○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
昨日から京都で国連の気候変動に関する政府間パネル、IPCCの第四十九回総会が始まりました。昨年十月の第四十八回総会では一・五度特別報告書が発表されて、気候変動の深刻な影響を回避するためには二度未満では不十分だと、一・五度未満を目指す必要が強調をされております。
そこで、今日はその焦点となっている火力発電所問題に関連してお聞きいたします。
この間、欧米を中心に、石炭関連企業、事業からの投資撤退、ダイベストメントが広がっております。国内でも先月、三菱UFJファイナンシャル・グループが、石炭火力発電事業への新規融資を七月から原則中止という方針を固めております。さらに、昨年末の蘇我、今年一月の袖ケ浦、四月の西沖の山と、石炭火力発電の建設計画の中止も続いております。
そうした中、環境省が三月二十八日に、石炭火力発電建設の環境アセスメントの厳格化を発表しております。その具体的内容はどういうものなのか。また、当時、原田環境大臣がこの厳格化に至った経緯といいますか、自分の思いを会見でも語っておられますけれども、それはどういうものなのか、御紹介いただきたいと思います。
○環境省地球環境局長(森下哲君) お答え申し上げます。
環境アセスメントの更なる厳格化の具体的な内容でございますけれども、国内で計画中の石炭火力発電案件を対象としまして、環境影響評価の手続の過程で地球温暖化対策の観点からの対策が十分に示されない案件については環境大臣意見において是認できない、すなわち中止を求めることとするというものでございます。
本件の公表に至りました国際情勢に関する経緯といたしましては、公表の際に、先ほどお話もございましたけれども、原田環境大臣からも申し上げたとおり、本年三月二十六日のIEA、国際エネルギー機関の発表によりますと、昨年のエネルギーからの二酸化炭素排出量は対前年比で一・七%増の約三百三十億トンであり、その三分の一はアジアを始めとする石炭火力発電からの排出であるというふうに報告されております。
また、原田環境大臣は、昨年のCOP24、国連気候変動枠組条約第二十四回締約国会議に参加をいたしまして、世界がパリ協定の目標に向かって石炭火力の抑制と再生可能エネルギーの拡大へと大きくかじを切っているということに強い刺激を受けたとのことでございます。
原田環境大臣のこのような国際情勢認識が背景となり、本件の公表に至ったというふうに考えてございます。
○井上哲士君 このアセス厳格化が実効性あるものになるかについては注視をしていきたいと思いますが、今もありましたように、CO2の排出量の増加の三分の一がアジアを始めとする石炭火電で、世界が大きくその抑制にかじを切っていると、こういう認識が背景にあるということであります。
ところが、一方で、アジアでの石炭火力発電へのODAによる支援が続いております。この間、インドネシアのインドラマユ火力発電所建設問題への支援問題を取り上げてまいりましたけども、世界の流れに逆行するとともに、私は深刻な人権侵害が起きているということを指摘をしてまいりました。同地域には既に火力発電が稼働していて、健康・環境被害が発生をしております。
農地と住む場所を奪われた上に、新たな火電の建設に対する反対運動への弾圧も行われてきたと。先月来日した現地住民の皆さんと懇談をする機会がありましたけど、既に海や空気を汚され、さらに土地を奪われて、どうやって生きていけばいいのかと、土地は人権なんだと、こういう切実な声も直接お聞きいたしました。
JICAはこの事業に対してエンジニアリング・サービス借款の貸付けをODAで行っておりますが、今年になって新たに行った貸付額及び合計金額はどうなっているでしょうか。
○国際協力機構(JICA)理事(田中寧君) インドラマユ石炭火力発電事業に係るエンジニアリング・サービス業務に対しまして、二〇一九年に約一千六百万円の貸付実行を行っております。これまでの貸付実行の累計総額は約六億一千五百万円でございます。
○井上哲士君 これらの資金が果たして適正に使われているのかどうかということなんですが、インドラマユ石炭火力発電所の計画には変電設備の建設が含まれていると承知しておりますが、この変電設備の基本設計業務は東京電力の子会社、東電設計が行っております。この業務にもこのエンジニアリング・サービス借款の資金が使われたということでよいのか。その場合、その額は幾らになるか。どうでしょうか。
○参考人(田中寧君) これまでの貸付実行の対象に、今御指摘ありました変電所の基本設計作成業務は含まれております。エンジニアリング・サービス業務の対象となる成果物は多岐にわたりますので、契約金額は基本設計等の成果物ごとに計算されていないために、変電所の基本設計に使われた額のみ算出することは困難でございます。
○井上哲士君 困難と言われましたけど、私は、やっぱり公金でありますから、きちっとどういうふうに使われているかということを把握していないということで済ますわけにはいかないと思うんですね。
では、その資金で行われたこの変電設備の基本設計の内容については、JICAは承知しているんでしょうか。報告書は持っておられるんでしょうか。いかがでしょうか。
○参考人(田中寧君) 変電所の基本設計の成果物は、エンジニアリング・サービス業務の発注者であります、実施機関のインドネシア国有電力公社に提出されておりまして、JICAでは入手はしておりません。
○井上哲士君 基本設計の内容、報告書、成果物については把握をしていないと。しかし、融資をしておきながら中身もつかんでいないということで私はいいのかということを指摘をしたいんですね。
先月十二日に来日した現地住民とJICAが面談した際に、このJICAは、変電設備の基本設計業務は一七年十二月には完了したと、こういう説明をしているわけで、完了した業務を説明できないというのは私はやはりおかしいと思うんですね。
なぜこの変電設備のことを問題にするかといいますと、大きな問題点が指摘をされているわけであります。
インドネシア国有電力会社は、昨年二月以降、このインドラマユ石炭火力発電所に係る変電設備の土地造成を開始をいたしました。小農が強く抗議しているにもかかわらず、十ヘクタールの肥沃な農地が造成をされてしまいました。その際、警官や軍関係者も動員して重機が持ち込まれて、問答無用で強行されたわけであります。
重大なことは、これ違法な工事だと住民が指摘をしているんですね。環境アセスメントを補った補遺版で、変電所の事業地として認められた地域とは別の地域でこの工事の作業が進められていると。西ジャワ州の環境局も、この住民団体の指摘を受けて、昨年七月時点において文書で環境アセスメントのこの補遺版が修正されるまでは、いかなる作業も停止する必要があるということをPLNに求めているわけですね。にもかかわらず、それ以降も建設資材の搬入が断続的に強行されてきたと。住民からは、PLNは法規規定を真摯に遵守しようとしていないじゃないかと、こういう厳しい批判がされております。
日本のこういう資金に関わる工事が現地で違法だと指摘をされていても問題ないと、こういう立場なんでしょうか。
○参考人(田中寧君) 環境アセスメントに不備があるという御指摘につきましては、本邦及び現地NGOとの直接の対話の機会や書面を通じまして私どもとしても承知をしております。インドネシア政府にはこの指摘に対する懸念を伝えておりまして、インドネシア側で必要な改定手続を取っていると承知をしております。
それから、JICAの環境社会配慮ガイドラインにおきましては、プロジェクト本体に対する円借款に係る環境レビューにおいて、環境社会配慮上の要件を満たしていることを確認することを可としているというふうに私どもとしては考えております。
○井上哲士君 懸念は伝えたと言っていますけれども、現実には引き続き違法の状態が続いているというのが住民の皆さんの訴えなわけでありまして、つまり、そういう違法と言われているものに日本の資金によるその設計がどういうふうに関わっているのかということを私はちゃんと見る必要があると思うんですね。そうでなければ、適正に行われたと言いようがないと思います。
今おっしゃった環境社会配慮からいっても検証の必要があるわけでありまして、外務省、JICAの責任で、この変電設備の基本設計の内容報告書、成果物は見ていないということであります。これ、是非入手をして開示をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 委員の御指摘のことが事実であるとすれば、これは問題だと思いますので、外務省としては、JICA任せにせず、外務省で一度きちんとこの案件、確認をして、しっかりと対応が必要な場合には対応させていただきたいと思います。
○井上哲士君 是非求めたいと思います。
住民の皆さんは外務省とも懇談をされておりまして、大変貴重な機会だということは、その場でも外務省は言われているわけでありまして、是非求めたいと思います。
この間、私、指摘の際に、このES借款についてはこの本体工事と連続する密接不可分な事業である一方、ガイドラインに基づく判断は本借款の際に行うんだと、こういう答弁がありました。
先日の質問主意書で、ガイドラインの見直しについての答弁書で、このガイドラインの見直しについて、施行後十年以内のレビュー結果に基づいて包括的な検討を行って、その結果、必要に応じて改定を行うと定めているということを踏まえてJICAが改定作業を行うというのが政府側の答弁書でありました。
JICAとしては、具体的にこのガイドラインの見直しについてどう進めていくのか、そしてES借款段階での適用ということも検討対象になるのか、お答えください。
○国際協力機構(JICA)理事(本清耕造君) 現在、JICAでは、環境社会配慮ガイドラインのレビュー調査を実施中でございます。六月以降にレビューの報告書案を取りまとめまして、その後、ガイドラインの規定に沿って、この調査結果に基づき、改定に関わる包括的な検討を行い、必要に応じて改定を行う予定でございます。
先生御指摘のレビュー調査においては、ES借款許容値の環境レビュー実施の要否を論点案として含めておりますので、包括的検討においてきちんと丁寧に検討してまいりたいと、このように思っております。
○井上哲士君 是非、NGOなども求めておりますので、きちっと検討していただき、実現をしていただきたいと思います。
今後、本体工事への融資の要請が予測されるわけでありますけれども、今述べてきたように、このインドラマユへの支援は、環境社会ガイドラインに反するものと指摘がされております。さらに、国際的な流れにも反するのではないかと。
昨年三月にODAの特別委員会で質問した際に、河野大臣は、一定の条件の国に限り、要請があった場合は、二〇一五年のOECDのルールにのっとって、超超臨界以上の発電設備について支援を検討すると、こういう答弁でありました。
ただ、このOECDルールは、当時、抑制に一歩踏み出したとは言われましたけれども、不十分だという指摘もずっとされてまいりました。
しかも、さらに、冒頭述べたように、国際的にはその後状況は大きく変化をしておりまして、欧米を中心に石炭関連企業事業からの投資撤退が急速に広がっていると。二〇一八年末でいいますと、千の投資家が撤退をして、その運用資産の合計が九百兆円だと、こういうふうに報道もされておりました。
そういう中で、こういう石炭火力発電に対して支援を続ける日本の支援に昨年のCOP24でもNGOなどからいろんな批判がされたということになっているわけでありまして、先ほど環境大臣が、この世界が石炭火力抑制に大きくかじを切っているという認識を述べたということも紹介をされましたけど、そういうときでありますから、私は、昨年ああいう答弁ありましたけれども、更に私は抜本的にこの火電への支援というのを見直すべきだと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 国際社会の流れとして、石炭火力からのダイベストメントというのが発展をしており、また日本の姿勢についてNGOから御批判をいただいているということも認識をしております。
気候変動というのが、これはもう人類共通の喫緊の課題であり、今や目標は二度から一・五度になっているということを考えれば、我が国の方針も不断に見直しが行われなければならないというふうに考えておりますので、政府として、こうした国際的な流れを踏まえ、必要に応じてしっかりと見直しをしてまいりたいと思います。
○井上哲士君 是非、答弁どおりしっかりとした見直しを強く求めまして、質問を終わります。