国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2019年・200臨時国会 の中の 外交防衛委員会(日米貿易協定/デジタル貿易協定に関する参考人質疑)

外交防衛委員会(日米貿易協定/デジタル貿易協定に関する参考人質疑)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。
 まず、内田参考人にデジタル貿易協定に関連してお聞きいたします。
 全体として、いわゆる巨大プラットフォーマーに非常に有利な中身になったんじゃないかと思っているんですが、昨年十二月にUSTRが設定、公表した獲得目標を全て実現する中身になっていると思うんですね。
 先ほど来、アルゴリズムの開示要求の禁止は話になっていますが、例えば、オンラインプラットフォームの民事責任の制限というのが入っておりますが、これなど、むしろ、アメリカの国内ではむしろこの見直しを求める声もあったと思うんですけれども、その辺、どのような状況だったかという御紹介いただきたいのと、にもかかわらず、こういうものが盛り込まれた背景というか理由について、まずお願いします。

○参考人(内田聖子君) ありがとうございます。
 十八条のコンピューターを利用した双方向サービスという件ですね。
 これはまさに、プラットフォーマーというのはインターネット上の掲示板ですとかSNSであるとか、そういうところを運営する企業のことを指すわけですが、これは、アメリカの通信品位法という国内法がありまして、その中で、随分前からこのプラットフォーマーの責任を免除するという、つまり、ひどい書き込みですね、誹謗中傷とか人権侵害とか、そういった書き込みを誰かがやって、それが誰かを傷つけるということがあっても、掲示している場であるプラットフォーマーに責任がないんだということでして、この規定があることによって、やはりGAFAと言われる企業を含め発展してきたと言われています。
 ただ、非常に面白いというか、今議会の中で、先ほどちょっといろんな意見を紹介しましたが、このデジタル貿易協定の十八条の規定ですね、これに対しての異論はたくさん出てきていて、これ削除すべきだというような意見まで議員から出てきています。なぜならば、やはり、これだけフェイスブックやいろんなものが広がって日々人権侵害が起きている、犯罪行為、児童ポルノ、たくさん問題があるという中で、プラットフォーマーに一定程度の責任をやはり課していくべきではないかという、非常に新しい議論ですけれども起こっていて、米国議会でもこれ議論されているんですね。通信品位法を変えようと、国内法を変えようと。
 そうやって議論しているまさにそのときに、国内法よりも優越する条約で、日米デジタル貿易でそれもう全部免責しますと決めれば、国内の政策スペースはもう狭いまま規定されちゃうんですね。だから、これ、まずデジタル貿易条約からは削除せよと。これは私、だんだんアメリカの中でもこの議論盛り上がってくると思っています。
 ですから、日本もそういう公共政策スペースを、まず条約でがちっと決められて、後になってそこが自由に利かないというようなことに陥る懸念を私はしております。

○井上哲士君 もう一点ですね。
 これが、欧州とかアジア諸国のいろんな考えている制度との違いということをおっしゃいました。例えば、越境データの移転制限やコンピューター関連設備の利用、設置の禁止などなどあると思うんですが、具体的にその欧州やアジアが考えているものとどこがどう違っているのか、そして、その中でこういうものが先行して決められていく、やられていくことがどういう問題をもたらすか、その辺もお願いしたいと思います。

○参考人(内田聖子君) ちょっと、すごく説明が長くなるので、大変はしょって言うと、私は、今世界に四つのタイプの、データの移転に対しての四つのタイプがあると思っています。
 一つは、今回の日米デジタル貿易協定のように、基本的にデータの移転を自由にしようというタイプですね。それから、EUは割と人権という観点からプライバシー保護。だから、日EUの協定の中でデータの自由な移転というのは規定していないんですね。合意できないんです、EUは、そんな自由にしちゃいけないという考えがあるので。もう一つは、やはり中国ですね。国家で全部抱えてそれを使うと、で、透明性は低いと。これはこれで私、問題がいっぱいあると思いますけれども、そういうところ。そしてもう一つは、今、インドやインドネシア等の新興国で、割とデータローカライゼーションだったり、それからデータの移転の部分的な禁止という、これを保護主義と称するのは私は異論があるんですが、そういう、守るという、国民の利益を守るという観点からですね、あります。だから、その四つがそれぞれにあると。
 これが、日米のデジタル貿易協定で一番自由なルールを作ったからといって、その他のところが早々に合意すると私は思っていません。これは先ほど述べたとおりです。ですから、日本においての問題は、難しいのは、日本は既に非常に自由なルールを国内法的にも設定してしまっているので、デジタル貿易協定を今回批准したからといって何かが変わるということは取りあえずないわけなんですね。
 ですから、やはり今後、でも、やっぱりデータの自由な移転は、国境を越えた移転はもっと規制しようよと、EUのような形でですね、思った際には、この協定合意している限り、米国との間という限定付きですけど、協定を変えない限りはやはり難しいという、自分たちの政策の変更余地というのが限定されるというふうに思っています。

○井上哲士君 ありがとうございました。
 次、鈴木参考人にお伺いいたしますけれども、今後の再交渉の一つの焦点が食の安全の問題になると思うんですね。先ほども少しこの間の日本の規制緩和のお話がありましたけれども、今後、アメリカが非常に強い要求をしてくることが予想されると思うんですが、その辺のおそれ、そして政府は、いや、国益に反する合意はしないと、こう決め文句なわけですけど、この間の経緯を見ますと、その辺の懸念というのはどのようにお考えでしょうか。

○参考人(鈴木宣弘君) 食の安全は日米交渉の中でも重要な部分の一つで、アメリカからのいろんな要求が既にございまして、その中で今、既に二つ進行している大きなものが、先ほども少し申し上げましたBSE、狂牛病の輸入条件。これをTPP12のときに、日本はTPPに参加したいならば二十か月齢に抑えているものを三十か月齢まで緩めるようにと事前に言われまして、それを緩めました。三十か月齢になっていたものを今度は撤廃するように要求が続いていた。
 そういう中で、食品安全委員会としては、BSEについてアメリカは一応表向き清浄国になっているので、これを言われたらやっぱり撤廃しなきゃいけないということで準備を整えて、それを発表するタイミングを待っていたと。で、この日米交渉が始まって、国民に対してはこれをアメリカのためにやったとは言えませんけれども、五月十七日にそれを撤廃したというのは一つの日米交渉の中での成果であるというふうに私は認識しております。
 次に出てくるのが、日米レモン戦争でも話題になりましたレモンとかに掛かっている防カビ剤ですよね。これは収穫後農薬で、日本では禁止ですが、アメリカから運んでくるのに掛けなきゃいけないと。食品添加物という無理やりの分類で日本は結局認めたわけですけれども、そうすると、今度はレモンのパッケージにイマザリルとか書かされるのが不当なアメリカ差別だから、これをやめるようにということで、この表示を撤廃する交渉が今進んでいると。恐らくこれは早い時期にこの件について何らかの回答を日本は出さざるを得ないのではないかと。
 そのような形でいろんなリストが挙がっている中で、次々と食の安全基準を緩めていくという交渉が今後とも続くのではないかと。それから、遺伝子組換えの表示の問題とか、そういうものも既に進んでいますので、その辺りについての更なる要求、こういうものがまだこれから第二段階の交渉の中でも継続的に出てくるのではないかというふうに懸念しております。

○井上哲士君 あと時間がありませんので、簡潔に。
 農産物についての政府の影響試算に非常に問題があるということも書かれていますけど、その点、お願いします。

○参考人(鈴木宣弘君) 政府の試算は、価格が仮に下がっても、関税を撤廃したりして、その分については必ずその差額を補填するか、あるいは対策を打って生産性が向上して、その分は何というか相殺されると、そういう下に、結果的には生産量も所得も変わらないということを前提にして計算しておりますので、正確な意味での影響試算ではないと。影響がないように対策をするから影響がないと言っているような形になってしまっているというのが一番の大きな問題ではないかと思っております。

○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。

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