○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
辺野古新基地建設の埋立土砂の問題についてお聞きいたします。
政府は、当初、辺野古の埋立てに使う土砂は沖縄県外を中心に調達する計画でしたが、昨年四月の設計変更の際にこれを変更しました。お手元の資料のように、調達候補地として沖縄県内を大幅に増やして、そのうち七割が沖縄戦の激戦地である沖縄南部地域となっております。戦没者の骨が混じり、血や肉が染み込んだ土地を米軍基地建設の埋立てに使うなど、遺族の心情を踏みにじって、そして戦没者を冒涜するものだと、こういう憤りの声が上がっております。先日は、四十年近くボランティアとして遺骨収集に関わってこられたガマフヤーの具志堅隆松さんが抗議のハンストも行われております。
まず、厚労省にお聞きしますけれども、国は一九五二年より戦没者の遺骨収集を行ってきましたが、国に収集を義務付ける法的根拠はありませんでした。中心を担ったのは旧軍人軍属の方々、そして御遺族やボランティアの方々の熱心な活動でありました。二〇一六年に戦没者の遺骨収集の推進に関する法律が作られて、遺骨収集は国の責務となったわけでありますけれども、なぜこの法律が作られたのか、また、この同法に基づく集中実施期間における地域ごとの取組の方針の冒頭にはどうそのことが明記されているか、まずお答えいただきたいと思います。
○厚生労働省 大臣官房審議官(岩井勝弘君) お答え申し上げます。
戦没者の遺骨収集の推進に関する法律は、さきの大戦から長期間が経過し、戦没者の御遺骨を始め、さきの大戦を経験した国民の高齢化が進展している中、いまだ多くの御遺骨の収集が行われていない現状に鑑み、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的かつ確実に講じることを目的として、議員立法により成立したものでございます。
この法律に基づき、政府においては戦没者の遺骨収集の推進に関する基本的な計画を策定しております。その計画の一部である、御指摘の集中実施期間における地域ごとの取組方針の冒頭においては、一柱でも多くの遺骨を早期に収容又は本邦に送還し、遺族に引き渡すことが国の重要な責務であるとの認識の下、遺族の心情に鑑み、遺骨の尊厳を損なうことのないよう、丁重な配慮をしつつ、この取組方針に基づく戦没者の遺骨収集を推進するものとすると記されております。
○井上哲士君 戦後長期間たって国は幕引きを図った。そういう下で、議員立法によって、全会一致でこの法律は作られました。遺族会の皆さんの思いも込められております。つまり、たがをはめたわけですよ、議員立法で、国に。
この法律の第三条の国の責務では、「厚生労働大臣は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を実施するに当たっては、その円滑かつ確実な実施を図るため、外務大臣、防衛大臣その他の関係行政機関の長との連携協力を図るものとする。」と明記をされております。
戦没者の遺骨を収集し御遺族に引き渡すということは、この国の一員として防衛省も当然責務を負っていると、こういう認識でよろしいでしょうか。
○防衛大臣(岸信夫君) 遺骨収集推進法におきましては、国は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を総合的に策定し、かつ確実に実施する責務を有するとされております。その上で、関係機関の長と、厚労大臣は、防衛大臣を含みます関係機関の長と連携協力をするという旨が規定があります。
この総合的な政策体系として、同法に基づく基本計画が閣議決定されておりまして、防衛省としては、厚労省に対して、硫黄島における遺骨収集に係る輸送その他の必要な支援、自衛艦等の運航に関して戦没者の遺骨の送還、防衛研究所の有する情報及び知見の提供、こういった連携協力を行うこととされており、これまでも厚労省からの依頼に基づいて必要な協力を行ってきているところです。
その上で、沖縄における遺骨収集については、厚労省と沖縄県が役割を分担して遺骨収集を進めており、開発業者及び採石業者が作業中に御遺骨を発見した場合、市町村、警察へ通報し、沖縄県が設置した戦没者遺骨収集情報センターが御遺骨を収容する仕組みが構築されていると、このように承知をしております。
こうした関係機関の連携によって、遺骨収集推進法の趣旨、目的に即して戦没者の遺骨収集が進められております。
○井上哲士君 国の一員として、当然防衛省も、法律に、この計画に明記をされている、重要な責務を負っているということを自覚をしていただきたいと思うんですね。
この基本計画に基づいて、沖縄ではどのように遺骨収集が取り組まれてきたんでしょうか、厚労省。
○政府参考人(岩井勝弘君) さきの大戦におきまして、凄惨な地上戦を経験し、多くの尊い命が失われた沖縄においては、戦後間もなくより沖縄の人々の手により戦没者の遺骨収集が行われてまいりました。今日においては、厚生労働省と沖縄県が役割を分担して遺骨収集を実施しております。
具体的には、厚生労働省は、法に基づく基本計画に即して、大規模な地下ごう等重機による掘削が必要な大規模な遺骨収集を実施し、沖縄県は、県民等からの情報により、地表付近で発見された御遺骨について遺骨収集のボランティアと連携して遺骨収集を実施しております。地上戦を経験した沖縄においては、遺骨収集のボランティアや開発業者等が御遺骨を発見した場合、市町村等へ通報し、沖縄県の戦没者遺骨収集情報センターが御遺骨を収容する仕組みが構築されております。
こうした関係機関の連携により、遺骨収集推進法の趣旨、目的に即して戦没者の遺骨収集を進めているところでございます。
○井上哲士君 沖縄は国内唯一の地上戦の場所になりました。本土決戦を遅らせる目的の捨て石作戦で住民を巻き込んだ悲惨な地上戦となって、日米二十万人以上が犠牲になりました。一般住民は九万四千人が犠牲となって、その半数以上がこの南部で亡くなっております。
軍人・軍属の死亡者のうち、沖縄県出身者は二万八千二百二十八人で、他の都府県出身者は六万五千九百八人なんです。これ、全国の問題でもあるんですね。沖縄県はまだ二千七百九十人分の遺骨が残っているとしております。その多くがこの最激戦地となった南部地域です。
私、ボランティアの具志堅さんからお話を聞く機会もありました。当初、ガマに入ると下半身しかない遺骨があったというんですね。何でか分からんかったと。よく見ると、天井に金歯があったと。つまり、手りゅう弾で自決をして、上半身がぶっ飛んでいるんですよ。そんな遺骨すらあったというお話も私は聞きました。
お手元の資料の二枚目は、最近ガマから発見されたものであります。これは埋葬されたもののようで全身の遺骨が残されておりますが、こうしたものだけではなくて、砕けて土砂に混じっている遺骨もあります。そういう遺骨も含めて収集して御遺族に返還をする対象であると、こういうことで、厚労省、いいでしょうか。
○政府参考人(岩井勝弘君) 先ほども申し上げましたように、沖縄県におきましては厚生労働省と沖縄県が役割を分担して遺骨収集を進めております。遺骨収集のボランティア、開発業者等が御遺骨を発見した場合は市町村等へ通報し、沖縄県が設置した戦没者遺骨収集情報センターが御遺骨を収容する仕組みが構築されております。
遺骨収集におきましては、発見された御遺骨について、大腿骨そのもののような大きなものから砕けたものまで、戦没者の御遺骨と判断されたものについては収集しております。
○井上哲士君 近年、DNA鑑定がやっと導入されて、より身元の特定が可能になりました。先ほどの白議員の答弁に、地域を限定しないということもありました。沖縄でも鑑定する遺骨の対象が広がって、より御遺族に返還をする可能性、その努力が重ねられているんですよ。
私は、この地域からの土砂採集は、こうした関係者の営々とした遺骨収集、遺族への返還の取組に大きな混乱をもたらし、国の責務にも反するものだと思います。ましてや、米軍基地の埋立てに使うというのは、戦没者を冒涜するものと言わなければなりません。
この問題について、五日、沖縄防衛局の局長は、遺骨が混入した土砂を資材として使用することはあってはならないという発言をされておりますけれども、これは防衛省全体の考えだということで、防衛大臣、よろしいでしょうか。
○防衛省 整備計画局長(土本英樹君) お答え申し上げます。
委員御指摘の沖縄防衛局長の発言につきましては、一般論として、土砂を利用する工事においては、普天間飛行場代替施設建設事業とそれ以外の工事とを問わず、御遺骨のことを十分に考えて土砂の調達と利用が行われるべきという趣旨を申し上げたものとの報告を受けているところでございます。
その上で、変更承認後の埋立てに使用する土砂の調達先につきましては工事の実施段階で決まるものでございまして、県内、県外のどちらから調達するかも含めまして現時点で確定しておりませんが、御遺骨の問題は大変重要であると考えていることから、こうしたことも踏まえまして、土砂の調達につきましては今後しっかり検討してまいりたいと考えているところでございます。
○井上哲士君 辺野古の埋立てに問わず、遺骨が混入した土砂を資材として使用することがあってはならないと、そういう立場に立つならば、南部地域の土砂を辺野古の埋立てに使用することなどできないはずだと思うんですね。
この間、目視の事前調査、遺骨に配慮した事業という答弁が言われてきましたけど、これ極めて困難なんです。具志堅さんは、昨年九月から、糸満市の米須でいまだ手付かずのガマが見付かる、そして通う中で地中から砲弾の破片や遺骨を発見したと言われております。もし業者が気付かずに採掘すれば御遺骨はもう粉々になると、こういうことを語っておられます。別のボランティアの話では、山野での御遺骨の発見や収集は困難を極めると。ふと思い立って足下のくぼみを熊手でひっかくと、そこから小石とほとんど見分けの付かないような骨片が出てきたのである、まるで大地から湧き出すように御遺骨が現れると言われております。これが実態なんですね。
大臣、最近、何度も目視で確認すると言われていますけれども、本当にできるのかと。配付した資料の三枚目を見ていただきますと、手の上に乗った御遺骨の写真がありますよ。これ、上二つは遺骨で、下は石灰岩のかけらなんですね。これ見て、目視で確認できると、大臣、思われますか。
○国務大臣(岸信夫君) 御遺骨については、なかなか、今この写真を見ているわけですけれども、非常に見分けが付きにくいような状況というのは前回の議論の中でもあったかなというふうに思います。その上で、変更承認後の土砂の調達先については、まだ決まっているものではございません。
こうした問題も含め、踏まえて、土砂の調達先については今後しっかり議論を、検討してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 極めて困難なんです。見たら分かると思うんですね。
この沖縄戦から七十六年たっていますから、遺骨は土や落ち葉に埋もれていると具志堅さん言われています。一・五メートル四方の場所で、表土を二十センチほど除いた後に棒やブラシで骨を探すだけで一日掛かりだと言われているんですね。大量に土砂を業者が調達するときに、そんなことできるはずがないんですよ。
そして、盛んにまだ決まっていないと言われるんですけど、沖縄本島からの土砂の七割を採取する候補地がこの南部地域になっているわけですね。それを皆さんが示しただけで、それを当て込んだ動きがもう始まっているんです。
糸満市の米須で新たに開発届を出している予定業者は、実績を残せば可能性が出てくると、こういうふうに述べて、埋立事業への参入を視野に入れているということを地元紙に語っているんですね。この業者は、この表土の剥離に重機を使用した際に遺骨が損傷する可能性について聞かれて、多少あると思うが表土を搬出するわけではないとも述べているんですね、地元紙で。
これね、多少でもあってはならないんですよ。国が南部地域を調達候補にしていることが、こういうことの引き金になっているんです。ですから、本当にこの遺族の心情に鑑み、遺骨の尊厳を損なうことのないよう丁寧な配慮をしつつ取り組むという国の方針に基づくならば、もう南部地域は対象から外しますと、そのことを今明確にしなければ、私は取り返しの付かないことになると思いますが、大臣、お考えはどうでしょう。
○国務大臣(岸信夫君) 繰り返しでございますけれども、この変更承認後の埋立てに使用します土砂の調達先については、工事の実施段階で決まるものであります。県内、県外どちらからの調達にするかも含めまして、現時点では確定をしておりません。
また、さきの大戦において凄惨な地上戦を経験した沖縄では、今もなおこの遺骨の収集が、戦没者の遺骨の収集が進められておるところでございますが、変更承認後の土砂の調達先、これはまだ決まっておりませんが、御遺骨の問題としては大変重要な問題ではございます。
そういうふうに考えておりますことから、こうしたことをしっかり踏まえて、土砂の調達についてこれから、今後しっかり検討してまいりたいと考えます。
○井上哲士君 今申し上げましたように、候補地として示しただけでこういう動きがもう出ているんです。まだ決まっていないじゃなくて、今ここを外すということを明確にいただきたいし、私は、幾重にも県民の声を踏みにじるような辺野古建設のそのものの断念も求めまして、質問を終わります。