○議長(伊達忠一君) 井上哲士君。
〔井上哲士君登壇、拍手〕
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
会派を代表して、特定防衛調達特別措置法一部改正案について質問します。
まず、米トランプ政権が、米軍が駐留している国に対し駐留経費総額の一・五倍の経費負担を要求するとの報道について聞きます。
防衛大臣は十二日の記者会見で、まだ交渉は始まっていないとしつつ、日米同盟の抑止力、対処力を維持強化していく観点から、今後とも、我が国が主体的に判断し、適切に提供していきたいと述べました。
元々、日米地位協定では、基地提供の費用以外は、米国軍隊の維持に伴う全ての経費は米側が負担するというのがルールです。
ところが、日本は、思いやり予算として、地位協定上支払義務のない基地従業員の給与や施設建設費などを負担しているのを始め、米軍再編経費やSACO関係費と合わせて来年度予算にも三千九百九億円を計上し、この間、負担の拡大に拡大を重ねてきました。その結果、米軍駐留経費に対する貢献度は、米同盟国の中でも突出しています。
防衛大臣、見直すべきはこのような地位協定のルールにも外れた負担であり、米軍の駐留経費負担増額は断じて認められないと明確に表明をすべきです。
安倍政権の下で、日米軍事一体化が進行し、軍事費の増額が止まりません。
二〇一三年度以降、当初予算の軍事費は毎年増大し、一五年度以降は過去最高額を更新し続けています。一九年度政府予算案には、SACO、米軍再編経費を含め、五兆二千五百七十四億円が計上され、七年連続で約五千億円も増えました。
それだけではありません。同期間中、毎年、まるで当然のように二千億円規模、今年度は四千億円を超える巨額の補正予算が組まれ、その大部分は装備の購入等に充てられています。
その上、安倍内閣が昨年十二月に決定した新しい中期防衛力整備計画は、一九年度からの五年間の予算総額を二十七兆四千七百億円程度としています。まさに、膨張に歯止めが掛からない異常な事態であると言うほかありません。防衛大臣、その認識はありますか。
特定防衛調達特別措置法は、予算の単年度主義の例外として、財政法で五年以内とされている国庫債務負担行為を、防衛省・自衛隊の装備品や役務の調達については十年まで可能とする特例を定めた法律です。
本法案は、二〇一五年、安保法制の審議の直前に制定された現行法の期限を更に五年延長するものです。
憲法は、財政民主主義の大原則から、予算単年度主義を取っています。そこには、過去の侵略戦争で軍事費を単年度主義の例外とし、戦費調達のために大量の国債を発行するなどして、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の教訓があります。
財務大臣、防衛大臣、この歴史の教訓をどう認識していますか。
その下に、戦後、財政法を制定した際、例外としての国庫債務負担行為の年限を三か年としたことの理由の一つは国会議員の任期を踏まえてのことだと、衆議院本会議で財務大臣も認められました。
その年限を五年はおろか十年に延長し、将来の軍事費を先取りすることは、国会の予算審議権を侵害し、憲法の財政民主主義に反するものです。各年度の歳出段階で審議できるといっても、既に契約行為は終わっています。
国会の予算審議権をどう保障するのか、併せて両大臣に見解を求めます。
防衛調達の支出の年限を延ばして後年度負担を増やせば、将来の予算の硬直化をひどくすることは明瞭です。
二〇一五年に本法案を審議した際、当時の防衛大臣は、財政の硬直化を招くことがないよう実施すると答弁していました。しかし、その後、特別防衛調達も含めた装備品、役務等の調達のために後年度負担の累積額は年々増加し、特措法を施行した一五年度からほぼ一兆円も増え、五兆三千六百十三億円に達しています。一九年度当初予算案の規模をも上回る異常な状態であります。
この事実に照らせば、防衛大臣の言明に反して、ツケ払いは大きく増え、予算の硬直化が一層進んだことは明らかではないですか。今指摘した直近五年の状況があるにもかかわらず、本法案で今後五年も長期契約による調達契約を可能にし、一層の硬直化を招かない保証が一体どこにあるのでしょうか。
財政規律の観点から、後年度負担の縮減を図る必要性についてどう考えているのか、具体策はあるのか、防衛大臣の答弁を求めます。
防衛省は、一九年度予算に早速、特定防衛調達の対象として、PAC3ミサイル用部品の一括取得と並んで、米国の有償軍事援助、FMSによる早期警戒機E2Dの九機のまとめ買い経費を計上しました。
FMS調達を特定防衛調達の対象とするのはこれが初めてですが、FMSによる米国製装備品や役務の調達は近年急増しています。さらに、イージス・アショア導入やF35追加導入が象徴するように、貿易赤字を背景にした米トランプ政権による兵器購入増額の要求圧力がFMS急増に拍車を掛けています。その額は、一九年度は当初予算の前年比で約六割増しの七千十三億円に膨れ、後年度負担に占めるFMSの割合も、第二次安倍政権発足直前に四・八パーだったものが、一九年度は実に二五・七%に増加しています。
防衛大臣は、衆議院での質疑で、長期契約のFMS調達への適用について、現在の価格と納期の見積りを遵守してもらうべく最大限努力する旨を確認し、速やかな導入、円滑な導入について協力することを確認していると述べつつも、価格は見積り、納期は予定である等の特徴は変わりないと答弁しました。
だとすれば、防衛省が一五年の制度導入の際に強調した、調達コストの縮減が期待できる、安定的な調達が可能となるといった効果も米国次第であり、何の保証もない、文字どおり期待にすぎないのではありませんか。
肝腎な調達の価格も納期も米国が握っている、一方的な制度の下で長期契約を適用すれば、結局、確実なことは、米国にとっての一括発注を得られるというメリットだけであり、日本では先々まで重い後年度負担が残るだけになるのではありませんか。防衛大臣の答弁を求めます。
FMSで購入するイージス・アショアについて、米国が日本政府に対し、日本の費用負担でレーダーの性能確認の試験施設を建設するよう求めていると報道されました。防衛大臣は、衆議院で、新しいレーダーの性能確認の方法について米国政府と協議中としつつ、一定の費用が生じる可能性がある場合は全体のコストをできるだけ縮減するような方向で交渉を行っていきたいと答弁し、可能性を認めました。
当初、一基八百億円とされたイージス・アショアの本体価格は、中期防では千二百二十四億円と膨れ上がりました。昨年七月には、維持費なども加えると、総額四千六百六十四億円と発表されています。その膨張の経過は余りにも不透明です。
SSRレーダーを使用することを決めた際にどのような約束があったのか。同レーダーの性能確認の新たな試験施設の建設が必要だというのは事実なのか。米国政府との協議中の内容にはその費用分担も含まれているのか。共同開発でもない外国メーカーの兵器について、その試験施設の建設費用を日本が負担した例があるのか。国民の前に明らかにすべきです。
負担を認めれば、FMS契約であり、結局、アメリカの言い値になるのではありませんか。トランプ政権の言いなりで、地元住民の反対も無視して導入することは中止をすべきです。
以上、防衛大臣の答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣岩屋毅君登壇、拍手〕
○国務大臣(岩屋毅君) 井上哲士議員にお答えいたします。
まず、在日米軍の駐留経費負担についてお尋ねがございました。
我が国は、日米地位協定第二十四条一の規定によりまして、米側に負担義務がある経費の一部について日米地位協定の特則である特別協定を締結することによって負担をしております。これは、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米安保体制の中核的要素である在日米軍の円滑かつ効果的な運用を支える観点から適当と判断したものでございます。
その上で、現行の特別協定は二〇二一年三月まで有効でございまして、新たな特別協定に関する日米間の交渉は始まっておりません。したがって、我が方の方針を予断することは差し控えますが、いずれにしても、現在、在日米軍駐留経費は日米両政府の合意に基づき適切に分担されていると私どもは考えております。
したがって、一層厳しさを増す地域の安全保障環境や我が国の厳しい財政事情も踏まえまして、在日米軍駐留経費負担につきましては、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。
次に、防衛予算の規模についてお尋ねがございました。
我が国を取り巻く安保環境は格段に速いスピードで厳しさを増しております。このような中で、主体的、自主的な努力によって自らを守る体制を強化することが重要だと考えております。このような考え方の下で新たな大綱、中期防を策定したところであり、平成三十一年度の防衛関係費は、その初年度として必要となる経費を計上したところであります。
新たな中期防におきましては、五年間に新規契約する事業費の枠を明記をいたしております。後年度負担を含む防衛関係費を適切に管理していきたいと考えておりまして、膨張に歯止めが掛からない異常な事態との指摘は当たらないと考えております。
次に、予算の単年度主義と歴史の教訓についてお尋ねがありました。
憲法第八十六条においては、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」とございます。これは、各会計年度ごとに国会の審議を受けなければならないという予算の単年度主義を採用しております。また、憲法第八十三条は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と規定をしております。
これらは、国の財政を適切な民主的コントロールの下に置くことで、国民が不当な負担を被ることを避けるために規定されたものであると認識をしております。
次に、長期契約法と国会の予算審議権の関係についてお尋ねがありました。
長期契約法に基づく国庫債務負担行為につきましては、まず契約行為を行う年度の予算において計上するとともに、将来、実際に支払を行う各年度ごとに歳出予算として計上され、国会の議決を経ることとされていることから、御指摘は当たらないと考えております。
次に、財政の硬直化についてお尋ねがありました。
防衛力整備については、例えば艦艇一隻、航空機一機の製造に、長いもので四年から五年の期間を要します。さらに、所要の隻数、機数を整備するためには長い年月を要することから、どうしても後年度負担が生じます。
防衛省としては、毎年度、装備品の調達の効率化、合理化に努め、中期防の枠内で後年度負担も含めて計画的に予算編成を行っているところでありまして、引き続き、財政の硬直化を招かないように適切に対応してまいります。
後年度負担の管理についてお尋ねがありました。
長期契約は、必要な防衛力整備を効率的に行うことで財政負担の軽減が図られるものでありますが、他方で、将来の財政支出を確定させる側面にも十分考慮する必要があります。
このため、防衛省としては、長期契約の対象となる装備品の選定に係る基本的な考え方を示した指針を定め、各年度の予算における長期契約法の対象事業を選定するに当たっては、財務大臣との協議を経た上で、国際情勢や技術動向等を総合的に勘案して慎重に判断しております。
いずれにいたしましても、新たな中期防におきましては、五年間に新規契約する事業費の枠を明記し、財政の硬直化を招かないよう適切に防衛関係費を管理していく考えであります。
次に、後年度負担の縮減についてお尋ねがありました。
先ほど申し上げたように、防衛装備品は契約から取得、納入まで長いもので四年から五年を要することから、後年度負担が発生することになります。この点は、長期契約方式であろうと従来の方式であろうと、各年度に歳出化経費を含む必要な支払が中期防期間を超えて発生することに変わりはありません。むしろ、長期契約を活用することで全体経費が縮減され、中長期的には後年度負担を含む財政負担の軽減が図られるという効果があると考えております。
いずれにしても、毎年度の装備品の調達の効率化、合理化に努めてまいります。
次に、長期契約のFMS調達への適用についてお尋ねがありました。
まず、今後、長期契約法をFMS調達の装備品にすべからく適用するとは考えておりません。要件に適合するものに厳選されることを御理解をいただきたいと思います。
平成三十一年度予算案においては、早期警戒機E2D九機について長期契約法を活用することとしておりますが、このE2Dは、我が国が単独で調達するのではなくて、米海軍二十四機との共同調達を行うことが前提となっております。このため、今回の我が国の一括調達は、米国にとっても、自国調達分の価格縮減効果が得られ、製造ラインの安定化が図られるというメリットがあり、米国がこの事業を着実に進めるインセンティブになっていると考えます。
さらに、大臣同士の間でも、円滑かつ速やかな導入について協力することを確認をしておるところでございまして、効果は期待にすぎないという御指摘は当たらないと考えております。
我が国にとりましても、米海軍との共同調達による価格縮減効果を得られ、調達の安定化に資するものであることから、重い後年度負担が残るだけという指摘も当たらないと考えております。
次に、イージス・アショアの性能確認の方法についてお尋ねがありました。
イージス・アショアのレーダーの選定時から、性能確認の方法については、その後、日米間で協議するとしておりました。試験施設の建設については、その要否も含めて日米間で協議中でございます。その詳しい中身は差し控えさせていただきたいと思います。
次に、外国製装備品の試験施設に関する負担についてお尋ねがありました。
一般的に、装備品開発に必要な試験施設の整備に要した費用も開発費に含まれ得るものと認識しております。我が国として特定の施設の整備に関し直接的に費用負担しているものはありませんけれども、例えばF35Aの調達に当たりましては、我が国は共同開発国ではないものの、機体価格に含む形で開発費を分担しているところでございます。
最後に、イージス・アショアに関する米国との関係、地元の理解についてお尋ねがありました。
我が国のイージス・アショアの導入に当たりましては、日米間で緊密に連携し、価格の低減を図っているところであり、米国の言い値になるという御指摘は当たらないものと考えております。
イージス・アショアの導入は、我が国のミサイル防衛に必要な装備品であって、我が国の主体的な判断で導入するものであります。導入に当たりましては、当然のことながら、地元の皆様の御理解を得られるように、丁寧に誠意を持って対応していく考えでございます。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) 井上議員からは、財政民主主義と歴史の教訓、国庫債務負担行為と国会の予算審議権との関係について、計二問お尋ねがあっております。
まず、財政民主主義と歴史の教訓についてのお尋ねがありました。
もとより、議会制度自体が財政に国民の適切なコントロールを及ぼすため発達したものでありますことから、現憲法の財政民主主義や予算単年度主義といった原則は、議員御指摘の理由のみによって規定されたものでないと承知をいたしております。
いずれにしても、これらの憲法上の原則に沿って財政運営を行うべきことは言うまでもないことであります。
その上で、さきの大戦のように、国力に見合わない債務残高の累増の結果、国家財政や国民生活を危うくすることはあってはならないことであります。
こうした教訓も踏まえ、新経済・財政再生計画に沿って経済再生を図り、防衛関係費を含めた歳出と歳入両面の改革を続けることで、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化を実現し、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指してまいります。
最後に、国庫債務負担行為の国会の予算審議権との関係についてのお尋ねがありました。
今回の特別措置に基づく国庫債務負担行為につきましては、まず、契約行為を行う年度の予算において計上するとともに、また、国庫債務負担行為に係る歳出予算につきましても、その支出を行う年度の予算において計上することとしております。
それぞれの国会の議決を経ることとされておりますことから、国会の予算審議権は確保されており、財政民主主義に沿ったものであると考えております。(拍手)