○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
まず、外務大臣にお聞きいたします。
昨年七月に全国知事会が日米地位協定の抜本改定を求める提言を全会一致で決議をいたしました。航空法や環境法令を米軍に適用すること、訓練ルートや日時の事前提供などを求めております。この決議を受けて、全国の地方議会で地位協定の抜本改定を求める意見書が相次いでおります。安保破棄中央実行委員会の調べでは、昨年七月以降、八道県百七十二市町村議会に達しております。
政府はこれまで、地位協定について運用改善や補足協定などの努力を積み重ねてきたと、こういうふうに繰り返し答弁をしてきましたけれども、それでは問題が全く解決しないからこそ、こういう抜本改定の要求が広がっていると思いますけれども、政府の見解、いかがでしょうか。
○外務大臣(茂木敏充君) 我が国を取り巻く安全保障環境は、引き続き今大変厳しい中、日米同盟の抑止力を維持しつつ、同時に米軍の円滑な駐留を確保するためには、地元を含む国民の御理解と御協力を得ることが極めて重要だと考えております。各地方自治体の提言、全国知事会の提言を含めてでありますが、こういった提言につきましては、それぞれのお考えとしてしっかりと受け止めたいと思っております。
日米地位協定、これは同協定の合意議事録等を含んだ大きな法的枠組みでありまして、政府としては、事案に応じて効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じて、一つ一つ具体的な問題に対応してきているところであります。こういった取組を積み上げることによって、日米地位協定のあるべき姿、不断に追求をしてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 過去そういう答弁を繰り返されてきましたけれども、それでは解決しないから、全国知事会が提言を決議して、そして自治体の意見書が広がっているんですね。それぞれのお考えと言って横に置くような話ではないということなんです。しかも、それどころか、今、在日米軍基地の強化、そして日米の軍事一体化の下で様々な被害や不安が全国に広がっております。そのことをしっかり直視をしていただきたいと思うんですね。
その中の大きな問題の一つが、米軍機が勝手に日本上空に訓練ルートを設定をして、事前連絡もなしに住宅地の上空でも低空飛行訓練や夜間訓練などを行うと、そういう傍若無人の訓練への被害の拡大であります。
日米地位協定の下で、特例法によって米軍は航空法や最低安全高度などの適用除外になっております。政府は、九九年の日米合同委員会の合意で、米軍にどこでも低空飛行訓練をやることを認めた上で、米軍も航空法と同じ最低安全高度の規制を適用しているとしておりますけれども、あくまでも米軍任せなわけですね、その下で被害が広がっております。
私、通常国会では、五月三十日に長野県佐久市の上空での横田基地所属のC130輸送機による低空飛行訓練の問題を取り上げました。住宅や学校、病院、保育所などの公共施設が密集をする市街地の上空で超低空飛行訓練、住民からは、もう墜落すると思ったと不安と恐怖の声がたくさん寄せられました。当時、防衛大臣の答弁は、米軍からは合意を遵守している飛行をしていると回答がありましたと、まあ米軍の言い分を繰り返すだけでありました。
しかし、自らこの低空訓練を目撃をした佐久の市長さんが目撃画像の提供を呼びかける中で、たくさん市にも寄せられております。
私どもの佐久市議団が、この画像を基に、市民団体の低空飛行解析センターと測量会社に依頼をして、撮影された地点から測量調査をして画像を解析いたしました。地元紙で大きく報道されました。お手元にその一面を配っておりますけれども。【配付資料①191107.pdf】そこに方法も書いてありますが、実際の機体の大きさと画像での大きさから距離を推計をして、そしてそれを仰ぎ見る角度から高度を推計をしております。同じ機体を千曲川の両側から撮った画像が複数ありましたので、より精度の高い解析となりました。
二枚目に、その解析センターの報告書の図を配付をしておりますが、これによりますと、市内中心部の学校や住宅上空を二機飛んだんですが、一機は地表から二百十五から二百三十メートルの高さで、もう一機は二百九十メートルの高さから一気に二百三十メーターまで降下して飛行したということが明らかになりました。【配付資料②191107.pdf】
航空法は、住宅地の場合は建物より三百メーターというのを最低安全高度としているわけでありますが、それより低い高度なわけですね。当時、こういう調査もない下で、防衛大臣は、米軍は合意を遵守して飛行していると、こういう言い分を、米軍の言い分を繰り返したわけでありますが、これでもそういうことが言えるとお考えなのか、まずお聞きしたいと思います。
○防衛大臣(河野太郎君) 御指摘の五月三十日の長野県佐久市周辺における飛行状況につきましては、米側に確認したところ、横田基地所属のC130が日米両政府間で合意した協定に従って飛行していた旨の回答があったところでございます。米軍機の低空飛行訓練に関する一九九九年の日米合同委員会合意においては、在日米軍は、国際民間航空機関や日本の航空法により規定される最低安全高度を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高度規則を現在適用しているとされており、現在も、低空飛行訓練を行う際はこれを遵守し、適切に運用しているものと承知しております。
他方、本件を含めて地元自治体などからの不安の声があることは事実であり、防衛省としては、引き続き米側に対し、日米合同委員会合意などを遵守するとともに、安全面に最大限配慮しつつ、周辺地域に与える影響を最小限にとどめるよう求めてまいりたいと思っております。
○井上哲士君 十月一日には、長野の県知事、県の市長会会長、町村会の会長の三者で、低空飛行訓練に関わって、この問題に関わって、危険な訓練の中止や情報提供、地位協定の抜本改定を求めているんですよ。今、従来の答弁を繰り返されましたけれども、そういう下で実際にこういうことが起きて、不安と恐怖の声が上がっているんですね。にもかかわらず、合意を遵守しているという米軍の言い分を繰り返しても、これは住民の安全を守れません。
大体、例えば高速道路の危険なあおり運転があれば、民間のドライブレコーダーとか目撃情報など、あらゆる情報を集めて違法行為を明らかにして処罰するんですよ。これだけのことが起きているわけですから、こういう民間の解析結果も参考にして、防衛省もたくさんの情報あるわけですから、それちゃんと入手をして解析も行って、これは問題だと、正すべきだということをアメリカに迫るというのは、国民の安全を守るために当然じゃないですか。改めて答弁お願いします。
○国務大臣(河野太郎君) 米軍が訓練を通じてパイロットの技能の維持及び向上を図ることは、即応態勢という軍隊の機能を維持する上で不可欠の要素であり、日米安保条約の目的達成には極めて重要なものであります。他方、米軍は全く自由に訓練を行ってよいわけではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきであることは言うまでもありません。
こうした件につきまして、米側からは、日米合同委員会合意などに従って飛行していた旨の回答を受けているところでありますが、本件を含めて地元自治体などからの不安の声があることは事実であり、防衛省としては、引き続き米側に対し、日米合同委員会合意等を遵守するとともに、安全面に最大限配慮しつつ、周辺地域に与える影響を最小限にとどめるよう求めてまいります。
○井上哲士君 そういうことがやられていないからこういう不安の声が上がっているんです。一つ一つこういう実態を、事実を明らかにして是正を求める、こういうことなしに問題は解決しないんですよ。それをずっと繰り返してきたわけですよ。結局、米軍に航空法の安全基準の適用除外を続けて、こうやって自ら情報の収集もしないと、アメリカの言い分を繰り返すだけと。これでは、どこの国の政府かと、こういう声上がりますよ。私は、抜本的な地位協定の改定をして、こういう航空法の適用もするべきでありますし、今できること、きちっと情報はつかんで必要な抗議もするということを改めて求めたいと思います。
そこで、合意を遵守し、安全に配慮してと繰り返されますが、しかし、全国で傍若無人の米軍機の訓練、問題になっております。
高知県では、今年四月に突然の米軍機の低空飛行訓練があって、その四十分後にドクターヘリが飛びました。高知県知事などは、外務、防衛両大臣に要望書を出しておりますけど、その中でも高知は過去四回こういう事故があったと言っているんですね。墜落事故があったと、その四回目が昨年十二月五日未明の高知県沖での米軍岩国基地所属のFA18D戦闘機とKC130空中給油機が空中給油訓練中に突然衝突、墜落をしたと、こういう事故であります。この報告書が今問題になっていますが、九月二十六日に発表をされました。
まず、これ、米軍の部隊名は何か。そして、この報告書の中で事故原因としてこのパイロットの習熟度の問題、それから部隊の管理体制を挙げていると思いますけれども、具体的にどういうことを述べているでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) まず、部隊でございますが、昨年十二月に高知県沖で発生した米軍機二機による空中接触墜落事故につきまして、今年九月二十六日に米海兵隊が公表した事故調査報告書によれば、FA18D戦闘機の方は第二四二海兵全天候戦闘攻撃中隊の所属、KC130J空中給油機は、第一五二海兵空中給油輸送中隊の所属であると承知をしております。また、この二つの部隊は、いずれも米海兵隊第一海兵航空団第一二海兵航空群の隷下部隊であり、岩国飛行場に常駐していると承知をしているところでございます。
また、この事故調査報告書によれば、事故を引き起こした四つの重大な要因がある。戦闘機パイロットの夜間空中給油に係る練度の不足、部隊上層部による訓練及び運用に対する不十分な監督、戦闘機パイロットの平均を下回る飛行成績、職務上ふさわしくない部隊司令の姿勢、以上四つが挙げられておりまして、具体的には、当該パイロットは夜間空中給油訓練を実施する資格を有していないにもかかわらず実施を命ぜられたこと、さらに、部隊において未熟なパイロットへの訓練の認可や不十分な飛行前のブリーフィングなどが行われていたこと、そして、当該パイロットは教育過程において一貫して平均値を下回る成績であったこと、そして、当該部隊司令は隊員による規律違反の常態化や蔓延など、幹部に必要なプロ意識の水準を大きく下回っていたことなどであると承知をしております。
また、このほかに可能性のある要因として、夜間空中給油訓練に適さない暗視ゴーグルの使用、過去に当該部隊において発生していた類似の空中接触事故に関する事故調査の未実施なども挙げられております。
○井上哲士君 もう驚きますよね。岩国の地元の人の声が出ていましたけど、衝撃だと、ぞっとすると、こういうパイロットが運転しているということが言われております。
報告書では、手放しの操縦や飛行中の読書、ひげを整えながらの自撮りを含む規則違反、そして、相次ぐ事故の背景として、部隊内に薬物乱用、アルコールの過剰摂取、不倫、指示違反といった職業倫理にもとる実例が存在したと、こういう指摘もされております。こういう状況のまま日本の上空を訓練をしていると、驚くべき実態だと思うんですね。
しかも、この報告の中で、この部隊が三年前の二〇一六年四月二十八日に沖縄でも空中給油で接触事故を起こしてきたことが明らかになりました。この報告書は、このとききちんと調査をしていれば昨年十二月の高知沖での事故を防げたと指摘をしておりますけれども、政府は、この二〇一六年の沖縄での事故の報告はいつ受けたのか、今回のこの報告書を受けて米軍にどういう対応をしたのか、いかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 御指摘の二〇一六年四月二十八日の事故、これは沖縄本島沖百四十マイルの場所で夜間空中給油訓練を実施していたところ、FA18戦闘機のミスでKC130空中給油機に接触し、部品の一部が損壊したという事案であり、この原因は、夜間空中給油訓練に適さない暗視ゴーグルの使用や戦闘機側のパイロットによる位置の見誤りなどであるとされております。
この事故につきましては、高知県沖での事故に関する調査報告書で初めて言及があったものであり、事故発生時を含め、これまで日本側への通報はございませんでした。
日米間には通報手続に係る合同委員会合意が存在するところ、この沖縄本島沖での事故につきましては、当該合意との関係も含め、米側に詳細を確認しているところでございます。その上で、このような事故が起きていたことに加え、米側から十分な説明がいまだなされておらず、地元の方々に対して大きな不安を与えるものであることから、事実関係を速やかに御説明できるよう、私から早急に米側からの情報を得るよう強く指示したところでございます。
○井上哲士君 訓練も十分でなく、そして様々な問題を抱えたパイロットが訓練をしていたと。そして、この場合には、事故が起きても報告がされていなかったと。これでどうして米軍が合意を遵守して安全を考慮していると言えるのかという、ここが大きく問われていると思うんですね。
この一六年の沖縄での事故でありますけれども、どこで起きたのかと。手元に、米軍のホームページで明らかになった沖縄周辺のアルトラブの地図を作っております。【配付資料③191107.pdf】このアルトラブというのは、米軍のために一定の空域の中に一定時間他の航空機が飛行しないようにする管制上の措置と説明をされております。要するに、米軍の訓練のために管制によってその空域に民間航空機が飛行しないようにするものでありますが、ちょっと沖縄がありまして見えにくいですが、タイガーとかムース、イーグルなどのこのアルトラブの名前が付いております。Sアルトラブというのは固定的の、固定式の、型のアルトラブでありますが、米国の報告書は、この一六年四月の事故は、このタイガーと呼ばれるアルトラブで行われた訓練中としておりますけれども、このことは防衛省も承知をされているということでよろしいでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) この事故調査報告書の添付書類の中にタイガー空域、タイガーエアスペースとの記述があることは承知をしております。しかし、この当該文書の性質等が不明であるために、当該文書の記述内容の事実確認も含め、現在アメリカに当該事故の詳細について確認をしているところでございます。
○井上哲士君 これ、アルトラブというのは一時的、臨時的と言われますけれども、この米軍の資料がS、つまり固定的と言っていますように、事実上固定化されて、沖縄周辺の既存の米軍の訓練空域に加えて、この二年間で六割増えたと、こういうふうに言われまして、民間航空機も迂回を余儀なくされております。安全上大変脅かされていると。
国交省にも来ていただいていますけれども、この沖縄周辺のアルトラブというのはいつから設定をされてきたのかと。そして、この米軍機の事故が起きた四月二十八日にはアルトラブが設定をされていたのか。その場合、アメリカからいつ申請があって、いつからいつまで設定をしていたんでしょうか。
○国土交通省航空局交通管制部長(河原畑徹君) お答え申し上げます。
アルトラブの設定につきましては、米軍から事前に十分な時間の余裕を持って、時間、範囲など技術的な、技術的に必要な情報により要請を受けております。この要請を受けた航空局におきましては、民間航空交通を阻害することのないよう必要な調整を行い、安全かつ効率的な運航を確保するための管制業務上の措置をとることとしております。
お尋ねありました、この二〇一六年の沖縄での米軍事故の詳細については承知しておりませんけれども、いずれにいたしましても、アルトラブがいつどこで設定されているかということにつきましては、米軍の行動内容に関することでございますので、お答えを差し控えさせていただきます。
○井上哲士君 米軍は、この地域にタイガーというアルトラブがあると地図も出して、そして、この日、タイガー空域で訓練していたと公表しているんですよ。アメリカが公表していることも何で日本が明らかにできないのかと。結局、合同委員会で米国の了承なしに公表できないとしていますけど、実際にはアメリカは出しているんですね。そして、その下で、いつ日本国民にアルトラブが設定されたのかも分からない。しかし、そこでやっているときに事故を起こして......
○委員長(北村経夫君) 申合せの時間が参りましたので、質疑をおまとめください。
○井上哲士君 その事故報告もされていないんですよね。私はこんなことは許されてはならないと思います。こういう危険なアルトラブもやめるべきでありますし、こういう訓練を放置をしている地位協定の抜本改定が必要だということを申し上げまして、質問を終わります。