国会質問議事録

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倫理選挙特別委員会(町議選に供託金制度を導入する公選法改正案/反対討論)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 法案は、全国町村議会議長会が議員のなり手不足の解消などの理由で求めてきた選挙の公営化の拡大について、各自治体の条例によって町村でも選挙用自動車やポスターの費用などを公費負担することを可能にするとともに、選挙公営と供託金はセットだとして、これまで供託金のない町村議員選挙にも導入をするものであります。
 まず、経緯について自民党提案者にお聞きいたします。
 全国町村議会議長会は、議員のなり手不足に関して、重点要望として選挙公営の拡大と被選挙権の引下げを掲げてきました。さらに、予算要望では、戸別訪問を解禁し、選挙の活性化と自由化を図ることを求めてまいりました。供託金の導入は求めておりませんでした。
 ところが、昨年十一月、全国大会の開催に合わせて行われた自民党幹部の懇談会、その席上では同様の要望をされたんですが、その翌日の全国大会における重点要望の中で、初めて供託金制度の導入を図るとともに公営拡大をという要望に変わりました。その後町村議長会の役員の皆さんが自民党本部に要請に行っておりますけれども、その際に、選挙公営の拡大に当たっては供託金制度の導入も受容する考えであると表明しましたとサイトに書いているんですね。受容する、つまり、ほかから言われて受け入れたということであります。
 町村議長会が供託金導入を要望したこの全国大会の前に、選挙公営の拡大は供託金制度の導入が必要とする自民党の意向が伝えられたということではありませんか。

○衆議院議員(小此木八郎君) 小此木でございます。お疲れさまでございます。
 今委員が言われました昨年の十一月十三日に第六十三回の町村議会議長全国大会が行われまして、そこでまず、町村議会議員選挙における供託金制度の導入、選挙公営の拡大及び選挙運動用ビラの頒布解禁をその内容に含む重点要望を取りまとめられたものと承知しております。
 その後、十九日に我が党の岸田政務調査会長、そして、今日おられる逢沢一郎選挙制度調査会長としてその要望を受けました。一月になりましてから選挙制度調査会の総会を開きまして、今申し上げたことについての要望を総会として受けたということであります。
 これに至る経緯でありますが、少し紹介いたしますと、平成二十九年の六月だと思いますけれども、地方議会議員選挙におけるビラ頒布解禁に係る改正法制定時に我が党議員提案者から、町村議会議員選挙におけるビラ頒布、公営制度や供託金の在り方などを、他の制度との整合性も含めて、町村議会の声も聞きながら総合的な見地から検討を進めていくという答弁が、平成二十九年に我が党の議員からこれは確かに発信をされました。
 全国町村議会議長会においてそのような総合的な課題についてよく議論していただき、議長会の御判断として要望を取りまとめていただいたものと受け止めておりまして、自民党が供託金の制度の導入について何らかの意向を示したということでは、そういう受け止めはしておりません。

○井上哲士君 今も紹介ありましたけど、あの答弁も自民党の提案者でありましたし、そもそも、自ら進んで決めるときには受容という表現は使わないんですね。
 衆議院での自民党議員の質疑でも、選挙公営に当たって、全国町村議会議長会におきましては供託金の導入も併せて決断をされましたと、こう言われました。これは、やっぱりセットでないと駄目だという、そういう意向を受けて決断を迫られたというのが経緯ではないかと思うんですね。しかし、私、供託金の導入というのはなり手不足解消にも逆行すると思うんですね。
 総務省、お伺いしますけれども、選挙公営、供託金、それぞれの制度が設けられた目的と趣旨は何でしょうか。

○政府参考人(赤松俊彦君) お答え申し上げます。
 まず、選挙公営制度についてでございますが、金の掛からない選挙を実現するとともに、候補者間の選挙運動の機会均等を図る手段として採用されているものと承知をしております。
 供託金制度についてでございますが、真に当選を争う意思のない者あるいは売名のみのための立候補などを防止するためのものとして設けられているものと承知をしております。

○井上哲士君 今答弁ありましたように、二つの制度は趣旨、目的を異にした別々の制度なんですね。衆議院の質疑でも、自民党の提案者も、選挙公営制度と供託金制度にはそれぞれの趣旨があるのは事実ですと明確に認められました。
 一方、これまでは両者が関連付けて議論をされてきたという経緯も紹介があったわけですが、関連付けて議論されてきたということと、趣旨の違う全く別の制度が必ずセットで改正されなければならないという論拠には私はならないと思うんですね。
 今年三月に出された全国都道府県議会議長会の第四次都道府県議会制度研究会の報告書でも、供託金と選挙公営は関連があるとされているが、別のものとして考える必要があると明記をしております。大体、日本のような多額の供託金を持っている国はありません。制度がない国もありますし、カナダは違憲判決が出てやめました。金を持っている人でなければ選挙に出れないという立候補の阻害要因に私はなってきたと思うんですね。
 そこで聞きますけれども、総務省、なぜ町村議会選挙についてはこれまで供託金制度がなかったんでしょうか。

○政府参考人(赤松俊彦君) お答えをいたします。
 供託金制度でございますけれども、昭和三十七年に町村長に供託金制度が設けられております。この際の議論を見ますと、町村議会議員選挙については候補者が乱立するといった状況ではなかったことから供託金制度が設けられず、現在に至っているものと承知をしております。

○井上哲士君 つまり、供託金制度の趣旨に照らして、町村議会選挙では導入しなくてはならないような乱立状況がなかったということなんですね。
 そうすると、今回この供託金を導入するに当たって、町村議会選挙で候補者の乱立が起きていると、こういう立法事実が何かあるんでしょうか。

○衆議院議員(平井卓也君) 供託金制度と公営とは目的が違うという話がありましたが、まず、今回の法律は、町村議会議員選挙における立候補に係る環境の改善ということで、公営拡大と供託金導入を、表現としては全体として行うということを立法の趣旨とさせていただいております。

○井上哲士君 つまり、乱立状況ができているというような立法事実はないわけですよ。
 二つの制度、つまり、供託金については乱立の防止と言われました。これに沿うような事実は起きていない。ところが、この選挙公営については、先ほどもありましたけれども、町村合併などで選挙運動用自動車が必要になってきたとか、こういう事実があるんですね。それを無理やりこれがセットだといってやっていることに私は無理があると思うんですね。しかも、これ、立法事実がないだけじゃないんです。逆行なんですよ。
 先ほど紹介した都道府県議会制度の研究会報告書は、供託金について、立候補しやすい環境整備を行う観点から金額を見直す必要があると述べております。さらに、その中で、特に若者や女性にとって供託金がどのような影響があると述べていますか。総務省、御紹介ください。

○政府参考人(赤松俊彦君) 御指摘がございました全国都道府県議会議長の下に学識経験者で設置をされてございます、平成二年三月三十一日に都道府県議会制度研究会報告書というのが出されております。
 その中で、供託金につきましては、「供託金は、いわゆる「泡沫候補者」の乱立防止を狙いとした制度であるが、女性や若者等にとって立候補の際に要求される供託金の負担が大きなハードルになっている。立候補しやすい環境整備を行う観点から、金額を見直す必要がある。」との報告がなされているものと承知をしております。

○井上哲士君 自民党提案者にお聞きしますけれども、特に女性や若者には立候補のハードルになっているというこの報告の指摘をどのように受け止めていらっしゃいますか。

○衆議院議員(逢沢一郎君) まず、都道府県議会と町村議会、それぞれの選挙では異なる課題がある、そういう認識を私どもは持っております。
 今般、全国町村議会議長会においては、町村議会議員選挙における供託金制度の導入、そして選挙公営の拡大及び選挙運動用ビラの頒布解禁をその内容に含む重点要望を自主的に取りまとめられた、そのように私どもは受け止めております。
 その供託金でありますけれども、その額の設定、先ほど答弁を同僚議員からさせていただいたわけでありますけれども、他の地方選挙における供託金額とのバランスを十分私どもは勘案をいたしました。そして、合理的な額を設定をさせていただいたと受け止めております。また、真摯に当選を争う候補者にとっては供託物没収点も高いとは言えない、そういう認識を是非お互いが共有をしたいというふうに思います。以上のような供託金制度の具体的内容において、若者、そして女性を含めた立候補者の過度な負担とならないよう十二分に私どもは配慮をし、法律案を提出をさせていただきました。
 また、そもそもの前提といたしまして、本法案は町村の選挙における選挙公営の対象拡大と町村議会議員選挙における供託金制度の導入を全体として行うものでございます。これによりまして、立候補者の選挙費用の負担軽減と選挙運動の充実を図ることが全体として可能になる、そして若者や女性を含めた多様な人材がより立候補しやすい環境が整備される、そのように認識を持っているところであります。是非御理解をいただきますようにお願い申し上げます。

○井上哲士君 そういう認識では困るんですよね。
 今ありましたように、女性や若者にとってはハードルだと、これ、都道府県だけじゃないんですよ。市議会議長会も供託金の引下げを求めていらっしゃいます。女性や若者にとって、まとまったお金を準備するのがどれだけ大変か。没収でなくて返ってくると言われますけど、それは、特に新人の人には本当にそうなるか不安があるんですよ。明確にハードルになっているんですね。だから、一方で公営拡大をしてなり手不足解消といいながら一方でハードルを上げる、これが私は全く逆だと言うんですね。
 しかも、供託金は全国一律に導入されますけれども、公営の拡大はそれぞれの町村で条例を作る必要がありますけれども、市区議会議員選挙の選挙公営の実施状況は今どうなっているでしょうか、総務省。

○政府参考人(赤松俊彦君) お答えを申し上げます。
 まず、一点訂正でございます。先ほどの答弁で、全国都道府県議会議長会の報告書でございますが、平成二年と申し上げましたが、令和二年に出されたものでございます。申し訳ございません。
 お尋ねの市区議会議員の公営の状況でございます。令和元年十二月三十一日現在の状況を申し上げますと、市区八百十五団体ございます。まず、選挙運動用自動車の使用に関わるものでございますが七百四十三団体、次に、ビラの作成に関わるものが六百五十団体、選挙運動用ポスターの作成に関わるものが七百五十七団体で制定をしてございます。また、選挙公報の発行に係るものでございますが、これにつきましては七百五十団体で制定をされております。

○井上哲士君 数だけ言われましたけれども、制定していないところは、選挙運動用自動車で九%、ビラの作成では二〇%、ポスター作成では七%なんですね。そして、今公報について言われましたけれども、選挙公報、これ町村議会も条例でできますけれども、未制定なのは、市議会は八%ですけど町村議会は五二%なんですね。財政の理由とかいろんなことがあるわけですよ。
 ですから、これ条例で町村もやれといっても、条例しないところが相当出てくる可能性もあるわけですね。そうしますと、供託金だけは上がる、しかし公営はされないと、こういうことが起きるわけですよ。これについてはどうお考えなんですか。

○衆議院議員(小此木八郎君) これは見解の相違があるかもしれませんけれども、供託金という制度の中で、やはりある程度法定の得票を取っていただければこれはお返しをするという制度であるということと認識しております。
 今回の法案は、町村議会の選挙における選挙公営と供託金に関して市と平仄を合わせることとするという考え方を持っておりますし、そもそも、条例による公営の制度は、各地方公共団体における選挙の実態や財政の状況を総合的に勘案して、地域の実情に応じ自主的に判断して選択できるようにすることが適当であるとの考えに基づくものであって、人口規模や選挙の実態が様々な町村にふさわしい制度と考えております。
 総務省が先ほど答えた数字もありますが、委員はこれはまだまだ足りない数字だという御見解かもしれませんが、八百十五団体のうちあのような数字でございますので、町村においても多くの地方公共団体で公営を導入していただけるもの、そしてあわせて、供託金、公営選挙の拡大として広がっていくものと期待をしているところでございます。

○委員長(山谷えり子君) 時間です。

○井上哲士君 時間ですので終わりますが、供託金だけが課せられて公費の負担が行われないという町村が出るということについては何の説明もありませんでした。こういうことは許されないということを最後申し上げまして、時間ですので終わります。

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