○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
防衛省設置法案については、後ほど討論で述べます。
まず、普天間基地でのPFOSの流出問題について聞きます。
三月の所信質疑の際に、米軍の嘉手納や普天間基地における発がん性が疑われる有機フッ素化合物PFOSやPFOAによる環境汚染問題を取り上げました。二〇一六年に基地周辺の河川などから高濃度で検出をされ、以来、沖縄県は米軍の基地内で使用された泡消火剤が原因である可能性を指摘して立入調査を求めているにもかかわらず、米軍が合意せずに四年間行われておりません。そのことを問題にいたしました。
その普天間基地で、十日、PFOSを含む泡消火剤の大量流出事件が起きました。地元紙をお配りしておりますが、基地を流れ、暗渠を通って市街地の川に入っております。【配付資料200416①.pdf】川は泡だらけになって、隣接する保育園や住宅など軽自動車ぐらいの泡が降ってくると騒然として不安の声が上がったということであります。川を通って浦添市の牧港漁港にも流れ込んで、港にも泡が浮かんだと。田畑や海の生態系への影響も懸念をされております。
沖縄知事も宜野湾市長も抗議の声明を出している極めて重大な事故でありますが、まず防衛大臣、この事故の事実関係や政府としての対応を明らかにしていただきたいと思います。
○防衛大臣(河野太郎君) この件につきましては、十日、米側から、米海兵隊普天間飛行場の格納庫内の消火システムが作動し、PFOSを含む泡消火剤が放出された、速やかに泡消火剤の回収に当たっていたところ、一部が飛行場外に流出した、そういう情報を受けたところでございます。防衛省として、関係自治体に直ちにお知らせするとともに、職員を現地に派遣するなど対応に当たりました。
その上で、政府として、今般の流出事故は住民の方々に不安を与える重大な事案と認識しており、米側に対して厳重に抗議するとともに、流出した泡消火剤の迅速な回収、事実関係の速やかな提供、原因究明と安全管理、再発防止策の徹底を強く申し入れました。さらに、政府として、普天間飛行場の内外の環境対策が実効的なものとなるよう、米側に環境補足協定に基づく立入りを強く求めており、現在、現地確認などの立入調査を直ちに実施するべく最終的な調整を行っているところでございます。
十一日までに米側による飛行場内の回収作業は終了しております。飛行場の外につきましては、宜野湾市を中心に回収作業が実施されました。関係の皆様に改めて御礼を申し上げたいと思います。また、十三日にも、防衛省も加わり、現場で清掃を実施するなど作業を継続しております。
現在、米側に対して流出原因などの事実関係の速やかな提供を求めており、米側からは原因究明のための調査チームを設置したという説明を受けているところでございます。また、米側から、消火剤、原液ではなく、水で希釈された量ではありますが、消火設備からの流出量が約二十二万七千百リットル、飛行場内における米側回収量は約八万三千二百七十リットル、飛行場の外へ流出した量は十四万三千八百三十リットルとの情報を受け、防衛省として関係自治体に直ちにお知らせをしたところでございます。
○井上哲士君 基地外に出た量が、今ありましたように十四万三千八百リットル、ドラム缶でいいますと七百十九本ぐらいになると報道されております。とてつもない量が出たわけであります。
防衛省も今、抗議の上、流出した泡消火剤の迅速な回収を求めたと述べられましたけれども、この市の回収要請にもかかわらず米軍が現地に現れなかった、結局、防衛局から協力要請を受けた市の消防局が翌日の午前から作業を開始し、米軍は翌日正午にやっと現れたと。これはもう回収作業することなく、基地内の作業に集中するとして立ち去ったと、このことに怒りの声も上がっているわけであります。
この重大な環境汚染の原因は米軍でありますから、国と米軍が責任を持って回収をし、そしてアメリカ側に費用の負担も求めるべきだと思いますけれども、外務大臣、いかがでしょうか。
○外務大臣(茂木敏充君) 政府として、今般の流出事故は住民の方々に不安を与える重大な事案と認識をいたしております。
本件事案への対応に当たりましては、環境補足協定に基づく立入調査を米側に強く求め、最終的な調整、行っているところであります。また、米側に対しては、流出原因など事実関係の速やかな提供を求めておりまして、米側からは、原因究明のための調査チームを設置したとの報告を受けております。外務省としては、関係省庁や米側とも連携して、まずは立入りを含めた調査を通じて原因究明にしっかりと取り組むとともに、事実関係を明確にする考えであります。
その上で、お尋ねの日米間におけます費用負担の在り方については、確定した事実関係を踏まえて、防衛省と連携しつつ、日米間で調整していくことになります。その中で、米国に請求すべき部分がある場合にはその分担をしっかりと求めていきたいと思います。
○井上哲士君 原因者が処理をして費用を負担するのは、私は当たり前の話だと思うんですね。今本当に市の大変な負担になっているわけでありまして、強く求めたいと思います。
大体、なぜこういう事故が起きたのかと。PFOSは、二〇一六年に日本環境管理基準、JEGSに有害物質として追加をされております。河野大臣は外相時代の昨年六月の衆議院安保委員会で、米軍に対してPFOSを含まない泡消火剤へ早期交換を要請し、米軍においても早期交換に向けた作業を進めております、普天間飛行場においては二〇一六年以降使われていないということを確認していると、こう答弁されたんですね。三月の私の質疑に対しても、米側で取組が進展していると、こう述べました。にもかかわらず、実際には普天間飛行場で使用されており、こういう重大な漏出事故が起きた、このことをどう認識されているでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) アメリカ側からは、普天間飛行場で保有するものも含め在日米軍が保有しているこの泡消火剤については、二〇一六年以降は訓練を目的として使用しておらず、また、これらを厳格に管理するとともに順次交換を進めている旨の説明を受けております。そうした答弁を私も行ってまいりました。
その上で、自衛隊、消防などの我が国の施設や在日米軍施設・区域内において、PFOSを含む製品の製造禁止等の規制が始まる前に製造された泡消火剤は、現在もなお火災など緊急時に使用するため消火設備に充填されたものや、廃棄のために保管されたものが残っていると承知をしております。
防衛省としては、自衛隊が保有するPFOS含有泡消火剤の交換を加速するとともに、米側に対しても早期の交換を求めてきたところでございます。
防衛省としては、大規模な流出事故が再び起こることがないよう、在日米軍の泡消火薬剤の交換や今般の事案の再発防止策について、PFOS等をめぐる問題全体に関して日米間で集中的に行っている検討の中でしっかり議論をしていきたいと考えております。
○井上哲士君 アメリカの取組が進展しているかのような答弁が続いてきたわけでありますけれども、実際には交換も行われていなかったと。そして、こういう重大な事故が起きたわけでありまして、私は日本政府の責任も免れないと思います。
今回、初めて環境補足協定に基づく立入調査を求めたわけでありますけれども、必ずこういう調査を実現をすること、同時に、やはり結局アメリカ側の合意が必要になってくるわけでありまして、そういう裁量次第ではなくて、ヨーロッパの国々が米軍で結んでいる地位協定のように自治体の立入り権を明確にするということが、そういう抜本改定地位協定が必要だということを強調したいと思います。
続いて、被爆七十五年であります。核兵器廃絶に関わって被爆建物の保存についてお聞きをいたします。
まず外務省にお聞きしますが、日本政府は国連に核兵器廃絶の決議案を毎年提案をしてまいりました。被爆七十年に当たる二〇一五年の決議案には、世界の指導者や若者に被爆地の訪問を促す文言が初めて盛り込まれました。それ以降も続いておるわけでありますが、被爆地への訪問を促す文言を盛り込んだ理由をまず述べてください。
○外務省 軍縮不拡散・科学部長(久島直人君) お答え申し上げます。
我が国は唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け国際社会の取組をリードしていく使命を有しております。国際社会が被爆の実相に関する正確な認識を持つことは、核軍縮に向けたあらゆる取組のスタートとして重要でございます。
このような観点から、我が国は、要人の被爆地訪問を始め被爆の実相を伝える取組を積極的に推進し、また、委員御指摘の、我が国が昨年提出した、そして幅広い支持を得て採択された核兵器廃絶に向けた国連総会決議におきましても、世界の指導者や若者による長崎及び広島への訪問を歓迎する旨を盛り込んでおります。
このような取組を通じまして、核兵器使用の惨禍を国境と世代を超えて伝えていく努力を重ねていきたいと考えております。
○井上哲士君 核兵器の惨禍を伝える上で被爆地訪問が大事だ。私は、被爆者の証言を聞くとともに、この被爆建物やそして資料を見るということが本当に大事だと思うんですね。
その中で今大きな問題になっているのが、被爆の惨状を伝える代表的な建物の一つである広島市の旧陸軍被服支廠の保存、活用であります。
お手元に資料を配っておりますけれども、一九一三年に建造され、鉄筋コンクリート造りで外壁にれんがが積まれた、文化的にも貴重な建物であります。【配付資料200416②.pdf】十三棟のうち四棟が現存をし、三棟広島県、一棟が国を所有している。広島県が昨年末、そのうち、県所有の三棟のうち一棟のみ保存し、二棟を解体する方針を明らかにいたしました。県民から全棟保存を求める声が大きく広がって、解体着工は先送りになっております。
この被服支廠は、軍服や軍靴の製造など、兵たん基地としての役割を果たす、語る歴史を持っております。一方、倒壊と火災を免れたために、原爆投下直後に被爆者の臨時救護所となって、たくさんの被爆者をみとった場所なんですね。写真にありますように、爆風で曲がった鉄扉の窓枠などそのまま残されている非常に貴重な被爆建物だと思います。
世界に被爆の実相を知るために被爆地の訪問を呼びかけている下で、逆にこういうものを解体するというのは私、許されないと思うんですね。唯一の戦争被爆国として保存のために、積極的に保存に取り組む、積極的に取り組むことは私は国際的責務であると思いますけれども、国としてのこの建物の評価及び被爆国の責務として保存に取り組むことについて、外務大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 御指摘の被爆建物につきましては、被爆者の減少であったり高齢化により被爆体験の風化が危惧されている中で、世代や国境を超えて被爆の実相を伝えていくことのできる建物の一つであると考えております。今、政府参考人の方からも答弁させていただいたように、そういう実相を世界に伝えていく、こういう努力を日本もしているところであります。
今、ちょっとこういう状況で、私、時間がありまして、西洋美術史の本を読んでいるんですけれど、例えばピカソのゲルニカ、これを見ると、いかに戦争が非人道的なものであるか、まざまざと感じるわけでありまして、そういった文化財であったりとか史跡、これをどう残していくかというのは極めて重要だと考えております。
その上で、同建物の取扱いにつきましては、県内外で様々な意見があることも踏まえて、建物の老朽化に対する安全確保の必要性、やっぱりれんがというのはどうしても壊れやすいというところもありますので、それをどう保存していくかということもあると思います。保存を行う場合の建物の活用方策であったりとか財源の確保等の観点から、現在、広島県を中心に検討が行われていると承知をいたしております。政府としては、広島県におきます議論を注視し、その状況を踏まえて対応すべきものと考えております。
その上で、率直に申し上げれば、私は、やっぱり広島市として残したいということであったら、国としてもできることはすべきだと思っています。
○井上哲士君 是非積極的にやってほしいと思うんですね。
政府もこの被爆の実相を継承していく務めがあると認めて、大事な建物だと評価をされている。広島県も一棟は残すとは言っているんですね。だけど、私、四棟残すということが大事だと強調したいんですよ。
誰もが訪れる原爆ドームというのは、原爆の破壊力のすさまじさを示しております。これに対して、倒壊と火災を免れた被爆者の臨時救護所となったこの旧陸軍被服支廠というのは、多くの被爆者が横たえられたその床があり、最後亡くなるときに見た天井がそのまま残っている、例のない被爆建物なんですね。地図ありますけれども、これ高さ十五メーター、全長四百メートルあるんです。私も改めて行きましたけれども、本当に巨大さに圧倒されるわけですよ。
この大きな建物が被爆者で埋まったと、そこで苦しみながら亡くなったと。その様子は、「ちちをかえせ ははをかえせ」で有名な峠三吉の原爆詩集の中の「倉庫の記録」としてもうたわれているんですよ。ですから、あの大きな建物の前に立ってこそ、原爆がどれだけ多くの人々に地獄のような惨事をもたらしたかというのを実感できるんですよね。ですから、私は、一棟ではなくて、やっぱり四棟保存が絶対必要だと思っております。
是非、外務大臣、一度現場を見てほしいと思うんですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 機会があれば、様々なそういった戦争の悲惨さを伝える、その何というか、建物であったりとか、そういったものを私も直接拝見したいと思っておりますし、実際に日本政府として、要人の被爆地訪問、さらには非核特使、ユース非核特使の委嘱であったりとか、国連軍縮フェローシップの広島、長崎への訪問、こういったことも支援を行っているわけでありますから、外務省自身としてもそういったものを見る機会は持っていくべきだと思っています。
○井上哲士君 四棟のうち国所有のものは財務省が管理しているんですね。是非、これは保存するということを明確にして、県に対しても全棟保存へのやっぱり財政支援も含めてやるべきだと思いますけれども、財務省、いかがでしょうか。
○財務省 理財局次長(富山一成君) お答えをいたします。
旧陸軍被服支廠につきましては、広島県が三棟所有し、国が一棟を所有しており、広島県においてその取扱いが検討されているものと承知をしております。
国が所有する本件建物につきましても、まずは広島県におけます議論等を踏まえまして対応を検討してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 やっぱり私は、この被爆建物の保存というのは被爆地とともに国の責任だと思うんですね。もっと積極的な態度を示してほしいと思います。
厚労省の制度とか、それから文化財として指定をするということによる支援もありますけれども、厚労省の支援予算は年間五千万ですよ。文化財のいろんな支援予算は三十億です。これ、一棟三十三億ということを県庁は、県は試算していますから、やっぱり従来の枠を超えた支援を国がやるということを示さなければやっぱり進まないと思うので、それでこそ私は被爆国の責任ができると思います。
是非、外務大臣、そして防衛大臣も、核兵器問題、様々な取組されてこられました。是非、政府として決断をして促してほしいということを強く求めまして、時間ですので質問を終わります。
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○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、防衛省設置法一部改正案に反対の討論を行います。
本法案による自衛官定数の変更は、防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画に基づいて、宇宙、サイバー、電磁波領域での体制強化と、無人偵察機グローバルホーク、空中給油機KC46Aの導入に伴う組織改編のために行われるものです。これらは日米ガイドラインの具体化であり、米国の軍事戦略に従って日米の軍事一体化を一層推し進めるものであり、容認できません。
新編される宇宙作戦隊では、JAXAの情報も一元化を図った上で、自衛隊の宇宙状況監視システムを米軍と連接させてリアルタイムで共有するとされています。米国は、米軍のあらゆるレベルにおける能力を下支えするものとして、宇宙の能力を死活的に重要なものと位置付けて、商用ベースの能力と並んで同盟国の宇宙状況監視能力の統合を標榜しています。今回の新編は、このような米軍の地球規模の体制整備の一翼を担うものにほかなりません。
また、サイバー防衛隊の新編は、兵器のネットワーク化が進む下で、指揮通信システムの統合、作戦情報の共有により米軍との一体化を進める自衛隊のサイバー防衛能力の強化を図るものです。
これらの新たな体制強化は、中国、ロシアに対する軍事的な優位性の維持強化を追求する米国の戦略に日本を一層組み込むものであり、地域の環境を高め、際限のない軍拡競争にもつながりかねないものであります。
以上を述べて、討論を終わります。