○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
日欧EPA、SPAの質問に入る前に、私からも、今朝の、未明の米軍機の墜落問題、一言申し上げておきたいと思います。
空中給油機KC130とFA18戦闘機の事故だというふうに言われておりますが、二〇一六年十二月に名護の海岸にオスプレイが墜落をした、あの事件も空中給油中の事件だったんですね。その後の米軍の最終報告書によりますと、この中で、事故機は何度も失敗をしていたと、こういうことも書かれておりました。そして、FA18でいいますと、今年の十一月の十二日に那覇の沖に墜落をしたばかりなわけですね。今回の場所が訓練区域かどうかというのは先ほど明らかになりませんでしたけど、那覇の場合は訓練区域だったと。玉城知事は、こういう、沖縄の周辺にどんどん増えていると、こういうものは返還も含めてやるべきだということも言われておりました。
事件で、人命第一でありますから、その立場での捜索をしながら、原因の究明、そしてこうした日本周辺でこういう事故が起きないようにするための訓練区域の返還も含めた対応を強く求めておきたいと思います。
その上で、協定でありますけれども、これまで安倍政権は、成長戦略として、大企業の利益を優先して市場開放を推進をしてまいりました。その下で様々農業への重大な影響が起きてきたわけであります。その姿勢が、今回のこの日欧EPAの影響試算、EUのものに対する対応に表れたと私は思います。
前回も指摘しましたように、EU側は乳製品の対日輸出が約九百四十八億円増えると試算をし、一方、日本は国内生産の減少額は最大二百三億円と試算をしていると。これ実に四倍半の大きな乖離があるわけですね。この欧州委員会の試算について、前回の質疑の際に、何の調査もしていないんですかとお聞きしましたけれども、これ明確な回答がありませんでした。
前提や根拠について、EU側にきちんと照会をされたんでしょうか。
○副大臣(小里泰弘君) EU側の経済効果分析につきましては報告書が公表されておりまして、その内容について確認をしましたところ、日本及びEUのGDPの押し上げ効果や主な品目に関する輸出額及び生産額の変化について記述をされております。
また、その中では、関税の削減や撤廃による経済全体への効果や貿易額、国内生産額の変化について分析が行われておりますが、その一方では、品質格差による影響の違いが明らかにされておりません。また、我が国の国内対策の効果も考慮されていないものでありますなどなど、農林水産省の計算とは考え方の異なるものであります。
一方で、どのような前提や計数を用いて試算をしているか、こういった詳細は明らかになっておりませんでしたけれども、農林水産省の試算とは計算の考え方や方法がそもそも異なっていたがために、欧州委員会に対して試算の前提や根拠を照会することはしておりませんということであります。
○井上哲士君 私、最後の結論がよく分からないんですね。
同じ問題について、違う、全く違う結果が出ていると、向こう側の考え方が違うと。しかし、どっちかが正しいか、両方とも違うのかもしれませんよ、しかし、違う結果が出ているんですから、実際どうなのかというのを検証するのは当たり前だと思うんですよ。考え方が違うから照会をしないというのは、全くまともに日本の対応を考えていると私は思えないんですね。
TPPの際の内閣委員会の決議で、他の参加国における試算例や各県の試算例も参考として、より精緻になるよう、見直しに努めると、こういうのが、附帯決議が上がっております。これに対して、本会議で大臣は、この趣旨を踏まえつつ、試算例について情報収集を行っていると、こういうふうに言われました。
これは何もTPPの試算だけに関わる問題ではありませんで、ここでやはり内閣委員会が、私、してきたのは、あらゆるこういう国際的な経済的な協定について、きちっとそういう相手国の試算も精査しなさいということだと思うんですね。この決議の趣旨を踏まえるならば、先ほど言ったような、報告書を手に入れたというだけではなくて、何が食い違っているのか、その上でどちらの試算がどのように問題があるのか、これ当然照会するのが当たり前だと思うんですけれども、なぜしないんですか。
○副大臣(小里泰弘君) 参議院内閣委員会において、農林水産物の生産額への影響試算を含むTPPの経済効果分析については、他のTPP参加国における計算例や各県の試算例も参考として、より精緻なものとなるよう、見直しに努める旨の附帯決議が行われております。
この決議につきましては、TPP11に関するものと承知をしておりますけれども、欧州委員会の経済効果分析につきましては、先ほど申し上げましたように、品質格差による影響の違いが明らかにされておりません。国内対策の効果も考慮されておりません。こういった点が食い違っておるわけであります。すなわち、農林水産省の計算とは考え方の異なるものであります。
また、農林水産省の影響試算につきましては、日EU・EPA交渉において、関割りやセーフガード等の国境措置を獲得をいたしまして、その上で国内対策、万全の対策を打っていくわけであります。その効果を踏まえて試算をしたものであります。このため、欧州委員会の試算は、当省の試算を精緻化する上での参考とすることは難しいと考えております。
引き続き、当省の試算の考え方について理解が進むようにしっかり丁寧に説明してまいりたいと思います。
○井上哲士君 それぞれが交渉して協定を結んでいくと。先ほど来、手のうち、手のうちといった話がありましたけど、相手の方も全部出していない可能性もあるわけですよ。しかし、できた上で、これができたので、日本に対して輸入攻勢を掛けていくということだと思うんですね。
そういう中でこういう見通しが出ているわけでありますから、考え方が違うからそれを参考にしても精緻にならないというのは私はおかしいと思うんですよね。貿易事、相手があるわけでありますから、やっぱり相手がどういう戦略を持ってやろうとしているのか、それに対して日本の酪農を守るために日本の今の対応でいいのかどうかというのは、当然私は相手の考えを聞き出して、日本に足らざるところあればやると、これ当然の姿勢だと思うんですね。それがなぜできないのか、今の答えで納得できません。もう一度お答えいただきたいと思います。
○委員長(渡邉美樹君) どなたですか。
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(渡邉美樹君) 速記を起こしてください。
○副大臣(小里泰弘君) 今回の日EU交渉に当たりましては、いかに国内農業の再生産というものを維持していくか、ここに一にポイントを捉えて臨んだわけであります。
例えば、欧州委員会の試算の考え方を見ますと、一つには、経済全体の押し上げ効果を見るという考え方であります。一方で、農林水産省の試算は、輸入品が国産品に置き換わり得るかどうかを見るというものであります。
分析方法としましては、欧州委員会の試算は、いわゆるGTAPモデル、マクロ経済モデルでありまして、応用一般均衡モデルというものを採用しております。各品目の中での品質格差による影響の違いはここでは明らかにされておりません。また、国内対策、日本の国内対策の効果も考慮をされていないものであります。
農林水産省の試算におきましては、品目ごとの積み上げ方式であります。品質格差による影響の違いを考慮いたしまして、また日本の国内対策の効果を考慮し、引き続き農家所得が確保されるようにということで試算がなされているわけであります。
前提、根拠についてのお尋ねでありますけれども、前提となるGTAPモデルの詳細や計数、例えば価格弾力性、競争環境の変化、技術進歩に関する想定など、こういった中身については明らかになっておりません。
一方、農水省は、国産品及び輸入品の価格を出発点としまして、輸入品と競合するものは関税削減相当分下落をすると、輸入品と競合しない国産品は競合する部分の価格低下率の二分の一まではこれを見ようという、そういった前提を置いて生産をしておるわけでありまして、それぞれの国内事情、また考え方の違い、目的とするところが違うわけであります。
○井上哲士君 昨日、農水省が持ってきた対策のポンチ絵を見ますと、日本の対策の考え方(シナリオ)と書いてあるんですね。ですから、今るる言われましたけれども、日本の側のシナリオに沿って確かに試算はされているかもしれませんよ。これ、しかし、相手がいるんですよ。独り芝居しても駄目なんですね。相手がどういうふうに考えてやっているのかということを私はちゃんと分析をしてやらなければ、だって、四・五倍の乖離があるんですから。何の根拠もなく向こうもやっているわけじゃないわけですね。そこを、日本の考え方と違うから照会しないというのは全く理由にならないと思いますが。
更に聞きますと、前回、日本の試算について、輸入増を所与の前提にしたものではないとしつつ、需要はどんどん増えている、国内生産も若干ながら長期トレンドで見れば増える傾向にあると。輸入が増加する可能性もあるが、国内生産も増加する可能性があり、そこを希求していきたいと、こういう答弁をされました。
いただいた農水省の資料を見ましても、国内消費量は確かに毎年伸びておりまして、平成二十年で二十二・三万トン、平成二十八年には三十・三万トン、約一・三六倍に増加をしております。しかし、いただいた資料でその内訳を見ますと、国内産は四・三トンから四・七トンへごく僅かな増加、ほぼ横ばいですね。それから、輸入チーズは十八・〇トンから二十五・六トンへと大幅増になっているんですよ。関税で守られてきてもこの状況なわけですね。
今回、この関税削減があるように、試算にあるように、欧州側が輸出攻勢に出ようとしている下で、輸入も増えるけれども国内生産も増えると、こういう政府の見通しは余りにも甘過ぎるんじゃないでしょうか。
○副大臣(小里泰弘君) 今お話にありましたとおり、この十年間のチーズの消費量を見ますと、輸入品の伸びが国産品の伸びを大きく上回っている状況にあります。国産ナチュラルチーズの生産量の内訳をその中で見ていきますと、プロセスチーズ原料用等のハード系チーズが減少をしている一方で、カマンベールやモッツァレラ等のソフト系チームは増加傾向で推移をしております。
このような中で、チーズに関する日EU・EPAの合意結果におきましては、ソフト系チーズは横断的な関税割当てといたしまして、その枠数量も国産の生産拡大と両立できる三万一千トンとしたところであります。当面、輸入の急増は回避できると見込んでいるところであります。
また、申し上げてきましたいわゆる国内対策におきまして、特にチーズにつきまして申し上げますと、チーズ向け原料乳の高品質化、チーズ工房等の施設整備、国産チーズの品質向上、ブランド化に支援するなどの対策を講じているところであります。
このことによりまして国産チーズの競争力の強化を図りまして、これまで以上に国産チーズの生産量、消費量を拡大して、EU産の輸入チーズに対抗していくことができるものと考えております。
○井上哲士君 では、先ほどの白さんの質問にもありましたけれども、どうなるんですかね、増えた結果、市場にだぶつくだけなのかもしれませんが。
今朝の理事会に出たこの国産ナチュラルチーズの生産量の推移見ますと、ハード系は平成二十二年と二十九年比較して三万二千二百九十三トンから二万二千六百二十七トン、約一万トン減っているんですが、上のここは、これ生産量頭打ちと書いてあるんですね。ところが、ソフト系は一万七千三百六十トンから二万三千三十二トンに増えた、これは右肩上がりで順調だと言っているんですよ。
こんなに減っていても頭打ちと言って、増えた方は右肩上がりと、こういう意図的な、こういう自分たちのシナリオに合わせたような試算になっているんじゃないか、これで本当に酪農が守れるのかということは甚だ疑問でありますし、条件は違いますけれども、韓国の場合はEUとのFTAを結んで、日欧EPAと同様の関税削減、撤廃を行って、二〇一一年の暫定発効後、二〇一七年までにチーズの輸入は六・六倍に激増しております。今回の政府のこのまともな試算、EUのも検証しない下で言えば、到底日本の酪農が守れると思えないということを指摘をしておきたいと思います。
最後、SPAについて外務大臣にお聞きをしておきますが、この間、安倍政権の下で、憲法の平和原則に反して武器輸出三原則が撤廃をされ、二国間の防衛装備協力が推進をされております。既に英、仏、独、伊と装備品・技術移転協力も締結されておりますが、EUでは、二〇〇九年に、改正EU条約によって加盟国間で防衛能力や即応態勢の向上を図る常設防衛協力枠組みをつくって、これで加盟国間で装備協力や部隊運用協力を進める十七件のプロジェクトを決めて、本年から実動しております。
欧州の対外行動庁は、本年九月にこのプロジェクトへの域外国の参加も念頭に、その参加条件を盛り込んだ合意案を作成をしておりますが、このSPAは、外交及び安全保障に関する政策について、相互の関心事項についてパートナーシップ強化するとしておりますが、日本として、こうした装備協力や部隊運用協力については関心事項ということなのか、そして、SPAでは合同委員会によって協力分野の追加もできる規定がありますけれども、こういう装備協力等の防衛協力についても協定上はこの協力分野に追加は可能なのか、以上二点、お聞きいたします。
○国務大臣(河野太郎君) EUは、欧州連合条約に基づいて、二〇一七年十二月に常設の構造的協力枠組みの運用開始を決定をいたしましたが、第三国の参加を例外的に認める条件についてはいまだEU内で議論はまとまっていないと承知をしております。
国際及び地域の平和及び安全を促進するための日EU間の協力の具体的な在り方については様々な可能性があると認識をしておりますが、いずれにしろ、SPAの下で行われる協力は、第四十四条の規定に従い、両締約者のそれぞれの法令の範囲内で行われるものとなります。
また、お尋ねの日EU・SPA第四十二条の2の(c)は、合同委員会は、この協定に規定されていない追加的な協力の分野について、この協定の目的に適合することを条件として決定する旨定めております。この規定に基づき、いかなる追加的な協力の分野を決定するかは日EU双方の関心、協力実績などを総合的に勘案した上で決定することとなるため、現時点では何ら決まっておらず、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。
○井上哲士君 時間ですので、終わります。
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○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日欧経済連携協定と日欧戦略的パートナーシップ協定、いずれの承認にも反対する立場から討論を行います。
日欧EPAは、安倍総理自らが「成長戦略の切り札」、「アベノミクスの新たなエンジン」と位置付け、EUに対して過去最大級の自由化を行う協定であり、大企業の利益を最優先して市場開放を推進するものであります。
本協定によって、EUに輸出する自動車部品などの工業製品に係る関税が撤廃される一方で、農産品の八二%の関税撤廃が約束され、日本の農業に極めて深刻な影響を及ぼすものです。中でも、重要五項目について、米こそ除外したものの、その他の品目でパスタ、チーズなどEUの強い分野でのTPP水準以上の譲許を含めて、関税撤廃又は大幅削減を行うことは重大であります。さらに、本協定には、自由化を一層行う方向での再協議規定も盛り込まれており、日本の農産物を際限のない自由化に陥れる危険があります。質疑を通じて、政府の影響試算に対する疑問は大きくなりました。
私は、EUが本年七月に、加工食品の対日輸出が五一%、約千三百億円、そのうち乳製品の輸出について、日本政府の国内生産減少試算額とは大きく乖離した、実にその四・四倍半にもなる二一五%、約九百四十八億円増加するとの試算を公表したことをただしましたが、政府からEUの試算について精査した上で責任ある見解が最後まで示されることはありませんでした。都合の悪い事実には蓋をしてただ万全の対策と繰り返すばかりの姿勢は、到底国民から理解を得られるものではありません。
日欧SPAは、共通の関心事項に関する政治的な協力、四十の分野別協力、共同行動の促進によりパートナーシップを強化することを目的として枠組みを設けるものであります。その中には、外交及び安全保障に関する政策も対象としております。
安倍政権が二〇一三年十二月の国家安全保障戦略で「積極的平和主義の立場」を掲げ、「共に主導的な役割を果たすパートナー」として、NATO、OSCEと並んでEUとの関係を強化することを明らかにしており、本協定が安倍内閣の同戦略に基づく施策を後押しすることになるのは明らかであります。
EUは、共通安全保障政策に基づく域外における軍事作戦を含め、軍及び文民による平和維持、国際的安全保障活動に当たるCSDPミッションに要員、装備等の提供を受けるための参加枠組み協定の締結を日本に提案していますが、外務大臣は本会議で、日EU間でこの提案に関する協議が行われてきたことを明らかにいたしました。
このような協力の促進は、海外における自衛隊の活動の一層の拡大につながりかねないものであります。また、憲法の平和主義を踏みにじって推進している欧州諸国との防衛装備協力の一層の拡大に直結する危険もあります。
SPAの承認によって、安倍内閣の「積極的平和主義」に基づく安全保障分野での協力の今後における具体化に白紙委任を与えることは断じてできません。
以上述べまして、反対討論を終わります。