○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
イージス・アショアの計画が突然停止となりました。地元住民と地方自治体が粘り強い反対の運動を続けてまいりましたが、この間のずさんな調査に怒りが広がって、さらにブースター落下問題で、安全だとしてきた従来の説明が破綻をしたというものであります。配備ありきの中で、地元自治体と住民は振り回されて多大な負担を強いられてきました。
大臣は、山口、秋田両県を訪問されました。昨日の秋田県の訪問では、知事は、住民説明会での様々なトラブルや二転三転する説明と、防衛省のこれまで二年以上の対応は大変ずさんだったと述べて、計画撤回の早期判断を求めておられます。この言葉をどう受け止めているのか、そして、この言葉どおり早期の撤退を決めるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○防衛大臣(河野太郎君) 先ほどから申し上げているとおり、二〇一七年八月、九月にかけて北朝鮮の弾道ミサイルが毎週のように発射され、日本の上空を弾道ミサイルが飛び越えていく、そういう状況が起きたわけでございます。国民の命あるいは平和な暮らしを守るためにどうするかという議論の中で、二〇一七年の十二月、イージス・アショアを配備をする、そういう政府としての決定を行いました。
イージス・アショアの配備場所の検討の中で、山口県、そして秋田県にイージス・アショアを配備することによって、この日本の国土全域を最も効果的に防護することができる、そういう判断がなされ、山口県のむつみの演習場、秋田県の新屋演習場が候補地として選定をされたわけでございます。
地元の皆様への説明会の中で、この第一段ロケットに当たりますブースターを、むつみの場合には演習場の中に、新屋の場合は海上に確実に落下させる、そういう御説明をしてきたところでございます。
当初の認識は、ソフトウエアを改修することによってこのブースターをしっかりと落下させることができるという認識でございましたが、日米間で協議をする中で、ソフトウエアの改修だけでは確実にむつみの演習場内に落下させると言い切れない、秋田の場合は、再調査、そしてゼロベースで検討をするということでございましたので、詳細にはあれでございますが、むつみの場合にはハードウエアの改修をしなければ演習場の中に確実に落下させると言い切れないということが分かりました。
そのためには、恐らくSM3ブロックⅡA、日本側で一千百億円、アメリカで恐らく同額あるいはそれ以上の開発費を使っております。また、ブロックⅡA開発期間十二年ということがございました。
今回もそれに近い改修が必要になる、二千億の費用と十年以上の歳月を掛けてこのブースターをコントロールをする、これはなかなか合理的とは言えない、そういう判断をするに至りまして、これまで地元の皆様にはブースターを確実に演習場に落下させる、そう申し上げてきたところでございますので、防衛省としては、このイージス・アショアの配備のプロセスを停止をする、そういうことを申し上げ、金曜日、日曜日に山口県と秋田県に私出向きまして、おわびと御説明を申し上げてきたところでございます。
この二〇一七年の十二月の決定は、国家安全保障会議と閣議による決定でございますので、防衛省としてまずイージス・アショアの配備のプロセスを停止をしたことを国家安全保障会議に報告をし、そこで議論をしていただきたいと思っております。
防衛省としては、なるべく速やかに国家安全保障会議の開催をしていただく、そういうことを求めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 イージス・アショア、当時の中期防には盛り込まれておりませんでしたけれども、二〇一七年、トランプ・アメリカ政権から、米国本土防衛のために導入を求められました。十一月にトランプ氏が訪日をして、重ねて米国製武器の大量購入を求めるという中で、直後の十二月に閣議決定をされたものです。
それで、今、計画停止の理由として、現状ではブースターが演習場内や海に確実に落下する保証がないというふうに言われました。当時はソフト改修で可能と考えていたと言われますが、当時がいつのことなのか、今日の議論でもはっきりしないわけですね。
まず聞きますけれども、このSM3ブロックⅡAは共同開発ですけれども、ブースターを安全な場所に落下させるということは、このイージス・アショア導入に当たっての要求性能にちゃんと含まれていたのでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) イージス・アショアを配備するに当たって、このブースターの落下についても、何らかの措置をとることによって安全を担保することが必要だ、そういう認識であったと考えております。
○井上哲士君 契約するわけでありますから、明確に要求性能に入れていたのかどうかということをお聞きしています。入っていたんでしょうか。
○防衛省 地方協力局長(中村吉利君) お答え申し上げます。
大臣から御答弁申し上げましたとおり、導入の決定当時におきましても、ブースターの落下に関する影響について何らかの安全措置が必要との認識でございました。
ただ、この要求性能といたしまして、演習場内に確実に落下させるということは書き込まれていたということではございません。
○井上哲士君 当初の要求性能にはないんですね。
元々、まともに認識をしていなかったんではないか。
河野前統幕長が、六月十七日付けの日経でこういうふうに言われています。ブースターの落下については当時は焦点になっておらず、地元調整の中で出た話だと言っているんですね。実際、一八年六月の防衛省のこの住民説明の資料を、私、手に持っていますけど、この中にはレーダーの電波の住民への影響についてしか書いていないんです。小野寺大臣がハワイに行ったことも書いてありますが、そこでもレーダーのことしか書いていないんですよ。
結局、この一八年六月の住民説明会で住民から危惧の声が出て、そこからアメリカと具体的な協議を始めたということではないんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 二〇一八年の八月の、八月だったと思いますが、説明会で、ブースターの落下について、演習場の中に落下させるという御説明をしたというふうにしたんだと思います。それまでの間に日米間でこのブースターについて協議を始めたというふうに私は認識しております。
○井上哲士君 説明では、一八年六月以降具体的協議を始めたというのが防衛省の方の説明でありました。しかし、その後も、この危険性に対する認識に相当乖離があるんですね。
十月の住民説明会の席上で防衛省の課長が、このブースターの基地の外への落下、陸上への落下について、二、三段目が落ちる可能性はゼロでないと、そうであったとしても、弾道ミサイルが我が国を直撃することに比べると可能性も被害も比べ物にならないと、こういう発言をいたしまして、住民と、町民の激怒を買ったんですね、自分たちの安全はいいのかと。
当時はやっぱりブースターの落下について危険性はこの程度の認識だったというのが実態だったんじゃないですか。
○国務大臣(河野太郎君) 防衛省として、イージス・アショアの配備に当たっては周辺住民の皆様に影響がないように配備、運用をすることが大前提と考えており、配備候補地の住民を犠牲にして配備するという考えは全くございません。
こうした考えは当時も今も変わっておりません。
○井上哲士君 この発言が非常に大きい怒りを呼びました。
当時も、ちょうど一年前のこの委員会などでも、これは不適切な発言だったと、こういう謝罪の言葉もあったんですね。しかし、私は、その後の事態を見れば、こういう認識だったのだとしか思えないわけです。
先ほどありましたように、当初の説明資料には全くこのブースターの問題はありません。住民の不安が広がる中で、二〇一九年の五月の住民説明会で安全だという説明がされるようになります。手元には十二月の資料を配付しておりますけれども、この電柱が、分かりやすいために電柱柱の絵がありますけれども、五月は、これ以外は全く同じ資料が一九年五月に配られました。【配付資料200622.pdf】
この中で、ブースターを演習場内に落下させるための措置をしっかり講じますとして三つの計算方法を示して、これらを基にブースターの落下位置をあらかじめ予測することができますとしております。
この三つの計算方法で落下位置を予測することができるというのは、アメリカと合意した内容だったんでしょうか。そのアメリカ側の判断はいつ日本に示されたんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) ブースターの落下、これをソフトウエアの改修でむつみ演習場の中に確実に落下させることができるという認識は、日米協議の中でそういう認識に我が方として至ったものでございます。
○井上哲士君 私の質問は、この三つの計算方法で予測することができるとこの説明の紙に書いてある中身はアメリカ側と一致している内容だということなんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 日米で協議をする中で、ソフトウエアを改修することによってブースターを演習場の中に落下させることができるという認識に立ったものでございます。
○井上哲士君 それはいつ日本に示されたんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 日米間で、イージス・アショアの配備に関しては、技術的なことを含め、緊密に協議をしてきたところでございます。その協議の中で我が方としてそういう認識に立ったということでございます。
○井上哲士君 協議の中で我が方としてそういう認識に立ったと言われるんですけど、果たしてアメリカ側がそういう、確実に予測できるというふうに認識していたのかどうかということなんですね。大体、イージス・アショアというのは、住宅地周辺への配備を予定していないんじゃないかと。
秋田魁新報が一八年九月二十九日付けで、ルーマニアにあるアメリカのイージス・アショアの基地を訪問して司令官を取材したことを報道しております。それによれば、アメリカ軍はルーマニア政府に対して基地周辺にブースターが落下する危険性を説明しているというんですね。そして、取材に対して司令官は、ブースターの落下位置を制御する難しさについてこう述べています。統計に基づく落下予測はあるが、一〇〇%想定の範囲内に収まるとは言えないと。最も確実な安全策は基地の周りに住宅を造らないことだと。これが世界で唯一実戦配備されているこのイージス・アショアの米軍の基地の司令官の言葉なんですよ。
一〇〇%の予測はできないと、安全なのは基地の周りに住宅を造らないことだと、これがむしろアメリカ側の認識だったということではないですか。
○国務大臣(河野太郎君) アメリカ側の認識についてお答えする立場にございません。
○井上哲士君 アメリカと協議して、ソフトだけでできるとおっしゃるから、本当にそうだったのかということを私はお聞きしているんですよ。
そもそも、こういうアメリカ側の認識にかかわらず、この一九年の五月の説明会以降、防衛省は安全を明言するようになります。直後の六月三日のこの決算委員会で当時の我が党の仁比議員に対して岩屋大臣は、演習場内に落ちるような運用を行ってまいりたいと明言をされました。河野大臣も十二月に、山口県知事らの質問に、風向き、風速を把握し、ブースターの落下位置を計算の上、迎撃ミサイルの発射を正確に制御することは可能だと明言をされました。十二月十三日の会見でも、むつみ演習場は安全に配備、運用ができる場所と認識していると述べられております。
ところが、お手元のこの配付資料を見ていただきたいんですけど、注として、見えにくい字でありますが、アメリカ政府と連携しながら検討、分析を引き続き進めてまいりますと、こう書いているんですね。要するに検討途中だということを書いているんですよ。検討途中なのにもかかわらず、なぜ安全な配備、運用ができるんだと、こう明言をされたんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 当初、ソフトウエアの改修でブースターを演習場内に落下させることができると、そう認識をしておりました。
○井上哲士君 それは検討途中と書いているじゃないですか、自分たちが。果たして、そういう、じゃ、検討ができる状況にあったのかということなんですね。
イージス艦の導入にも関わった海上自衛隊の元海将香田洋二氏が一九年五月二十八日のNHKでこういうふうに述べているんですね。ブースターというのはミサイルを加速するためのロケットで、誘導する機能はないので、それを特定の場所に落とすということになると相当なシミュレーションを重ねて検証する必要があると。しかし、新型迎撃ミサイルは迎撃能力のテスト中で、ブースターがどこに落ちるかという検証の段階には至っていないと。これ、五月の時点ですよ。
つまり、当時、岩屋大臣が安全な運用ができるという発言をした時点で、そもそもまだ検証の段階に至っていないという状態だったと。にもかかわらず、何で安全な運用ができる、ソフトの改修でできると、検証もせずにどうしてこういうことが断言をできたのかということをお聞きしています。
○国務大臣(河野太郎君) その方がどういう理由でそういう発言をされたかはよく分かりませんが、防衛省としては、ソフトウエアの改修で演習場内に落下させることができると認識をしておりました。
○井上哲士君 香田さんは、安保法制のときに与党推薦の地方公聴会にも来られた方であります、元海将と。その方がこういう発言をされているんですね。
何でこういう状況で、ソフトの改修で運用できると日米間のことで判断ができたのか。そもそもアメリカ側は、先ほど来いろいろ挙げました、こういうことをそもそも想定しないという中でそういう判断に本当に立っていたのかと。私は、日米間でいつ、どのような協議が行われて、アメリカからどういう判断が下されたのかと、そのことをきちっと資料にして提出をしていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) イージス・アショアの能力について公にすることは差し控えたいと思います。
○井上哲士君 能力じゃありません。ブースターの安全問題についてどのような協議が行われてきて、アメリカからどのような判断が下されたのかを示していただきたいと言っているんです。
○国務大臣(河野太郎君) 技術的な協議の内容を外に漏らすことは日米間の信頼関係を壊すことにもなりますので、差し控えたいと思います。
○井上哲士君 確定的でないことを安全かのように、そしてそれが日米間の合意であったかのように住民に言っていることの方が国民との信頼関係壊しているんですよ。だから私聞いているんですね。こういうことを、先ほど甘かったという答弁もありましたけど、それで済ませたならば、これから防衛省が言うことを信用できなくなりますよ、住民は。本当にきちっと検証が行われたのか。だから私は求めているんですね。ブースター落下の危険性などを考慮しないままにこの住宅周辺に設置計画を決めて、住民から安全について危惧の声が広がったら、検証の段階にすら至っていないにもかかわらず安全だと断言をして、結局住民を欺いて進めようとしてきたと。そのことの責任は極めて重いと思います。
それで、なぜこういうずさんな計画が合意になった、行われたのか。冒頭述べたように、アメリカからは本土防衛と米国製武器の爆買いを求められる中で導入決まりました。しかも、その迎撃能力は限られていて、多弾頭とか超高速度の弾道ミサイルには対応できないという指摘もされてきたわけですね。
安倍政権との関係も深いアメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所が昨年五月、太平洋の盾、巨大なイージス艦としての日本と、こういう題名する文書を発表いたしました。要するに、日本が巨大なイージス艦として盾になってアメリカを守るんだと、それでアメリカの財政負担も減るんだと、こういうことを言ってきたんですね。
こういうまさに要求に応えたものだから、とにかく配備ありきだということで、ずさんな説明で進められてきたと、こういうのが実態ではないでしょうか。いかがですか。
○国務大臣(河野太郎君) アメリカのシンクタンクが発表したことについてお答えする立場にございません。
○井上哲士君 このシンクタンクは自民党や政府とも大変深い関係があるところでありますし、アメリカの下院の公聴会でもアメリカの、アメリカ軍太平洋軍の司令官が、イージス・アショアの配置によって米軍の負担が減るんだと、こういうことをはっきり述べているんですよ。こういうことがあるから、結局まともな説明なしに強引に進めようとしてきたと。
こういうことに対して明確な説明をして、停止ではなくて一刻も早く撤退という決定をすることを強く求めまして、時間ですので質問を終わります。