国会質問議事録

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本会議(行政監視強化/補正予算10兆円予備費/黒川検事長問題/持続化給付金業務委託ほか)


○議長(山東昭子君) 井上哲士さん。

   〔井上哲士君登壇、拍手〕

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。会派を代表して質問します。
 日本国憲法で、国民の代表機関、国権の最高機関、唯一の立法機関として位置付けられる国会が、行政への監督・監視機能を果たすことは重要な責務です。
 私も参加した参議院改革協議会において、行政監視機能の強化に院全体で取り組むこととし、年間サイクルの起点として本会議での政府報告と質疑を行うことを決め、本日が第一回目です。
 参議院は、解散がなく、任期が六年で半数改選であり、継続性、安定性という特性を持っています。それを生かし、中長期的な課題とともに、その時々の重要課題や国民の声に機敏に応えた行政監視機能をしっかりと果たさなくてはなりません。政府の全省庁は、参議院の行政監視活動の強化に全面的に協力すべきではありませんか。総務大臣の答弁を求めます。
 国会の行政監視機能への挑戦とも言えるとんでもない内容が第二次補正予算案に盛り込まれました。十兆円の予備費です。
 巨額の予備費は、憲法に定める財政民主主義をじゅうりんするものであり、政府に白紙委任することはできません。財務大臣の認識を問うものです。
 国会が行政監視機能を果たすためには、意思決定過程の透明化、議事録などの作成と公開、公文書の適切な管理と公開は不可欠です。
 ところが、安倍政権の下で、自衛隊の日報、森友、加計、桜を見る会などでの公文書の隠蔽や破棄が相次いだことは、行政監視の妨げになってきたのではないですか。総務大臣の答弁を求めます。
 さらに、政府の新型コロナ専門家会議の議事録も作成されていないことが明らかになりました。
 専門家会議は、コロナ対応の政策決定に決定的影響を与えています。官房長官は、一日の会見で、専門家会議が公文書管理のガイドラインで議事の記録作成が必要とされる懇談会に該当することを認めました。議事録を作らなかったことは間違いだったのではないですか。速記録はあるとしています。詳細な議事録を作成して公開するべきです。以上、官房長官、いかがですか。
 次に、賭けマージャンで辞職した黒川検事長をめぐる問題です。
 政権の都合で黒川氏を検事総長にするために違法な定年延長を閣議決定し、それを合法化するための検察庁法改定案に定年延長を盛り込んだのではないか、この疑問にまともな説明がありません。
 森法務大臣は、二月二十七日の衆議院予算委員会で、法案策定過程を記した文書を法案の成案ができた段階で作成すると説明しました。ところが、いまだに作成中としています。なぜ法案の閣議決定から二か月半以上たってもできないのですか。法案作成過程に説明が付かない問題があるからではありませんか。
 さらに、その黒川氏が、緊急事態宣言の最中に賭けマージャンをしながら、懲戒処分以下の訓告という措置しかされず、しかもその決定過程の説明が二転三転していることに批判が広がっています。
 人事院のホームページでは、国家公務員倫理法に基づく処分の場合、通報から処分が行われるまで比較的短い場合でも二か月程度は要しますと明記しています。実際、黒川氏の処分後に賭博の常習性を示す事実が報道されています。なぜ僅か数日の調査で訓告としたのですか。以上、法務大臣の答弁を求めます。
 検事長の任命権者は内閣であり、懲戒を決めるのも内閣です。法務省の案を了承しただけと言いますけれども、了承自体が判断です。なぜ、懲戒処分はしない、訓告でよいという判断を行ったのですか。官房長官、お答えください。
 検察刷新会議が設置されますが、以上述べた黒川氏の定年延長や検察庁法改定案の変更、懲戒処分としなかった経緯を議論の対象としなければ国民の信頼回復はないと考えますが、いかがですか。
 昨日、法務省は、黒川検事長が辞任した後も管内の捜査や公判に支障が出ていないと答弁しました。重大かつ複雑困難な事件の捜査、公判の対応のために、余人に代え難いと定年延長を閣議決定した根拠も、検察庁法改定案特例規定の立法事実もないことはもはや明確です。いずれも撤回すべきです。以上、法務大臣、お答えください。
 コロナ禍で売上げが激減した中小企業に国が支払う持続化給付金が手続をしてもなかなか送られない、コールセンターがつながらないなど、倒産の危機に直面しながら一刻も早い給付を待っている業者から悲鳴と怒りの声が上がっています。
 この持続化給付金の七百六十九億円が一般社団法人サービスデザイン推進協議会に委託され、何と九七%の七百四十九億円が電通に再委託されていたことが明らかになりました。
 この協議会は、電通や、竹中平蔵氏が会長を務める人材派遣会社パソナ、IT業のトランスコスモスなどが二〇一六年五月十六日に成立しました。同じ日に、経産省からおもてなし規格認証の事業の公募が発表され、これに協議会が応募し、設立したばかりなのに、一者のみ認定機関として採択をされ、四千六百八十万円の補助金が交付されています。しかも、この協議会の定款をネット上で調べると、定款案の作成者は経済産業省の情報システム厚生課となっています。
 この協議会は、経産省が関与して設立されたのではありませんか。なぜ、実績もない協議会が選定をされ、補助金を交付されたのですか。
 その後、この法人は、今回を含め経産省の事業を十四件、千五百七十六億円受注していますが、法人の職員は僅か二十一人です。事務所の入口には、お問合せはコールセンターまでの張り紙があるだけで、ホームページもありません。代表理事は、応札の経過を含めて運営体制を一切知らないと述べています。法律で義務付けられている官報への決算開示を設立以来一切していなかったことも明らかになりました。その実態は、巨額の委託を受けるには余りにも乏しく、ずさんではないですか。
 経産大臣は、二日、電通が直接受注しなかった理由を、過去に、国の事業に応募したのに振り込み元が電通だったことで問合せが殺到したため、電通では直接受注しないことを原則としていると聞いていると述べました。
 つまり、この法人は、国の事業の委託費を電通や身内企業で分け合っている実態を国民から見えなくするための役割を担っているのではありませんか。
 再委託を受けた電通は、給付金支給業務をパソナ、大日本印刷、トランスコスモス社に外注しています。再委託先には、業務上知り得た情報についての守秘義務が課せられますが、これら外注企業には守秘義務は掛からないのではないですか。
 再委託、外注を通して、中小企業の経営実態に関する情報や確定申告の内容など、膨大な企業・個人情報が外注先に蓄積し、ビジネスチャンスにすることもできます。こんな形で個人情報が扱われていいのでしょうか。
 持続化給付金事業の全体像を明らかにするため、実施計画などの入札資料を国会に提出すべきです。以上、経産大臣の答弁を求めます。
 さらに、ゴー・ツー・キャンペーン事業でも事業費の二割、三千億円以上の事務委託費が見積もられており、同様の問題が起きると懸念が広がっています。作業を一旦中断し、根本的な見直しを求めます。
 以上、参議院が国民への責務として行政監視機能を発揮するために、真摯な答弁を求めて質問を終わります。(拍手)

   〔国務大臣高市早苗君登壇、拍手〕

○総務大臣(高市早苗君) 井上哲士議員からは、まず、参議院の行政監視活動への政府の協力についてお話がございました。
 本日の本会議を起点としてスタートする新たな行政監視の年間サイクルを始めとした今般の改革については、行政監視機能の強化に関する政府への要請事項として、去る五月十八日に参議院議院運営委員長から政府に対して要請がなされ、各府省にも伝達されております。
 以上の経緯を踏まえ、政府としては真摯に対応すべきものと考えております。
 次に、公文書の隠蔽や破棄が行政監視に妨げになるのではないかとのお尋ねがございました。
 行政文書については、公文書管理法の定めるところにより、各府省において適切に作成、保存が行われる必要があります。一般論として申し上げると、公文書の違法な隠蔽や破棄が行われれば、行政監視における事例や事案の確認に支障が生ずる可能性があると考えます。(拍手)

   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕

○財務大臣(麻生太郎君) 井上議員から、予備費についてお尋ねがあっております。
 新型コロナウイルス感染症につきましては、有効な治療薬またワクチンが開発されるまでの間に、第二波、第三波の可能性が排除できません。したがって、今後はある程度長期戦もあり得るということを見据えて、状況の変化に応じて臨機応変に対応する必要があるのははっきりしておると思いますね。
 新型コロナウイルス感染症については、諸外国で、制限を緩めた後、再び感染者が増加傾向に転じた例が確認されております。緊急事態宣言の解除後に事態が急変する可能性も、これは排除できません。一方で、補正予算の編成からその成立まで、ある程度の時間を要します。したがって、事態の急変に対し臨機応変に対応するため、万全の備えとして十兆円追加することといたしております。
 この予備費につきましては、予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいてこれを設けることができるとされておりますので、その上で、その支出については事後に国会の承諾を得る仕組みとなっております。今後、第二次補正予算の一部として、国会で御審議をいただきたいと考えております。(拍手)

   〔国務大臣菅義偉君登壇、拍手〕

○内閣官房長官(菅義偉君) 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の記録の作成についてお尋ねがありました。
 行政文書の管理に関するガイドラインにおいて、懇談会について作成する議事の記録については、会議の態様等によっては発言者が特定されない形もあり得るものと承知しています。
 その上で、専門家会議の記録については、第一回の会議において、構成員に自由かつ率直に御議論いただくために、発言者が特定されない形の議事概要を作成するとの方針を構成員に説明をし、御了解をいただいており、以後この方針に沿って適切に対応いたしております。公表しております専門家会議の議事概要は、議論の内容が分かるように丁寧に作成されており、引き続き担当部局において適切に対応してまいります。
 黒川前検事長の処分についてお尋ねがありました。
 内閣が任命権を有する者については、懲戒処分を行うか否かも含め、通常は、まず所属府省の長として行政事務を分担管理する国務大臣が検討を行うことといたしております。黒川氏の処分については、法務省において必要な調査を行った上で、法務省及び検事総長として訓告が相当であると判断し、決定をしたものと承知をしています。
 検察庁を所管する法務大臣が、必要な調査を行った上で訓告が相当であるとの報告をしてきたものでありますから、私は、その判断を尊重して、異論がない旨の回答をしたのであります。(拍手)

   〔国務大臣森まさこ君登壇、拍手〕

○法務大臣(森まさこ君) 井上哲士議員にお答え申し上げます。
 まず、検察庁法改正案の策定過程に関する文書の作成等についてお尋ねがありました。
 本年三月、国家公務員法等の一部を改正する法律案について成案が得られましたので、法務省においては、そのうちの検察庁法改正部分について策定の過程を明らかにするため、必要な文書を作成しているところです。
 現在、担当部局において鋭意作業を進めておりますが、法案審査資料、関係省庁とやり取りをした文書等の整理に時間を要しているものであり、法案策定過程に御指摘のような問題はありません。必要な文書について、可及的速やかに作成したいと考えています。
 次に、黒川氏に対する訓告の処分についてお尋ねがありました。
 黒川氏が金銭を賭けてマージャンを行ったことは甚だ不適切であり、強い遺憾の意を覚えるものであって、検察に対する国民の信頼を損ねるものであることから、法務省としては、できる限り速やかに必要な調査を行うことといたしました。そして、法務省として必要な調査を行った結果、監督上の措置として最も重い訓告の処分と決定したものです。
 なお、法務省においては、黒川氏が約三年前から月一、二回程度金銭を賭けたマージャンをしていたことを事実として認定し、この事実も踏まえて、常習として賭博をしたものとは認められないと判断しており、黒川氏に対する処分後の報道があることを踏まえても、その判断は変わらないものと考えております。
 次に、国民の皆様からの信頼回復についてお尋ねがありました。
 法務省及び検察が適正にその役割を果たしていくためには、国民の皆様の信頼が不可欠です。しかしながら、今回の黒川氏の行動は甚だ不適切なものであり、法務省及び検察に対して国民の皆様から様々な御意見、御批判をいただいております。そこで、法務・検察行政刷新会議(仮称)を設置し、国民の皆様からの信頼回復に向けた議論や検討を行うことといたしました。
 黒川氏の勤務延長及び黒川氏に対する処分はいずれも適正に行われたものであり、また、検察庁法改正案の内容も適切なものであって、これらの適否を同会議の議題とする考えはありませんが、引き続き、様々な機会を捉えて丁寧に御説明してまいりたいと考えています。
 最後に、黒川氏の勤務延長や検察庁法改正案についてお尋ねがありました。
 黒川氏の勤務延長については、検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、具体的には、業務の継続的遂行に重大な障害を生じさせないため、定年後も引き続き勤務させることとしたものであり、この勤務延長は必要であったと考えております。
 また、御指摘の検察庁法改正案の規定については、社会経済情勢の変化及びこれに伴う犯罪の複雑困難化が進んでいる中で、公務の運営に著しい支障が生ずる場合があり、必要な規定であると考えております。
 他方で、黒川氏が辞職することとなり東京高検検事長のポストが空白となったため、最適な後任者を速やかに選任し、その結果、空白の期間は比較的短く、具体的な業務の支障が生じるまでには至らずに済んだものと承知しています。
 したがって、黒川氏の辞職によって具体的な業務の支障が生じていないことは、黒川氏の勤務延長の根拠を失わせるものではなく、また検察庁法改正案の規定の立法事実を否定するものではないものであって、御指摘は当たりません。(拍手)

   〔国務大臣梶山弘志君登壇、拍手〕

○経済産業大臣(梶山弘志君) 井上議員からの御質問にお答えをいたします。
 サービスデザイン推進協議会の設立への経済産業省の関与と、おもてなし規格認証事業の選定理由についてお尋ねがありました。
 当時のサービス産業担当の職員から聴取をいたしましたが、一般社団法人サービスデザイン推進協議会の設立に際し、協議会の定款案の作成に当省職員が関与した事実は確認できませんでした。また、おもてなし規格認証の選定においては、外部有識者の委員会で、サービスデザイン推進協議会が提案した実施体制案が必要な経験、実績を十分有する企業群によるコンソーシアム形式であることを確認しており、これを踏まえて、経済産業省としてもおもてなし規格認証を運営できると判断をし、補助金を交付したものであります。
 サービスデザイン推進協議会の実務実態と事業受託に際しての協議会の役割についてお尋ねがありました。
 この協議会は、平成二十九年度補正予算のIT導入補助金において六万二千八百九十三件の事業者への補助を執行するなど、事業実施能力を有する事業者であります。
 持続化給付金事業において、同協議会は事業全体の統括と振り込み関連業務を担っております。現在、協議会の職員は、各地の審査会場を直接訪問して行う監督や助言、感染症対策の観点から分散して業務を行っておりますが、このような状況下におきましても、一か月で百万件以上の給付を行っているところであります。その上で、協議会と外注先を含めた事業の実施体制について、個別企業の存在を隠す趣旨との疑念を払拭できるようにしっかりと説明をしてまいります。
 外注先の守秘義務についてお尋ねがありました。
 経済産業省とサービスデザイン推進協議会の間の契約において、協議会からの再委託先のみならず、その先の契約先も含めて、守秘義務を課すことを求める条項がございます。
 入札資料の国会への提出についてお尋ねがありました。
 持続化給付金の事務局事業の入札に係る資料につきましては、ノウハウなど競争上の地位を害するおそれがある部分について入札事業所の確認作業を行っているところであり、サービスデザイン推進協議会の契約書、サービスデザイン推進協議会からの提案書の確認を終え次第、週明けにも提出をさせていただきます。事業の全体像について疑念を払拭できるよう、しっかりと説明をしてまいります。(拍手)

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