○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
通告よりもテーマの順番を入れ替えまして、先に米軍ヘリの低空飛行問題についてお聞きいたします。
毎日新聞が首都東京での米軍ヘリの低空飛行を連続報道いたしました。写真とともに動画も公開されております。衆議院の答弁見ておりますと、両大臣とも動画を見ておられるようであります。米軍ヘリがこの都心のビルの上をかすめるように飛んだり、スカイツリーの展望デッキ周辺を八の字を描くように飛行するなど、事故があれば大惨事になると、非常に衝撃的な映像でもありました。毎日新聞は、昨年七月以降、航空法の最低安全高度以下での飛行を十二回、その疑いがある飛行を五回、計十七回確認したとしております。
岸大臣は、三月二日に我が党の宮本衆議院議員の質問に米側に確認中というふうに答弁をされました。今日の午前中も同じような答弁があったんですが、先ほど大塚委員からありましたように、例えばその日に米軍機が飛行したのは間違いないけれども高度については確認中であるとか、一体どこまで確認をできているのか、まずお示しいただきたいと思います。
○防衛大臣(岸信夫君) 御指摘の米軍の飛行については、在日米軍のハイレベルを含め、引き続き様々なやり取りを今行っているところでございます。
現時点で米側からは、ICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に違反する飛行があったとは確認されていない、報道されている飛行から時間がたっていることもあり、詳細な事実関係の確認が容易ではない、もちろん飛行に当たっての安全確保は最優先事項である、米軍の飛行はICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われている、各部隊には米軍の規則に従った飛行を徹底するよう改めて指示したとの説明を受けています。
防衛省としては、引き続き、米側に対して安全面に最大限配慮し、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう強く求めていくとともに、飛行に当たっての安全確保は最優先の課題として日米で協力して取り組んでまいりたいと考えています。
○井上哲士君 結局、事実関係よく分かんないんですね。報道では、今年の一月五日の飛行もあるんですね。時間がたっているので詳細な事実が確認は容易ではないということ、全く通用しないと思います。
国土交通省来ていただいておりますが、国土交通大臣が衆議院で、この飛行があったとする日付どおりに米軍機の飛行計画が通報されている、アメリカ側からと答弁されておりますが、その中身を確認をしたいと思います。
○国土交通省 航空局次長(海谷厚志君) お答え申し上げます。
米軍機につきましては、航空法第九十七条及び日米地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律に基づきまして、飛行する場合には国土交通大臣に対しまして飛行計画の通報が必要となります。
そのうち、自衛隊飛行場から出発する航空機につきましては、航空法第百三十七条に基づきまして、飛行計画の受理等の国土交通大臣の権限が、これは防衛大臣に委任されてございます。そのため、米軍機が自衛隊飛行場から飛行する場合には、防衛大臣に対して飛行計画の通報が必要となります。
これまで新聞紙上、新聞記事におきまして都心上軍を米軍機が飛行していたとされる日のうち、直近三か月分までを国土交通省及び防衛省の両者におきまして確認いたしました結果、これらの報道にあった全ての日において都心上空を飛行した可能性のある米軍機の飛行計画が米軍から通報されていたことが確認できております。
この旨、三月十九日、国土交通大臣から御答弁申し上げたところでございます。
○井上哲士君 報道された日付と同じ日に飛行する旨が米軍からちゃんと通報されているということなんですね。当然、米軍側には運航記録も残されているはずなわけです。ですから、分からないはずがないと私思うんですね。
その上で、そもそも航空法のこの最低高度が定めてある趣旨、そしてその概要、それからヘリが適用になるのかどうか、国土交通省、お願いします。
○政府参考人(海谷厚志君) お答え申し上げます。
航空法第八十一条の規定に基づきまして、航空機は、離陸又は着陸を行う場合等を除きまして、一定以下の高度で飛行してはならないこととされております。この規制は、仮に飛行中の航空機に不具合が発生した場合でありましても、地上の人や物件等に危険を及ぼすことなく不時着等の措置がとれるような余裕を飛行高度において求めているものでございます。
具体的には、有視界飛行方式の場合には、人又は家屋の密集している地域の上空では、当該航空機から水平距離六百メートルの範囲内にある最も高い障害物の上端から三百メートルの高度以下で飛行してはならないと、そういった規定などが設けられてございます。また、この規定は航空法又は特別法上適用が除外されていない場合には回転翼航空機、いわゆるヘリコプターに適用されます。
なお、米軍に対しては、日米地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律によりまして、この航空法第八十一条の最低安全高度の規制は適用除外となっているところでございます。
○井上哲士君 過去、私質問した際に、元々戦闘機などが三百メーターで飛行することは想定していなくて、取材とか遊覧飛行を行うヘリコプターなどが低空飛行を行うときの安全性の確保を主な目的としているという答弁がありましたけど、そういうことで間違いないですね。
○政府参考人(海谷厚志君) これは平成二十二年の当時の国土交通省の前田参考人の答弁であったと承知しておりますけれども、この答弁は、通常、計器飛行方式で飛行する航空会社の航空機が最低安全高度付近を飛行することは離着陸する場合を除いて想定しにくいと、そういうことから、最低安全高度の規制は、取材や遊覧飛行を行うヘリコプターですとか小型機ですとか、そういうものの飛行の安全の確保に関する場合が多い旨を答弁したものと、そういうふうに理解してございます。
○井上哲士君 ですから、戦闘機が地上三百メーター以下を飛ぶというのは本当にあってはならないことでありまして、むしろこれはヘリなどがそういう取材飛行をするときでも、これ以下は飛んではならないというものなんですね。ですから、ヘリが対象外だなんておおよそ話にならないことなわけでありますが。
外務大臣は、この間、米軍は各部隊に米軍の規則に沿った飛行を徹底するよう改めて指示しているという答弁、防衛大臣もありました。ところが、重大なのは、アメリカ側が毎日新聞に対して、低空飛行訓練についての九九年の日米合意について、ヘリは含まれないと文書で回答したとされております。ですから、規則は徹底していると、部隊にといっても、その規則の中身が日米で食い違っているということであれば、この問題の解決はないんですよ。
一方、外務大臣は、九九年合意に、航空機の定義はないが、飛行において例外はないとも答弁をされています。飛行において例外がないということは当然ヘリも含むということになるわけでありますが、ここに日米間の重大なそごがあるわけです。ですから、ハイレベルも含めたやり取りの中でこのヘリは例外ではないんだということを明確に伝えて解決することが必要だと思いますが、どのようにされるんでしょうか。
○外務省 北米局長(市川恵一君) お答え申し上げます。
本件につきましては米側とは様々なやり取りを行っておりますが、今般、米側からは改めて、飛行に当たっての安全確保は最優先であり、従来から米軍の飛行はICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われているとの説明を受けております。また、先ほど委員も御紹介されておりましたが、各部隊には米軍の規則に従った飛行を徹底するよう改めて指示が出されていると、こういった旨の説明も受けてございます。
我が国における米軍の運用に際しては、安全性が最大限確保されることは当然のことと考えておりまして、茂木外務大臣からも、シュナイダー在日米軍司令官、あるいはデービッドソン・インド太平洋軍司令官、さらには先般訪日したブリンケン国務長官など、まさに米側の最高レベルに対して累次にわたり申し入れてきております。
引き続き、飛行に当たっての安全確保は最優先課題であって、日米で協力して取り組んでまいりたいと思っております。
以上です。
○井上哲士君 安全配慮をするべきだと言って誰も反対しないと思うんですね。アメリカ側も、そんなことしませんなんて言うはずがないと思うんですよ。だから、そのときの基準で、ルールが一致しているのかと、幾ら規則を徹底するといっても、アメリカ側は毎日新聞に、ヘリは含まれないと、九九年合意に、文書で出していると報道されているんですね。この認識をアメリカ側にただしてこれをきちっとしないと、これ問題解決しないと思うんですね。アメリカ側にこういう毎日新聞に文書で示したということは確認されているんでしょうか、やり取りの中で。
○政府参考人(市川恵一君) 米側とは、先ほど申し上げましたとおり様々なやり取りを行っております。その逐一をつまびらかにすることは差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、米側からは、ICAOのルールあるいは日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われる米軍の飛行に例外があるとは承知していないという、米側の説明に基づけば、ICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われる米軍の飛行に例外があるとは承知しておりません。
○井上哲士君 日本側は例外がないと承知しているんでしょうけれども、アメリカ側も同じ認識なんですかと、違うんじゃないですかと、だったらその食い違いをたださなくちゃいけないでしょうということを聞いているんですから、ちゃんと答えてください。
○外務大臣(茂木敏充君) 米側の認識につきましては、今、市川局長の方から答弁があったような説明を受けております。当事者であります米側からそういった説明を受けていると。マスコミの取材、どういう取材をされたのか、どんなやり取りがあったかについては承知はいたしておりません。
○井上哲士君 これ、個々の取材、口頭ではなくて文書で出したって毎日新聞書いているんですね。それをきちっと私は確かめていただいて、安全の確保ということは誰もが必要だと思っているわけですから、そこのそごがないようにするということが今必要だと思うんです。
それで、九九年の日米合意が、米軍機は日本の航空法の適用除外とした上で、日本中どこでも低空飛行訓練を可能にしております。日本の航空法の遵守というのはあくまでもアメリカ側の判断になっていると、そういうものでありますが、この合意の下で、この間、私も質問していますように、全国各地で低空飛行訓練の被害が広がっております。合意の実効性が問われていると思うんですね。さらに、今回はヘリは適用外だというアメリカ側の姿勢も明らかになりました。
当時、どういうやり取りがあったのかと、この問題について、私はしっかりした検証が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(市川恵一君) 当時から本件につきましては、低空飛行訓練等につきましては米側とは様々なやり取りを行っておりますが、米側からは今般改めて、飛行に当たっての安全確保は最優先でありまして、従来から、米軍の飛行はICAOルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われているとの説明を受けております。また、各部隊には米側の、米軍の規則に従った飛行を徹底するよう改めて指示した旨の説明も受けております。
繰り返しで恐縮でございますが、ICAOのルールや日本の航空法と整合的な米軍の規則に従って行われる米軍の飛行に例外があるとは承知しておりません。当時の交渉、協議の経緯を検証する必要があるとは考えておりません。
○井上哲士君 日本は例外ないと言っていても、アメリカ側は含まれないと言っているから私は言っているんであって、当時、このヘリの扱いということが議論になったのか、なっていないのか、そこはやっぱり明らかにしていただきたいと思うんですね。
当時の日米間の協議の議事録の提出を委員会に求めたいと思います。委員長、お取り計らいお願いします。
○委員長(長峯誠君) 後刻理事会にて協議いたします。
○井上哲士君 毎日の記事では、米軍は、一月五日には米海軍ヘリのシーホークが渋谷駅や六本木ヒルズ周辺を低空で旋回して、六本木の米軍ヘリポートに着陸して、僅か数十秒後に離陸する様子が書かれております。離着陸を五回繰り返したこともあって、離着陸時に乗降者もいないと、ですから要人輸送じゃないと、これはタッチ・アンド・ゴーの訓練ではないかと指摘をしております。
それから、昨年八月二十七日、神奈川方面からシーホーク二機が東京スカイツリーを中心に八の字を描くような飛行をしながら急旋回を繰り返す格好で、展望デッキ付近を六回通過したと。これは、海上で敵の潜水艦を探すための訓練か、上空で待機するための訓練ではないかという専門家の指摘もされております。
都心上空で米軍がいわゆる要人輸送ではなくて訓練をしているということは、政府としては掌握してはる、しているんでしょうか。確認されているんでしょうか。まずそのことをお聞きします。
○政府参考人(市川恵一君) 米軍の飛行訓練、これは、パイロットの技能の維持あるいは向上を図る上で必要不可欠な要素であるということで、日米安保条約、安全保障条約の目的達成のために極めて重要であるというふうに考えております。
ただし、これは都心であろうとなかろうと米軍は全く自由に飛行を行ってよいというわけではないのは当然でございまして、米軍の運用に際しては、公共の安全に妥当な考慮を払い、安全性が最大限確保されるべきということは言うまでもございません。
以上でございます。
○井上哲士君 安全性の確保とか最低安全高度以下で飛んではならない、これは当たり前だと思うんですよ。しかしですね、しかし、一国の首都であって、世界有数の密集地域の上空を他国の軍隊が仮に最低高度を守ったとしても訓練で使うということがあっていいのかと。それ許容しているんですか、日本政府としては。
○政府参考人(市川恵一君) 繰り返しになります。繰り返しで恐縮でございますけれども、都心であろうとなかろうと、米軍の飛行訓練というのは、パイロットの技能維持向上を図る上で必要不可欠な要素であって、安保条約の目的達成のために極めて重要だということは考えておりますが、繰り返しになりますけれども、米軍の運用に際しては、公共の安全、妥当な考慮を払い、安全性が最大限確保されるべきことは言うまでもございませんし、米側に対しては、その点最大限配慮するよう、住民の方々に与える影響を最小限にとどめるよう強く今後とも求めていきますし、飛行に当たっての安全確保は最優先の課題として日米で認識が一致しているところでございます。
○井上哲士君 一般論じゃないんですよ。繰り返しますけれども、一国の首都の上空です。そして世界有数の人口密集地ですよ。いろんな安全配慮したって事故は起きるときは起きるんです。だから、少なくとも首都上空での米軍の訓練はやるべきでないということは、僕はそれはもう独立国として明確に言うべきだと思いますよ。外務大臣、いかがですか。
○国務大臣(茂木敏充君) 今の議論を聞いていますと、要人輸送ではなくてタッチ・アンド・ゴーではないかということなんですけど、恐らくそれも必ずしも明確にタッチ・アンド・ゴーであるということが証明をされているということでもないんだと思います。
ただ、その上で、この飛行訓練も含めて、安全の確保というのは万全を期さなければいけないと思っておりまして、私もやっぱり、私が要請するからには、きちんとその、何というか、ハイレベルの要請をしなけりゃいけないということで、シュナイダー在日米軍の司令官、デービッドソン・インド太平洋軍司令官、さらには先日も、ブリンケン長官にもオースティン長官にもしっかり申し上げて、そういったことを徹底するように要請をしたところであります。
○井上哲士君 確かにタッチ・アンド・ゴーかどうかというのは分かりません。だけど、今の答弁あったように、首都上空での訓練は排除されていないんですよ、今の地位協定では。排除されていますか、岸大臣。
○防衛大臣(岸信夫君) 東京の上空であっても特に排除されているということではございませんので、米軍が訓練で使用することは可能でございます。
ただ、米軍の運用の詳細については、これは事の性質上、詳細については控えさせていただきたいと思います。
○井上哲士君 ですから、結局、今の地位協定の下で日本の上空どこでも勝手に米軍が訓練できるようになっていると。安全の配慮とか言われますよ。しかし、そもそもできるようになっているんですよ。そこを私は正すことが必要ですと思います。ですから、安保条約、ああ、日米地位協定自身でそういう訓練の規制ができるようにするし、日本の航空法の規定を適用させるという抜本改定必要だと思いますけれども、それまで待っておられませんから、少なくとも、茂木大臣、ハイレベルでいろいろやり取りするんであれば、少なくとも首都上空でのこういう、首都上空での低空飛行であるとか訓練はやってもらっては困るということは正面から言っていただくべきだと思いますけれども、重ねて、いかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 安全性の確保が最大限配慮されなければならない、最も重要だと。飛ぶ場所によって当然安全性というのは違ってくると。人口密集地であったり、そういった場所においては、よりそういったものに対する配慮というのは重要だと、そのように考えております。そういったことを踏まえて、米側に対しては、安全、安全の確保と、万全を期すように更に求めていきたいと思っております。
○井上哲士君 都心上空での訓練はやるべきでない、やってもらっては困るということは、明確に言われているんでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 米側の個別のやり取りにつきましては控えさせていただきますが、今申し上げた趣旨でしっかりと申入れを行っております。
○井上哲士君 それは、やっぱり一国の首都の、しかも世界有数の密集地の上で他国の軍隊が訓練をしているということを容認するということは、あってはならないと思います。
かつ、そもそも都心にこの米軍ヘリポートがあること自身が問われているわけですね。米軍基地の赤坂プレスセンターがあるわけですが、これは住宅密集地であり学校もあります。周辺住民は騒音や振動に悩まされておりますし、事故の不安ということにもさらされております。これ、戦後に米軍が接収をして、その後返還が決まったわけですけど、いまだに居座っているわけですね。都や港区は撤去、返還を要求しておりますし、港区議会も同趣旨の意見書を提出しております。今年二月四日には、区長、区議会正副議長、区議会の自民党、みなと政策会議、公明党、共産党、四会派の代表が防衛大臣に対して撤去を求める要請書も出しているんですね。これ、応えるべきじゃありませんか。
○国務大臣(岸信夫君) 赤坂プレスセンターは、米軍にとって都心へのヘリコプターによる要人の迅速な輸送等を可能にしている施設であります。日米安保条約の目的達成のために必要と承知をしているところです。
現時点においては返還は困難と認識をしておりますが、周辺におけるヘリコプターの運用に当たっては、騒音、航空機騒音等の周辺住民の方々への影響が最小限となるように米側に対して今後とも働きかけを行うなど、適切に対処してまいりたいと考えます。
○井上哲士君 先ほど申し上げて、元々返還することになっているものでありました、今回こういう事態が起きているわけですから、今のような答弁ではなくて、強く求めていただきたいということを申し上げておきます。
その上で、在留米軍経費の特別協定延長のことについて質問いたします。
本会議でも指摘したとおり、日米地位協定二十四条は、在日米軍の維持に伴う経費は米軍が全て負担することを定めておりまして、日本に負担義務はありません。にもかかわらず、一九七八年から、福利費等の負担を肩代わりしたのを皮切りに、以降、米軍が、米国が負担すべき経費の負担を行うようになって、その総額は八兆円近くになっております。
地位協定の改定もせずにどうして負担義務のない経費を負担するようになったのか、問われなければならない重大問題だと思います。当時、日本政府が義務のない負担の肩代わりを始めるに当たって、アメリカ側からどういう要求があって、日本はどういう判断をしたのか、防衛大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) この我が国によります在日米軍駐留経費負担については、一九七〇年代の半ばから、我が国の物価、賃金の高騰、また国際情勢、経済情勢の変動、こういったことによって、在日米軍の駐留に関して、米国が財政上の困難に直面していること等を勘案しまして、在日米軍の円滑かつ効果的な運用及び雇用の安定を確保するために、一九七八年度から基地従業員対策等として社会保険料等の労務費を、そして一九七九年度から提供施設整備費を日米地位協定の範囲内で負担することを開始したところであります。
○井上哲士君 参議院の調査室が作っていただいたこの資料にも、一九七八年六月、ブラウン米国防長官が来米した金丸防衛庁長官に対して、円高を理由により一層の在日米軍駐留経費の日本側負担増を求めたと、それに対して金丸長官が、思いやりの立場で努力を払いたいと、こう答えたということが明記をされております。
まさにアメリカ側の要求に応えたわけでありますけど、その下で、七八年から福利費や管理費などの労務費、さらに七九年からは格差給や語学手当等、さらには提供施設整備費を負担するようになったわけですが、これらがその地位協定の範囲内だと、負担可能だと判断した理由は一体何だったんでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 基地従業員対策等として負担している社会保険料等の労務費については、日米地位協定第二十四条1の規定によって米側に負担義務のある合衆国軍隊を維持することに伴う経費に該当しないことから、この経費について我が国が負担しているものでございます。
また、提供施設整備費については、日米地位協定第二条一の(a)に基づく施設及び区域の提供について、同協定第二十四条二において合衆国に負担を掛けないで提供するとされていることから、日本側の負担で施設を整備し、米側に提供しているものであります。
○井上哲士君 条文に照らしますと、とても納得できる話じゃない。拡大解釈としか私言いようがないと思うんですね。結局、説明が付かないから思いやりという言葉で負担をしたのではないかと思います。
昨年、アメリカの公文書でそのことが明らかになりまして、調査をした共同通信などが八月に報じました。それによりますと、アメリカが地位協定の規定にない労務費や施設の整備費を負担するように要求して交渉が本格化したと報じられております。七七年九月二十七日の在日米軍大使館による公電によると、日本の外務省はアメリカ側の負担要求に対して、創意工夫を凝らしても法的に容認できる余地がないと指摘をしたとしております。
つまり、日本側はアメリカの負担要求は法的には認められないと当時認識をしていたということを示すものでありますが、アメリカに対してこういうふうに、公電にあるように述べたというのは事実ですね。
○政府参考人(市川恵一君) 報じられております米側の公電でございますが、米側の公電でございますので、日本政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。
また、当時の日米間の協議内容の詳細を明らかにすることは差し控えたいと思います。
○井上哲士君 いや、これがその後の日本側の負担のずうっと広げていくルーツになるわけですから、明確にしていただかないと困るんですね。
さらに、この公電では、日本側には地位協定に付随する他の取決めについても変更圧力が国会で強まる懸念があるために、協定を改定せずに問題を解決する必要があると主張して、問題は政府解釈であって金額ではないと発言をして、拡大解釈ができれば最大限の負担をするという意向を示したと報じられております。
つまり、日本政府がアメリカの特権を保障した地位協定のいろんな規定に改定議論が波及することを恐れて、法的に容認できる余地がないと言っていたはずの協定を自ら拡大解釈して負担要求に応じることとしたと、こういう経過を明らかにしたものであり、重大だと思うんですね。
地位協定が全体を改定するという議論にならないように、違法と知りながら法を曲げて要求に応じることにしたと、これがそのときの経過だったということがこの公電でもはっきりするんじゃないんですか、いかがでしょうか。
○政府参考人(市川恵一君) 繰り返しで恐縮でございますが、報じられている米側の公電について、日本政府としてコメントすることは差し控えをさせていただきたいと思います。
○井上哲士君 アメリカは新たな負担を日本に担わせるための重要な交渉をしているわけで、公電がありもしない事実を本国に伝えるとは考えられません。事実、その後の経過はこのとおりになっているわけであります。
これ、大変重要な問題でありますから、日本側の当時の交渉記録を提出をしていただきたいし、あわせて、米国の公電も政府の責任において入手して提出するように求めたいと思います。委員長、取り計らいお願いします。
○委員長(長峯誠君) 後刻理事会にて協議いたします。
○井上哲士君 こうして協定に反する拡大解釈で負担を始めましたけれども、更に負担を拡大する上でも、それでは説明が付かなくなって始まったのが特別協定であります。
この改正議定書はただ期限を一年延長するもので、内容の見直し、負担の縮減は全く行っておりません。茂木大臣は時間が限られる中での交渉だったとしますけれども、そもそも本会議において指摘しましたように、財政審からも聖域視することなく見直せと言われているものをどうして更にそのまま延長することができるのか、財政規律を無視するのかという質問に対して、本会議では明確な答弁がありませんでした。改めて答弁を求めたいと思います。
○国務大臣(茂木敏充君) 財政制度等審議会、おやりになってどれぐらいの交渉能力持っているのか、私の想像を超えるところでありますが、今回は交渉に割くことにできる時間、これが大きく制約をされたと。これ、アメリカの政権交代、こういったこともあったわけでありまして、交渉の早期妥結を目指して米側とその後協議を行った結果、現行特別協定を改定して、その有効期間を一年間延長することについて米国政府側との間で意見の一致を見たわけであります。
バイデン政権が発足してすぐの、この早いタイミングで必要な合意に至ることができたことは、日米同盟の結束に対する両国の強いコミットメントを示すとともに、日米同盟の信頼性を高め、それを国際社会に発信するものだと高く評価をしています。そして、我が国のHNSの負担規模については、在日米軍の円滑かつ効果的な運用を支えるHNSは引き続き重要であるとの点を踏まえた上で、御指摘の我が国の厳しい財政状況、財政規律の重要性や、我が国を取り巻く安全保障環境等の各種要素を総合的に考慮し、主体的に判断し、今後もHNSが適正な内容、水準のものとなるように対応していく考えであります。
どの水準にするかとか、どういうことにするかと、交渉においてあらかじめこちらから明らかにすると、ネゴシエーションの専門用語ではアンカリングと言います。アンカリングをすると、そこから議論が始まるんですよ。決してそれは得なことにならないと、交渉においてはと、そのように、これまでの様々な交渉の経験から私は実感いたしております。
○井上哲士君 適切な内容、水準というふうに言われるんですけど、先ほど述べましたように、元々条約上、日本に負担義務がないものなんですね。そして、そういう点でいえば、適切な内容、水準って私ないと思うんですよ。そもそも、政府も暫定的、特例的、限定的な負担だと言っているわけですから、長期に続くのではなくて、やめるべきものだと思います。
しかも、在日米軍基地は、もう今や安保条約の極東の範囲を超えて、はるかに広い、世界的規模での米軍が自由に前方展開する拠点となっているわけですから、日本が巨額の負担をするような条約上の根拠も私は失われていると思います。
その上で、現行協定の五年間における負担実績について確認しますが、光熱水料について、これまでに負担上限額に達したことがあるのか、年度ごとに上限額と実際の日本側の負担実績を防衛省、示してください。
○防衛省 地方協力局長(鈴木敦夫君) 現行協定における光熱水料等の負担につきましては、約二百四十九億円を日本側負担の上限とし、米側の直近三か年の支払に要する経費の全部の平均に日本側の負担割合である六一%を乗じた額について、実績額として負担することとなっております。
その上で申し上げますと、今年度の実績はまだ確定していないため、昨年度までで、実績で申し上げれば、二〇一六年、平成二十八年度は約二百四十八億円、二〇一七年度、平成二十九年度は約二百四十七億円、二〇一八年度、平成三十年度は約二百三十二億円、昨年度は約二百十九億円と、現行協定内で負担上限に達したことはありません。
○井上哲士君 負担上限に達した年度がないわけですから、これ負担縮減の余地があると思うんですね。なぜそれを提起していないんでしょうか。
○政府参考人(鈴木敦夫君) 実績だけで、事実関係で申し上げます。
この光熱水料の日本側の負担と申しますのは、一九九一年、平成三年度に開始いたしました。このうち、上限額については二〇一一年、平成二十三年度から五か年、五か年、五年間の負担額に関する特別協定以降規定されたものであり、その額は現行協定と変わらず約二百四十九億円となっております。
その上で申し上げれば、二〇一一年、平成二十三年度から二〇一五、平成二十七年度までの五か年、五年間は全ての年度において上限額に達しておるというようなことが事実関係でございます。
○井上哲士君 この間、いろんなことがあって達していないわけですよね。そうであれば、そもそもそれは縮減を求めるべきであって、やるべきことさえやっていないと言われても仕方がないと思います。
さらに、娯楽施設についてお聞きします。
この間議論になりましたけど、沖縄県名護市辺野古の新基地建設は、そもそも選挙によって示された民意を一顧だにしないで強行されようとするもので許される余地はありませんが、それにとどまらず、関連して行おうとしている施設整備には更に別の問題があります。
キャンプ・シュワブ内でボウリング場やダンスホールを整備する方針が明らかにされておりますが、この計画について、施設整備の施設一件ごとの詳細な内容、それぞれの施設の建設の金額、予算計上の金額、そして、引渡し及び米国の利用開始予定の詳細について明らかにしていただきたいと思います。
○政府参考人(土本英樹君) お答え申し上げます。
キャンプ・シュワブの陸上再編工事といたしまして既存の福利厚生施設の再配置を行っておりまして、委員御指摘のボウリング場やダンスホールもその一部に含まれております。こうした工事につきましては、二〇〇六年に日米で合意されました再編の実施のための日米のロードマップに基づき、地元の負担軽減のために実施している米軍再編事業の一つとして行っているものでございます。
御指摘のボウリング場、ダンスホールは一つの施設として整備する計画としておりまして、現在、当該施設に係る用地造成工事の工事契約を約四・五億円で締結しているところでございます。
今後、用地造成工事の進捗や米側との調整等を踏まえまして、適切な時期に建物の本体工事等を発注をすることといたしておるところでございます。
○井上哲士君 建物工事も含めた施設建設の費用はどうなるんでしょうか。
○政府参考人(土本英樹君) 先ほど、今御答弁申し上げましたとおり、御指摘の施設につきましては、現在、当該施設に係る用地造成工事の工事契約を約四・五億円で締結しているところでございますが、今後、用地造成工事の進捗や米側との調整等を踏まえまして適切な時期に建物本体工事等を発注することとしており、当該施設整備に係る整備費用を明らかにすることにより公正公平な入札に支障を及ぼすおそれがあることから、大変恐縮でございますが、お答えすることは差し控えさせていただきます。
○井上哲士君 国民の税金でありますから、なかなか納得し難いんですけど。
過去、提供施設整備費においては娯楽施設を提供しないこととしておりますけれども、なぜそういうふうにしたのか、その経緯について説明してください。
○政府参考人(鈴木敦夫君) 提供施設整備費による施設等の整備につきましては、二〇〇〇年、平成十二年十月、日米間で提供施設整備の案件採択基準を策定し、この中で、レクリエーション、娯楽施設等の福利厚生施設についてはその必要性を特に精査すること、そして、娯楽性及び収益性が高いと認められる施設、例えばショッピングセンターやスナック、バー等の新規採択は控えることとしてございます。
この基準は、当時の我が国の厳しい財政事情の下、提供施設整備に関する我が国の負担について、国民の理解を得られるものとすべきとの認識を踏まえ策定したものです。
防衛省といたしましては、我が国の財政事情が引き続き厳しい状況を踏まえ、この基準にのっとり、提供施設整備に際しての必要性の精査等をしっかりと行っていく考えでございます。
○井上哲士君 娯楽施設、収益性のある施設の建設であることについて、この提供施設整備でも再編整備でも変わりないんですね。
娯楽施設に国民の税金を使うことは国民の理解が得られないからやめたと、こうおっしゃいましたけれども、再編だと強調したところで娯楽は娯楽でありまして、枕言葉を付ければ構わないと考える方が私はおかしいと思うんです。到底理解は得られないと思います。
提供施設整備費では娯楽施設は提供しないとしたのに米軍再編では提供をすると、これ矛盾していると思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 二〇〇六年に日米で合意されました再編の実施のための日米のロードマップに示されました事業は在日米軍の部隊や施設の再配置等を伴うものであり、この点において施設、提供施設整備と前提が異なるものでございます。
例えば、岩国飛行場への空母艦載機の移駐について申し上げますと、約三千八百人もの人員の移動がございました。このような部隊が施設の再配置等のために必要となる機能、施設の整備に当たり、在日米軍、在日米軍人の福利厚生を維持するための施設を含めることは、在日米軍の安定的な駐留を確保するためにも必要なものと考えております。
○井上哲士君 いやいや、提供施設整備で娯楽施設やめたのは、国民の税金を使うことは国民の理解が得られないと、こう政府が言ってやめたんですよ。これ、同じじゃないですかね。
例えば、労務費の見直しでも、提供施設整備で娯楽施設や収益性のある施設の提供を行わなかったことが一つの理由とされまして、その下で、レクリエーション、娯楽施設などの福利厚生施設、働く労働者への日本の負担は廃止されるべきと財政審から指摘をされて、これ廃止されたという経過があるわけですね。
こういうことを流れを見れば、私はやっぱり再編だから娯楽施設の提供はいいんだというのは到底国民の理解も得られないと思いますけれども、改めて大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 繰り返しになりますけれども、再編の実施のための日米のロードマップに示された事業としては在日米軍の部隊や施設の再配置等を伴うものでございまして、この点において前提が異なるということであります。
先ほど例に挙げました岩国飛行場ですけれども、大変多い人数の米軍、米軍関係者の異動がございました。それに伴って再配置等のために必要となる機能、施設の整備に当たりましては、福利厚生を維持するための施設を含めることは在日米軍の安定的な駐留を確保するためにも必要である、このように判断したものでございます。
○井上哲士君 幾ら言われましても、やっぱり事業目的が違うからいいということには私はならないと思います。FIPでやめた娯楽施設に国民の税金を使うことは国民の理解が得られないと、このことは両方同じなわけでありますから、これはやめるべきだということも最後に強く申し上げまして、時間ですので質問を終わります。
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○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
私は、日本共産党を代表して、在日米軍駐留経費負担特別協定の改正議定書の承認に反対の立場から討論を行います。
日本に思いやり予算を負担する義務は全くありません。日米地位協定第二十四条は、在日米軍の維持経費は日本国に負担を掛けずに合衆国が負担すると明確に定めています。にもかかわらず、質疑で指摘したように、政府は法的に容認されないと認識しながら、米国の負担要求に応じるために協定の解釈を曲げて、一九七八年に思いやりだとして基地労働者の福利費などの負担に踏み切り、一九八七年には特別協定を締結しました。
政府は当初、特別協定は五年間に限る、その後は廃止されると強調したにもかかわらず、この言明に反して、暫定的、特例的、限定的な措置だとしながら、負担を継続するとともに、その対象を隊舎や家族住宅等の施設整備、給与本体、光熱水料、訓練移転費へと拡大させてきました。
一九七八年以降の負担総額は、二一年度予算案計上分を含め、実に七兆八千六百六十九億円に上ります。米国の要求に応じて道理のない巨額な負担を常態化させてきたというほかにありません。
質疑の中で、日米の役割分担の下で、HNSの適切な内容、水準となるよう対応するとの答弁がありましたが、そもそも条約上、日本に負担義務がないものであり、適切な内容、水準などありません。
しかも、在日米軍基地は、安保条約の範囲をはるかに超えて、世界的規模で米軍が自由に展開する基地となっています。このような負担を更に続けることは容認できません。
駐留経費の負担について、政府が財政規律をもないがしろにしていることは重大な問題です。政府の財政制度審議会は、現行協定の国会承認に先立つ二〇一五年十二月に、聖域視することなく見直しを行い、その縮減を図る必要があると指摘していました。しかし、協定はこれに何ら答えることなく、日本の経費負担をそれ以前の水準よりも増やすものとなりました。
五年前と同様に、見直しも縮減も行うことなく協定を一年延長し、更に後年度についても交渉を行うというのは、駐留経費を聖域視していることにほかならず、断じて認められません。
以上述べて、反対討論終わります。