○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
二つの条約については賛成であります。その上で、核兵器廃絶に関して、十日に閉幕をしたNPTの再検討会議第三回準備委員会についてお聞きいたします。
国際的には、核兵器禁止条約に署名した国が七十か国、批准した国は二十三か国となり、批准、発効への動きが進んでおります。核兵器のない世の中を、世界をという大きな動きの中でNPT再検討会議が開かれる。その第三回準備委員会でこの再検討会議に向けて勧告を出すことになっておりますが、全会一致が必要で、過去出されたことはありません。今回はサイード議長が全会一致の勧告を目指しましたけれどもまとまらずに、作業文書としての議長勧告の発出となりました。
議論の中で、当初の勧告案に対する各国の意見を反映をさせた改定案が出されました。核兵器禁止条約については多くの締約国が支持し、NPTを補強するものだという言及を維持し、そして多くの国が議論で触れた核保有国に核軍縮を求める記述も、過去の再検討会議の最終文書に合わせて補強された、そういうものになりました。この勧告案に対して、非同盟諸国を先頭に、東南アジア、中南米、アフリカ、中東諸国など、相次いで支持と歓迎を表明しましたし、市民社会からも重要な成果としての歓迎の声が上がりました。
一方、米英仏を始めとした核保有国が強く反対をし、同盟国も同調するという中で、全会一致が必要な準備委員会としての勧告にはならず、議長勧告となったわけであります。
日本政府としては、このNPTの再検討会議準備委員会にどういう立場で臨んで、この勧告案の発出等をめぐってどういう対応をしたのか、まずお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(河野太郎君) 今回の会合では、我が国はNPTの維持強化を重視する立場から、辻外務大臣政務官が、日本が行いました賢人会議の議論を紹介する一般討論演説を行ったほか、NPDIメンバー国と連携した透明性や軍縮・不拡散教育に関する作業文書を提出し、また、軍縮・不拡散教育の共同ステートメント、サイドイベントの実施などを通じて、議論に積極的に参加してまいりました。
この会合では勧告の採択には至りませんでしたが、二〇二〇年NPT運用検討会議の議長の指名が今年の第四・四半期に確定するなど、前向きな動きも見られました。また、今後更に議論を深めていくことが必要だという認識も共有されていたというふうに理解をしております。
我が国としては、核兵器のない世界の実現に向け、核兵器国と非核兵器国双方の協力を得て、現実的かつ実践的な取組を積み重ねていくことが重要であると考えており、二〇二〇年の運用検討会議が意義ある成果につながるよう、引き続き議論に積極的に参加してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 議論の中で多くの国々が強調したことは、核兵器の完全廃絶の明確な約束を再確認することを始め、過去のNPT再検討会議での合意事項について後退しない、それが最低ラインだということでありました。一方、米英仏などは、自らが過去賛成した合意であるにもかかわらず、その履行について盛り込むことについて反対をするということがあったわけですね。
私、昨年十一月二十七日のこの当委員会で、核兵器廃絶決議案に関連して質問をした際に、外務大臣は、このNPT再検討会議の合意文書に記載されている内容を実施していくことは、既に各国のコミットメントになっているわけなので、これら文書はNPT体制を支える重要な要素と考えていると、こういう答弁がありました。
そうであるならば、政府として、この過去の合意をほごとするような対応を示す核保有国について、合意の履行を求めるという上で、今回の準備委員会ではどのような働きかけをされたんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 今回の会合では、二〇〇〇年や二〇一〇年など過去のNPT運用検討会議における過去の合意の取扱いを含め、核兵器国と非核兵器国で様々な議論が行われました。
我が国としては、過去のNPT運用検討会議の成果文書に記載された内容を実施していくことは、一部の核兵器国において慎重論があることは承知をしておりますけれども、NPT体制を維持強化し、核軍縮を進めていく上で重要な要素であるというふうに考えております。
こうした考えに基づきまして、我が国は、昨年、国連総会に提出した核兵器廃絶決議において過去のNPT運用検討会議の合意文書の履行を要請してきており、今回の準備委員会におきましても、我が国ステートメントの中で過去の合意文書へのコミットメントを再確認することが重要である旨呼びかけました。
○井上哲士君 まさに議論の中で、タイの代表は、この過去の合意の問題、我々がNPTを土台として維持したいならこれが正しい方針だと議長勧告について述べております。
一方、準備委員会の開催中の国連本部内で米国は、核軍縮を妨げる安全保障環境について議論する新たな枠組みだとして、核軍縮のための環境創出、CENDという新たな多国間対話枠組みを立ち上げると発表いたしました。
昨年、アメリカが示した核軍縮のための条件創出、CCNDの名称を条件創出から環境創出に変えたものでありますが、去年の質疑でもこのCCNDについて聞きました。核軍縮よりも条件づくりを優先をして廃絶を先送りするものではないかと指摘をした際に、日本の決議案とアメリカの立場は違うんだという答弁もあったわけでありますが、今回アメリカも、軍縮に新たな前提条件を課すものだという誤解があったために名称を変更したという説明もしております。一方、国連での説明会で、アメリカの大使は、ステップ・バイ・ステップは今日の状況下で達成し難いとして新たな枠組みを提案したということも言っているわけですね。
核保有国からの対話の呼びかけを前向きに捉える声もある一方で、なぜ国連やNPTという既存の枠組みの外で議論をするのか、NPTの形骸化につながるんではないかという懸念の声も指摘をされておりますが、日本政府としては、この新たな枠組みについてどのように評価して対応するんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 米国は、今回、クリエーティング・エンバイロメント・フォー・ニュークリア・ディスアーマメント、CEND、核軍縮のための環境醸成と訳しましたが、このCENDイニシアチブを通じて、核軍縮の進展のため、現実の安全保障環境を考慮し、それに対処する必要があるという旨指摘をし、二〇二〇年のNPT、核兵器不拡散条約運用検討会議の意義ある成果に向けて、各国にこのイニシアチブに基づく取組への参加を呼びかけているわけでございます。
非同盟諸国の中で一部批判があることは承知をしておりますが、我が国としては、核兵器国であるアメリカが厳しい安全保障環境において核軍縮を進めるための具体的措置を模索する姿勢を示したということは評価したいと思います。核兵器のない世界の実現のためには核兵器国と非核兵器国双方の協力を得ることが必要であって、その中で現実的かつ実践的な取組を積み重ねていくことが重要だと考えております。我が国としては、引き続き、国際的な安全保障環境の改善や国家間の信頼関係の強化を図りながら、一歩ずつ着実に前進すべく、粘り強く努力を重ねていきたいと考えております。
また、我が国としては、賢人会議の議論を紹介するなどしてこのアメリカのイニシアチブに貢献できると考えており、今後参加を検討していきたいと考えております。
○井上哲士君 核保有国が、NPTがこの間の合意を重ねて核軍縮の機能を強めてきたということに対する様々な反発がこの間あったわけでありまして、この新たな枠組みによって、このNPTを専ら不拡散の機能にとどめて、核軍縮の機能を弱めるんじゃないか、形骸化させるんじゃないかと、こういう懸念があるのは、私は過去から見れば一定の根拠があると思うんですね。絶対そうあってはならないと思います。
核兵器禁止条約については、議長勧告に盛り込まれたように、NPTをむしろ補強するものだと推進する国々も言っているわけでありまして、是非、来年のNPT再検討会議が過去の合意をしっかり踏まえた核兵器廃絶に前進するような会議になるように、そして、そのためにも、唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約にも参加をしてしかるべき役割を果たすということを、これが被爆者や国民の大きな思いでありますから、そのことを改めて強く求めまして、質問を終わります。