○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。ちょっと順番を変えて、私からやらせていただきます。
本会議で質問に立ちまして、五年前の特措法制定の際の防衛大臣の、財政の硬直化を招くことがないように実施するという答弁を示して、その後、特別防衛調達も含めた装備品、役務等の調達のために後年度負担の累積額が年々増加し、特措法を施行した一五年度からほぼ一兆円も増え、五兆三千六百十三億円に達しており、一九年度当初予算案の規模をも上回る異常な状態だと私は指摘をいたしました。大臣は、中期防の枠内で後年度負担も含めて計画的に予算編成を行っているところであり、引き続き財政の硬直化を招かないように適切に対応するという答弁のみでありました。
そこでお聞きするわけでありますが、五年間で後年度負担が一兆円も増えて、当初予算の規模を後年度負担が上回る現状、これを、財政が硬直化をしておって後年度負担の抑制が必要だと、こういう認識はされていらっしゃらないということでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 後年度負担というものがどんどん増えてきているということについて、問題意識を持っていないわけではございません。
ただ、今回の法案に即して申し上げますと、そういう中にあってもコストの削減努力、効率化の努力をしっかり我々やっていかなければいけないというふうに思っておりまして、実際にこの長期契約法の対象にしたのは、もう先生御案内のとおり、装備品で三件、それから維持整備で四件でございますが、三十一年度予算におきましては、先ほどから話に出ておりますE2DとPAC3ということで、かなり対象についてはしっかりと厳選、限定をしてきているところでございます。
後年度負担というものが大きくなっているがゆえに、そういう中にあって、できるだけこの予算のコストの縮減、合理化、効率化というのを図っていくために引き続き努力をさせていただきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 来年度予算の編成の過程で、昨年の十月の二十四日に財政制度審議会の財政制度分科会が開かれておりますが、そこに提出された資料ではこう書かれております。
現中期防期間中、それ以前と比較して、長期契約に基づく装備品のまとめ買いなどにより、新規後年度負担額が大きく増加、この結果、予算の硬直化を招くとともに、平準化されない形で歳出規模の増大を招きかねない状況と、こういうふうに指摘をして、新規の後年度負担は、翌年度以降の歳出化経費としての予算の硬直化の要因となるため、その水準をできるだけ抑制していく必要があると、こういうふうになっておりますけれども、今の大臣の、問題意識はあるという程度とは相当違うと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 新たな中期防におきましては、これまででこういう規定ぶりは初めてなんですけれども、向こう五年間に新規契約する事業費の枠を設定をしております。
したがって、後年度負担を含め適切に防衛関係費の管理をこれに沿ってしっかり図っていきたいと考えておりますし、当然のことながら、長期契約についてもこの枠の中で行われる。ちなみに、十七兆一千七百億円という事業費の枠でございますけれども、これを超えることがあってはならないという縛りの下で、適切な防衛関係費の管理を行ってまいりたいというふうに考えております。
○井上哲士君 先ほど紹介した財政審の資料は、できるだけ抑制していく必要があると、こう指摘してきたわけですね。同様の資料は実は、一六年度の予算編成の際の財政審の分科会にも出ております。その中で、新規の後年度負担が予算の硬直化の要因となると指摘した上で、一五年度予算については、新規後年度負担が大きく増加し、その抑制は不可欠だと述べた上で、長期契約法に基づく装備品の調達が増加の一因だと、こういうふうに述べているんですね。つまり、この法律ができたことがその要因だと、最初の予算編成でこう言っているわけですよ。実際、後年度負担が更に増え続けて、先ほど紹介したように、来年は当初予算を上回ったと。
こうなりますと、引き続き硬直化を招かないようにするということであれば、やっぱりこの法の延長というのは逆行すると私は思うんですけれども、改めていかがでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 防衛装備品の調達というのは、言うまでもなく大綱、中期防に沿って行っていくわけでございますが、格段に早いスピードで厳しさと不確実性を増しているという安全保障環境の中で、やはり必要な装備をできるだけ早く、できるだけ低いコストで調達をしなければならないという私どもの責任がございます。
そういう中にあって、長期契約法というものを適切に使うことによって財政の硬直化を招かないような努力も是非させていただきたいということで、今回もこの法案をお願いをしているところでございまして、そのように御理解をいただきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 いや、なかなか理解できないわけですね。
先ほど紹介しましたように、この長期契約法による調達が硬直化の要因となるという指摘があり、そして今年度予算についても抑制が必要だと、こういうふうに財政審の中では議論されたわけですね。ですから、適切にやっていくと言われますけど、この五年間の状況を見れば、一層の硬直化を招かない保証は何もないということを私は言わざるを得ません。
その上で、FMSの問題です。
来年度予算で、E2Dの取得で初めてFMSにも特定調達が適用されます。このFMS調達については、二〇一七年に会計検査院から、二〇一二年から一六年の調達に関して二点の改善要求と意見が出されております。
一つは、アメリカからの受領検査において、防衛装備品の不具合や計算書の誤りが数多くあると。その場合に、速やかに米国に是正措置の要求をする必要があるにもかかわらず、一年以内に行わなかった、そのために却下された場合があるという指摘をしております。
防衛品の不具合、これは報告は七百三十四件出しているわけでありますけれども、十二件、三千百九十四万円が却下された、それから計算書の誤りは、報告書は二百五十二件出しておりますけれども、十九件、千三百九十一万円が却下されたと、こういうことを指摘をしております。
もう一つは、装備品等を受領した際に必要なアメリカから送付される計算書と受領部隊等が送付する受領検査調書の防衛装備庁による照会の問題。
これは、会計検査院によりますと、FMS中央調達六十四ケースの全ての契約額、約六百七十一億円について計算書と受領検査調書との照合、照会に当たって、その過程や結果に関する記録及び保存を行っていなかったり、極めて多くの記載内容が一致していなかったりしている、この六十四のうち四十八ケースにおいては記載内容の全てが一致する防衛装備品が一つもなかったと、こうしているんですね。
ですから、私、アメリカの側も、そして日本の側も、こんなずさんなことが行われているのかと驚くこの会計検査院の指摘でありますけれども、防衛調達でこんなことが常態化しているのか、それともこのFMSの特有の問題なのかと。そうであれば、なぜFMSでこのような驚くべきずさんさが集中的に起きているのか。いかがでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 会計検査院からの指摘は重たく受け止め、是正を図っていかなければいけないというふうに私ども考えております。
今先生から御指摘ありましたように、昨年の十月に、不具合報告提出の遅れ、それから計算書と受領検査調書の照合に関して是正措置を求める等の指摘を検査院から受けました。
不具合報告の提出の遅れに関する指摘に関しましては、これを速やかに送付することの重要性について理解が十分なかったということを踏まえて、調達関連職員に対する教育、通知文書の発出によって認識の徹底を図ったところでございます。
また、計算書と受領検査調書との照合に係る指摘に関しましては、受領検査調書に添付される出荷証書と計算書の記述内容が一致していないと。米国政府に対してその原因調査を求めたところ、主たる原因が受領検査調書に添付される出荷証書の記載不備にあることが分かりました。
そこで、本年一月に深山装備庁長官とカウンターパートの米国防安全保障協力庁長官との間で協議を行わせましたけれども、米側より、出荷証書の記載不備の原因として、米側の各関係機関によって使用する会計システムが異なることや付与する文書番号や部品番号に統一が取れていないということが挙げられ、米側としても対策をしっかり講じるという説明を受けたところでございます。
今後、同様の事案が生じないように、引き続き、日米間でより緊密に連携を図ってFMS調達の適正化に努めてまいります。
○井上哲士君 会計検査院の改善要求はおととしの十月なんですね。ところが、一七年の十月に出されたわけでありますけど、その後も、例えば不具合の是正措置要求の遅れで却下されたものは、一七年度は二百九件送付で却下が二十八件、一八年度は、現時点で分かっているまでで百五十五件送付で却下が九件、それから計算書と受領検査の調書の不一致については、二〇一七年にも十九件、一八年には逆に増えて六十五件発生しているんですよ。
今いろいろ言われましたけれども、むしろ続いているんですね。なぜこれ続いているんですか。
○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
大臣からお答えしましたとおり、不具合報告書の提出遅れに関しましては、これは当方に責任があることでございますので、これにつきましては、調達関係員に対する教育等を更に徹底して、そうしたことがないように努めていきたいと思います。
また一方、計算書の記載、受領検査書に添付される出荷証書と計算書の記載内容の不一致、この問題につきましては、先ほど指摘にありましたように、私、米側のカウンターパートと一月に協議をいたしました。これにつきましては、米側におきましても、最終的にFMSの製品が、装備ができるまでに多くの会社が絡んでおるということから、各会社で使っている番号等が、本来はFMS用のコード番号にしなければいけないものが正しくされていないというようなことが主な原因であるという説明を受けたところでございます。これにつきましては、関係者が大変米側で多いということでありますけれども、米側においても対策を講じ、周知を図るという説明を受けております。
したがいまして、これについても、大変これもゆゆしいことでありますので、引き続き米側に働きかけて、米側における関係機関との調整の促進をさせるように我々からも働きかけていきたいと思っております。
○井上哲士君 強調しますけれども、指摘があったのは、会計検査院、一昨年の秋なわけですね。
その是正改善と要求の意見の中で、こういうことが何で起きているのかと、防衛省がどう言っているかというのは書かれているんですよ。こう書いているんですね。多くの一致していない記載内容について説明の要請を行っても合衆国政府から十分な説明を受けられないことが想定されることなどから、支担官、支出負担行為担当官でありますけど、支担官が全ての疑義を解明することは困難であるとして、中間計算書と受領検査調書とを照会する際に疑義の解明を十分に行わないまま、ケースに係る提供の確認を行っていると。要するに、アメリカに言うたってしゃあないと、こう思ってちゃんとやってまへんということを防衛省が言ったと会計検査院言っているんですよ。
ですから、結局、その納期も価格もアメリカ次第というこのFMSの特徴の中で、こういうことが是正されていないというのが一番の要因じゃないんですか。私そう思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) ですから、そういうわけにはいかないというふうに私も考えておりまして、このFMS調達については様々な御指摘があることも事実でございます。検査院からの御指摘もありました。こういった問題を改善しなければいけないと強く決意をしておりまして、先般、今、長官代行でいらっしゃいますが、シャナハン米国防長官代行にお目にかかったときにも、かなり時間を掛けてこのFMSの議論をさせていただき、共に協力して改善をしていこうということで認識を一致させました。また、カウンターパートである装備庁長官と先方との話合いも続けさせておりますので、必ずこれは改善をしてまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 私は、やっぱりこのFMSという一方的にアメリカに有利な方式が持つ基本的な問題があると思っております。
そして、このFMS調達によります高額兵器は、維持整備費も非常に高額になってまいります。F35A、オスプレイ、グローバルホーク、E2D、イージス・アショアについて、それぞれ導入数と運用予定年数、その間の維持整備費はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(深山延暁君) お尋ねの装備品及びそれに関する維持整備費についてでございますが、装備庁で昨年八月末に公表いたしました各装備品のライフサイクルコスト、そのライフサイクルコストの算定の前提条件として当時我々が作っておりました取得機数及び運用についてのデータがございますが、これを申し上げますと、これ昨年八月公表時点のものでございますけれども、F35Aは四十二機で、運用、維持段階の経費が一兆二千八百七十七億円、V22オスプレイは十七機で、同じく運用、維持段階の経費が四千三百九十四億円、グローバルホークにつきましては三機、同じく運用、維持段階の経費が二千四百四十九億円、E2Dは六機、同じく運用、維持段階の経費が五千五百四億円と見積もったところでございます。
なお、イージス・アショアについては、この段階では、配備地、配備先等が確定しておらなかった等の理由で我々がこの計算に使用したライフサイクルコストがまだ計算できておらない段階でございますので、イージス・アショアについてはこうした経費は出しておりません。算出をいたしておらないところでございます。
○井上哲士君 その当時の数ということでありますけど、例えばF35でいいますと、計百四十七機の導入ということに今後なるわけですね。それを単純に今の単価でやりますと四兆五千億ぐらいになりますから、そしてイージス・アショアについても、SSR導入で発表した際には、維持運営費ということで四千六百六十四億に達しましたから、もろもろを合わせますと六兆ぐらいの金額になってまいります。
このFMSも含めて維持整備費が今後増え続けて、来年度予算では過去最高の九千四百十四億円に達するわけでありますけど、これ、陸海空だけでいいますと八千九百五十三億円となっておりますが、今後五年間、この維持整備費の額はどのように試算をされているんでしょうか。
○政府参考人(鈴木敦夫君) 装備品の維持整備に必要な経費につきましては、中期防における、新しい中期防でございますけれども、所要経費の中で、装備品のプロジェクト管理におけるライフサイクルコストも考慮しつつ、陸海空三自衛隊として約四兆二千二百億円を計上しております。
○井上哲士君 今のは陸海空だけの数字でありますから、さらに全体を含めれば増えていくということになると思うんですね。
FMSの場合は、技術の流出を避けるために、秘匿性が高い部分の修理、整備は製造元の米国メーカーが行うということを求めておりますし、日本が維持整備の一部を請け負う場合もあっても、整備や技術指導を行う米軍の技術者の渡航費や人件費は日本が技術支援費として支払うと。米国から取り寄せる部品も高額になっていくということになるわけでありまして、高い価格で購入をした上で整備費が大きく広がっていく。そして、これ自身もFMSでありますから、またアメリカの側の都合で増えるということになっていく。これはやっぱり大きく私は膨れ上がっていくと思うんですね。
これに加えて、特措法施行後の後年度負担が増え、FMSによる維持整備が増え、さらに特措法を延長してFMSまで適用すると。私は、一層の財政の硬直化を招いていくということになってまいりまして、結局それを打開しようと思えば、防衛費枠全体を増やせと、こういうことになっていくわけでありまして、こういうことにつながるようなこの特措法の延長はやめるべきだということを最後申し上げまして、時間ですので、質問を終わります。