○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
まず、豪雨災害で亡くなられた方、また被災者の皆さんに心からお悔やみとお見舞いを申し上げ、人命救助に奮闘される全ての関係者の皆さんに心から敬意を表したいと思います。
イージス・アショアが、配備が突然撤回をされました。六月二十二日に参議院では決算委員会が開かれて、私も質問に立ちました。その中で、導入決定時にはこのブースターの安全問題というのは考慮されずに、要求性能にもなかったということ、住民説明会で危惧の声が出されてから米国と協議を始めたということを認めました。
そして、このソフトウエアの改修で確実に演習場内に落下させることができるという判断はアメリカからいつどのように示されたのかと聞いても、日米協議の中で防衛省としてそういう認識に至ったという答弁の繰り返しでありました。アメリカからの時期、内容を示すことができなかった。つまり、トランプ氏の米国製兵器の大量購入の要求に応えて、とにかく配備ありきでずさんな説明ややり方をしてきたことが破綻をしたということだと思います。
決算委員会では、この経緯等を検証し、報告をするという決議がおとつい上がりました。今日の理事会でも協議になりましたけれども、是非これ、当委員会にも提出を求めるということで筆頭間協議になっておりますけれども、改めて私からも強く求めておきたいと思います。是非当委員会にも報告をいただきたい。
この配備ありきという姿勢はこの費用にも表れました。取得費は、当初一基八百億円というふうに小さく説明をされ、その後、二基で約二千五百億円と膨らんで、三十年間の維持運営費を含めて約四千五百億円と公表され、さらに、ミサイル購入費などを含めれば約一兆円という試算も出ております。
それにとどまらない。レーダーには、有力とされていたレイセオン社のSPY6ではなくてロッキード・マーチンのSPY7を採用したわけでありますが、昨年十月に約三百五十億で契約を締結しておりますが、このイージス・アショアの撤回に伴って、このレーダーの契約も解除をされるんでしょうか。
○防衛大臣(河野太郎君) 今後の対応につきましては、NSCの議論を踏まえながら、日米間で協議をしてまいります。
○井上哲士君 つまり契約の継続もあるということでありますけれども、このSPY7は開発段階であって、製造も試験も行われておりません。今後、多額の開発コストが掛かって、試験場の建設費用についても追加要求がされております。昨年九月の段階の報道でいいますと、約五百五十億円求められているという報道もありました。
この追加費用については、この当委員会でもアメリカと協議中ということだったと思うんですけれども、この協議はどうなっているんでしょうか。
○防衛省 整備計画局長(鈴木敦夫君) イージス・アショアの性能確認につきましては、各種試験の在り方を含めて米国政府等と議論を行ってまいりました。ただ、その結果を得る前に今回の配備プロセス停止に至ったところでございます。この米国等との議論の内容の詳細につきましては、相手方との関係もあるため、お答えを差し控えさせていただきます。
いずれにいたしましても、今後の対応につきましては、国家安全保障会議における議論を踏まえまして、防衛省において検討していくこととなります。
○井上哲士君 つまり、契約が継続されて更に費用が膨れ上がるという可能性があるということであります。
これ、イージス・アショアだけの問題じゃないんですね。このミサイル防衛の導入当初、二〇〇八年四月の国会答弁では、整備費は全体で八千億から一兆円程度を要するとしておりましたけれども、これまでのこの整備費用は累計でどれだけになっているでしょうか。
○政府参考人(鈴木敦夫君) 弾道ミサイルと申しますのは、一たび発射されれば極めて短時間で我が国に到達し、国民の生命、財産に甚大な被害を与えるおそれがあるということから、弾道ミサイル防衛能力を強化していく必要があるということで計画を進めてまいりました。
防衛省は平成十六年度からBMDシステムの整備を進めており、令和二年度予算までの累計で約二兆五千二百九十六億円を計上してございます。
○井上哲士君 累計約二兆五千二百九十六億円。ですから、当初八千億から一兆円程度ということからいいますと、三倍近くに膨れ上がっているわけですね。結局、攻撃する側が新たな弾道ミサイルを開発をすれば、システムの大幅な更新が必要となってイタチごっこになる。際限なく費用の増大となって軍拡の悪循環になるということが一貫して指摘をされておりました。
今回のこの秋田の地元の秋田魁新聞は、イージス・アショアの断念に関わって、「日本を取り巻く緊張関係を緩和し、武力行使を未然に防ぐ外交努力が何よりも重要だ。」と、こういう指摘をしております。私もそう思うわけであります。
ところが、今、むしろ逆なことが起きております。政府は新たなミサイル防衛の在り方を含む新しい安全保障戦略の検討に入ったことを受けて、自民党内からはいわゆる敵基地攻撃能力の保有を求める動きが強まっております。安倍総理は、相手の能力がどんどん上がっていく中で、今までの議論に閉じこもっていいのかという前のめりの姿勢も示しておられます。昨日の毎日の社説は、議論が飛躍し過ぎると、こう言っておりました。こういう声が今広く上がっております。
まず、大臣、聞きますけれども、この敵基地攻撃能力保有が必要だという議論の根拠の一つが、北朝鮮などのミサイル攻撃能力を向上させていて迎撃が困難になっているということでありますが、イージス・アショア導入の際にもそういう指摘がありました。しかし、いかなる事態にも対応し得るよう万全の備えを取るんだということで導入を決めたわけですね。
今この敵基地攻撃能力保有を議論をするということは、このミサイル防衛体制ではもはや万全ではないと、もう穴があると、こういうことでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 先ほどから申し上げておりますように、イージス艦とPAC3で弾道ミサイル防衛を継続をする、これはイージス・アショアを配備しようとしないと次の五年間はそういう予定でございました。別に穴があるということではございません。
○井上哲士君 だからといって、この敵基地攻撃能力の議論をすると。先ほど議論が飛躍し過ぎるという社説、毎日の社説も紹介しましたけど、自民党の検討チームの会合でも、岩屋前防衛大臣、この配備を進めてこられたわけでありますが、イージス・アショアの配備が難しいからといって一足飛びに敵基地攻撃能力の保有を考えるのは論理の飛躍だと、こう指摘したと報道されておりますけれども、この指摘、大臣はどう受け止められるでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) イージス・アショアの配備を断念をいたしましたので、それに代わるものをどうするのか、あるいは、新しい脅威というのが開発をされているわけでございますから、それにどう対抗していくのか、あらゆるカードをテーブルの上に並べて議論をする、そういう必要があろうかと思っております。
○井上哲士君 それはまさに先ほど答弁もありましたけれども、この敵基地攻撃能力の保有ということは今まで議論したことがないと、政府としては。それを議論をするというのは、やはり私は論理の飛躍だと言わざるを得ないと思うんですね。
敵基地攻撃というのは、攻撃された場合に迎撃するとしてきたミサイル防衛とは当然大きく違います。政府は、これまでも、相手国が武力行使に着手していれば相手国の基地などをたたくことは法理的には自衛の範囲であり、可能だという考えを示してまいりました。この考えに立ったとしても、着手したというのは定義も難しいし、正確な判断は極めて困難ですよね。結果としては国際法違反の先制攻撃につながるのではないかと、この指摘、大臣、どうお考えでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) いわゆる敵基地攻撃と憲法との関係について、あくまで一般論として申し上げれば、政府としては、従来から、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、例えば誘導弾などによる攻撃を防御するのに他の手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、憲法上、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能と考えております。
また、政府は従来から、我が国に対する武力攻撃が発生した場合とは他国が我が国に対して武力攻撃に着手したときであると解してきておりますが、どの時点で武力攻撃の着手があったと見るべきかについては、その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、対応などによるものであり、個別具体的な状況に即して判断すべきものであります。いわゆる敵基地攻撃が法理上あり得ることについては、武力攻撃発生時点だけでなく、武力攻撃が発生した後について論じられてきた経緯があるわけでございます。
いずれにしましても、我が国が自衛権を行使できるのは他国が武力攻撃に着手した時点であり、その時点でそれに対応することはいわゆる先制攻撃とは申しません。
○井上哲士君 個別具体的にということでありますけれども、やはり定義難しい、正確な判断は極めて困難だということには私は答えていないと思うんですね。結果としては、日本に対する反撃を招いて甚大な被害を及ぼすことにもなる、こういうことだと思うんです。
さらに、重要なのは、法理的には可能としながらも、その能力を実際に持つことは別だということを政府は一貫して言ってまいりました。
昭和三十四年の防衛庁長官答弁。他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれており可能とした上で、しかし、平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではないと明確に答弁をしております。
敵基地攻撃能力を保有するということは、ここでいう他国に攻撃的な脅威を与えるということではないんですか。
○国務大臣(河野太郎君) 敵基地攻撃能力の保有を前提とした仮定の質問にお答えすることは差し控えたいと思います。
○井上哲士君 実際に、議論、あらゆる問題をテーブルにのせると言っているじゃないですか。そして、自民党の中からもそういう議論が出ているわけですよ。
そして、これは既にこの委員会でも様々な議論になってまいりました。例えば、イージス・アショアの導入の際にも、これは相手国に脅威を与えるじゃないかという議論があったわけですよ。その際に、当時の小野寺防衛大臣は、イージス・アショアは、防衛ミサイルを、あっ、弾道ミサイルを迎撃することを目的としたシステムであり、他国を攻撃する能力はなく、国民の生命、財産を守るために必要な純粋に防御的なシステムであることから周辺国に脅威を与えるものではないと、こういうふうに答弁をされました。
つまり、逆に言えば、純粋に防御的なシステムはないと、他国に攻撃をする能力を持つということは周辺国に脅威を与えることに、この小野寺大臣の答弁からいえばなるんじゃないですか。いかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 小野寺大臣の答弁は、イージス・アショアは防御的な兵器である、そう申し上げていると思います。
○井上哲士君 ですから、純粋に防御的なシステムだと当時言われました。そうでない攻撃的な能力を持つということは周辺国に脅威を与えるんではないかと、そういうことをお聞きしているんです。
○国務大臣(河野太郎君) 繰り返しで恐縮でございますが、小野寺大臣の答弁は、イージス・アショアは防御的なものであるということを述べたわけでございます。
○井上哲士君 繰り返しで残念であります。
これは、単なるこれからの話じゃないんですよ。現実に、実際にはこれまでもそういう能力につながるような配備がこの間進められてまいりました。既に、射程の長いスタンドオフミサイルの導入や、護衛艦「いずも」にF35Bを搭載する空母化などが進められてきたわけですね。で、敵基地攻撃能力の保有に当たると我々は指摘をしてまいりました。その際に、政府は、それだけでは敵基地攻撃能力にはならないと、一連のオペレーションが必要だというふうに答弁してきましたけれども、具体的にはどういうことなんでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) いわゆる敵基地攻撃については、その具体的な装備体系を検討しているわけではございませんので正確に列挙することは困難でございますが、一般論として申し上げれば、敵基地攻撃のためには、他国の領域において移動式ミサイル発射機の位置をリアルタイムに把握するとともに、地下に隠蔽されたミサイル基地の正確な位置を把握し、まず防空用のレーダーや対空ミサイルを攻撃して無力化し、相手国の領空における制空権を一時的に確保した上で、移動式ミサイル発射機や堅固な地下施設となっているミサイル基地を破壊してミサイル発射能力を無力化し、攻撃の効果を把握した上で更なる攻撃を行うといった一連のオペレーションを行うことが必要であると考えております。
○井上哲士君 今答弁をされたその一連のオペレーション、それをやる能力を持つということは、純粋に防御的なシステムと言えないと思うんですね。今答弁された内容を持つということは攻撃的な脅威を与えるということになるんじゃないですか。答弁について聞いています。
○国務大臣(河野太郎君) こうしたオペレーションをやるという前提での御質問に、仮定の御質問にお答えすることは差し控えたいと思います。
○井上哲士君 いや、仮定じゃないんですよ。大臣自身が答弁されたわけですね。そして、あらゆる問題をテーブルにのせて議論をすると言われるわけですから、敵基地攻撃能力の議論も先ほど否定されませんでした。その際に、こういうオペレーションと一体になることになると、それはまさに純粋な防御システムとは言えない、敵に攻撃的な脅威を与えるものになるんじゃないかと、そういうことも含めて議論しなければ、議論できないじゃないですか。
だから、先ほどの答弁について、それはそれに当たるんじゃないかということをお聞きしているんです。ちゃんと答えていただきたい。
○国務大臣(河野太郎君) 与党の方でいろんな御議論が行われるときに、全てのカードをテーブルの上にのせて議論をされるというのは当然のことだと思いますが、政府としてそうした仮定の質問にお答えするのは差し控えます。
○井上哲士君 仮定じゃないんですよ。先ほど大臣が言われた答弁は、岩屋前防衛大臣も同じ内容の答弁をされてきました。つまり、敵基地攻撃能力を持つということはそういうことが必要だというのは防衛省自身がこの間繰り返し言ってきたことなんですね。それを持つことは相手に攻撃的脅威を与えるじゃないかということを質問しているんですね。ちゃんと答えていただきたいと思うんですが。
そして、そうであれば、こういう保有をするということは兆単位の莫大な軍事費の支出につながると思いますけれども、それはいかがでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 何が必要かという御質問にお答えをしたわけでございますので、そうしたものを保有するという仮定に立った御質問にお答えするのは差し控えます。
○井上哲士君 一連のいろんなこういう議論をするときに、安全保障環境がどういうふうになっていくかとか、いろんな仮定を置いて議論しているわけじゃないですか。それに対してどうするのかと。そして、前日に政府自身がこういう答弁をしているわけですから、それをやる、やれば脅威にもなるし、そして莫大な軍事支出にもつながると。これを答弁できないというのは、私、大変おかしいと思います。こういうやり方はまさに大軍拡の道であって、九条と相入れないと。
大体、安倍総理は、一八年二月の衆議院予算委員会で、専守防衛について、相手からの第一撃を事実上甘受し、かつ国土が戦場になりかねないものであると、その上、今日においては、防衛装備は精密誘導により命中精度が極めて高くなっている、一たび攻撃を受ければこれを回避することは難しく、この結果、先に攻撃した方が圧倒的に有利になっているのが現実だと、ここまで言われているんですね。
私は、このイージス・アショアの配備破綻に乗じて議論を飛躍させて、どさくさに紛れたような形でこういう敵基地攻撃能力の保有ということを議論をすることは許されない、憲法じゅうりんは許されないということを申し上げまして、質問を終わります。