の皆さんも演習場そのものをなくせと言っているわけじゃないんですね。実弾演習はもうやめてほしいと、そもそもこの迫撃砲の射程と比べて狭過ぎるんだということを言っているわけですよ。本当に命に関わる問題でありますから、正面から受け止めていただきたいと思います。
続いて、辺野古の問題でお聞きいたします。
沖縄知事選挙での玉城知事の当選など、オール沖縄の三連勝で辺野古の基地反対という明確な県民の審判が下りました。総理は、選挙結果を真摯に受け止めると言って、選挙後の玉城知事との面談でも県民に寄り添うと言いました。にもかかわらず、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づいて、同じ内閣である国土交通大臣に対して、県が行った埋立て承認撤回の効力停止の決定をしたわけですね。そして、工事は再開された。この自作自演に県民の一層の怒りが広がっております。
大臣も知事と面会をされたわけでありますが、集中協議期間を沖縄県と設定しながら工事を進めております。
沖縄県民の民意は無視するのかと、こういう県民の怒りの声、大臣、どう受け止めていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 選挙結果につきましては、やはりまず真摯に受け止めなければいけないというふうに思っております。
その上で、やはりこの問題の原点は、ある意味世界で一番危険だとも言われている普天間飛行場の危険性を一日も早く除去する、最終的には全面返還を果たすということでございますので、そこへ向かって私ども一歩ずつ前進をさせていただきたいと、最終的にそのことが沖縄の負担軽減を図るということにつながっていくと、こういう考え方で進めさせていただきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 真摯に受け止めると言うならば、この審判を受け止めて、私は、普天間は即時無条件の撤去を求めると、この間、デニー知事がアメリカへ行きましたけれども、これ本来政府がやるべきことだということを強く申し上げたいと思うんですね。
今回のこの行政不服審査制度による申立てについて、行政研究者百四人が連名で、これは政府による制度の濫用だと厳しい批判の声明を出しました。
総務省に来ていただいておりますが、これ、なぜ裁判以外にこういう制度がつくられたのかと。行政法の解説書では、裁判手続であると時間的、経済的コストが掛かる、加害者は国家、公共団体なのであるから被害者たる私人の簡易迅速な救済制度、手続を設けておく必要性があるとして設けられたとしております。これが行政不服審査法による国民の権利救済、権利利益救済のための簡易迅速な制度なわけですね。
二〇一四年にこの法律を改正した際に、七条二項で、国が一般の私人、事業者には立ち得ないような立場、すなわち固有の資格において処分の相手方になる場合には、この法律の適用除外というふうにいたしました。こういうふうに改正をした理由はどういうことでしょうか。
○政府参考人(吉開正治郎君) お答え申し上げます。
平成二十六年に改正される前の旧行政不服審査法では、行政機関相互間における処分についての適用関係について明文の規定を置いていませんでした。しかし、行政機関が一般の私人や事業者と同様の立場で処分の相手方となった場合には不服申立てをできる一方、一般の私人や事業者が立ち得ないような立場である固有の資格において処分の相手方になる場合には不服申立てをすることができないと解されておりました。
御指摘いただきました行政不服審査法第七条第二項でございますが、この旧法の考え方を前提に、平成五年に制定された行政手続法において、国の機関が固有の資格において受けた処分を明文で適用除外とした経緯も踏まえまして、行政不服審査法上も適用関係を明確にする観点から確認的に規定したものでございます。
○井上哲士君 先ほど、なぜこういう救済制度がつくられたのかと申し上げましたけど、つまり、この固有資格というのは、時間的、経済的コストの掛からない簡易迅速な救済が必要な私人と国や行政機関が同一視できるかどうかと、これを区別するための概念なわけですね。
では、この辺野古の埋立てはどうなのかと。効力停止の決定を出した国交省にも来ていただいておりますが、公有水面埋立法は、個人には埋立ての免許、国には埋立ての承認を与えるとしております。承認の場合は基本的に都道府県の監督を受けないと承知しておりますが、具体的にこの免許と承認では何が違うのか、主なものを示していただきたい。そして、なぜこういう差異を置いたのか、その理由もお願いします。
○政府参考人(林俊行君) お答え申し上げます。
委員御指摘の公有水面埋立法上の免許と承認の違いについてでございますが、国に対する承認につきましては、公有水面埋立法の三十二条で関連する規定の準用をしております、あっ、失礼しました、四十二条で準用させていただいておりまして、主なものでいいますと、免許には適用されておりますけれども承認には準用がされていない規定、例えば、第二十二条に規定をしております工事が竣功した際の都道府県知事による竣功認可に関します規定、あるいは三十二条に規定をしております埋立免許を受けた方が法令違反等を犯した場合の都道府県知事による免許取消しですとか原状回復命令を行うことができる規定、こうした監督に関する規定は埋立ての承認には準用されておりません。
この差異につきましてですが、これらの埋立承認に準用されていない規定につきましては、通例、国が埋立てを行う場合にはあえて適用する必要がないというふうに考えられたからだと解しております。
○井上哲士君 国はそういう法令違反などをしないという前提で、免許のようなときの都道府県の監督がないわけです。今ありました取消し命令とか原状回復命令は承認の場合はありません。それから、工事竣功の際には、免許は認可ですけれども、承認は通知のみになっている。つまり、国が免許でなく承認を受けているということは、都道府県の監督を受けないなどの特別な法的地位を与えられているわけですね。これは一般私人では立ち得ない固有の資格なんです。
追加して防衛大臣にお聞きしますけどね、今回のこの辺野古の埋立ては、米軍基地の建設のために日米地位協定に基づく米軍への提供水域内の公有水面の埋立てをするわけですね。こういう埋立てをできる者が国以外にいるでしょうか、いるのなら明示をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 今般、沖縄防衛局が受けた埋立承認の撤回処分は、一般私人たる事業者が埋立ての免許につき撤回処分を受けるのと同様に埋立てを行うことができる法的地位を失うものでございますので、一般私人が権利利益を害された場合と同様で、したがって行政不服審査法に基づいて審査請求及び執行停止を申し立てる資格があるというふうに私ども考えているところでございます。
○井上哲士君 次の質問のお答えになるんですけどね。
私が聞いたのは、今回の辺野古の埋立ては、普通の埋立てじゃないんですよ、米軍基地のための埋立て。そのために日米地位協定に基づく米軍への提供水域内の埋立てをすると、こういう米軍基地建設のための埋立てをすることができるのが国以外にいますか、一般私人ができますかということを聞いているんです。
○政府参考人(西田安範君) お答えを申し上げます。
繰り返しになりますけれども、行政不服審査法は不服申立てができる対象を一般私人には限定をしていないところでございます。国あるいは地方公共団体の機関が行政処分を受けた場合にも申立てを行うことが認められていると、こういうことでございます。
○井上哲士君 ちゃんと答えてくださいよ。米軍基地を造るための埋立てが国以外にできますかと聞いているんです。今全然違う答弁です。ちゃんと答えてください。
○政府参考人(西田安範君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げたように、国や地方公共団体の機関が行政処分を受けた場合にも審査請求等が認められているということでございます。
沖縄防衛局、事業者としての沖縄防衛局が受けました埋立承認の撤回処分というのは、これ一般私人たる事業者が埋立ての免許について撤回処分を受けるのと同様に法的地位を失う、あるいは一般私人が権利利益を害された場合と同様ということで、私どもとして審査請求を申し立てる資格があると考えているということであります。(発言する者あり)
○委員長(渡邉美樹君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(渡邉美樹君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(西田安範君) お答えを申し上げます。
御指摘の代替施設の建設事業、これにつきましては米側との協議、調整等を踏まえて行っているものでございます。
これにつきましては、沖縄防衛局が事業者として埋立てを行っているということでございまして、これに対する埋立承認の撤回処分というのは、一般私人たる事業者が撤回処分を受けるのと同様に法的地位を失うものであるということでございますので、私どもとしては、行政不服審査法に基づきまして、審査庁である国土交通大臣に審査請求等を申し立てる資格があるものと考えているところでございます。
○井上哲士君 いろいろ言いますけど、こういう米軍の基地を造るための埋立工事なんというのは国しかできないわけですね、あり得ないわけですよ。ですから、今、処分という点では同じだと言われましたけれども、この防衛省が受けていた埋立ての承認というのは、一つは一般私人ができないような米軍基地の建設に伴うものだということ、もう一つは免許ではなくて承認であって、都道府県の監督を受けないという、いずれも特別な地位なんですね。
これは明らかに一般私人が立ち得ない固有の資格になるんじゃないですか。七条二項にこれを使うことは違反するんじゃないですか、いかがですか。固有な資格じゃないと言うのなら、その理由を示してください。
○政府参考人(西田安範君) お答えを申し上げます。
繰り返しになりますが、防衛局が受けました埋立承認の撤回処分というのは、これは一般私人たる事業者が埋立ての免許について撤回処分を受けるのと同様に埋立てを行うことができる法的地位を失うというもので、一般私人が権利利益を害された場合と同様でありますので、私どもとしては、これは審査請求等を申し立てる資格があるものと考えているということでございます。
○井上哲士君 処分に当たるから固有の資格でない、一般私人と同じだと言うのであれば、この七条二項要らなくなるんですよ。処分の中でも、固有の資格の場合は適用しないという状況なんですね。
繰り返しますけれども、防衛省が受けた承認というのは、一般私人のような免許とも違うし、しかも、米軍基地を造るという明らかに固有の立場なんですね。これ、濫用と言わなくちゃいけません。
さらに、この行政不服審査法一条が定めたこの公正な手続が、この問題で国交大臣に可能なのかということも問われております。そもそも、国交大臣は、辺野古基地建設の閣議決定に防衛大臣とともに署名をしております。それから、二〇一五年の埋立承認取消しへの不服申立てに併せて、県知事に国政の重大事項を判断する権限はないとして、県に代わって事務を行う代執行に向けた行政訴訟も起こしているんですね。つまり、この工事において防衛省の代役として訴訟まで行った。同じ立場なんですよ。およそ公正な手続と言えません。
実際、この公有水面埋立法の四条二項では、免許の条件として環境保全や災害防止を書いておりますけれども、国交省が出した決定文書の中にはこのこと一切触れていないんですね。沖縄県は、承認撤回の理由として、事前に実施設計や環境保全等に対する協議することなどを留意事項として義務付けたのに、サンゴの移植なしに着工するなど守られていないと、環境保全、災害防止に十分配慮という要件が満たされていないということで撤回をしたのに、国交省の決定文書にはこのこと全く触れていないんですよ。書いているのは、専ら普天間での騒音や日米外交などの防衛省の言い分を書いただけなんですね。
公有水面埋立法の所管の役所と言いながら、一番肝腎の環境保全や災害防止に何の検討もせずに効力停止を決定する、これで法律所管する国交大臣としての責任が持てるんですか。いかがでしょうか。
○政府参考人(林俊行君) お答えをいたします。
行政不服審査請求につきましては、地方自治法上、法定受託事務につきましては、知事の職分であります埋立承認の撤回についての審査請求、これについては、一般私人でありましても国の機関でありましても、公有水面埋立を所管しております国土交通大臣に対して行うこととされております。
今般、沖縄防衛局から審査請求及び執行停止の申立てがございましたので、この行政不服審査法上の審査庁として、沖縄防衛局及び沖縄県の双方から提出をされました書面の内容を検討させていただきました。
その上で、行政不服審査法第二十五条第四項におきましては、執行停止決定について、処分により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときには、審査庁は執行停止をしなければならないとされております。そのために、行政不服審査法上の審査庁として、この重大な損害を避けるために緊急の必要があるのかどうかということを検討をいたしました。
その際、事業者である沖縄防衛局からは、埋立工事を行うことができないという状態が継続することによって、埋立地の利用価値も含めた工事を停止せざるを得ないことにより生ずる経済的損失、それに加えて、普天間飛行場周辺に居住する住民の方たちが被る航空機による事故等の危険性の除去や騒音等の被害の防止を早期に実現することが困難となるということのほか、日米関係の信頼関係や同盟関係等にも悪影響を及ぼしかねないという外交防衛上の不利益が生ずるということがございました。
こうしたことを踏まえて、重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときに該当するものと判断をいたしまして、執行停止を決定をいたしました。
○委員長(渡邉美樹君) 井上哲士君、申合せの時間が参っておりますので、質問をおまとめください。
○井上哲士君 時間で終わりますけどね。
今あなたが言ったのは、沖縄防衛局が言ったことをそのままオウム返しにしただけなんですよ。
先ほど言いましたように、公有水面埋立法では環境保全とか災害防止を定めているんですよ。法律所管する役所としてはこの立場でちゃんと見なくちゃいけないのに、現にそういう環境破壊が進んでいるということで撤回をしたのに対して、それを全くやっていないと。
○委員長(渡邉美樹君) 時間が来ております。
○井上哲士君 本当に私は、責任問われていますよ。
こういうことはやめて、違法な不服審査は取り下げて、工事は中止をして、沖縄県民の民意と真剣に向き合うよう強く求めまして、質問を終わります。