○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
社会保障協定二件は、保険料の掛け捨てを解消する仕組み等を設けるものであり、必要な措置でありますので賛成いたします。
まず、香港の問題について外務大臣にお聞きいたします。
中国の全人代が先月二十八日、国家安全法制と執行機関の設立に関する決定案を採択をいたしました。中国本土で実施をされている政府への反逆活動などを禁止する国家安全法を、香港政府を介さずに香港に導入するものであります。昨年のデモに対する暴力的弾圧は看過できない人権の抑圧であり、今回の措置が一層強まることが懸念をされております。
この措置は、中国の国際公約である一国二制度を有名無実化するものであり、日本共産党はこの中国政府によるこの決定に強く抗議をし、香港への人権抑圧強化の動きを直ちに中止するということを明らかにしております。
中国政府は、この香港問題について、中国の内政であり、いかなる干渉も許さないと主張をしております。しかし、現代の国際社会では、人権侵害はもはや単なる国内問題ではなくて、重大な国際問題だと思います。
人権侵害が国際問題だということへの政府としての見解、そして、今回の事態について、憂慮の表明ということにとどまっておるわけでありますけれども、私はより明確な強い立場を明らかにするべきだと考えますけれども、それぞれいかがでしょうか。
○外務大臣(茂木敏充君) 全人代におけますその審議の状況であったり香港の情勢に関する我が国の強い懸念は、これまでも外交ルート等を通じて中国にもしっかりと伝えてまいりました。
そうした中で、全人代において香港に関する決議が国際社会や香港市民が強く懸念をする中でなされたこと、及びそれに関連する香港の情勢、深く憂慮をいたしております。
香港は、我が国にとって緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーでありまして、委員御指摘のように、一国二制度の下に、自由で開かれた体制が維持をされ、民主的、安定的に発展していくことが重要であるというのが我が国の一貫した立場であります。中国側には、このような我が国の考え方を伝えてきておりますが、五月十八、いや、二十八日には、私や官房長官から、決議後直ちに表明するとともに、自分の指示の下、秋葉次官が孔鉉佑駐日中国大使を招致してこの旨を伝達いたしました。
引き続き、関連する状況を注視しつつ、関係国と連携をし、国際社会が一体となって中国に働きかけを行っていくことが重要だと考えております。
○井上哲士君 はっきり明言はありませんでしたが、これ、人権侵害というのは国際問題だという立場で、強い対応を引き続き今後求めてまいります。
次に、米軍基地のPFOS流出事故の問題でお聞きをいたします。
今国会三回目の質問になるんですが、沖縄の米軍基地で、発がん性が疑われる有機フッ素化合物を含む泡消火剤が使われて、基地周辺の河川などから度々高濃度で検出をされ、地域住民の不安を広げてきました。沖縄県が立入調査を要求してきたにもかかわらず米軍がこれを拒否し続ける中で、今年四月の十日、米軍がこの普天間基地で泡消火剤二十二万七千百リットルの漏出事故を起こして、このうち基地の外に十四万三千八百三十リットルも流出をいたしました。沖縄県が立入調査を求めたにもかかわらず、これが行われないまま大規模な流出事故が起きたということで、米軍と日本政府の責任は極めて重いと言わなければなりません。
私、四月十六日のこの委員会で質問した際に、河野防衛大臣は、事故は住民に不安を与える重大な事案だとした上で、普天間飛行場の内外の環境対策が実効的なものとなるよう、米軍に環境補足協定に基づく立入りを強く求めており、現在、現地確認などの立入調査を直ちに実施するべく最終的な調整を行っていると、こういう答弁でありました。
しかし、環境対策が実効的なものとなるよう米軍が十分な調査に応じたと言えるのかという問題であります。立入りは、この事故から十一日も後でありました。しかも、汚染された現場の土壌の採取は米軍が拒否をして、その後、一部について米軍から提供するという形にもなりました。米軍はなぜこれ拒否したんでしょうか。
○防衛省地方協力局長(中村吉利君) お答え申し上げます。
今般のPFOSを含有する泡消火剤の漏出事故につきましては、米側も大変深刻に受け止めているものと考えております。
このため、日本側による環境補足協定に基づく立入り要請に対しまして、過去に先例のない中で、沖縄県ですとか宜野湾市関係者の調査参加を含め受入れをしているところでございます。このため、全体として見れば、米側は日本側の要請に対して真摯な対応を行ってきたと認識をしております。
その上で、御指摘の土壌のサンプリングの件につきましては、米側から、漏出したPFOSを含有する泡消火剤の流出経路が全てコンクリートに覆われていたことを踏まえ、排出口沿いの土壌には浸透していないとして、当初日本側が求めていたサンプリングの必要性に対して疑問が呈されたことは事実でございます。しかしながら、その後、米側は日本側の主張を尊重して、御指摘の土壌のサンプリングを含め計五回の立入りが実現をしたところでございます。
防衛省としては、引き続き、今般の流出事故に対する住民の方々の懸念を払拭するべく、関係自治体、関係省庁及び米側と密接に連携をして適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
○井上哲士君 先ほども言いましたが、十一日後だったんですね、まず立入りが。時間を置かず必要なサンプリング採取等を行って現場を正確に把握することが必要でありまして、受け取った土地で済ませるような調査であれば環境対策が実効的なものとなるかという問題だと思うんですね。地元紙など、客観性、透明性を欠き、科学的な調査とは呼べないと、こういう指摘もされております。
そこで、防衛大臣、お聞きいたしますが、米軍基地や関連施設のある十五都道府県でつくる渉外知事会が、五月二十七日に、泡消火剤の基地外への漏出事故を受けて、外務、防衛の両省に緊急要請書を提出をしております。沖縄県が求めた調査箇所全てではサンプリング調査が行われなかったことを挙げて、地元自治体の意向を踏まえた立入調査の実施をアメリカ側に求めるよう強く要請するとしております。
環境対策を実効的なものにするという大臣の答弁にも沿って、今回のような自治体が求める調査が拒否されることなく確実に米軍に協力させるという仕組みを、この要望も踏まえてすることが必要と考えますけれども、防衛省はどう対応されるんでしょうか。
○防衛大臣(河野太郎君) 今回、国、沖縄県並びに地元自治体、納得した上で立入りをし、必要な、分析に必要なサンプリング全て行うことができたと考えております。
今後は、このサンプリングしたものをしっかり分析をし、またアメリカの方が、米軍の方がこの基地のシステム、その調査をしているところでございますので、それらをしっかりと併せて今後の対応について議論してまいりたいと思います。
○井上哲士君 納得されたと言いますけど、沖縄県が求めた調査箇所全てで行われたわけではないんですよ。アメリカはそこしか認めないという中で行われたという事態であります。
そこで、環境省、お聞きしますけれども、環境省は五月二十六日に、河川や地下水などに含まれる有機フッ素化合物について、モニタリングを行う要監視項目と位置付けて、合計で一リットル当たり五十ナノグラムとする指針値を決定をいたしました。この根拠はどういうことでしょうか。
○環境省 水・大気環境局長(小野洋君) お答え申し上げます。
水環境に係る目標値でございますけれども、国内あるいはWHO等の国際機関における毒性に関する科学的知見の集積状況等を踏まえて設定することとしております。
PFOS及びPFOAにつきましては、各国、各機関において毒性評価の値にばらつきがあるということから、現時点では環境基準等の毒性学的に確定した数値を設定することは困難な状況であるため、暫定的な目標値を指針値、暫定指針値という形で設定したところでございます。
具体的には、各国、各機関の毒性評価の値で妥当と考えられるものの中から、安全側の観点に立ちまして最も低い耐容一日摂取量の値を採用し、中央環境審議会水環境部会等における専門的な議論を経て、先ほど委員御指摘ございました一リットル当たり五十ナノグラムという値を算出したものでございます。
○井上哲士君 要監視項目に位置付けた以上は、それを担保することが必要だと考えます。
米軍基地内の環境モニタリング調査が過去行われておりましたけれども、環境省は、環境影響を広範に把握できるよう調査方法を見直したとして、二〇一四年以降はこれが行われておりません。
それで、私は今回の事件は基地内での調査の必要性を改めて浮き彫りにしたと思うんですね。
基地内の環境モニタリング調査の再開を求めるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(小野洋君) 在日米軍施設・区域の周辺地域における環境調査でございますけれども、米軍施設・区域に起因する環境問題の未然防止を図ることを目的として、毎年環境省において実施しております。
委員御指摘ございましたけれども、当該調査は、平成二十五年度までは施設・区域内において実施されておりましたが、平成二十六年度からは調査方法を見直し、施設・区域周辺で調査を実施しております。
環境省といたしましては、この施設・区域周辺での調査結果や設定した目標値、今回設定した暫定の目標値を踏まえながら、関係省庁と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 こういう事態になって、しかも要監視項目に位置付けながらモニタリング調査の再開を求めるという態度を表明しないんで、本当に環境を守れるのかなと私は疑問に思います。
防衛大臣に更にお聞きしますが、三月に質問した際には、このPFOS、PFOAへの環境への影響について、人が継続的に摂取した際の健康影響が生じない限度額が確定していないことから、引き続き、リスクに関する知見の集積が必要な物質だとして、環境補足協定の環境に影響を及ぼす項目に該当するかは慎重に検討する必要があるというのが政府の答弁でありました。
今回水質指針値が定められた以上は、今後このPFOS、PFOAは、この補足協定で言う環境に影響を及ぼす事項に該当するものとして対応すると、こういうことでよろしいでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 今回、日本政府による暫定目標値が設定をされましたので、この環境補足協定の議論の中で当然この数字を使っていくことになろうかと思います。
○井上哲士君 これまでの答弁では、このPFOS、PFOAの汚染についての基地内立入調査についても、沖縄県の要望を米軍に伝えるという対応でありましたけれども、今後は政府としても求めていくということでよろしいですか。
○国務大臣(河野太郎君) それは、時々の情勢に応じて、政府として適切に対応してまいります。
○井上哲士君 三月の質問の際には、アメリカはちゃんと対応している、環境基準もないと、こういうことで、補足協定に該当するとは認めなかったわけでありますけれども、その後、昨年十二月の事故で実は基地外に出ていたということが報告書で明らかになりました。この四月の事故があった、そして環境の指針も決まったということでありますから、従来と踏み込んだ対応を是非行っていただきたいと思います。
沖縄県は、地位協定の見直しの要請で、米軍の活動に対して環境保全に関する日本の法令の適用を求めておりますし、ヨーロッパのように地元自治体の立入り権の明記も必要だろうと思います。あわせて、この地位協定の抜本改定も求めまして、質問を終わります。