国会質問議事録

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外交防衛委員会 閉会中審査(中東情勢と自衛隊中東派遣)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 米国による国際法違反のイラン革命防衛隊の司令官の殺害、そして、これに対してイランによるイラク国内の米軍基地への攻撃と一気に緊迫した情勢になりましたけれども、その後、当面の危機は回避をされましたが、トランプ政権は経済制裁の強化を明言をしているなど、衝突の危機は何ら消えておりません。
 茂木大臣は、先日ポンペオ国務長官と会談をされまして、米国がイランからのミサイル攻撃に対して軍事的報復を控えていることについて、自制的な対応を評価すると述べたと報道されております。
 しかし、元々今回の事態の引き金を引いたのは、この自制的な対応どころか米国によるイラン高官の殺害なわけですね。アメリカ側は、このスレイマニ氏の殺害は差し迫った攻撃を防ぐ自衛措置だったと説明をしております。
 そして、トランプ氏は十日、このスレイマニ氏が四つの米大使館の攻撃を計画していたと思うというふうに述べております。しかし、エスパー国務長官は、それについて証拠は見付かっていないと述べて、政権の中でも食い違いが露呈をしているわけですね。
 こういう、このスレイマニ氏の殺害に至る事実関係や法的な根拠について、訪米をされてきちっとアメリカ側から納得のいく説明を聞かれたんでしょうか。

○外務大臣(茂木敏充君) まず、年初来の緊張、中東地域での緊張の高まりに対しまして、日本として全ての関係者に自制的な対応を求め、事態のエスカレーションは回避すべきだ、このような呼びかけを行っておりまして、アメリカだけではなくてイランが自制的な対応をしていると、このことについても評価をしているところでありまして、改めてポンペオ長官との間でも、これ以上のエスカレーションは回避することが重要だということで意見の一致を見たところであります。
 そして、今回の三日の攻撃についてということでありますが、我が国は直接の当事者ではなく、詳細な事実関係を把握する立場にないことから確定的なことを申し上げることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げれば、米国が安保理議長宛てに提出した書簡におきましては、最近数か月のイラン・イスラム共和国とイランによって支援されている民兵による米国又は米国の利益に対するエスカレーションしている一連の武力攻撃に対して行ったものである旨説明をしておりまして、今委員の方から、もしかしますと先制攻撃的にやったのではないかと、こういう趣旨で発言いただいたのかどうか分かりませんが、既に発生した武力攻撃に対する自衛権の行使として説明していると、このように考えております。
 英語の文書等必要でありましたら、後で解説させていただきます。

○井上哲士君 私、先ほど述べたように、トランプ氏自身が、四つのアメリカ大使館の攻撃を計画していたと思うとツイッターでも述べているんですね。差し迫った攻撃を防ぐ自衛、ことを言ってきたわけですよ。
 しかも、これ米議会の中でもこのスレイマニ氏の殺害の根拠について様々な批判や疑問の声が上がっております。これに対してもトランプ氏はツイッターで、この差し迫った脅威について、彼のひどい過去を踏まえればそれはどうでもよいことだと、こういうふうに述べたんですね、どうでもよいことだと言っているんですよ、根拠について。
 私は、こういうきちっとした事実関係についてまともな説明も求めずに自衛隊の派遣を進めるならば、結局こういう根拠などどうでもいいというトランプ氏の姿勢を私は追認をするということになると思います。
 そもそも、このトランプ政権がこの間イランとの関係で進めてきたこと、およそ自制的対応というものではありません。先ほども議論ありましたけれども、今回の事態の一番の出発点は、イラン核合意からのアメリカの一方的な離脱であります。このイラン核合意は安保理決議二二三一で、アメリカを含む全会一致で承認をされたものですね。ところが、トランプ政権は、これが欠陥があるということで一方的に離脱を表明をいたしました。
 当時、ポンペオ国務長官はこれについて、イラン経済への最大限の圧力を活用してイランに合意の再交渉を強制し、かつイランに引き続き戦略的な能力を発達させる若しくは地域へ介入させるための歳入を与えさせないようにする、こういうふうにその目的について述べているわけですね。
 日本政府は、このイランの核合意の履行に当たっての外相談話でも、国際不拡散体制の強化と中東地域の安定のためには最終合意が今後も継続して遵守されることが不可欠だと、履行を積極的に支援していくと、こういうふうに述べました。ところが、このアメリカの離脱の際の当時の外務大臣の談話は、大きな影響が出るとすれば残念と腰の引けたものであります。先ほども、茂木大臣も残念だと言われました。
 しかし、これ、安保理で承認されたものを一方的に離脱をしたと、これは安保理決議違反じゃありませんか。そこをきちっと正面から言うべきじゃありませんか。

○国務大臣(茂木敏充君) まず、中東地域、これは歴史的に見ても様々な経緯がありまして、また多くの国や関係者が関与しておりまして現在の状況に至っておりまして、特定の国とか主体の行動若しくは特定の問題によって現在の状況が生まれていると、このように評価するのは困難なのではないかなと思っております。
 核合意の前をたどっていっても様々な経緯というのがあるわけであります。遡れば、十字軍の時代だっていろんな形であの地域においては紛争というのが起こっているわけであります。
 その上で、核合意の話でありますが、我が国として国連安保理決議の有権的解釈を行う、これは安保理でありまして、安保理において本件米国の離脱と安保理決議の関係において一致した見解はないものと承知をしております。
 いずれにせよ、我が国は国際不拡散体制の強化と中東の安定に資する核合意を支持しておりまして、米国による核合意離脱は残念であると考えております。同時に、米国とは、イランの核保有を認めず地域の平和と安定を促進するという目標を共有しておりまして、引き続き緊密に連携していきたいと思います。

○井上哲士君 まあ十字軍まで言われましたけどね、いろんなことがあったけども、その解決に資したのがイランの核合意じゃないですか。それを一方的に破ったと、明らかにこれは今回の事態の引き金を引いているんですよ。そんな十字軍なんてとんでもないこと言わないでください。
 そして、先ほどイランには核合意の遵守を求めていると言われました、イランに対しては。じゃ、ちゃんと、もう一回聞きますけどね、アメリカに対して核合意復帰しろと、そういうことは日本求めたことはあるんですか。

○国務大臣(茂木敏充君) 核合意も含めて、イランと直接アメリカが対話することが重要であり、そしてこのイランの核保有を認めない、それによって地域の平和と安定を促進していこうと、このことについては累次にわたってアメリカに働きかけを行っております。

○井上哲士君 結局、復帰求めていないんですよ。残念だと言うだけなんですね。
 そして、これ離脱だけじゃないんですよ。一月六日に発表されたアメリカ議会調査局のレポートでも、トランプ政権が核合意離脱後、最大限の圧力を掛ける政策を追求しているために二国間の緊張は著しくエスカレートしたと。アメリカのやり方がこれエスカレートをもたらしたと、こういうふうに言っているんですよ。
 いろいろ列挙しておりますけど、冒頭に、二〇一九年四月にイラン革命防衛隊を公式の軍隊として初めて外国テロ組織に指定をしたということが挙げられております。一国の軍隊をテロ組織だと指定をすると、こういうことについて日本はどういうふうな見解を持っているんでしょうか。通告していますよ、ちゃんと。

○防衛大臣(河野太郎君) 米国がアメリカの国内法に基づいてイランの革命ガードを外国テロ組織に指定したことの妥当性について答える立場にはございませんが、中東情勢については引き続きしっかり注視していきたいと思います。

○井上哲士君 当時、米国内、政権の中でもこういうことに対して様々、中東に駐留する米軍の安全性の懸念からの反対論もあったというふうに報じられております。これがやっぱり大きな、更にエスカレートになるんですね。
 さらに、米議会のレポートは、緊張を高めた出来事として、昨年五月、去年の五月に、イランの石油輸出をゼロとすることを目指して、同国からの石油を購入する国へも制裁を科すことにした、それから、精密誘導弾のサウジアラビアとUAEへの売却を含め、恐らく八十億ドル以上に上る訓練、装備品及び兵器の売却を通知をしたと、こういうことを挙げておるわけです。
 ポンペオ国務長官と茂木大臣との会談で、事態のエスカレーションは回避すべきと確認したと、こういうふうに書いてありますけれども、この間のやっぱり事態のエスカレーションを尽くしてきたのは、こういうアメリカのやり方なんですね。それを政府は、日本がアメリカとイラン双方に友好関係を持っているから外交的な役割を担うと繰り返されておりますけど、事態をエスカレートさせてきた、そのことに対してきちっと正面から物を言わないで、そんな外交的な事態、効果なんかないわけですよ。
 そういうのであれば、今日の中東情勢の緊張をつくり出してきた張本人であるトランプ政権にしっかり物を言うべきじゃありませんか。そして、イランに自制を強く求めていく上でも、こういうことをアメリカ・トランプ政権にしっかり物を言うし、そして、こういう事態の中で自衛隊を派遣をするということは結局、私は地域の軍事的緊張関係を高めて、一層事態を困難にすると思います。そういう意味でのちゃんとアメリカに対して物を言う外交的努力をするべきだと考えますけれども、茂木大臣、改めてどうでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 全くそのとおりだと思います。
 ですから、ポンペオ長官に対して直接、事態のエスカレーション、関係国全てが避けるべきだと明確に私から申し上げております。

○井上哲士君 一番の大本になったイランの核合意の離脱について、それに復帰をすることも正面から言わないし、そして、今回のこの殺害についても国際法上の極めて疑義の多い問題について事実関係も確かめない、まともにと。
 そんなことをやっていて、口だけでエスカレーションを回避すべきだと言ったって、それは何の事態にもならないし、改めて申し上げますけれども、そういう中で自衛隊を派遣をするということは一層地域の緊張を高めるということになりますから、その中止を強く求めまして、質問を終わります。

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