○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
柏崎刈羽原発のテロ対策装置が長期間にわたって故障していたという深刻な問題について、まず東電にお聞きいたします。
ID不正利用など、この間の一連の不祥事を含め、住民からは怒りと不安が上がっております。今回の問題はどういう深刻な意味を持っているのか、なぜ発生したとお考えでしょうか。
○東京電力社長(小早川智明君) 昨日、原子力委員会より、組織的な管理機能が低下しており、防護措置の有効性を長期にわたり適切に把握しておらず、核物質防護上重大な事態になり得る状況にあったとして、重要度評価赤の暫定評価の通知を受けたことについて、まず大変重く受け止めております。
また、ID不正利用の問題、安全対策工事の未完了も含め、地域の皆様を始め広く社会の皆様に大変な御心配をお掛けしていることにつきまして、改めておわびを申し上げます。
本件につきましては、侵入検知設備の故障発生に伴う代替措置として、現場の方で当時は十分という認識で対応していたため、特段の報告及び対処がなされない状態が続いておりました。この状態が十分だと認識していたこと自体が今回の大きな問題だと認識しております。大変重く受け止めております。
私としても痛恨の極みであり、徹底的に原因を究明し、抜本的な改革を行っていくことが必要だと考えております。
○井上哲士君 装置の故障について東電は代替措置をとっているとしたけれども、規制委はこれ信用せずに抜き打ち検査を指示をされました。なぜ信用できないと思い、どういう調査をされたんでしょうか。
○原子力規制員会委員長(更田豊志君) 御質問の中にありましたように、機器が故障して機能を失っている場合は、何らかの手段でその防護のための強度を回復させておく必要があります。その代替措置に対して複数の機能の低下が報告をされていたということ。それから、代替措置、これ様々な手法もありますけれども、私たちが一番心配したのは、その時点で実際にきちんとした防護の強度があるかどうかです。これを確かめるためには速やかに行く必要があるということで検査に入りました。そこで私たちが確認した代替措置というのはとても十分と呼べるようなものではありませんでした。
○井上哲士君 結果として、そういう、この深夜、休日などの抜き打ち検査でなければ発見できないような事態があったということでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) お答えをいたします。
それは今後の検査を待つ必要があるだろうと思っておりますけれども、これまでの検査の限りでは、東京電力はこの代替措置で十分だというふうに考えていたように見られます。抜き打ちであったから、検査として抜き打ちであるからこその結果を得たかどうかというのは、今のところでは、今のところまでははっきりをしておりません。
○井上哲士君 会見で更田委員長は、東電の組織的問題という認識を示されました。具体的にはどういうことでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 今回の問題が知識不足、理解不足によるものなのか、あるいは理解していたにもかかわらず怠慢であったのか、これによってまた見方は大きく違うと思います。
またさらに、この違いがどの、まあレベルと言うと失礼な言い方ですけど、現場の認識であったのか、更に言えば、核物質防護には管理者を置いておりますので、その管理者レベルなのか、あるいは所長の段階はどう認識をしていたのか。こういったところは検査を通じて明らかにしていかなければならないというふうに考えております。
○井上哲士君 東電の社長は、この装置の故障についていつ報告を受けて、代替措置を講じているということはいつ了承されたんでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答えいたします。
二月十八日に臨時の原子力規制委員会に報告されることとなり、その重要性を担当部門が認識し、私にも報告がありました。その報告を受け、私からは速やかに核物質防護に関する対策を取るように指示いたしました。
○井上哲士君 では、やはり組織的問題があるという規制委員会の指摘について、今の経緯からどうお考えでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答えします。
今回の事案だけではなく、IDの不正問題や工事未完了の問題などを含めて、現場である発電所が自ら核セキュリティーに対する意識や組織文化についてしっかりと見直し、改革し、つくり直していかなければならない事案であるというふうに考えております。
このため、今後、先ほど更田委員長からの御指摘もあった部分も踏まえ、含めてですね、根本的な原因を究明し、現場任せにせず、組織全体を通じて体制強化を図るなど、抜本的な対策を講じていく必要があると考えております。
○井上哲士君 果たして現場任せが問題だったのか、現場だけの問題なのかと私は疑問なんですね。
今回の事態は、セキュリティー上、最も深刻なレベルとされていますが、それは原発を運転する会社にとってはどういう意味を持つ問題なんでしょうか。規制委員会、お願いします。
○政府特別補佐人(更田豊志君) お答えをいたします。
核物質防護は、基本中の基本の一つは、資格のない者が制限された区域に入るのを防ぐことにあります。このために、区域というのは段階が定められていますし、その段階ごとに入域するための、不法な入域がなされないための手だてを取っております。当然これは核物質の盗取であるとかテロ対策としての基本を成すものであります。
○井上哲士君 規制委は昨年九月に東電の適格性を認めて、保安規定の基本姿勢を了承いたしました。しかし、その了承した前の段階でID不正利用や今回の問題が起きていたことが今明らかになったわけですね。この適格性の判断の前提が崩れているんじゃないでしょうか。再検討すべきじゃないでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 段階を踏んで確認をしていきたいと思っています。
まず、今回の事案、今回の事案も、昨年の三月以降について、これもまだ固めきっていないところもあるんです。それから、先ほどの認識の問題等について東京電力にきちんとただしていかなきゃいけない。さらに、昨年の三月以降にこれだけのことがあったんだったら、それ以前はどうだったんだと。ですから、核物質防護についてもまだまだしっかりと確認しなければならないことがあります。
さらに、核物質防護に関してこれだけ様々なことが起きるということは、いわゆる核セキュリティー文化、そういった組織的な背景に支障があったと考えられる。核セキュリティー文化がずたずたなのにもかかわらず、安全文化の方はしっかりしているんだというのはなかなか考えにくいものですから、当然ながら、安全に係る保安規定についても違反があるのかないのか、それから、保安規定に足らざるところがあるのかないのかというのは、まあ、その次のステップ、先のステップとしてあるものというふうに考えております。
○井上哲士君 しっかり再検証していただきたいと思います。
新潟県知事は、三月中にも規制委員会を訪れて、東電の原発を運転する技術的能力があるかどうかを再評価するよう直接要請するとされておりますけれども、これ、要請があったら、どういう対応をされるお考えでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 通常、私は、御地元の知事さんであるとか首長さんであるとかという自治体の長の方と直接お目にかかるということはいたしておりません。地元を訪れて、知事さん並びに首長さんたちがおられるところで公開での意見交換というのはいたしますが、そういった御要望を直接受け取るということはしておりませんので、今までの私どものやり方に倣うとすれば、長官がお目にかかって要望をお伺いするということになろうかと思います。
○井上哲士君 地元の声、しっかり聞いていただきたいと思うんですが。
最後、経産大臣にお聞きいたしますけど、ぶら下がり会見で再稼働できる段階にないという発言をされましたけど、もうそれにとどまらない、もう原発を運転する会社としての資格そのものが私は問われていると思いますけれども、いかがでしょうか。
○経済産業大臣(梶山弘志君) 昨日、記者団の求めに応じて記者会見、ぶら下がり会見という形で入口のところでさせていただいたところであります。
この中で、今委員からは東電に原子力事業の資格などないのではないかというお話だと思いますけれども、今般、東電の柏崎刈羽発電所において、原子力規制委員会から核セキュリティーを含め安全確保に関する組織的な管理機能の劣化を厳しく問われている状態で、状況であります。当然ながら、このままでは再稼働できる段階にないものだと思っております。そういうことから昨日の発言をさせていただきました。
資源エネルギー庁長官からも、昨日、小早川社長に対して、原子力規制委員会の監視の下、経営陣を含む組織全体で危機感を持って核セキュリティーに対する職員の意識等の根本原因を究明し、抜本的な対策を講じるように厳しく指導をしたところであります。
東京電力において、なぜこのような事案が生じてしまったのか、社としてどのような問題があるのか、一旦立ち止まって徹底的に原因究明し、抜本的な対策を講じ、規制委員会の検査にしっかりと対応していくことが重要であると考えております。
経済産業省としても、東京電力の取組を注視してまいりたいと思いますし、指導してまいりたいと思っております。
○井上哲士君 原子力事業者としての資格が根本から問われるということを改めて指摘をしておきたいと思います。
この件はこれで終わりますので、関係の方、退席で結構です。
○委員長(山本順三君) 関係の皆さん、東電の社長、それから更田委員長、そして経産大臣、退席されて結構でございます。
○井上哲士君 続いて、核兵器禁止条約についてお聞きします。一月二十二日に発効いたしました。人類史上初めて核兵器を違法とする国際法が生まれました。核兵器のない世界へ道を切り開く新しい時代が始まりました。
私は、広島で育った被爆二世として、この条約が採択をされた国連の会議に出席をいたしました。被爆者の訴えが世界を動かした、目の当たりにした感動を忘れることはありません。
多くの被爆者はもちろん、NATO加盟国のベルギーでも国民の七七%が条約参加に賛成するなど、世界で支持が広がっております。これまでも参加を繰り返し求めてきましたが、発効という新しい段階を踏まえて、改めて求めたいと思います。唯一の戦争被爆国として、日本こそ参加をするべきじゃないでしょうか。
○外務大臣(茂木敏充君) 我が国は、唯一の戦争被爆国として国際社会の取組をリードする使命を有しておりまして、核兵器禁止条約が目指す核廃絶というゴールは共有をいたしております。一方で、その実現には核兵器保有国を巻き込んで核軍縮を進めることが不可欠でありますが、現状では、核兵器禁止条約はどの核兵器国からも支持を得られていない状態であります。
また、我が国周辺には北朝鮮の核・ミサイル開発など不透明、不確実な要素が存在し、軍事活動の活発化の傾向も顕著となっております。我が国の安全保障を確保するためには米国による核抑止力は不可欠でありますが、核兵器禁止条約はそのような抑止力そのものを否定しております。
井上委員からベルギー、NATO加盟国のお話ありましたが、東西冷戦下でSS2が自分に向けられているときにNATO加盟国がそのような動きをしたかというと、私はそれは違うのではないかなと思っております。
現実的に核軍縮を前進させる道筋を追求していくこと、これが適切であると考えておりまして、我が国として核兵器禁止条約に署名する考えはございません。
○井上哲士君 これまで政府は、核兵器について、人道主義の精神に合致しないものではあるが、実定国際法に違反するとまでは言えないと答弁をされてきましたけど、この考えは変わりないんでしょうか。
○外務省総合外交政策局 軍縮不拡散・科学部長(本清耕造君) お答え申し上げます。
政府としましては、核兵器の使用は、その絶大な破壊力や殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考えており、現在もその考えに変わりはございません。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 答えますか。
本清さん。
○政府参考人(本清耕造君) 失礼いたしました。
一般に、条約が国際法、拘束力を有するのは当事国に対してのみであり、第三国に対しての拘束力は有しないと考えております。
また、核禁条約は核兵器国等多くの国が締結しておらず、その内容が直ちに慣習国際法化するとは考えておりません。
○井上哲士君 直ちに慣習法化するとは考えていないと言われましたけど、核兵器禁止条約が発効してそういう国際法ができたと、こういう事実は当然認められますね。
○外務省国際法局長(岡野正敬君) 委員御指摘の、条約が発効したというのは一つの事実でございます。
この条約がどこまで拘束力を持つかというのは別の問題ということでございます。
○井上哲士君 確かに、条約が拘束力を持つのは締約国だけです。それは事実です。しかし、核兵器を違法とする国際的規範が生まれたということは、核保有国に対する道義的、政治的圧力になるわけですね。そのことは、特に人道に関する条約が非締約国にも大きな影響を及ぼしたことにも示されていると思います。
日本は対人地雷禁止条約、クラスター弾の禁止条約を批准をしておりますが、それぞれの批准国の数及び主な保有国である米、ロシア、中国、その参加状況、いかがでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) お答え申し上げます。
二〇二一年三月十六日時点で、対人地雷禁止条約の締約国・地域数は百六十四、クラスター弾に関する条約の締約国・地域数は百十と承知しております。
なお、御質問いただきました米国、ロシア、中国については、両条約の締約国ではございません。
○井上哲士君 この二つの条約は、この生産、輸出、使用などを禁止しておりますけれども、この条約が発効以降、対人地雷やクラスター弾の使用状況はどういうふうに変わったでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) お答え申し上げます。
対人地雷禁止条約の発効以来、締約国会議の成果文書等によれば、条約締約国によって五千三百万発の貯蔵地雷が廃棄され、過去五年で八百平方キロメートルの地雷原が除去されたなどの成果が上がっております。
クラスター弾については、締約国会議の成果文書によれば、条約発効以来、締約国によって百五十万発のクラスター弾、一億七千八百万発のクラスター子弾が廃棄されているという状況でございます。
○井上哲士君 締約国でないアメリカはどうでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) アメリカについては締約国でないので、こういった状況については明らかになっておりません。
○井上哲士君 アメリカは、二〇一四年に対人地雷を使用しないという政策発表しました。まあ北朝鮮には除くとなっていますが、それをトランプがひっくり返したということはありますが、こういう影響があるんですね。
さらに、この生産、輸出はどういうふうに変化をしたでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) 地雷を生産していた五十か国のうち三十六か国がこの対人地雷の条約に入ったことによって、こういった兵器の生産国及び輸出入の数が減少したということは言えるかと思います。
一方、条約の非締約国についてはこれらについて報告する義務がないため、詳細については不明でございます。
○井上哲士君 あとは、アメリカのテキストロンとオービタルATKという二社は、このクラスター弾の条約発効後、その製造を中止をしております。
輸出入についてはどうでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) 輸出入につきましても、先ほどの生産国の数が減少したことに伴い減少したものと推察されます。
○井上哲士君 これ、条約発効後、対人地雷は、この未加入国を含めて輸出入は確認をされておりません。ですから、条約の非締約国にも大きな影響を与えているわけです。
その背景に、条約発効後、対人地雷やクラスター弾を製造する会社には投資をしないという流れの広がりがありますが、これどのように把握をされているでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) お答え申し上げます。
対人地雷製造企業、クラスター弾製造企業の投資に関する動きについて、政府として必ずしも網羅的に把握しているわけではございませんが、報道等を通じて、委員御指摘のような、例えばクラスター弾については全国銀行協会による申合せ等があることは承知しております。
○井上哲士君 全国銀行協会は、クラスター弾の製造を使途とする投融資の禁止を宣言をいたしましたし、国際的にも、世界の主要金融機関はそういう企業への投融資を禁止するようになりました。この金融機関も条約によって成立した国際規範を無視することはできないということを示していると思うんですね。
外務大臣に追加してお聞きしますけど、火力発電推進企業にもこういうダイベストメント広がっていますが、こういうダイベストメントが及ぼすこの影響についてどのように評価されているでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) 御質問の件については事前通告をいただいていなかったので、質問、お答え......(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) もう一回行きますか。
井上哲士君。
○井上哲士君 事実関係はちゃんと事前通告しますけど、これ政治家としての認識ですから答えてください。
ダイベストメントが及ぼす影響力についてどうお考えでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) ダイベストメントが及ぼす影響、それぞれの捉え方があると思います。慎重に検討したいと思います。
○井上哲士君 大変残念な答弁ですが。
米国の軍備管理協会のアームズ・コントロール・トゥデイという電子版に、核兵器禁止条約、次は何かという記事が掲載されました。これによりますと、今指摘したように、製造、使用、投資に関する対人地雷禁止条約、クラスター弾禁止条約の先例は、条約が非締約国の行動にも影響を及ぼし得ることを示すと述べております。同様の指摘は様々あるわけですが、今幾つか例を挙げました。
非人道的兵器を禁止する条約が非締約国にも影響を及ぼしているということについての認識は、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 恐らく、兵器の戦略性等々を考えたときに、対人地雷、そしてクラスター弾と核兵器は同じレベルでは比較できない問題だと思っております。
○井上哲士君 いや、核兵器について聞いているんじゃないんです。一般論としてお聞きしています。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) ちょっと待ってください。もう一度、井上哲士君、質問をよろしくお願いします。
井上哲士君。
○井上哲士君 非人道的兵器を禁止する条約が非締約国にも影響を及ぼしていると、現に、そのことについての認識です。
○国務大臣(茂木敏充君) それは、対人地雷であったりとかクラスター弾の話をされているんだと思います。
その上で、私は、核兵器についてはそれとは同じレベルの問題ではないというふうなお答えをいたしております。
○井上哲士君 日本が参加しているクラスター弾や対人地雷禁止条約が、非締約国、例えばアメリカなどにも影響を及ぼしていることについての認識を聞いているんです。
○国務大臣(茂木敏充君) それは、今から三回目の質問に対してお答えしたとおりです。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 茂木外務大臣、お答えになりますか。(発言する者あり)
茂木外務大臣。
○国務大臣(茂木敏充君) 御質問の影響については、その捉え方、また分析は様々だと考えていますとお答えいたしました。
○井上哲士君 今丁寧に、私、事実挙げたんですけどね。
私は、この非核、核兵器禁止条約も非締約国に影響を及ぼしている、及ぼすと思いますが、この核兵器は人類と共存できないという被爆者の訴えが世界を動かして、この条約の発効になりました。
NATOの元事務総長を含むNATO加盟二十か国と、日本、韓国などの大統領、首相、外務大臣、防衛大臣経験者五十六人が、昨年九月に、核戦争の危険を訴えるとともに、核軍縮を進めて核兵器禁止条約に参加するよう呼びかける公開書簡を発表いたしました。
これ、大臣、御覧になったでしょうか。どう受け止められたでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 書簡、拝見をいたしました。パラ四については私の理解力を超えているところがある、このように感じております。
○井上哲士君 それだけじゃないんですね。NATO本部がある、アメリカの核兵器が配備されているベルギーでも、昨年十月に誕生した新政権が禁止条約によって多国間の核軍縮を更に加速させられるような方法を模索するという方針を発表して、注目をされております。
さらに、核兵器製造企業への投資を中止する動きも広がっておりますけれども、これ、どう把握されているでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) お答え申し上げます。
委員御指摘のような報道が日本の生保及び銀行等で検討されているという旨の報道には接しているところでございます。
○井上哲士君 オランダのNGOの調べでは、採択以来、世界で九十四の銀行、金融機関が核兵器製造企業への投資をやめていると。引き揚げられた投融資は少なくとも五百五十億ドルに上ると言われております。
いずれもこれまでにない動きなんですね。核保有国への圧力の中で、国際法で違法とされた兵器を使用することはますます困難になると思います。私は、この禁止条約への締約国が増えるほど、国際法としての規範力を強めて実際の核兵器削減につながることができると思うんですね。
核兵器国が参加していないので実効性がないなどとけちを付けるんじゃなくて、自ら条約に参加をして世界の国々や市民社会とともに核保有国を包囲して核廃絶を求めると、これが日本が取るべき立場ではないでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 核兵器禁止条約についての我が国の立場は、先ほど来丁寧に御答弁申し上げているとおりであります。
○井上哲士君 その上でいろいろ示して聞いているんですが、残念でありますが。
イギリスが、昨日、保有する核弾頭の上限を百八十から二百六十に引き上げる方針を発表いたしました。NPT条約第六条の核軍縮義務に明確に違反すると思いますけれども、昨日のニュースですけど、大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) 昨日発表された文書については承知をしております。
ただ、イギリス側からいろいろこの背景についての説明を受けなければならないというふうに考えているところでございます。
○井上哲士君 いや、背景にかかわらずですよ、核弾頭の上限を増やすんですから核軍縮義務に反していると、六条に反していると、大臣、明確に言えないんですか。
○国務大臣(茂木敏充君) 報道については承知をいたしております。その上で事実関係等をしっかり把握した上で検討したいと思います。
○井上哲士君 これほど明確なことに核軍縮義務違反と言えないようで、どうして橋渡しとか言えるのかということを言えるんですよ。
私は、核兵器国がこの六条をちゃんと守らない、核兵器の廃絶の義務をね、それが多くの国々がNPTを補完する形としてこの条約を作ったと、このことを改めて浮き彫りにしていると思うんですね。
結局政府は、先ほど来抑止力を言われますけれども、そもそも核抑止力論の根本が問われています。イギリスも抑止力を口実にして今回上限を増やすわけですね。
この間、国連総会で、核兵器の人道上の結末の決議が採択をされてきましたけど、昨年採択された声明の主文の一と二ではどういうふうに述べているでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) お答え申し上げます。
御指摘の決議では、主文パラ一において核兵器がいかなる状況においても二度と使用されてはならないことが人類の存続そのものにとっての利益であることが強調されております。第二パラグラフ、主文のパラ二でございますけれども、核兵器が二度と使用されないことの唯一の保証とは核兵器の完全な廃絶であることも強調されております。
○井上哲士君 日本は、二〇一三年以来、この声明や決議に賛成をしておりますけれども、核兵器の非人道性については当然この決議と同じ立場だということで、外務大臣、よろしいでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) 我が国はこの決議に賛成していることからも、その認識は一致していると考えております。
○井上哲士君 核抑止力というのは、結局核兵器の使用が前提なわけですよね。いざというときには核兵器を使って広島、長崎のような非人道的な惨禍を繰り返すことをためらわないということなわけですよ。
この国連決議に賛成をして、とりわけ核兵器の非人道性を身をもって体験した被爆国の日本の政府が、こういう非人道的兵器の抑止力に頼るという立場を取ることが許されるんでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 核抑止力に対する基本的な認識、若干、井上委員と違っているところがあるんじゃないかなと思っておりますけれど、核抑止力につきまして、必ず使うと、そういう前提の概念ではないと、そのように考えております。
それから、国連決議につきましては、今後の道筋について究極的にどうするかと、こういう観点から判断をいたしております。
○井上哲士君 しかし、日本はオバマ政権が核先制不使用に、出そうとしたときに反対したんじゃないですか。今後、核先制不使用は、どういう立場に立つということですか。
○政府参考人(本清耕造君) オバマ政権時代にいろいろな議論があったということではございますけれども、それについては申し上げることはできませんので、御理解いただければと思います。
○井上哲士君 当時大きく報道されました。
じゃ、今から日本としては核先制不使用は賛成だという立場を明言していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(本清耕造君) これからアメリカ政府側といろいろな議論をしていく必要があるかと思っております。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 今、本清さん答えました。
井上君。
○井上哲士君 大臣、答えてください。日本は核先制不使用は反対だと明確に言えるんですか。
○国務大臣(茂木敏充君) 御案内のとおり、まず、日本は核保有国でありません。その上で、日本として、抑止の観点から米国の核に依存をするという形になります。当然相談をしていくことになります。
○井上哲士君 答えていないんですよ。先ほど使用が前提でないようなこと言われましたけど、結局抑止力は使用するということなんでしょう。違うんですか。
○政府参考人(本清耕造君) 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、核抑止を含む抑止が我が国の安全保障を確保していく上で基礎であることは変わりございません。
○井上哲士君 いや、その核抑止というのは、非人道的である兵器である核兵器を使用するということを排除していないんじゃないですかと、それを聞いているんです。
○政府参考人(本清耕造君) 委員御指摘の観点も含めて、いろいろな核軍縮の議論をこれからも進めていきたいと、このように思っております。(発言する者あり)
○国務大臣(茂木敏充君) 静かに、静かに。
政府としては、核兵器の使用、これは絶大な破壊力や殺傷力ゆえに、国際法の思想的基盤である人道主義の精神に合致しないと、このように考えておりまして、現在もその考え方に変わりはございません。
○井上哲士君 結局、核兵器の先制不使用には賛成ということも言われませんでした。
私は、核兵器の非人道性の批判と核抑止への依存というのは両立し得ないと思います。これと決別をして核兵器禁止条約に参加をして、核廃絶の先頭に被爆国政府こそ立つべきだと強く申し上げまして、質問を終わります。