○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
給与法案については討論で意見を述べます。
日本学術会議の任命拒否問題と軍事研究についてお聞きいたします。
菅総理が、日本学術会議が推薦した中で六人の学者を理由も明らかにせず任命拒否をいたしました。総合的、俯瞰的、多様性が必要、事前調整がなかったからなどという、この間の説明はことごとく破綻をしております。任命は形式的、推薦者の任命を拒否しないという三十七年前の答弁以来の一貫した解釈を秘密裏に変更することを許したら国会審議は意味なくなりますし、まさに法治主義の破壊だと言わなければなりません。
一方、この違法な任命拒否という暴挙を、この日本学術会議の在り方の問題とすり替える議論が行われております。その中で重大なのは、先日の内閣委員会での井上科学技術担当大臣の答弁であります。研究成果が民生にも軍事にも使われるデュアルユース技術について、大臣は、時代の変化に合わせて冷静に考えていかなければならないとした上で、これも含め梶田会長とお話をしていると述べて、学術会議に検討を求めていることを明らかにいたしました。
防衛省は、デュアルユース技術の積極的活用のためにとして、研究資金を提供する制度として二〇一五年度に安全保障技術研究推進制度をつくりました。これに対して、学術会議は一年近く掛けて十一回の検討委員会を行い、そして学術フォーラムも開催をした上で、この防衛省の制度が、政府による研究への介入が著しく、問題が多いとして、戦前の教訓から戦争を目的とする科学の研究は行わないとした過去の二回の声明を継承する新しい声明を二〇一七年に採択をいたしました。私は、大臣の答弁は実質的にこの声明の見直しを求めるものになると考えます。
今日は、大臣の代わりに政務官来ていただいておりますが、この御発言、答弁は、学術会議が時代の変化も考慮せずに冷静さを欠いて声明を出したと、こういうお考えでしょうか。
○内閣府大臣政務官(吉川赳君) 済みません、まず委員御指摘のこと、案件でございます、十一月十七日の参議院内閣委員会での井上大臣での答弁ということでよろしいかと思います。
これにつきましては、まず、学術会議の二十九年の声明ということではなく、デュアルユースなどの課題については時代の変化を踏まえ冷静に考えていかなければならないが、いずれもまずは学術会議自身が考えるべきものであると考えるという趣旨のものであって、当時の御指摘いただきましたこの声明について評価をしたものではないという認識でおります。
○井上哲士君 そうおっしゃいますけど、例えば下村自民党政調会長が、軍事研究やらないのなら行政機関を外れてもらうと発言するなど、自民党幹部から学術会議の軍事研究への見解の変更を求める発言が続いている、その中での答弁なわけですね。ですから、これと一体となって学術会議への見解変更を求める、事実上そういうことになっているということなんですよ。
この学術会議が声明案を発表したときに、採択したときに、私、この委員会で当時の防衛大臣に質問いたしました。答弁は、学術会議が独立の立場において検討しているものであり、防衛省としてコメントは差し控えるということだったんですね。学術会議事務局に聞きますと、基本的にこういうラインの答弁であって、提言や声明の中身に関わるような、そういう答弁はこれまでにないということだったのに、法律が変わったわけじゃないのに、もう踏み込んだ答弁をされたわけですね。
学術会議は政府から独立をして、政府に対して勧告も行います。その勧告を受ける側の政府の担当大臣が、組織の在り方にとどまらず、見解の内容を事実上見直しを求めるというのは、独立をして職務を行うという学術会議法に私は反すると思いますけれども、いかがでしょうか。
○大臣政務官(吉川赳君) まず、御指摘いただきました党からの発言でございますが、これに関しては、政府としては、党からの発言でございますので、特段それを踏まえてということではないということを御認識いただければと思います。
そして、いただきました二問目に関してでございますが、独立性ということでございますが、日本学術会議は、日本学術会議法上、科学に関する重要事項の審議等の職務を独立して行うことが御案内のとおり規定されております。
井上大臣から学術会議に対して、御指摘のデュアルユースに対して検討することを要求をしたという事実は現在なく、より良い学術の在り方について、何を検討課題とするかを踏まえ、まずは学術会議自身に考えていただくものであり、委員の御指摘は当たらないものと考えます。
○井上哲士君 大臣は、これも含めて梶田会長とお話をしていると、こう言われたわけですよ。そして、やっぱりこの一連の経過を踏まえて、多くのマスコミが新聞の社説などで、これは軍事研究への参加を求めるものだと、こういう指摘をしているということは是非重く受け止めていただきたいと思うんですね。
そこで、防衛大臣、お聞きしますけれども、この軍事を目的とした研究を行わないというのは、戦前の歴史を踏まえたものであります。滝川事件、そして天皇機関説事件で、時の政権の意に沿わない学問が弾圧をされて、国民の言論、表現の自由が抑圧をされていく。
一九四三年には閣議決定がありました。その中身は、科学研究は大東亜戦争の遂行を唯一絶対の目標としてこれを推進すると、こうされたわけですね。その下で学問の自由が奪われて、科学者が戦争に動員をされた。この痛苦の教訓から、戦後憲法に学問の自由が明記をされ、政府から独立した学術会議がつくられました。
その言葉は学術会議の最初の声明にもあるわけでありますが、こういう戦前の歴史を踏まえて学問の自由が憲法に明記されたことの重みについて、大臣はどういう認識でしょうか。
○防衛大臣(岸信夫君) 憲法二十三条に定められておりますこの学問の自由、広く全ての国民に保障された基本的人権であります。特に、大学における学問研究の自由、その成果の発表の自由、教授の自由、こうしたものを保障したものであって極めて重要な権利だと、こういうふうに認識をしているところです。
○井上哲士君 軍事研究の押し付けというのは、この戦前の痛苦の歴史を踏まえた学術会議の私は原点を壊すものだと思うんですね。学術会議は、二〇一七年の声明をまとめるに当たって、冷静かつ徹底的な議論を行いました。声明にはデュアルユースという言葉は出てきませんけれども、この問題は議論の大きな柱だったんですね。それは報告書を見ていただければ分かります。その上で、防衛省の資金制度は学問の自由と自主性との関係で問題があるといたしました。
そこで、声明で指摘している問題を幾つか確認をしたいんですが、まず、他省庁ではるかに規模の大きい競争的資金があるのに、防衛省独自の資金制度をわざわざつくった目的は何なんでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 安全保障技術研究推進制度の創設の趣旨については、公募要領の冒頭にも記載されているとおりでございます。他の競争的な資金制度とは異なるところであります。中身としては、我が国の高い技術力は防衛力の基盤であるということ、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、安全保障に関わる技術の優位性を維持向上していくことが将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠であると、とりわけ近年の技術革新の急速な進展は民生技術と防衛技術のボーダーレス化をもたらしていると、今や安全保障上有益な研究は全ての科学技術領域に広がっていると言っても過言ではありません。
安全保障技術研究推進制度では、こうした状況を踏まえて、防衛分野での将来における研究開発に資することを踏まえて、期待して、先進的な民生技術についての基礎研究を公募、委託をするというものでございます。
○井上哲士君 将来の防衛省の目的に踏まえてという趣旨がありました。
当時、私の質問に対しては、防衛省としての行政目的に合致した形のテーマをつくることがより一層民生技術を取り込むために必要だと考えて資金を提供すると言われたわけですね。つまり、デュアルユース、軍民両用といいますけれども、あくまでもこの制度は民生技術を軍に取り組むために必要だということで防衛省独自につくられたわけです。
そして、研究テーマについては、防衛省の装備品の研究開発をする防衛装備庁の職員が将来の装備構想に基づいて提案し、手続に基づいて決定されると、こういうプロセスを踏みます。
じゃ、こういうテーマによる研究の進捗の管理はどのように行われるのかと。この制度は基本的に三年間継続して委託しますけれども、途中で委託の中止もあります。それを判断するのは、この制度に基づく委託研究の進捗を管理するプログラムオフィサーであります。
文科省の制度ではこのプログラムオフィサーというのは外部研究者が当たっておりまして、文部科学省の職員が当たることはないと当時文科省は答弁いたしました。しかし、防衛省の場合は、の資金制度では外部研究者ではなくて防衛省の職員が全て当たっておりますけれども、なぜそういうふうにしているんでしょうか。
○防衛省 防衛装備庁長官(武田博史君) お答えいたします。
防衛装備庁は、自ら研究開発を行う研究所を有しており、それぞれの研究所には専門的な知見を有し、かつ防衛省の研究開発のマネジメントの経験を有する研究職の職員が多数おります。
安全保障技術研究推進制度の各研究課題のプログラムオフィサーは、こうした研究職の職員の中から最適な職員を選定することで効率的な業務を行っているということでございます。
○井上哲士君 他省庁にも研究職いますけど、全て外部でやっているんですよ。
そして、装備庁の担当者が二〇一五年にCISTECジャーナルという雑誌でこう書いております、述べています。プログラムオフィサーは防衛用途への応用という出口を目指して研究委託先と調整を実施をすると、こういうふうに言っているんですね。しかも、進捗状況に問題があると判断されますと資金を打ち切られると。私は、多くの研究者の皆さんが自由に行われるべき基礎研究に介入があると考えたのは当然だと思うんですね。
さらに、研究成果の知的財産権について聞きますけれども、応募要領では、一定の条件を付した上で受託した研究機関にこの知的財産権を帰属させることができるとしておりますが、その条件の一つが防衛装備庁が自ら利用する場合、それから、他に特に必要がある場合は無償で知的財産権を利用する権利を防衛省及び防衛省が指定する者に許諾する、これが条件になっておりますけれども、この防衛省が指定する者には例えば民間の兵器産業も該当し得るのでしょうか。
○政府参考人(武田博史君) 御指摘につきましては、安全保障技術研究推進制度委託契約事務処理要領の委託契約書における第二十五条第一項の(2)に記載されている指定する者についての御質問であると考えますけれども、この指定する者には防衛関連会社もなり得ると考えております。しかしながら、現時点において、具体的に指定する者については事例はないところでございます。
○井上哲士君 研究受託者が、将来、その自分の研究成果が兵器産業に使われるのは困るといってこの無償利用の許諾を約束しないという場合はどうなるんでしょうか。
○政府参考人(武田博史君) 今の御質問につきましては、今ほど申し上げました安全保障技術研究推進制度委託契約事務処理要領の委託契約書における第二十五条の第三項に基づきまして、その知的財産は国に帰属するということになります。
○井上哲士君 つまり、この資金制度で研究成果の知的財産権が受託者に帰属しても、将来、兵器産業に無償利用されることを拒むことはできないという、こういう仕組みになっているわけですね。
ですから、日本学術会議は、こういう今答弁があった事実を踏まえて、声明において、将来の装備開発につながるという明確な目標に沿って公募、審査が行われ、外部の専門家ではなく同庁内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多いと、こういうふうにしてきたんです。そして、その上で、研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的にも使用され得るために、まずは研究の入口で研究資金の出所等に関する慎重な判断が求められると述べた上で、各大学での審査制度の設立を求めました。その下で、大学からの応募は大幅に減ったわけですけれども、これは科学者としての冷静で真摯な議論の結果だと思います。
政府がやるべきことは、声明でも述べている科学者の自主性、自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金を一層充実させることでありまして、人事への介入や見解の見直しを迫ることではないと、任命拒否の撤回を改めて求めまして、質問を終わります。
-------
○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、防衛省職員給与法一部改正案に反対の討論を行います。
新型コロナ感染拡大の下、政府が自粛要請をしながら十分な補償をしない中、民間労働者の賃金が引き下げられました。人事院は、政府の責任やコロナの影響を一切考慮せずに、民間準拠だけを理由に今年度の一般国家公務員の期末手当について年間〇・〇五か月分の引下げを勧告しました。これは、国家公務員の労働基本権の制約に対する代償措置としての役割を無視したものです。
本法案は、この勧告に沿って、防衛大学校、防衛医科大学校の学生と陸上自衛隊高等工科学校の生徒等の期末手当を一般職と同様に引き下げるものです。国家公務員全体の給与引下げの一環を成す本法案には反対であることを申し述べ、討論を終わります。