○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
まず、前回委員会で質問できなかった敵基地攻撃能力保有問題で防衛大臣にお聞きいたします。
大臣は、二十六日の当委員会での小西議員への答弁で、誘導弾等の基地をたたくなど、他国の領域における武力行動で自衛権発動の三要件に該当するものがあれば、憲法上の理論としては、そのような行動を取ることが許されないわけではないとしてきております。このような考え方は、平成二十六年七月の閣議決定に応じて示された武力行使の三要件の下で行われる自衛の措置としての武力の行使にそのまま当てはまると、こういうふうに述べられました。
この武力行使の三要件の下で行われる自衛の措置には、集団的自衛権の行使も含まれるということでよろしいでしょうか。違うならば、理由を説明してください。
○防衛大臣(岸信夫君) 従来から、武力の行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣をする、言わば、いわゆる海外派兵は、一般に、自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解してきています。
他方で、政府としては、平成二十六年七月の閣議決定以前から、誘導弾等の基地をたたくなど、他国の領域における武力行動で自衛権発動の三要件に該当するものがあれば、憲法上の理論としては、そのような行動を取ることが許されないわけではないとしてきており、このような考え方は、存立危機事態におけるものを含めて、平成二十六年七月の閣議決定において示した武力の行使の三要件の下で行われる自衛の措置としての武力の行使にもそのまま当てはまるものと考えております。
○井上哲士君 存立危機事態についても含まれるということでありますから、集団的自衛権行使も含まれるということであります。
もう一点は、他国への弾道ミサイル攻撃と集団的自衛権の関係ですけど、二〇一五年の安保法制の審議の際に、弾道ミサイル攻撃に関して、着弾地点が大体グアムだという表示が出た場合に、我が国としてはどういう対応ができるかという質問がありました。これに対して当時の横畠法制局長官は、御指摘の点についての手当ては、今回の法案では、御指摘の点についての手当てはしてございませんで、いわゆるミサイル防衛については、我が国に向かうミサイルについての措置のみでございますと、グアムに向かうミサイルは集団的自衛権行使の対象にならないという認識を示しました。
ところが、成立後、二〇一七年に当時の小野寺防衛大臣が、グアムへの攻撃に関して、日本の安全保障にとって米側の抑止力、打撃力が欠如するということは、日本の存立危機に当たる可能性がないとも言えないとして、我が国に対する存立危機事態になって新三要件に合致することになれば対応できると答弁いたしました。
つまり、グアムに向かうのも集団的自衛権行使の対象になり得るということでありますけれども、これ、答弁、百八十度変わっているんじゃないでしょうか。なぜこういうことになるんでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 法理上、弾道ミサイルが他国に向けて発射されるというだけで武力の行使の三要件を満たすことになるということではございませんけれども、平和安全法制の考え方の下では、その時点における状況の全体を評価した結果、これが武力の行使の三要件を満たす場合には、あくまでも、我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置として、当該の弾道ミサイルを迎撃することも可能であると解してきておるところで、小野寺大臣の答弁はこれを前提にして述べられたものということであります。
他方で、御指摘の横畠内閣法制局長官の答弁は、あくまで、武力紛争が発生していない平時の話としてですね、平和安全法制の下でおいても、自衛隊法第八十二条の三に基づく弾道ミサイル等に対する破壊措置は、我が国に向かう弾道ミサイル等を対象するものであって、他国に飛来するミサイル等を対象としていない旨を述べたものであって、武力の行使の三要件を満たす場合について述べたものではございません。したがって、見解が変わったという御指摘は当たりません。
○井上哲士君 私は、当時の報道から見ても、この安保法制のときの答弁をなし崩し的に踏み越えていると思いますが、しかし、いずれにしても、グアムに向かうのも対象になり得るという話であります。
そうしますと、集団的自衛権行使として敵基地攻撃が行われることになりますと、相手国がグアムに向けてミサイルを発射を着手した段階で、それが存立危機事態だと判断すれば、相手の基地をたたくということも可能になるということではないですか。いかがでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 今のお話ですけれども、一概に申し上げることは難しいと思います。
○井上哲士君 否定できないということですか、つまり。
もう一回聞きますけれども、相手国がグアムに向けてミサイル発射を着手した段階で、それが存立危機事態だと判断をすれば、相手の基地をたたくということも可能だということを否定できないということでよろしいですね。
○国務大臣(岸信夫君) 着手の考え方ですけれども、いかなる時点でこの着手されたということが判断されるかということもございます。
そういう意味をもって一概にお答えすることは難しいと申し上げておるところでございます。
○井上哲士君 いかなる時点で着手だって、それは皆さんが着手の段階でも攻撃とみなすことができると言ってきたわけですから、そういう当てはめの問題ではないんですよ。考え方の問題として、グアムに向けてミサイル発射を着手した段階でも存立危機事態と判断すれば相手の基地をたたくことが可能であるということは否定できないと、繰り返しますけど、そういうことでよろしいですね。
○国務大臣(岸信夫君) 先ほどの繰り返しになりますけれども、法理上、弾道ミサイルが他国に向けて発射されるというだけで武力の行使の三要件を満たすことになるということではありませんが、平和安全法制の考え方の下では、その時点における状況の全体を評価した結果、これが武力の行使の三要件を満たす場合には、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置として当該弾道ミサイルを迎撃することも可能であると解してきておるところでございます。
○井上哲士君 それが存立危機事態に当てはまるかどうかということでありますけれども、今も最後もう一回答弁がありましたけれども、結局それは可能だと。そして、着手という段階でも攻撃とみなすということを、この間、敵基地攻撃能力の議論で言ってきたわけでありますから、私は、そういう、まさにグアムに向かって発射を着手した段階でもたたくことは可能になる、大変重大な答弁だと思うんですね。
こういう場合に、結局、その判断、情報はアメリカ側に依拠することにならざるを得ないと思います。日本に対して攻撃もない、その着手もないのに、グアムへの攻撃に着手したとして、アメリカの判断の下、アメリカと一緒に相手国を攻撃をするということになりますと、大変な反撃を呼び込むことになりますし、結局、こういうものの保有は軍拡の悪循環になるだけだと、こういうものは検討を断念すべきだということを改めて強調しておきたいと思います。
その上で、日英EPAのデジタル貿易に係る規定内容についてお聞きいたします。
茂木大臣は、国際的なルール作りをリードし得るハイスタンダードなものと考えておりますと先日答弁されましたけど、日米デジタル貿易協定、それから日EU・EPAと比較して、どの点がハイスタンダードなのか、御説明いただきたいと思います。
○外務大臣(茂木敏充君) デジタル貿易の最新のルールにつきましては、昨年、日米のデジタル貿易協定、この交渉で相当内容の濃い協議を行ってきたわけでありますが、日英EPAも日米デジタル貿易協定と同様に、日EU・EPAが規定していない情報の越境移転の制限の禁止であったり、コンピューター関連施設の設置要求の禁止、暗号情報の開示要求の禁止等を規定しているほか、アルゴリズムの開示要求の禁止など、デジタル分野に関する最新の規定を盛り込んでおりまして、デジタル分野における国際的なルール作りの議論をリードするハイスタンダードな内容となっていると考えております。
○井上哲士君 昨年審議して今年一月に発効した日米デジタル貿易協定は、アメリカのIT産業の要求に応えて、国境を越えた自由なデータの流通の障壁を取り払うもので、USTRの交渉の獲得目標として、公表した項目を全て実現するものでありました。日英EPAは、デジタルプロダクトに対する無差別待遇の規定を除けば、おおむねこの協定に沿ったものになっております。
そこで、ハイスタンダードだというルールの一つに、情報の電子的手段による越境の制限等の禁止がありますけれども、本協定とこの日EU・EPAの規定内容、この分野についてどういう違いがあるんでしょうか。
○外務省 経済局長(四方敬之君) お答え申し上げます。
日英EPAにおきましては情報の越境移転の制限の禁止に関する規定がございますけれども、日EU・EPAにおいてはこのような規定は設けられておりません。その必要性につきましては、日EU・EPAの効力発生の日から三年以内に再評価することが定められております。
○井上哲士君 日英EPAと日本EU・EPAの規定がこういうふうに異なっているのはどういう事情かということなんですね。
EUでは、本協定のように、データを一くくりにして越境流通を原則自由にしようという立場に立っておりません。個人情報の保護が重視をされていて、一般データ保護規則においてEU域内から域外への個人データの移転を原則として禁止としております。そして、例外として、移転先の国又は国際機関が十分な個人情報の保護措置を講じている国として欧州委員会から認定を受けている場合、それから企業等がグループ内の内部行動規範や企業間の契約条項で保護措置を確保している場合、そして本人の同意がある場合など、一定の条件を満たす場合にのみ移転を認めております。
なぜEUは個人データの移転にこういう規制を掛けていると認識をされているでしょうか。
○政府参考人(四方敬之君) お答え申し上げます。
他国の政策、規則の背景につきまして我が国として解釈する立場にはございませんけれども、委員御指摘のとおり、EUは個人データの保護に対する権利というのを基本的な権利として位置付けておりまして、この観点から、個人情報保護を目的として一般データ保護規則、GDPRを定めていると承知しております。
○井上哲士君 今言われたとおりでありまして、EUは、基本憲章第八条で、何人にも自己に関する個人データの保護の権利があると明確に規定をしております。
アメリカとEUとのTTIPについて、当時の司法担当のレディング欧州委員は、データ保護はお役所仕事でも関税でもない、それは基本的人権であり、したがって交渉できないと、こういうふうに当時述べておりました。
このプライバシーの権利というのは、欧州人権条約の第八条にも規定されているんですね。ここには、この個人データの濫用によってナチスによるユダヤ人迫害という大規模な人権侵害が助長されたと、こういう歴史があると指摘をされております。
ですから、それぞれのやっぱり個人情報に対する考え方、姿勢というのはこういう歴史的な経緯があるということをよく見る必要があると思うんですよ。
マレーシア、シンガポールも個人情報保護のために移転に条件を設けてきましたけれども、先日の答弁では、このRCEPで合意に至った項目としてこの情報の越境移転の制限の禁止も挙げられました。
となりますと、これらの国々は国内法の改正が必要になるということなんでしょうか。
○政府参考人(四方敬之君) お答え申し上げます。
我が国として他国における協定の実施に当たっての国内法令の改正の要否についてコメントする立場にはございませんけれども、まずは、RCEP協定の早期の発効と締約国による将来の着実な実施を通じまして、地域の望ましい経済秩序の構築につなげていくことが重要だと考えております。
○井上哲士君 私はもう、やっぱり国内法の改正が必要になってくるんだろうと思うんですね。
データの越境流通の制限を禁止する、すなわち原則自由とする規定を置く日米協定のやり方は、結局事業者による情報の移転の自由を最優先しようというもので、個人情報の保護が二の次になりかねないと思います。
こうしたルールが広がれば、例えば各国で消費者が個人情報保護のための新たな措置を主張したときにその妨げになるんじゃないかと、こういう点で問題があるということを指摘をしておきます。
その上で、財務省来ていただいておりますが、デジタル課税についてお聞きいたします。
巨大IT企業が求めてきたこういうルール作りが進む一方で、こうした企業にまともに課税がされてこなかった。いわゆる店舗や工場などの恒久的施設、PEがなければ課税なしというこれまでの国際的なルールが時代に合わなくなってきているということで、この間、国際的な交渉が行われてまいりました。
今年度中のデジタル課税の合意が言われておりましたけれども、これ骨抜きにしようとしているのが、巨大IT企業が多くが本社を置くアメリカであります。
アメリカは、以前は新しい国際ルール作りに賛同してきましたけど、昨年十二月になって、この改定する国際ルールについて採用するかどうかを企業に任せるセーフハーバー制とすることをムニューシン財務長官が提案をいたしました。
この提案についての国際的な反応と、日本としての対応はどうなっているんでしょうか。
○財務省 主税局 国際租税総括官(武藤功哉君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、昨年十二月に米国の財務長官がOECDグリア事務総長に送付した公開書簡の中で、解決策の第一の柱を企業による選択制、セーフハーバーとすることを提案したところでございます。
解決策の第一の柱は、国際課税原則を見直すことで、市場国に対して課税権の一部を適切に再配分することを目的としておりまして、企業による選択制の導入は、その政策目的を困難にするなどの問題がございます。
こうしたことから、本年一月のBEPS包摂的枠組みによる声明等にもございますように、日本を含む各国が懸念あるいは反対の意向を示しているところでございます。
○井上哲士君 二月のG20の外相会議の後に、際に、麻生財務大臣も今回のセーフハーバーについては非常に懸念を有しているということを伝えたと、米国案は我々が取り組んでいる規制の効果を著しく損ないかねないということを記者団に語っておられます。
さらに、アメリカの財務長官は今年の六月に、イギリス、フランス、スペイン、イタリアの財務大臣宛てに書簡を送っております。その内容は、今、世界は百年来の深刻な公衆衛生危機に直面している、世界の政府は新型コロナウイルスによってもたらされている経済の課題に集中すべきだと、デジタル課税の困難な話合いを続けることは、はるかに重要な問題から目をそらすというものでありまして、まさに交渉の一時中断を求めております。
しかし、巨大IT企業は、むしろこのコロナ禍の下で、巣ごもり消費とか在宅勤務の広がりの中で業績を大幅にアップをしております。
五月の質疑でも私指摘しましたけれども、更に増えているんですね。アマゾン・ドット・コム、それからグーグルの持ち株会社であるアルファベット、それからフェイスブックの三企業でいいますと、七―九月期の決算を見ますと、四半期の業績は過去最高、アマゾンはネット通販が同年同期比で三八%増、クラウドも増えまして事業も伸びて、最終利益は前年同期比で三倍にもなっています。
その下で、アメリカの政策研究所などの調査では、同国の億万長者の資産は、IT経営者を中心に三月からの三か月間で二割増の五千八百三十九億ドル、約六十三兆円に増えたと。トップはアマゾンのCEOのジェフ・ベゾス氏で、その資産は三か月で千百三十億ドル、約十二兆円から一・四倍化したと、こういうふうに報じております。
むしろ私は、デジタル課税の必要性というのは、アメリカの書簡とは逆に、むしろこのコロナ禍の下で必要性が浮き彫りになっていると思います。格差の是正という点でも、脆弱さが指摘をされた社会を立て直す財源としても必要かと思いますけれども、この点、財務省の認識はいかがでしょうか。
○政府参考人(武藤功哉君) お答え申し上げます。
本年六月、米国の財務長官が、第一の柱についての議論の一時中断を提案する書簡を欧州四か国の財務大臣に送付したことが報道されたことは承知しております。しかしながら、その後の七月のG20財務大臣会議におきまして、引き続き本年中にグローバルな解決策に至るとのコミットメントが再度確認されたところでございます。
これを受けまして、米国の代表も参加する中で、BEPS包摂的枠組みにおいて引き続き精力的な議論が行われ、十月にこれまでの議論の進捗を取りまとめた青写真が公表されたところでございます。
この公表の際に出された声明の中にも、新型コロナウイルス感染症の影響により、利益率の高い多国籍企業が新しい国際課税原則の下で公平な負担をすることについての市民の期待は高まっているということが言われておりまして、委員御指摘と同様の問題が示されているところと考えております。
○井上哲士君 そういう議論の中で、十月にいわゆる青写真というものが発表、という報告書が発表されました。
簡潔に、この概要についてお答えいただきましょうか。
○政府参考人(武藤功哉君) お答え申し上げます。
十月に合意された青写真は、第一の柱、第二の柱に関する技術的な論点をカバーした非常に詳細な内容となっておりまして、先般開催されたG20サミットにおいても将来の合意のための強固な土台とされたところでございます。
第一の柱は、自動化されたデジタルサービスや消費者向けビジネスを行う多国籍企業が物理的拠点を置かずに活動している市場国に対して新たな課税権を配分するという国際課税原則の見直しを行うものでございます。具体的には、新たな国際課税原則の対象となる企業の範囲、課税権の配分のルール、効果的な紛争防止解決手続の構築等が主な内容となってございます。
また、第二の柱は、軽課税国への利益移転に対抗するために、国際的に合意された最低税率による法人課税を確保するミニマム課税の導入等が主な内容となってございます。
○井上哲士君 日本はこの分野でBEPSからずっと積極的に役割を果たしてきたと思うんですが、今概要の説明あった報告書、例えば、第一の柱でも、対象業種をどう具体的に絞り込んでいくのか、それから業種や利益率によって市場国への配分率は変わるのかなどの議論がまだ積み残しになっておりますし、第二の柱でいいますと、高課税所得と低課税所得が混在している場合の合算の範囲をどうするか、それから最低税率を一二・五%というアイルランド並みの低税率にとどめていいのかなどなど様々な議論があるわけですが。
この巨大デジタル企業に課税する新しいルール作りと最終合意の見通し、アメリカでは政権交代も行われるわけで、全体の見通しはどうか、そして、それについて日本はどういう積極的な役割を果たそうとしているのか、その点いかがでしょうか。
○政府参考人(武藤功哉君) お答え申し上げます。
十月に取りまとめた青写真は、先ほど申し上げましたとおり、非常に詳細な内容となってございまして、G20サミットにおいても将来の合意のための強固な土台とされたところでございます。
他方、御指摘のとおり、第一の柱に関しては、対象企業の範囲や利益配分方法の詳細、さらには米国提案のセーフハーバーの取扱い、また、第二の柱に関しては、最低税率の水準など幾つかの未決着の論点が残っていることも事実でございます。
本件につきましては、当初、本年末までとなっていた合意期限を半年延期しまして、来年半ばまでに合意を目指すこととされております。現時点でその合意に向けた見通しを申し上げることは困難でございますが、日本としましては、引き続きグローバルな合意形成に向けて議論に積極的に貢献してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 途中でも申し上げましたけど、やはり、コロナ禍の下でこの巨大IT企業が非常に収益を上げているという下で、格差の是正という点でも、そしてこれからの社会立て直しの財源という点でも非常に重要な課題だと思っております。
是非日本が積極的な役割を果たすように改めて強く求めまして、質問を終わります。
――――――
○井上哲士君 私は、日本共産党を代表し、日英包括的経済連携協定に反対の立場から討論を行います。
本協定は、多角的な自由貿易体制の維持強化を成長戦略の基本とする菅内閣が、自由貿易を推進する力強いメッセージを国際社会に発信するとしてEU離脱後の英国と締結する経済連携協定です。TPP11や日欧EPA、日米貿易協定などの貿易自由化一辺倒が危機に弱い社会経済をつくり出したことがコロナ禍の中で露呈をいたしました。そこに何の反省もないまま、多国籍企業の利益を優先し、際限のない市場開放を一層推進するものとなっています。
本協定は、そもそも情報開示をしておりません。英国では、日英EPAに関して、交渉に入る前から国内の意見聴取を行い、その内容の開示も含めて、交渉の目的、範囲及び経済的、社会的な影響を分析し、公表しています。ところが、日本は大筋合意後にようやく概要を発表しただけです。情報開示がなされなければ、この条約が本当に国民の利益にかなうかどうかを見極めることもできません。
本協定は、デジタル貿易分野についても、多国籍IT企業の利益を保護するためのルールを定めた日米デジタル貿易協定並みの内容となっています。
今世界では、デジタルプラットフォーマーの規制強化をどう進めるかが課題となっている中で、多国籍IT企業の求めるルール作りを優先することは世界の流れに逆行するものです。
以上を指摘して、討論とします。