○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今年は現行安保条約から六十年の年でありまして、共に締結をされた日米地位協定の下で、米軍機の騒音や墜落事故、米兵の犯罪、環境汚染など、基地被害も深刻さを増しております。しかし、この協定は一度も改定をされておりません。全国知事会も、一昨年、抜本改定を求める決議を上げました。今年の一月までに、全国八道県百八十三市町村の議会で意見書も上がっております。
政府は、この声に対して、日米地位協定は大きな法的枠組みであり、事案に応じて最も適切な取組を通じ、具体的な問題に対応していくという答弁を繰り返して、抜本改定に背を向けてまいりました。
一方、二〇一四年に結んだ環境補足協定について、安倍総理は、日米地位協定の締結から半世紀を経て、初めて事実上の地位協定の改定だと述べております。
そこで、今日はこの地位協定の下での米軍基地の環境汚染問題についてお聞きをいたします。
まず、防衛大臣、お聞きしますが、沖縄県の嘉手納や普天間基地周辺の河川などから、発がん性が疑われ、条約で規制をされ、国内では製造が禁じられ、使用も原則禁止になっています有機フッ素化合物のPFOSやPFOAが二〇一六年の一月に高濃度で検出をされました。その後、県の調査で、周辺の飲み水や湧き水まで汚染が進んでいることが明らかになりました。
沖縄県は、これは米軍基地内で使用されてきた泡消化剤が原因である可能性を指摘をして、当時から基地内の立入調査を求めております。ところが、四年たってもいまだに実現をしておりません。なぜ実現していないんでしょうか。
○防衛大臣(河野太郎君) 沖縄県が要請している立入調査につきまして、防衛省としては、米側に対し様々な機会を捉えて伝達をしているところでございます。
その上で、PFOSの対応につきましては、自衛隊が保有しているPFOS含有の消火薬剤の処分や交換を加速しているほか、厚生労働省による水道水に関する暫定目標値案の検討など、政府全体として取組を進めているところでございます。
また、米側においても、国防授権法や国防省内に設置されたタスクフォースでの検討など、取組が進展しているところと承知しており、そうした状況を踏まえ、本年一月、私とエスパー国防長官との間で議論を行うなど、日米間の連携を一層強化して、在日米軍の対応を含め、包括的に検討を進めております。これら日本政府、米国防省における取組も踏まえて、防衛省は沖縄県と連携しながら米側に対する働きかけを行っているところでございます。
防衛省としては、沖縄県民の皆様がPFOS等の検出に対し不安を抱いておられることは重く受け止めており、引き続き、要請の実現に向けた働きかけを行うなど、沖縄県、米側及び関係省庁と密接に連携し、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 この間、同じ答弁だと思うんですね。その結果、四年たっても実現をしておりません。
米側はなぜ受諾をしないんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 米側には、防衛省として様々な機会を捉え、伝達しているところでございます。
○井上哲士君 にもかかわらず、四年間実現をしていないわけですね。県民の不安に応えると言われましたけれども、応えられていないわけなんです。
従来の地位協定の運用ではこの環境問題の立入りが実現してこなかったということで、補足協定が結ばれたはずなんですね。当時、岸田外務大臣は、この補足協定について、従来の運用改善と質的に異なりますと述べた。ところが、いまだにこの補足協定による立入りは一度も実現をしておりません。
なぜ、このPFOSやPFOAの沖縄の基地の汚染問題でこの補足協定は使われないんでしょうか。
○外務大臣(茂木敏充君) PFOS及びPFOAは、WHO等の国際機関において、人が継続的に接した際の健康影響が生じない限度額が確定していないこと等から、引き続き、リスクに関する知見の集積が必要な物質と解されております。
このため、本件が環境補足協定に規定をされた環境に影響を及ぼす事項に該当するかについては、今後得られる知見等も踏まえ、慎重に検討する必要があると、こういう点であります。
○井上哲士君 これ、環境補足協定を使われる場合はアメリカ側からの情報提供が端緒になるという答弁が繰り返されてきましたけど、この問題ではアメリカ側からの情報提供はあったんでしょうか。
○委員長(北村経夫君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(北村経夫君) 速記を起こしてください。
○国務大臣(茂木敏充君) 先ほど申し上げたように、このPFOS及びPFOAにつきましては、今、健康影響が生じない限度額が確定していない、リスクに対する知見の集積が必要な物質である。したがって、本件が環境補足協定に規定された環境に影響を及ぼす事項に該当するかについてはまだ検討が完全に終わっていないという状態でありますから、そういった意味におきましては、米側からそのような情報提供はないと考えております。
○井上哲士君 繰り返し、この補足協定というのはアメリカからの情報提供が端緒になると、しかし、これは求めている段階だという答弁がこの間行われてまいりました。ですから、結局、アメリカからの通報がなければ、この補足協定は動かないわけですね。
じゃ、アメリカは知らないのかという問題でありますが、一昨年九月に、米政府の監査院GAOの報告書によれば、このPFOSに関して米軍自身が国内外の米軍基地で包括的な調査を行っております。EPA、米国の環境保護庁は、生涯健康勧告値を七十ナノグラムに強化をしたと。これを受けて調査をしております。陸海空、海兵隊全てで過去の流出やその疑いのある場所を特定をして、周辺住民も含めた健康への影響や飲用水の汚染を米軍自身が調査をしているわけですね。これに基づいて米国防次官補代理が議会報告をしております。この中では韓国やベルギーの基地などの海外基地の調査結果列挙しておりますが、日本は触れておりません。
しかし、実は嘉手納でも米国は、米軍は調査をしているということが明らかになりました。去年の一月に、沖縄の地元紙がアメリカの情報公開法で米軍内部資料を入手をしたと。それによりますと、米軍が二〇一四年から一七年にかけて調査したこの嘉手納の十三か所で、飲料水の生涯健康勧告値をはるかに超える汚染があったという結果なんですね。
つまり、アメリカ側は汚染を十分認識しているはずなんですよ。にもかかわらず、日本には通報をしていないと。ですから、この環境補足協定、従来の運用とは違うんだとか画期的だと言われましたけれども、実際には使えるかどうかはアメリカの裁量に懸かっていると、こういうことではないでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 委員の御指摘の中でもまだ調査をしているという段階でありますから、その結論が出ないのに通報するということは委員の論理からいってもないことなんだと思います。
○井上哲士君 いやいや、結果出ているんですよ、汚染されているという結果がね。
しかも、これは河野大臣にお聞きしますけど、昨年六月の衆議院安保委での我が党赤嶺議員の質疑で、当時外務大臣だった河野大臣は、この米軍による嘉手納基地の汚染調査の結果についても共有していると、こういう答弁でありました。公表を求めた赤嶺議員に当時の外務省は、米側との合意が必要なので適切に対応、対処させていただくという答弁でありましたけれども、いまだに公表をされておりません。どう対応されてきたんでしょうか、なぜアメリカは公表することを拒否しているんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 今私が答弁するのがあれかどうか分かりませんが、アメリカ側が情報公開制度に基づき開示したとされる文書については日本政府も米側から提供を受けております。ただ、この提供されている内容を公表するかどうかについては米側の了承を取る必要がございます。当該文書はあくまでアメリカ政府の文書であるところ、文書の請求者以外の第三者に当該文書を公表するかどうかについては、これはアメリカ政府が判断すべきものと考えております。
○井上哲士君 アメリカに公表するということを求めたんでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 今、河野大臣の方から答弁ありましたように、文書の請求者以外の第三者に当該文書を公表するかどうかにつきましては、まさに米政府が判断すべきものと、そのように考えております。
○井上哲士君 ですから、結局、本来でいえば、私は、住民の安全を考えれば、資料の公表を求めて、そして汚染を示した結果に基づいて立入調査を強く求めるのが必要だと思うんですよ。ところが、日本政府が、情報を求めても自ら公表しないと、アメリカにも求めないと。一緒になって隠蔽しているようなものなんですよね。結局、私は、補足協定が何の改善にならないだけではなくて、逆に後退していると。特に立入調査がこの間後退しているんですね。
もう一つ聞きますけれども、沖縄返還以降、基地に由来する環境汚染が相次いだことがきっかけに、一九七八年以来環境省による在日米軍施設・区域環境調査が行われてまいりました。この調査の目的と概要、立入調査の実績、環境省、いかがでしょうか。
○環境省 大臣官房審議官(上田康治君) お答えいたします。
在日米軍施設・区域の周辺地域における環境調査は、米軍施設・区域に起因する環境問題の未然防止を図ることを目的として、毎年環境省において実施しています。沖縄県に係る水質調査については、毎年度沖縄県に委託して実施しております。
当該調査は、二〇一三年度までは施設・区域内において実施されていましたが、二〇一四年度からは調査方法を見直し、施設・区域周辺で調査を実施しているものです。
実績につきましては、二〇一二年度、二〇一三年度について紹介いたしますと、二〇一二年度水質調査については、本土の在日米軍施設・区域は四施設、沖縄県内の在日米軍施設・区域は七施設。二〇一二年度、今度は大気の質の調査については、本土の在日米軍施設・区域四施設、沖縄県の在日米軍施設・区域二施設でございます。二〇一三年度水質調査については、本土の在日米軍施設・区域四施設、沖縄県内の在日米軍施設・区域八施設。二〇一三年度の大気質調査については、本土の在日米軍施設・区域三施設、沖縄県内の在日米軍施設・区域二施設において調査を実施しております。
○井上哲士君 米軍施設内での日本の環境法令が及ばない中、基地内の水質などを定期的に把握して察知できる唯一の機会でありました。環境省の予算執行を自主点検する行政レビューシートでも、本件環境調査に関し、国に対する地元自治体からの期待は高いと、こう評価をしてきたわけですね。
ところが、今ありましたように、この立入調査を一四年からやめてしまいました。その理由は何だったんでしょうか。地元自治体に意向は聞いたんでしょうか。
○政府参考人(上田康治君) お答えいたします。
環境省としては、米軍施設・区域からの環境影響を排水処理施設などの特定の施設に限定せず、広範に把握できるよう調査方法を見直したものでございます。引き続き、施設・区域周辺での調査を的確に実施し、米軍施設・区域に起因する環境問題の未然防止を図っていきたいと考えております。
また、この調査方法の見直しに当たっては、沖縄県に連絡したものと承知しております。
○井上哲士君 基地外で広範な調査をしたらいいんですよ。だけど、それは立入調査をやめる理由にはならないはずなんですね。先ほど言われた目的、在日米軍施設・区域に起因する環境汚染を防止すると。そうであれば、基地外に被害が広がる前に汚染源を調査することが必要じゃないでしょうか。私は、立入調査の重要性をそんな環境省が低めてどうするんだということを言いたいわけですよ。
先ほど、県に伝えたと言われましたけれども、沖縄県は県議会の答弁で、県としましては、基地内の水質の状況について基地周辺のみで把握することは困難と考えて、基地内環境調査を国に要請していると言っているんですよ。全然地元の意向と違うんじゃないですか。いかがですか。
○政府参考人(上田康治君) 先ほどの沖縄県への連絡につきましては、環境省、また関係省庁と相談の上で決めた結果を通知したものでございます。
○井上哲士君 それは、沖縄県は調べられなくなると、困難だと、把握が、言っているわけですね。
沖縄県は、環境省を通じて、日米合同委員会の下部組織の環境分科委員会で一四年度の立入りが却下されたという報告を受けたと、こう言われています。県議会でも同様の答弁をされております。環境分科委員会でアメリカが合意しなかったと、その理由はどういうことだったんでしょうか。
○政府参考人(上田康治君) 日米合同委員会の下の環境分科委員会でのやり取りについてのお尋ねでございますが、同委員会での米側とのやり取りの詳細については、お答えすることは従来から差し控えさせていただいているところでございます。
○井上哲士君 日本は提案したけれども、アメリカが合意しなかったと、その結果はそうですね。
○政府参考人(上田康治君) 繰り返しになりますが、米側とのやり取りの詳細については、お答えすることは差し控えさせていただいているところでございます。
○井上哲士君 沖縄県は、県議会でも、合同委員会で合意ができなかったということを答弁をしているわけですね。
結局、この環境補足協定によって、それまでできていた立入検査ができなくなっている。実はあの直後に、やはりそれまで行われていた普天間基地内などでの文化財の調査ができなくなりました。これも国会で問題になったんですよ。
そのときに、岸田外務大臣は、この補足協定というのは歴史的重要な意義があるとしながら、運用において御指摘のような不都合、つまり文化財調査が立入りができなくなった、そういう不都合が生じていることはしっかり受け止めなくてはならないと、今後の運用を通じて立入り申請が迅速に進められ、必要な立入りがタイムリーに実施されることが重要でありますと、こう述べております。そして、地元にこうした環境補足協定の意義をしっかり感じていただけるよう努力をしていきたい、言っているわけでありますが、今起きていることは、それまでできていた立入調査もできなくなっている、そして環境補足協定は一度も使われていないと。当時の答弁と実態、全く逆じゃないでしょうか。茂木大臣、いかがですか。
○国務大臣(茂木敏充君) 先ほどから委員の質問をお聞きしておりますと、多分よくお分かりの上でなんだと思うんですけど、例えば、米側が情報公開制度に基づいて開示した文書について、日本側が提供を受けてそれを開示したかという話と、環境影響に影響を及ぼす事故の米側の通報と、これを一緒にして言うので、おかしくなるというか、確実に、何というか、混乱をするような議論を行っていると、このように感じるところでありますが、いずれにしても、環境補足協定に基づきます環境に影響を及ぼす事故、すなわち漏出が現に発生した場合、立入り申請手続は米側からの通報を受けて申請を行うことになっております。これは、情報公開制度に基づいて開示する文書とは全く別なものであるということは強調しておきたいと思います。
そして、米側から情報提供がない場合であっても、日本側として、米軍施設区域に源を発する環境汚染が発生し、地域社会の福祉に影響を与えていると信じる合理的な理由のある場合には、別途、既存の日米合同委員会合意にも従って、米側に調査要請や立入り許可申請を行うことが可能であります。
事実、環境補足協定締結以降も、例えば平成二十八年六月十五日に普天間飛行場にて燃料漏れが発生したわけでありますが、その際には、米側から申出を受けて、宜野湾市及び沖縄防衛局職員が同飛行場に立ち入り、現場確認を行っております。
施設区域内外の環境対策が実効的なものとなるように、こうした補足協定や日米合同委員会合意を、岸田大臣も答弁したように、適切に運用しつつ、米側との連携を含め、引き続き必要な努力を続けてまいりたいと思っております。
○井上哲士君 何も混乱はしておりません。私、ちゃんと区別して聞いているんですね。
外務省は、この補足協定が歴史的な意義があると、従来と運用が違うんだと言ってきた。ところが、現実には、一度も使えないだけじゃなくて、それまで行われてきた立入調査もできなくなっているという現実があるんですよ。このことを私は問うているんですね。
結局、いずれにしても、このアメリカの裁量が大前提ということは変わらなかったわけですよ。そうしますと、幾ら問題が起きても、米軍が認めなければ、通報しなければ、結局こういう協定は動かないと。
私は、地位協定が米軍に対して占領時代そのままの様々な特権を受け継いで基地の排他的管理権を認めているということが根本にあると思います。
他国では、米軍の基地の管理権に関して、ドイツでは自治体当局の予告なしの立入り権が明記されておりますし、ベルギーも自治体の立入り権が認められております。イタリアでも同国の司令官が基地に常駐し原則どの区域にも立ち入ることができると。やっぱりこういうアメリカの裁量に任せるんじゃなくて......
○委員長(北村経夫君) 時間が来ておりますので、おまとめください。
○井上哲士君 日本の立入り権をきちっと明確化した抜本的な改定が必要だということを強く求めまして、質問を終わります。