国会質問議事録

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本会議(新防衛大綱・中期防/F-35墜落事故/米軍機訓練規制/米未臨界核実験)


○議長(伊達忠一君) 井上哲士君。

   〔井上哲士君登壇、拍手〕

○井上哲士君 日本共産党を代表して、新防衛大綱及び中期防衛力整備計画について質問します。
 質問に先立ち、予算委員会の開催を強く求めます。
 日米首脳会談でトランプ米大統領が言及した日米貿易交渉の八月合意や、消費税増税と景気動向など、政府が国民に説明すべき課題が山積みです。ところが、参議院では、野党が参議院規則に基づき予算委員会開会を求めてから六十日近くたっているにもかかわらず、与党が審議拒否をするという異常な事態です。
 総理、参議院選挙の重要争点について国民の前で議論することからなぜ逃げるのですか。自民党総裁として、予算委員会の開催に応じるべきではありませんか。
 新防衛大綱と中期防は、新ガイドラインと安保法制に基づき日米軍事一体化を推し進め、ステルス戦闘機、イージス・アショア、長距離巡航ミサイルの導入、増強などを盛り込んでいます。さらに、宇宙領域専門部隊、サイバー部隊などを新編するとしています。安倍内閣の戦争する国づくりを加速させる危険な計画にほかなりません。
 まず、F35ステルス戦闘機について聞きます。
 日本で組み立てた初号機である航空自衛隊のF35が、四月、青森沖で墜落しました。今朝、パイロットの遺体の一部が発見されたとの発表がありました。お悔やみを申し上げます。まだ機体の大半もメモリーも発見されておらず、事故後、飛行は中止されています。
 ところが、岩屋防衛大臣は、四日の会見で、機体の捜索を打ち切ったことを明らかにし、遠からず原因の絞り込みができるのではないかとした上で、原因がある程度特定でき、安全の確保が確認できれば飛行を再開させたいと述べました。とんでもないことです。
 これまでの捜索で何が明らかになり、事故原因はどこまで判明しているのか、示していただきたい。
 昨年二月に、自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが佐賀県で墜落しましたが、飛行は再開されていません。陸上幕僚長は、今年一月末の会見で、アウトボードボルトの破断が原因だと判明しているとした上で、なぜボルトが破断したのかはいまだ結論に至っていない、原因が明らかにならない限り飛行は再開できないと述べています。
 一方、F35は、墜落後僅か二か月で、事故原因のある程度の特定で飛行再開を口にする。明らかにダブルスタンダードではありませんか。なぜ、原因が明らかでなくても、ある程度特定できれば飛行再開できるのか、明確に答えていただきたい。
 米政府監査院が四月末に公表した報告書は、F35は深刻な欠陥を抱えたままで、今後数年間は解決しない問題もあると指摘し、昨年の報告書で指摘された危機的で安全性や重要な性能を危険にさらす欠陥のうち十三件が未解決で、新たに四件が判明したとしています。
 政府は、この欠陥リストを米側に求めているのですか。入手し、調査すべきではありませんか。
 以上、防衛大臣の答弁を求めます。
 トランプ大統領は、来日中、墜落原因が究明されない中、日本がF35を百五機追加購入することを歓迎しました。総理、結局、貿易赤字解消というトランプ大統領の要求に応えて米国製武器を爆買いすることを、パイロットや住民の安全より優先したのではないですか。F35の調達計画は見直すべきです。
 海上自衛隊の護衛艦「いずも」と「かが」をF35Bが搭載できるよう改修するのは憲法違反の攻撃型空母化だとの指摘に対し、総理は、あくまで日本の防衛のためだと述べてきました。
 ところが、総理は、トランプ大統領とともに「かが」に乗船し、西太平洋からインド洋に及ぶ広大な海で米海軍と密接に連携してきた、地域の公共財として役割を果たすと述べました。トランプ大統領も、この地域と、より離れた地域で複雑な脅威から我々を守るのに役立つと述べました。
 これらの発言は、改修の狙いは、地球規模の様々な紛争や脅威へ日米一体で介入することにあることを明らかにしているのではありませんか。憲法違反の空母化はやめるべきであります。
 この間、沖縄、東京では、米軍機からの危険なパラシュート降下訓練が繰り返され、オスプレイの墜落や部品落下、民間空港への緊急着陸、騒音被害が沖縄から全国へと広がっています。
 さらに、米軍機の低空飛行訓練被害も重大です。五月末には、長野県佐久市の市街地上空を米軍横田基地所属のC130輸送機二機が超低空飛行訓練をしました。現地を視察して住民の皆さんと懇談すると、墜落するかと思った、こんな低く飛ぶのを初めて見たと口々に恐怖が語られました。
 九四年以降、四度の墜落事故を経験した高知県では、四月十一日、山間部の本山町でドクターヘリの患者搬送が行われた僅か四十分前に、同じ空域で米軍機による突然の低空飛行訓練が行われました。高知県知事は、翌日、外務、防衛両大臣に対して、住宅地上空で繰り返される超低空飛行は強い恐怖を与えているとして、危険な訓練の中止を要請しました。
 また、昨年四月には、青森、岩手両県で、米軍三沢基地所属のF16戦闘機による最低安全高度を大きく下回る超低空飛行が発覚し、岩手の県議会は訓練中止の請願を採択しました。
 米国では、このような危険な訓練は指定区域に限られ、住宅密集地の上空で行うことはありません。そんな訓練を日本上空で許してきた政府の姿勢は、およそ主権国家としてあるまじきものであり、改めるべきであります。
 以上、総理の答弁を求めます。
 そもそも、全国どこでも米軍が訓練できるとは地位協定のどこにも書かれていません。にもかかわらず、日本中で自由勝手な訓練がまかり通ってきました。このような米軍の行動の権利は、いつ、どこで取り決められ、日米間にどんな合意が存在するのか、明確にしていただきたい。
 政府は、米軍機の訓練を容認しつつ、公共の安全に妥当な考慮を払い、安全性が最大限確保されるべきと言ってきましたが、傍若無人な訓練は繰り返されてきました。国民の安全に責任を負う政府として必要なのは、米軍への配慮の要請ではなく、規制することではないですか。
 以上、外務大臣、お答えください。
 今年、沖縄県が実施、公表した海外の米軍地位協定に関する調査では、ドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスは、いずれも米軍の自由勝手な訓練を認めていません。全国知事会は、日米地位協定の抜本改定を要求しています。
 総理、日米地位協定を抜本改定し、米軍機の訓練規制に踏み出すべきです。
 トランプ大統領の来日直前に明らかになった米国による二月の未臨界核実験は、核兵器禁止条約の早期発効を願う世界の流れへの重大な挑戦です。これに対し、広島、長崎の県知事や市長が抗議文を送るなど、全国から怒りの声が上がっています。爆発はなくても、核兵器を使うための実験であり、許されない、これが被爆者の声です。ところが、総理は、来日したトランプ大統領に抗議もしませんでした。
 総理、未臨界核実験は核不拡散条約第六条の核軍縮義務に反すると認識をしていますか。また、北朝鮮の核問題の解決と朝鮮半島の非核化の実現に逆行するものではありませんか。明確にお答えください。
 被爆者の声を受け止め、米国に抗議をするべきです。
 最後に、核兵器禁止条約の批准を求め、核兵器廃絶への決意を述べて、質問を終わります。(拍手)

   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上哲士議員にお答えいたします。
 予算委員会の開催についてお尋ねがありました。
 予算委員会を始め、国会の運営については、国会において決定されるものと認識しております。参議院の委員会の開会や日時については、委員長が定めることとされており、私は決定を行う立場にはありません。
 政府としては、国会より出席を求められれば、誠実に対応してまいりたいと考えております。
 F35の調達計画についてお尋ねがありました。
 F35の追加導入は、我が国の防衛体制に万全を期すべく、我が国の主体的判断で決定したものです。トランプ大統領の要求に応えたとか、パイロットや住民の安全より優先したとの御指摘は当たりません。
 今般のF35の事故については、防衛省において事故原因等について調査を進めているところです。このため、現時点でF35に係る今後の方針について予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。
 トランプ大統領と私の護衛艦「かが」訪問時の発言についてお尋ねがありました。
 御指摘の私の発言は、昨年、護衛艦「かが」が、そして今年は「いずも」が、インド太平洋に展開し、米国と密接に連携しながら、平和と安定のための活動をしていることを念頭に、改修後も一層の活躍をすることへの期待を込めたものであり、トランプ大統領の発言も同様の趣旨であったと認識しています。
 「いずも」型護衛艦の改修は、専守防衛の下、新たな安全保障環境に対応し、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについて、隊員の安全を確保しつつ、しっかりと備えを行うものであり、今後の我が国の防衛上、必要不可欠なものです。地球規模の様々な紛争や脅威へ日米一体で介入するといった御指摘は全く当たりません。
 米軍機の訓練についてお尋ねがありました。
 米軍は、我が国で全く自由に訓練を行ってよいわけではなく、接受国である我が国の法令を尊重し、日本国民の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることは言うまでもありません。
 同時に、米軍が訓練を通じて各種技能の維持向上を図ることは、即応体制を維持する上で不可欠であり、我が国を防衛するとの日米安保体制の目的達成のために極めて重要です。
 いずれにせよ、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件、事故はあってはなりません。在日米軍によるパラシュート降下訓練や低空飛行訓練等、御指摘の諸点については、政府としては、引き続き米側に対して、安全面に最大限配慮するとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう求めていきます。
 日米地位協定の改定についてお尋ねがありました。
 そもそも、日米地位協定と米国が第三国と締結している地位協定との比較については、地位協定そのものの規定ぶりのみならず、細部の取決め、実際の運用や背景等も含めた全体像の中で検討する必要があると考えられ、一律な比較は難しい面があるものと承知しています。
 例えば、例えば、御指摘のドイツ、イタリア、ベルギー、英国は、NATOの加盟国ですが、接受国と派遣国との関係や米軍基地の在り方について、相互防衛義務を負うNATOの諸国での在り方と日米のそれとを一律に比較することは難しいものと考えています。
 その上で、日米地位協定は大きな法的枠組みであり、政府として、事案に応じて、最も適切な取組を通じ、具体的な問題に対応してきています。
 安倍政権の下では、環境及び軍属に関する二つの補足協定の策定が実現しました。国際約束の形式で得たこの成果は、日米地位協定の締結から半世紀を経て初めてのものであります。
 今後とも、このような目に見える取組を一つ一つ積み上げていくことにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。
 米国の未臨界実験についてお尋ねがありました。
 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードしていく使命を有しています。これは、私の揺るぎない信念であり、我が国の確固たる方針であります。
 我が国は、非核兵器国のみならず、核兵器国をもしっかりと巻き込んだ核軍縮の取組を進めていくことを重視しています。
 未臨界実験は、包括的核実験禁止条約、CTBTで禁止される核爆発を伴うものではなく、核兵器のない世界の実現を目指して核軍縮に取り組んでいく中で、核兵器不拡散条約、NPT第六条も踏まえて、その扱いを検討すべき課題であると考えています。
 日本は、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境の中で、米国の核兵器を含む抑止力に自国の安全保障を依存しているとの現実があります。
 その中で、北朝鮮の核問題については、安保理決議は、北朝鮮に対して、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの安全、検証可能かつ不可逆的な方法での廃棄を求めています。
 我が国としては、米国を始めとする関係国と緊密に連携しつつ、関連する安保理決議の完全な履行を求めてまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

   〔国務大臣岩屋毅君登壇、拍手〕

○国務大臣(岩屋毅君) 井上哲士議員にお答えいたします。
 空自F35A墜落事故の捜索及び事故原因についてお尋ねがありました。
 その前に、この度、死亡が確認されたパイロットの御冥福を心よりお祈りし、御遺族の、御家族の皆様に心からお悔やみを申し上げたいと思います。
 事故後の捜索では、当該機の部品が散在する一帯の捜索、揚収活動を徹底的に実施し、六月三日に終了いたしました。しかし、保全の観点から、範囲を広げ、捜索は継続してまいります。フライトデータレコーダーの一部やエンジンの一部などを揚収しましたが、揚収品はいずれも激しく破損をしております。
 他方、共に飛行するF35Aとの間で情報の共有が可能なデータリンク、MADLから得られる情報や地上レーダーの航跡記録やパイロットとの交信記録などの分析が今相当進んできております。
 事故原因はまだ調査中ではありますが、まとまり次第、適切な形で公表する考えでございます。
 次に、F35の飛行再開についてお尋ねがありました。
 御指摘の陸自ヘリAH64DにせよF35Aにせよ、その飛行再開に当たりましては、飛行の安全が確保されることが前提でございます。
 この点、F35Aについては、今申し上げたように、データリンクや地上レーダーから得られる情報等の分析が相当進んでおります。
 こうした調査の中で、事故原因の絞り込み、特定を行い、これに対する再発防止策を講じることで飛行の安全を確保することが可能だとの判断に至れば、飛行を再開することはあり得ると考えております。
 最後に、F35の欠陥リストを入手し、調査すべきではないかというお尋ねがございました。
 米国会計検査院のF35に関する指摘については、その内容を米国政府に確認しており、特に飛行の安全や任務の遂行に重大な影響を与え得る事項として区分された課題につきましては、米国政府から既にリストを入手し、我が国が導入しているF35Aについて飛行の安全に影響する問題はないということを確認をしております。
 今後も引き続き、米国と緊密に連携し、F35Aの飛行の安全の確保に努めてまいります。(拍手)

   〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕

○国務大臣(河野太郎君) 米軍の訓練の根拠についてお尋ねがありました。
 日米安全保障条約に基づき、我が国が米軍の我が国への駐留を認めていることは、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを前提としています。
 一般に、米軍が飛行訓練などを通じて各種技能の維持向上を図ることは、即応態勢という軍隊の機能を維持する上で不可欠の要素であり、日米安保体制の目的達成のために極めて重要です。
 しかし、このことは、米軍機が全く自由に飛行訓練等を行ってよいことを意味するものではありません。例えば、在日米軍による低空飛行訓練や夜間飛行訓練については、関連する日米合同委員会合意等に従って行うこととされています。
 政府としては、地元住民の方々に与える影響が最小限となるよう、こうした合意等への遵守を米側に対して働きかけを続けてきており、引き続き適切に対応してまいります。
 米軍機の飛行訓練についてお尋ねがありました。
 日米安全保障条約が我が国の安全並びに極東の平和及び安全の維持に寄与するため米軍の我が国への駐留を認めていることは、米軍が飛行訓練を含む軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを前提としています。
 一方、米軍は、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきことは言うまでもありません。
 政府としては、安全面に最大限の考慮を払うとともに、地元住民に与える影響を最小限にとどめるよう、これまでも米側に申し入れており、先般の日米2プラス2においても、飛行安全及びこの問題に係る国民の懸念に対処する重要性について、四閣僚の間で認識の一致を見たところです。
 今後とも、適正に、適切に対応してまいります。(拍手)

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